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『フランシス・ハ』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督/脚本/製作:ノア・バームバック
脚本:グレタ・ガーウィグ
撮影:サム・レヴィ
音楽:ジョージ・ドレイコリアス
主題歌:デビッド・ボウイ[るんるん]
 
キャスト
グレタ・ガーウィグ
ミッキー・サムナー アダム・ドライバー マイケル・ゲゼン
 
バレエカンパニーの研究生で27歳のフランシス(グレタ・ガーウィグ)は、大学在籍時の親友ソフィー(ミッキー・サムナー)とニューヨークのブルックリンで共同生活をしていた。ある日、彼女は恋人に一緒に暮らそうと誘われるが断り、その後別れることに。ところがソフィーがアパートの契約更新を行わず、引っ越しすると言ったこで……。(シネマ・トゥデイより)
 
ニューヨークを舞台に、ひとりの不器用な女性の生き方をサラリと描いた小品なれど、心にスゥ〜と清々しさが染み込む良作である。特に、世界中の同年代の女性からの共感を呼ぶ事間違いなしのリアルな作風に拍手喝采だ[パンチ]
 
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フランシス走る、走る、転ぶ、立ち上がる、走る...

ブルックリンのアパートで無二の親友ソフィーとルームシェアして暮らす彼女は、モダン・バレエ団の研究生。
天賦の才に恵まれていないのは自覚している。それでも、小さな夢に向かって健気に頑張る。
友とお酒をこよなく愛し、日々楽しく前向きに過ごすのが、彼女のモットーだ。
 
そんな彼女の日常に転機が訪れる。
ルームメイトのソフィーが、アパートを出て、別の街に住む決心をする。
永遠の友情を信じ込んでいたフランシスは動揺しながらも、親友と別れる事に同意し、独りぼっちの生活が始まるのだった。だが結局、高い家賃を一人分の収入では賄えず、新しいルームシェア仲間を探さざる得なくなった彼女に新たな出逢いが巡ってくる事になるのだが...
 
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ソフィーとの同居生活の描写がユニークだ。傍からみれば 、濃厚なレズビアンなのだが、二人とも彼氏持ち。お互いの性生活をあからさまにするほどの深い友情で結ばれていた。だか、その関係に漫然と浸っていたフランシスと違い、ソフィーは、自分の将来像をしっかりと描いていたのである。
 
奇妙な二人の男性との共同生活をスタートさせた彼女ではあったが、クリスマスイベントのダンスメンバーからも落とされ、あてにしていた臨時収入が無くなり、ついに路頭に迷う立場となる。体格が男性並みに大柄な彼女は、いかにも華麗なダンスは無理と思われるのだが、踊る事が好きなだけでは人生が好転しない現実を次々と突き付けられる場面がリアル。ダンサーの夢を断たれた彼女は、上司から事務職への転身を薦められるも辞退し、バレエ・カンパニーを去るのだった。
 
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主演のグレタは、今作の共同脚本を手掛けるほどの才媛であるが、そんな理知的な面をおくびにも出さない能天気娘を好演。ブロンド美人ではあるのだが、大柄過ぎて小生のハートを揺らすまでには到らずも、時折見せる笑顔がコケテッシュ。
 
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行き詰まった生活から抜け出す転機を求めて、衝動的にパリへの二泊三日の旅に出るが、結局無為な時間を過ごすだけで、舞い戻ってしまう。そしてたどり着いた先は、母校の学生寮の住込管理人。そんなどん底生活を送っていた時、風の便りに婚約した男性と東京に住んでいたはずのソフィーと偶然に再会するのであった。そこで、フランシスは、自分の思い通りにはいかない新生活に苦しみながらも、必死に人生の峠で歩調を整えようとする、過去には見られなかった親友の姿を垣間見るのであった...
 
30歳近くにもなって、好い加減、ちゃんとしなさい!」と、ママから戒められるような、いつもでも夢見る少女。
ピュアで前向き、でも現実的な将来像が全く無いアラ30女性に、漸く訪れた自分探しの旅を、クールな視線ととめどなく温かい愛情を持って描いた秀作である。常に近視眼的に走り回り、そして転びまくっていたフランシスをいじらしく感じ、最後に自分の足でしっかりと歩く決心をした彼女に、「幸多かれ」と思わず願ってしまうのだった。
 
モノクロの美しい陰影と、ヒロインの心情にシンクロしたような粋な挿入音楽が、物語をひときわ輝かせる。
「フランシス・ハ」という意味不明な題名の種明かしは、ラストシーンで明らかになる洒落た演出もお見事[exclamation×2]
 
 
 
 
 

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『るろうに剣心 京都大火編」『〜伝説の最期編』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督・脚本:大友啓史
原作:和月伸宏
 
キャスト〜有名俳優いっぱい[バッド(下向き矢印)]
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あまり映画館では観ないジャンルの作品だが、巷の評判の良さに勢いで「京都大火編」を先月に鑑賞。
これを観てしまったら、最終章も見逃す訳にはいかなくなり、公開当日に行って参りました[あせあせ(飛び散る汗)]
 
2部作らしいのだが、昨年公開の初作は見逃しており、当然、原作の漫画も未見である。登場人物の人間関係は、ストーリーの経過と共に理解が深まっていくのだが、シリーズの骨格である剣心が人斬りを止めた経緯を実体験していないのは、少々ハンデではあった。
 
豪華な出演陣だ。
劇場内は若い女性客に噎せ返っていたが、原作人気と共に、主演・佐藤健に惹かれての満員御礼は間違いなさそうだ。
 
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小生は、4年前の大河ドラマ『龍馬伝』での「人斬り以蔵」以来の対面である。当時の何処かしら頼りない暗殺者役からすると、随分貫禄が付いたものだ、と感心ひとしきり。 似た様な役柄ながら、今回は孤高の伝説剣士を熱演だ。
 
今回の宿敵は志々雄真実の藤原竜也。包帯を全身に巻き付けた異様な出で立ちで、圧倒的な「悪」を演じる。
 
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この両者に割って入る江口洋介、伊勢谷友介が二人に負けじと存在感を見せつける。
藤原軍団の刺客の筆頭格役・神木龍之介〜『SPECシリーズ』以来、繊細な悪役が板についてきて好感度だ[exclamation]
 
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女性陣では、ご当地名古屋出身の武井咲がヒロイン役なのだが、今作では小生イチオシの未完の大器・土屋太に軍配を挙げる。天真爛漫なお転婆娘役で、彼女の新しい一面を大いにアピールした。
 
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剣心の師匠役で出演の福山雅治には、『龍馬伝』のオマージュというか洒落た演出に拍手(大友監督だしね)。
大久保利通がBOOMの宮沢和史だったと知ったのは、つい最近...[ダッシュ(走り出すさま)]
 
ともあれ、個性溢れる俳優陣に支えられてのスケール豊かな今風アクション時代劇なのだが、本作の一番の魅力は殺陣に尽きる。往年のチャンバラ劇や黒澤流リアリズムとは別次元の新感覚殺陣である。
売れ線俳優達が吹替え無しで臨む立ち回りは、圧倒的迫力に満ち溢れながら、同時に美しさも漂わせる。
特に「真剣」を使わない抜刀斎の独特の剣技は、過去の時代劇の常識を覆すものかもしれない。逆刃刀という鮮やかに「たたっ切れない」刀なので、同じ相手を何度も強打するのである。「斬る」ではなく「叩く」剣術は、観ている者達にまで痛みを覚えさせる。
 
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佐藤健自身の身体能力の高さと鍛錬に拠る処も大きいと思われるが、長廻しのカメラワークがリアルな迫力と緊張感を生み出す。更に、随所に織り込まれた特殊効果と再生スピードの微妙なコントロールが、極限の剣術を演出するのである。
 
伊勢谷VS田中の子弟対決も見ものだ[どんっ(衝撃)]
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軽やかな「剣技」に「肉弾戦」の重みが加わった殺陣の圧倒的迫力は、過去の時代劇には見られなかったものだ[exclamation&question]
 
そしてクライマックス〜藤原竜也との決闘〜
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佐藤健が「日本映画の歴史が変わる」と豪語したそうだが、 日本伝統の時代劇+香港アクション+漫画的テイストを融合させた新感覚邦画は、殺陣シーンに関しては、まさにその通りかもしれない。
これで、登場人物達の「想い」に今一歩踏み込めれば、特に剣心と薫(武井咲)の悲恋を情緒たっぷりに描けていたら、間違いなく歴史に残る傑作になったであろう。それはアクション以前に、若手俳優陣の心象表現力の巧拙にかかるのだが、そこまで望むのは少々酷かもしれない...と思わせるほどの極上エンターテイメント作[ぴかぴか(新しい)]であった。
 
 
 
 

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『LUCY/ルーシー』&『グレート・ビューティー/追憶のローマ』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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監督:リュック・ベッソン
 
キャスト
スカーレット・ヨハンソン
モーガン・フリーマン チェ・ミンシク
 
ルーシーは訪れた台北のホテルで、人体にある物質を埋め込んで密輸を企む、マフィアの闇取引に巻き込まれてしまう。そこで誤ってルーシーの体内に物質が漏れ出すアクシデントが発生する。その影響でルーシーの脳は覚醒し、人知を超えた能力に目覚めていく。(ぴあ映画生活より)
 
難解な作品というよりは、スピード感溢れる支離滅裂な展開に、観客をワクワクドキドキさせ、ストーリーを思い返す暇も与えず、あっという間にエンドロール・・・という非常に独りよがりな「さすが、リュック・ベッソン!」と叫びたくなる異色作だ。
 
とにもかくにも、スカーレット・ヨハンソンあっての作品でもある。
『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウ役以降、最近はアクション女優としての評価も高まる、非常に広い芸風を誇っているが、小生は「真珠の耳飾りの少女」「ブーリン家の姉妹」の清楚なイメージが強過ぎて......
アンジーやミラ・ジョヴォヴィッチ、ユマ・サーマンなどの歴戦のアクション女優達と比較すると、正直、彼女は太すぎる〜ムチムチ体型である。この違和感が、なんとも心地よい艶っぽさを醸し出す[黒ハート]
 
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そんなダイナマイトボディの彼女が、韓国マフィアの闇取り引きに巻込まれて、未知の薬品の運び屋に仕立てられてしまう。そして、身体内に隠された薬品が体内で溶け漏れてしまった彼女に異変が訪れる。10%しか機能しないと言われる脳が覚醒し、通常の人間では持ち得ない能力を発揮していくのだ。
「ドラゴンボール」的に言えば超サイヤ人に変身だぁ〜という荒唐無稽なストーリー。
 
リュック・ベッソンは、生物学・物理学的なまどろこっしい説明は一切省いて、このスリリングな展開を一気に見せてくれる。脳科学者モーガン・フリーマンが、いつも通りの「それらしい」演技で、ストーリーに説得力を持たせようとするが、かえってナンセンスさに拍車をかける感じだ。
 
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だが小生は、決して本作をこき下ろしている訳では無い〜ルーシーの行き着く先が全く予想がつかず、カウントダウン風に彼女の脳機能が70%、80%、90%と上昇するごとにワクワク度も高まっていった。
 
超サイヤ人から超サイヤ人ゴッドにまで昇格したルーシーの結末は如何に...[exclamation&question][exclamation&question][exclamation&question]
 
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既存のSFアクションとは全く異質の今作を駄作と呼ぶか、魅惑の実験作に位置づけるかは観客の感性に委ねられる。
初めて直立二足歩行した人類の祖先・アウストラロピテクスの化石人骨に付けられた名が「ルーシー」。地球上初の女性と言われる猿人とヒトの能力を超越した現代女性〜二人のルーシーの強引なこじつけが楽しい。
 
B級香港アクション映画をフランス流にお洒落に取り繕って作るとこうなる・・・
そんな面白さ満載の凝縮した89分間〜あなたはどう観る???
 
 
 
 
 
もう一本は、上記作とは対極、長尺の難解さなのだが...感動作、傑作である[ぴかぴか(新しい)]
 
 
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監督・脚本・原案:パオロ・ソレンティーノ
音楽:レーレ・マルキテッリ
 
キャスト
トニ・セルヴィッロ
カルロ・ヴェルドーネ サブリナ・フェリッリ ファニー・アルダン
 
作家でジャーナリストのジェップは、華やかなセレブ生活を送りながらも虚無感を拭いきれずにいた。ある日、初恋相手の訃報を聞き、喪失感を抱いたジェップは、これまでの人生で見つけることができなかった“究極の美“を探し求めてローマの街を彷徨い歩く。(ぴあ映画生活より)
 
きっと、ここが帰る場所(2011)」・・・ショーン・ペンが初老の元ロック・スターに扮してのロードムービーの異色作だったが、斬新なカメラワークとえも言われぬ空気感に強烈な印象を受けた。一筋縄ではいかないパオロ監督の2年ぶりの今作は、故郷イタリア・ローマを背景に人生の哀切を綴った感動作となった。昨年度のアカデミー外国語映画賞受賞もうなずける内容である。
 
と云っても、観る者を選ぶ難作であるのも事実。局面ごとに映像と音楽が極端に変調し、シーンの繋がりも曖昧模糊な為、多くの観客の混乱は避けられないだろう。更に、主人公ジェップ(設定は65歳)と同様に、人生の寂寥を味わえる年代でないと、黄昏の芸術家の心情を共有するのも困難と思われる。小生自身は、そこまでの年齢ではないが、自己の恥ずべき半生を振り返れる領域に一歩踏み入れた親爺として、この作品の心髄の3割位には触れられたのではないかと思う。それでも十分、傑作[パンチ]
 
トニ・セルヴィッロ演じるジェップが、なんとも粋なお洒落ジジイである。役者自身は55歳らしく小生と同年代だが、劇中では完全に黄昏れた哀愁が滲み出る老人を好演だ。
30年前に大ヒットした小説以来、ペンを置いたままの彼は、ローマの高級コンドミニアムに優雅に暮らし、毎夜社交界のセレブ達が集うダンスパーティーに顔を出す無為な日々を送っていた。
 
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冒頭、ローマ観光を愉しむ初老の日本人男性が心臓マヒで絶命するシーン。ストーリーには全く関連の無い人物の死が、実は「この人の人生って一体何だったろう・・・」という訝しさを投げかけ、今作のテーマを暗示する。と、一点、場面はセレブ達が狂騒に明け暮れる夜のディスコパーティへ。
 
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「現代のローマの夜」の頽廃ムードの中、ジェップは常にダンディに振る舞い、彼の残した実績と共に格別の文化人としてセレブ仲間からも一目置かれる存在だ。
続いてカリスマ舞踏家の理解不能なパフォーマンス。インタビューと称して、崇高な芸術家気取りの彼女を完膚なきまで論破し、「偽物」と決めつけるジェップの姿。
 
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自暴自棄な生活を送り、自ら「俗物の王」たる事を望みながら、自己の美意識は妥協しない彼の頑な自尊心を垣間見せる。そんな彼に、初恋の女性の訃報が届く。生涯独身を貫き、何不自由ない生活を送ってきたジェップは、無味乾燥な日常にふと疑問を抱き、寂寥感に苛むようになるのであった。
 
初恋の女性と結ばれなかったトラウマと成功後の半生を振り返りながら、ジェップはローマの街を徘徊し、多くの友人・知人・女性との関わりを経て、65歳にして初めて自分の人生観を導き出す...という構成である。
 
ジェップと関わった人々の「生と死」が短編映画の連続上映のように淡々と連なっていく。
登場人物が多過ぎて少々混乱するのだが、多くは頽廃に身を任せる高貴を気取る俗物ばかりである。
その中で印象深いのは、二人の「聖人」との出会いである。
 
ジェップとは対極の世界に暮らすストリッパー・ラモーナ。
彼女との深い友愛と別離にジェップは「」を教えられ...
 
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アフリカからバチカンに招聘された104歳の修道女から「生きる信念」を学ぶ
 
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ローマ・・・かつての栄華は、帝国時代の遺跡とルネッサンス期の美術品で偲ぶしかない、今や観光が経済の中心である世界42番目の都市である。だが、経済規模以上にこの街の魅力...いや幻影と云ってよいかもしれない...惹かれて多くの文化人が暮らし、世界中からの観光客で日々賑わう。
 
優雅と頽廃に溢れた街が見せるいくつもの顔を、登場人物達の生き様と絡めて切り取る重厚なカメラアイ。その映像に、静謐なクラシックから爆音のダンス・ミュージックが被さっていく。極めて芸樹的密度が高い作風でもある。
 
ローマの持つ幻影そのままに俗人的生活から抜けきれない主人公の人生の終末期に訪れた転機。
「もう一度、小説を書いてみたい」30年間、筆を置いていた老小説家を揺り動かしたものとは・・・
 
ラストシーン〜長い人生を例えるようなテヴィレ川の流れをじっと見つめるジェップの姿に、自分自身を重ね合わせ、無性に胸が熱くなった[もうやだ~(悲しい顔)]
 
久しぶりにもう一度観たい映画と出会った。 嗚呼、ローマに行ってみた〜い[ぴかぴか(新しい)]
 
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『思い出のマーニー』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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 監督:米林宏昌
原作:ジョーン・G・ロビンソン
作画:安藤雅司
美術:種田陽平
音楽:村松崇継
 
声の出演
高月彩良 有村架純 
松嶋菜々子 寺島進 根岸季衣 森山良子 吉行和子 黒木瞳
 
喘息の療養のため、養父母と離れて海辺の村の老夫婦に預けられた杏奈は、心を閉ざし、孤独な日々を過ごしていた。ある日、杏奈は不思議な少女マーニーと出会う。ふたりは仲良くなり毎日のように一緒に遊ぶが、なぜか村人は誰もマーニーのことを知らなかった。 
(ぴあ映画生活より)

 
 
ジブリ第二世代の手による心温まる佳作です。
 
宮崎駿・高畑勳の二大巨頭の昨年の作品は、戦中派の両名の集大成であり、昭和アニメの極致であった。
破壊と創造を実体験した二人の描くファンタジーは、夢と希望に満ちた「逞しさ」と「熱情」を常に内包していた。
 
宮崎吾郎そして今作の米林宏昌の、バブル崩壊以降の「成功を知らない」世代が描く世界は、母に抱かれし乳飲み子の如く「温もり」と「安堵感」に包まれている。
 
本作は、ジブリ伝統の青い空を突抜ける様な冒険談ではなく、ヒロインの心象心理に基づくファンタジー仕立ての私小説である。自分の出自を知らぬまま思春期を迎えた少女・杏奈が養母との関係に思い悩み、心の病いに捕われようとした時、小さな奇跡が訪れる。イギリスの児童文学を、舞台を北海道に代え、孤独だった少女が自我に目覚め、おとなの階段を登り始める様を、とことん優しいタッチで描いている。
 
美しい背景処理はお手のもののジブリだが、今作は作画監督に「千と千尋の」「もののけ姫」の安藤雅司が復活し、実写映画で数々の名作に携わった種田陽平が美術監督としてアニメ初デビューを果たした。二人の相乗効果で、幻想的なのに緻密なリアリティを伴った独特の世界観を造り出している。
 
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そして杏奈が出会った謎の金髪の青い目の美少女・マーニー。
アニメであっても、ブロンド登場だけで、私の期待度200%なのだ[どんっ(衝撃)]
 
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北の僻地・道東の湿原地帯で繰り広げられる二人の密会。
 
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物語の中盤から、マーニーが杏奈の空想の人物である事に観客を気づかせる演出だ。
杏奈の行動は、世間一般ではアブナイ夢遊病患者のそれなのだが、マーニーの謎にひとつひとつ迫るごとに、妄想が普遍の命の連鎖の証明へと変化していくという、サスペンス調も忍ばせた構成が、過去のジブリでは味わえなかった種類の感動を与えてくれるのである。自己を認識し、自分を愛してこそ他人に優しくなれる・・・子供が大人になる為の大事なことを、本作は教えてくれる。
 
声の出演は、プロの声優を使わないジブリ流の俳優陣のみで固められている。杏奈役の高月彩良を除いては、若手・ベテランとも有名どころの起用だ。高月は無難に主役をこなし、「あまちゃん」でブレイクした有村架純は、薄幸のマーニーを好演した。ベテラン勢は言うに及ばず。だが、プロの声優でも優れた人材はいるはずなので、ジブリの依怙地な伝統は、そろそろ破ってもいいののでは...と、個人的な感想。
 
本質は極めて内向的な小説を、幻想と現実の往き来を美しく優しく描き、非常にポジティブなファンタジーに変える日本アニメの魔法。常にその時代が求めるモノを先取りしてきたジブリが贈る、今の病めるニッポンの子供達に捧げる詩なのかもしれない。
外国の純文学のエッセンスを、日本人向きのの美しい絵本に散りばめたような米林監督の世界は、更に進化した描写力を得て、スタジオ・ジブリを次のステップに引き上げた
 
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Movie on the Sky [上映中飲食禁止じゃ!]

 
閑話休題...欧州旅行の往復便の中で観た映画です。なにしろカタール航空ですので、日本語字幕の作品は皆無で、吹替版も少なく、自然と邦画中心に観てしまいました。とりあえず、今年の旧新作を主体に...あいもかわらず女優中心の視点ですが...
 

武士の献立 Blu-ray

武士の献立

  • 監督:朝原雄三
  • キャスト:上戸彩 高良健吾 西田敏彦 余貴美子
  • ナレーター:中村雅俊
  • 撮影:沖村志宏
  • 音楽:岩代太郎
  • 主題歌:CHARA

時代劇のハートフル・ホームドラマです[わーい(嬉しい顔)]
 
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上戸彩・・・女性としては結構好きなタイプなので、TV・映画を問わず彼女の出演作は良く鑑賞するのだが、では彼女の代表作は...と言われると咄嗟に浮かんで来ない。女優としての個性が弾けきれないのか、重厚な作品に恵まれないのか、今作のような軽いタッチのドラマが似合ってしまうイメージがつきまとう。
 
作品自体は、ハッピーエンド必至の安心して観られる構成です。
「こんな可憐で芯の強い料理上手な女房はサイコーじゃ」と、今時のGALに辟易するおじさま方に贈る哀歌である。
そう、上戸彩はそんな昭和の女の香りを持つ控えめな今時では貴重な女優さんなのだ[exclamation&question]
芸風変えずにそのままでよい...オジさんはずっと応援するよ[揺れるハート]
 

小さいおうち Blu-ray

小さいおうち

  • 監督:山田洋次
  • 原作:中島京子
  • 脚本:平松恵美子
  • キャスト:松たか子 倍賞千恵子 吉岡秀隆 黒木華 妻夫木聡
  • 音楽:久石譲

隣席の女房と同時進行で鑑賞。
山田洋次監督は「男はつらいよ」シリーズの軟派なイメージが強すぎるのだが、この作品は「たそがれ清兵衛(2002年)」以上の文芸的要素が詰まった傑作だ。原作の魅力もさることながら、昭和初期の中流家庭の日常をあくまでも自然に描いた演出力は、山田監督の真骨頂というべきであろう。
しかし最大の見所は、松たか子の演技である。「アナ雪」で歌手としての力量を世間に再認識させた訳だが、やはり銀幕で光輝く彼女の存在感は別格だ。
 
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良妻賢母が「オンナ」に豹変する様を、これほど恐ろしく演じられる俳優は希有。鳥肌モノだった[がく~(落胆した顔)]
現在、朝ドラ「花子とアン」で人気沸騰中の黒木華の素朴な存在感が、相乗効果でストーリーを引き締める。
日常に潜む「おどろしさ」をサラリと美しい映像に落とし込んだ伝統的邦画の佳作だ[ぴかぴか(新しい)]

 


アメイジング・スパイダーマン2TM(初回限定版) [Blu-ray]

アメイジング・スパイダーマン2

監督:マーク・ウェブ

キャスト:アンドリュー・ガーフィールド エマ・ストーン ジェイミー・フォックス

デイン・デハーン コルム・フィオール ポール.ジアマッティ サリー・フィールド

撮影:ダニエル・ミンデル

音楽:ハンス・ジマー 


「サム・ライミ×トビー・マグワイヤ」シリーズのリプート作であり、第一作は未見だったが、小生の好みは断然こちらだ[exclamation×2]単純明快、ヒロイン役の好みの差である[exclamation&question]
 
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同じブロンドでも、キルスティン・ダンストとエマ・ストーンなら軍配は圧倒的に後者だ。
 
シリアスな展開は、バットマン映画の中でもクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」シリーズを彷彿させ、単純なアクション・ヒーロー物に終わらない処が好感度(ラストは本当に悲しいけど...)
優柔不断なA・ガーフィールド、脇を固めたジェイミー・フォックス、デイン・デハーンの悪役ぶりも楽しい。
 
兎に角「ぜひとも大スクリーンで観たかった」と、思わせる視覚効果とエマ・ストーンの美しさなのでした[どんっ(衝撃)]

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300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~ ブルーレイ &DVDセット(初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]

300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~ 

  • 監督:ノーム・ムーロ
  • 原作:フランク・ミラー
  • キャスト:サリバン・ステイプルトン エヴァ・グリーン レナ・ヘディ 
  • ハンス・マシソン ロドリゴ・サンドロ
  • 音楽:ジャンキーXL
  • 撮影サイモン・ダガン

これを大スクリーンの3Dで観たら嫌気が刺したであろう、前作同様のスプラッターまがいのアクション大作だ。
生首飛びまくりのハチャメチャな前作ながら、レオニダスの犠牲的精神には多少の観る価値を感じられたのだが、今作は残念ながら心揺るがす部分は皆無だ[むかっ(怒り)]
エヴァ・グリーン嬢は頑張っていたんだがなぁ〜
 
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ペルシャ帝国のクセルクセス一世のモッコリ姿が、意味も無く哀しく思えた。
 
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チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像 Blu-ray スタンダード・エディション

チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像 

  • 監督:星野和成 
  • 脚本:後藤法子
  • 原作:海堂尊
  • キャスト:伊藤淳史 仲村トオル 桐谷美玲
  • 音楽:羽岡佳
  • 撮影:川越一成


このシリーズはTVドラマを含めても初見。ゆえに人間関係が不明のままの鑑賞だった。
厚労省の役人・仲村トオルが病院に入り浸っている理由は? 
主演がどうして伊藤淳史なのが??
何故ヒロインが桐谷美玲なのが???
 
ストーリーは理解出来たのだが、何となく観ているうちに、心平穏なまま何となく終わってしまった[ふらふら]
 
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桐谷美玲・・・今風の可愛い女子なのだが、彼女が女優としてもて囃されているのが、どうしても理解できない私がいるのです...                                               残念ながら、フジテレビのドラマの延長線が限界の出来映えとしか思えなかった...無料鑑賞で良かったぜ[ダッシュ(走り出すさま)]

ニシノユキヒコの恋と冒険 Blu-ray(特典DVD付2枚組)

ニシノユキヒコの恋と冒険

  • 監督・脚本・編集:井口奈己
  • 原作:川上弘美
  • キャスト:竹野内豊 尾野真千子 成海璃子 木村文乃 本田翼 麻生久美子 阿川佐和子
  • 撮影:鈴木昭彦
  • 音楽:ゲイリー芦屋 

劇場で是非観たかった作品。
原作者・川上弘美の視点と異才・井口監督の感性が見事に融合された小品。
 
成海凛子
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木村文乃
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 本田翼
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CMでおなじみの私好みの若手女優達が次々と登場。しかも個性的な役柄を魅力たっぷりに演じる。
阿川佐和子はご愛嬌として、更に新鋭の中村ゆりかと円熟の麻生久美子が美しい親子役だ。
 
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どんなタイプの女性からも愛される不思議な男性ニシノユキヒコ(竹野内豊)を軽いタッチで主体に描きながら、実は女性達の内面を深く掘り下げ刳り出している、怖くて楽しくて少々哀しい物語なのだ。
随所に織り込まれた抽象的な映像とゲイリー芦屋の音楽が、彼女達の心情心理を炙り出す緻密な演出。文芸的要素が強いはずの作品が、フレッシュな俳優陣の起用により、明るくアンニュイな雰囲気を醸し出す、全く飽きさせない構成にも脱帽の一品だ。
そして、ひときわ目を引く尾野真千子の演技〜素晴らしすぎる[exclamation×2]
 
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こんな浮気者の女たらしでも、女性から全く恨まれないニシノ君を妬ましく、羨ましく思う小生なのでした。(隣で爆睡中の女房の横顔を見ながら...[あせあせ(飛び散る汗)]
 
 
 
恐怖の南回り往復の機中時間は約33時間〜映画の愉しみがあればこその長旅でした[かわいい]
 
 

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『her/世界でひとつの彼女』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 最後に書いたラブレターは何年前だったろう...
 
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監督/脚本:スパイク・ジョーンズ
 
CAST
ホアキン・フェニックス エイミー・アダムス ルーニー・マーラ
オリヴィア・ワイルド ポーシャ・ダブルデイ スカーレット・ヨハンセン(声のみ)
 
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
 
音楽:アーケイド・ファイア[るんるん] 
 
近未来のロサンゼルスで、セオドア(ホアキン・フェニックス)は相手に代わって思いのたけを手紙にしたためる代筆ライターをしていた。長きにわたり共に生活してきた妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と別れ、悲嘆に暮れていた彼はある日、人工知能型OSサマンサ(スカーレット・ヨハンソン)と出会う。次第にセオドアは声だけで実態のない彼女の魅力のとりこになり……。(シネマ・トゥデイより) 
 
一見ハートフルを装いつつ、実は背筋が寒くなる異色の恋愛映画〜奇才スパイク・ジョーンズの本領発揮だ[どんっ(衝撃)]
 
近未来の設定とはいえ、日進月歩のIT進化の現状を考えれば、せいぜい10年後以内の世界であろう。
携帯型のPCは、今のスマホほどの大きさとなり、Keyboad入力は必要なく、イヤホンをしながらPCとの「siri会話」によって、すべての機能を使いこなせる時代・・・全く違和感の無い、即現実可能なIT世界である。
 
代筆屋セオドア・・・顧客の要望に応じて手書きのラブレターを作製する企業に勤務するライターである。このIT全盛の時代に、アナログ的商品がもてはやされる世相を垣間見せる設定だ。そう、既にこの時代には、一般人は「文章を書く能力」を失い始めているのである[exclamation&amp;question]
 
その来るべき時代に、革新的なOSが登場する。
人格を持ち、進化し続ける人工知能(AI)が開発・発売されたのだ。
 
永年連れ添った妻と別居・離婚調停中のセオドアは、やりきれない夜は独りゲームに熱中したり、チャットで「テレホンSEX」を興じるが、結局、むなしさが募るばかり。そんな矢先に、この新型OSを購入した彼は、PCとの粋な会話に楽しさを覚え始める。ハスキーな女性の声に設定されたOSは、自らを「サマンサ」と名乗ったのだった。
驚異的な学習能力を持つ彼女は、セオドアの仕事の貴重なパートナーに成長し、また余暇は大事な話し相手となっていく。いつしか、セオドアにとってサマンサは無くてはならない存在と化す。その不可思議な感情が、「恋愛」だと気づくのにたいした時間はかからなかった...
 
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別人のようなホアキン・フェニックスの親爺っぷりには軽い衝撃を受けるのだが、未練たらしい情けない男を好演である。妻との離婚に踏ん切りがつかず、過去ばかりを振り返る孤独な男性が、徐々にOSを擬人化し、恋に嵌る一種の「狂気」を、ごく自然に違和感なく演じた様は見事だ。
 
そして、話題となった声だけの出演のスカーレット・ヨハンソン
 
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痒い所に手が届く素敵な女性です...男が放っておく訳が無い〜身体が存在すればの話しだが[ダッシュ(走り出すさま)]
人間の恋愛感情を瞬く間に学習したOSサマンサは、セオドアに嫉妬する「能力」まで身に付け、彼との痴話喧嘩まで起こす”女性らしさ”を見せるのである。そしていつしか二人は恋人同士になるのであった。
 
この過程は、脚本・演出の素晴しさと共に、声のみで存在感を示したスカーレットの力量に敬服である。
二人が初めて結ばれた夜」のシーンは、屈指の濡れ場として映画史上に残るであろう[あせあせ(飛び散る汗)]
 
摩訶不思議なラブ・ロマンスを更に盛り上げる音楽と映像そして共演の女優陣[ハートたち(複数ハート)]
サマンサの自作曲というピアノ曲を始めとして、Karen・Oの「Moon Song」、Arcade fireの重層な旋律など珠玉の挿入曲が、狂おしく哀しいストーリーに彩りを添える。
主人公の後から廻り込み、女優を引き立たせるカット割りや、在りそうだが現在のモノとは若干違和感を覚えるような近未来都市の情景など、小生好みの演出がてんこ盛りなのが嬉しい[exclamation×2]
 
ホアキン&スカーレットの「Moon Song」
 
 
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先日観た「サード・パーソン」のヒロイン役のオリヴィア・アイドルがまたも登場
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「ドラゴン・タトゥーの女」と同一人物とは思えないルーニー・マーラ
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ただいま絶好調[どんっ(衝撃)]エイミー・アダムス
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 お色気満載ポーシャ・ダブルデイ
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まるで生身の人間同士の恋愛のような二人の関係...サマンサの聡明かつ初めての恋にうち震える少女のような純真さに、セオドアは身も心もトロトロだ[ハートたち(複数ハート)] OSのバージョンアップで、交信不通になった時の彼の狼狽えようは、まさにリアルな恋そのものなのである。
だが、サマンサが彼との「逢瀬」の間に、同時に8000人と会話し、600名の男性と恋愛中である事を知り、茫然自失となる。「本当に愛しているのは、あなただけ」という彼女の言葉がむなしく響く...
 
PCと人間との恋の終着駅は、果たして何処へ・・・
 
IT機器の進化により、人間同士の距離感は飛躍的に短縮された。どんな遠距離恋愛でも、すぐに相手の声も顔も確認できる時代だ。相手の気持ちを想い、眠れぬ夜を過ごすなんて愚の骨頂だ。想いの丈を、言葉を探りながら手紙にしたためる作業より、即メールで♡マークを送れば「繋がっている」感覚にたやすく包まれるのが可能だ。
 
この利便性が逆に人間の結びつきを弱めてはいないだろうか...
そんな疑念を誰もが持ちながらも、スピードアップした現代社会の渦の中で、多くの人はデジタル機器に「使われて」いく。手書きの代筆業が流行る近未来の設定は、現代人の求める「温もり」を象徴的に表している。劇中、OSのサマンサが、セオドアの過去の代筆した恋文を抜粋して出版社に送り、紙の「単行本」が発行される件などは、なんと強烈な皮肉なことか[exclamation&amp;question]
知らぬ間に、生身の人間とのコミュニケーションがとれなくなり、ゲームの中のキャラクターやOSの声にしか、自分を曝け出せなくなったセオドアを笑う事は我々はできない。そんなタイプの人間が、廻りにどんどん生まれてきている。いや、自分自身も、その兆候が現れてきているのかもしれない。
 
奇才スパイク・ジョーンズは、IT進化により日増しに狭まる世界と、それに反比例して稀薄になる人間同士の「温もり」を、前代未聞の人間とOSの恋という形で提言した。
 
離婚の後遺症で、夫の残したOSに嵌り込んでしまったセオドアの学生時代の恋人であり親友エイミー(エイミー・アダムス)とセオドアが、 そっと肩を寄せ合い深夜の摩天楼を眺めるラスト・シーンが、現代社会の病める実態と本来の人間のあるべき姿を投射しているようだった。
 
 
 
 
 ちなみに単身赴任3年目の我が夫婦は、週一のメールがあれば御の字です...[あせあせ(飛び散る汗)]
 
 来週のお盆休暇に、銀婚式祝いを兼ね、欧州旅行にに行って参ります。
アナログ夫婦のリアルな復活は如何に[exclamation×2]
   乞うご期待[がく~(落胆した顔)]
 

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『マレフィセント』&『超特急!参勤交代』 [上映中飲食禁止じゃ!]

名古屋の夏がやってきた!
午前中から刺すような日差しとむせ返る熱気〜ゲッ!34℃じゃないかぁ〜[がく~(落胆した顔)] 
汗だくで会社に戻れば、厳格な空調設定26℃らしいオフィスのはずが、西向きの我がデスク上の温度計は30℃を指す[ふらふら]
社員の健康を害するクールビズに、なんの意味があるのじゃぁ[ちっ(怒った顔)] 
 
.....そんな訳で、このモヤモヤを吹き飛ばす「お気楽」かつ「爽やかな」作品を続けて・・・
 
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 監督:ロバート・ストロンバーグ
製作:ジョー・ロス 
脚本:リンダ・ウールヴァートン
撮影:ディーン・セムラー 
 
CAST
アンジェリーナ・ジョリー エル・ファニング 
サム・ライリー シャールト・コプリー ジュノー・テンプル イメルダ・スタウントン 
 
とある王国のプリンセス、オーロラ姫(エル・ファニング)の誕生祝賀パーティー。幸せな雰囲気があふれるその会場に、招かれざる邪悪な妖精マレフィセント(アンジェリーナ・ジョリー)が出現する。オーロラ姫に永遠の眠りにつく呪いをかけたマレフィセント。それは、なぜなのか。答えは、謎に包まれたマレフィセントの過去にあった。(シネマ・トウデイ) 
 
アンジー様の独壇場[exclamation×2]
製作総指揮にも関わった彼女が、童話『眠れる森の美女』のヒロインに呪いをかける妖精役に扮する。
オリジナルと大きく異なるのは、この悪の妖精の視点で描かれており、当然、アンジーが主役の位置づけなのだ。
 
デイズニー配給による童話の実写化といえば「アリス・イン・ワンダーランド」や「オズ はじまりの戦い」が記憶に新しく、浮世離れした色彩豊かな映像や練り込まれたCGに見慣れたせいか、今作には目新しさを感じなかったのは事実。その分、アンジーの演技が際立った、良くも悪くも「アンジー頼み」の映画でもある。
 
 こんな愛らしい子供から
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 人間離れした形相の大人へ
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ここまで頬骨を張らせると、美形アンジーも台無しなのだが、愛らしい妖精がおぞましき魔女に変わる刹那をダイナミックに演じた。自分を裏切った男への復讐に狂う様は、まさに「愛深きオンナ」の専売特許だ[ダッシュ(走り出すさま)]
 
この鋼の心を持つ魔女が、ふと垣間見せる哀しみと優しさ...
 
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アンジェリーナは、かつて愛した男の娘への愛憎入り混じった感情を「コスプレ姿」で熱演。
脇役陣では、私のお気に入りのエル・ファニングと鴉役サム・ライリーが出過ぎない演技でアンジーを盛り立てた。コミカルな妖精オバサントリオは秀逸[わーい(嬉しい顔)]
 
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昔の男は殺したい程憎いのに、その娘には止めども無い愛情を注いでしまうマレフィセント。
この作品のテーマは「普遍なる母性」なのである。
ラストシーンは「アナと雪の女王」の二番煎じを彷彿させる。所詮、惚れた晴れたの男女関係よりも、もっと「崇高な愛」が在る事を見せてつけてくれているようだ。白馬に跨がった王子様など絶対に現れないのよ...と。 
 
「アンジー様の映画」なので致し方ない処だが、マレフィセントの対極としてステファン(シャールト・コプリー)の心の葛藤を、もっと丁寧に描いたなら「愛憎めくるめく」ブラック・ファンタジーとして深みのある作品に昇華したのではなかろうか。アカデミー美術賞2度の栄冠に輝いたロバート監督だが、長編映画初挑戦は少々荷が重かったかもしれない。とりあえず二人の美女の力抜きには語れないデビュー作となった。
 
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小生は、エル・ファニングの一日も早い成熟を望む[揺れるハート] 
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続けては、粋な邦画を...
 
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監督:本木克英
脚本/原作:土橋章宏
 
コメディ時代劇の佳作。
 
佐々木蔵之介、深田恭子をメインに芸達者な俳優陣が脇を固める。
 
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8代将軍・徳川吉宗の治世下、東北の小藩・湯長谷藩は幕府から突然、通常でも8日かかり、さらに莫大(ばくだい)な費用を要する参勤交代をわずか5日で行うよう命じられる。それは藩にある金山を狙う老中・松平信祝(陣内孝則)の謀略で、弱小貧乏藩には無茶苦茶な話だった。藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)は困惑しつつも、知恵を絞って参勤交代を完遂させようと作戦を練る。(シネマトゥデイより) 
 
と、ナンセンスな筋書きなのだが、幕府の指令に決死の覚悟で臨む武士達を俳優陣が見事に再現。肩の力を抜いた彼らの演技が、かえって好印象をもたらせた作品だ。シリアスな展開の中に、西村雅彦、六角精児そして猿の菊ちゃんらが随所に笑いをもたらす。時代劇の王道である水戸黄門的予定調和を見事に踏襲し、ハッピーエンドが目に見える展開は、観ていて全く疲れない。されど、殺陣は結構本格的に演出されている。ファミリーや若い客層にも支持されたのが、十分理解できる構成となっている。
 
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前述の「マレフィセント」同様に、深みはないが楽しく観られた娯楽映画であった[ぴかぴか(新しい)]
 
本題からそれるが、それにしても、それにしても深田恭子はいいなぁ〜[揺れるハート] 
 
国内産若手女優での個人的お気に入りは、別格で「吉高由里子」が神的存在なのだが、最近とみに美しくなる「石原さとみ」と「深田恭子」には大注目なのだ。
 
とにかく、彼女ほどどんな衣装も似合う女優は若手では少なく、それが例え悪趣味なコスプレ風であっても、すべて「フカキョン」風に美しく魅せてしまうのだ。何よりも、どんな格好にも物怖じせず取り組む姿勢は、賞賛に値する。 
 今作の女郎役
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「下妻物語」でのロリータ少女 
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「ヤッターマン」でのドロンジョ
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某CMの人魚姫
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彼女の最大の魅力は、「清廉ないやらしさ」で、猥雑さを微塵にも感じさせない高潔な肉欲を持った女性なのである。常人離れした素顔の美しさが、その根底にあるのは事実なのだが...
 
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今春のNHKドラマ「サイレント・プア」に主演。この社会派ドラマで、コスプレ無しで演じたソーシャル・ワーカー役が非情に印象深かった。彼女の真の魅力は、この主人公同様の「真摯なひたむきさ」なのかもしれない...と、勝手に決めつけてしまう中年オヤジなのでした[あせあせ(飛び散る汗)]
 
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[ぴかぴか(新しい)]灼熱地獄に一服の涼風をくれた2作品に感謝[ぴかぴか(新しい)] 
 
 
 
 
◎おまけ
 
ドロンジョ様の入浴シーン[ハートたち(複数ハート)]
 
 

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『オール・ユー・ニード・イズ・キル』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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監督
ダグ・リーマン
 
キャスト
トム・クルーズ エミリー・ブラント
ブル・パクストン ブレンダン・グリーソン ノア・テイラー
 
原作
桜坂 洋
 
 
対侵略者との戦況が悪化の一途を辿る中、ウィリアム・ケイジ少佐は戦死する。しかし死んだはずのケイジが意識を取り戻すと、時間は戦闘以前に戻っていた。ケイジは謎のタイムループに迷い込み、戦いと死を繰り返す。そんな中ケイジは女性兵士のリタと出会う。(ぴあ映画生活より)
 
 
トム・クルーズの前作『オブリビヨン(2012)』に続くSFアクションの快作だ[ぴかぴか(新しい)]
いつまでも若さ漲る同年代のトム様に敬意を表し、奮発しての3D鑑賞なのでした[exclamation&amp;question]
 
作品の根幹を成す「タイムループ能力」に対し、科学的な根拠の有無まで考えていたら映画の面白みが半減する。
とにかく素直に信じれば良いのだ[パンチ] 独創性溢れる日本のSFを楽しもう[どんっ(衝撃)]
 
謎の侵略者ギダイから、幸か不幸か、この特殊能力を感染してしまったウィリアム少佐(トム・クルーズ)。
 
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軍の広報担当だったケイジは、突然、侵略者との壮絶な最前線に送り込まれる。戦闘経験ゼロの彼は、あっという間に瞬殺されるのだが、目が覚めると、戦闘前夜の軍演習場に逆戻りしているのだった。死ねば必ず同じ時間に戻る事が出来る能力を身につけていたのである。
 
まるでPCの戦闘ゲーム。相手にやられてゲームオーバーになったら、すかさずリセット〜もう一度最初からやり直す。これを何度も繰り返すうちに、自然とスキルを身に付け、ついには敵を殲滅し勝利者となれる。
 
 謎の侵略者「ギダイ」
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この感覚でケイジは生き残る術を学んでいくのだが、或る戦闘で、同じワープ能力を以前持っていたという女性戦士リタ(エミリー・グラント)と出会う。
 
引き締まったスリムなボディとブロンドがよろしい[揺れるハート]
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リタのスパルタ教育によりケイジは、いつしか無敵の戦士へと変貌していく。
軟弱な広報マンが徐々に研ぎすまされた戦闘能力を身につけて行く描写が、非常にスリリングかつコミカルだ。
当初は、リタに認められ、また彼女を守る為に必死に「実地訓練」を繰り返すケイジ。失敗したら簡単にリセットボタンを押せるロールプレイングゲームと同じ理屈なのだが、一応「本当に死なない」と振り出しに戻れないのがツラい。
『M:Iシリーズ』では絶対に倒れないトム様が、簡単に、何度もくたばります[かわいい]
リタまで悪ノリして、笑顔でトドメを刺しにきます[ダッシュ(走り出すさま)]
 
小生のお気に入り『ミッション:8ミニッツ (2011)』に酷似なのだが、シリアス感が全くない。何度も死んで、同じ場面からやり直すケイジには悲壮感は無いのだが、されど終わる事の無いエンドレスゲームに「もう、いいかげんしてくれぇ〜」と辟易しながらも、惚れた女の為に頑張る彼の姿が愛おしくかつ滑稽なのである。劇場内は、ケイジが生き返る度に笑いが巻き起こるのだ。(トム・クルーズも死んで笑われる役柄は初めてだろう[わーい(嬉しい顔)]
 
リセットを繰り返しギダイと互角に戦える力を付けたケイジは、リタを守る気持ちから人類を守る意識に目覚め始める。侵略者の本体を倒す糸口を掴んだ二人だったが、突発の事故でケイジは重傷を負う。そのまま息絶えればリセットできたのだが、「運悪く」生き長らえた彼は、大量の輸血により「タイムワープ能力」を失ってしまうのだった。
 
もうリセットが出来ない状況で、ついにラスボスとも云うべきギダイの本体と対峙したケイジとリタ。
果たして、二人の運命はいかに...[exclamation&amp;question]
 
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「ボーン・シリーズ」で名を馳せたダグ・リーマンらしい小気味好いSFアクションだ。
桜坂洋の原作は未読だが、筒井康隆も絶賛というからには結構「深い」小説なのだろう。
今作は、オリジナルのエッセンスを抜き出しハリウッド風の娯楽作に仕上げたと思われる。
 
難解な設定の割には、映画の深みは感じられないが、とにかく楽しい[ぴかぴか(新しい)]
驚愕の映像、弛緩の無い展開、極上の音響[むかっ(怒り)]
ワクワクドキドキしながら美男美女の大活躍を、大スクリーンで観られる幸せ〜これも映画のひとつの魅力なのだ[パンチ]
 
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昨今のトム様の作品は、同年代の小生に、勇気と自信を与えてくれる。
老いても若いネェちゃんにモテル「いい男」でありたいものです[かわいい]
 
 
 
 

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『サード・パーソン』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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監督/脚本:ポール・ハギス
 
キャスト
リーアム・ニーソン ミラ・クニス エイドリアン・ブロディ オリヴィア・アイドル
ジェームス・ブランコ マリア・ベロ キム・ベイシンガー モラン・アティアス ロアン・シャバノル
 
パリのホテルで執筆中の作家マイケルは妻と別居中。彼と不倫関係にあるアンナにも実は秘密の恋人がいた。一方、ローマでは怪しい商売を企むビジネスマンのスコットがある女性にひと目惚れする。そしてNY。元女優のジュリアは息子の親権争いの真っ最中だった。(ぴあ映画生活より)
 
一度の鑑賞では少々手強い部類だが、このタイプの映画は大好き[ハートたち(複数ハート)]
 
人生の隘路に迷い込んだ人間達の相関図。
パリ・ローマ・ニューヨークの3都市で繰り広げられる愛憎溢れる三つの別々のストーリー。
 
映画の骨格となるのは、パリの物語である。
人気作家マイケル(リーアム・ニーソン)が、新作執筆の為に籠るホテルの一室。そこへ足繁く通う女性若手作家アンナ(オリヴィア・アイドル)の姿が。言わずと知れたドロドロの不倫関係なのだが、双方の心理描写が非常に巧みで、観る者の胸を弾ませる。
オリヴィア・アイドル・・・典型的なエラ張り美人さんで、小生の好みとはかけ離れているのだが、時折見せる魅惑的な表情と体当たりのフルヌードにドキュン[揺れるハート]なのです。なにしろタイトスカートが似合い過ぎる。
 
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「愛人ゲーム」に一喜一憂しながら、ついには正妻への想いも断ち切れないマイケルの姿に絶望し、元恋人(これがまた意外な人物!)の元に帰るが、マイケルの中途半端な優しさに負け、結局元の鞘に収まってしまう。出来るオンナを装いながら、実は壊れやすく弱いオンナを美しく演じた。全裸のまま、マイケルに部屋から閉め出され、ホテル内を走り回される事に悦びを隠せないシーンは、なんとも秀逸であった。
煮え切れない浮気者を好演したリーアム・ニーソンも見事だ。男の専売特許の「優柔不断さ」が滲み出ていた。
 
ローマの物語はサスペンスタッチ。
自分の不注意から子供を失くした暗い過去を持つビジネスマン・スコット(エイドリアン・ブロディ)は、と或る酒場で出会ったロマ族の女性・モニカ(モラン・アティアス)に一目で惹かれる。母国から密出国させた娘を引き取る為の金を何者かに盗まれ絶望するモニカに、彼は持ち前の優しさで人肌脱ぐ事となる。自分の金を工面して密輸業者と交渉するが、足元を見られ、手数料は膨大な金額に跳ね上がっていく。いつしか彼には、モニカと業者がグルではないかという疑念が膨らんでいくが、彼女への想いも棄て難く...
 
 エキゾチックなモラン・アティアスの艶技
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これまた小生の好みのタイプとは少々異なるのだが、色っぽいことこの上ない。 最後の最後まで正体を現さないミステリアスな雰囲気を振り撒きながら、垣間見せる戸惑いの表情が印象的だった。
スコットとモニカのベッドシーンには、釘付けとなった。猜疑心と信頼の狭間で複雑な二人の想いを絡み合わせながら結ばれていく描写は、近年稀に見る絵心を感じる美しさ[exclamation×2]
スコットが、離れ離れになった愛娘の一年前の留守電を何度も聞き返すシーンも、ジ〜ンと来るね[もうやだ~(悲しい顔)]
 
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さぁ、果たして、彼女は詐欺師なのか?スコットの運命のマドンナなのか?
単体のストーリーとしても成り立つ、洒落たサスペンス・ロマンスだ[ぴかぴか(新しい)]
 
ニューヨークに住む昼ドラの売れっ子女優だったジュリア(ミラ・クニス)は、息子へのDV容疑で離婚させられ、今やホテルの清掃係に身を墜としている。困窮した生活の中で、愛する息子を取り戻すため、元夫リック(ジェームズ・フランコ)と熾烈な養育権争いをしている。
 
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「ブラックスワン(2010)」で、精神崩壊するナタリー・ポートマンに向こうを張って奔放な黒鳥役を好演したが、今作では、彼女自身が精神障害を抱える役柄を繊細に演じた。携帯電話料金やタクシー代にも事欠く彼女だが、息子に会いたい一心で莫大な金が必要な訴訟に臨む。不運が重なり、裁判所にも見離された傷心のジュリアは、強引に元夫宅に乗り込む。無意識に息子を傷つけた罪悪感に苛みながら、狂ったように子供の名を呼ぶ彼女。愛息は、その声に応えてくれるのだろうか...[exclamation&amp;question]
 
好きな肉感的なタイプの女優さんなのだが、今回の役柄は病的過ぎて、ちょっとパス[ダッシュ(走り出すさま)]
小生は、リックの後妻に収まったサム役のロアン・シャバノルに食指を伸ばす[キスマーク]
 
 理知的かつ柔らかな美しさが◎
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...と、出演女優のひとりよがりの話題ばかりになってしまったが...[あせあせ(飛び散る汗)]
 
この別々の場所で繰り広げられる三つのストーリーが、中盤以降に微かに繋がり始める。
モニカが清掃していたホテルの一室が、突如マイケルの部屋となる。(モニカはNYなのに何故かパリのホテルに?)
スコットの別れた妻が、モニカの弁護士であったり...
徐々に観客の頭にに???がつきまといながらも、3つの物語の展開に引き込まれて、考える暇を与えない。
 
種明かしは、すべて作家マイケルの手のうちにあるが、なかなか馬脚を露さない憎らしいポール・ハギスの手腕である。
マイケルが自分の新作について話した「登場人物を通してしか実感できない小説家の話しさ...」が、大きな伏線になっていたのだ。
 
3つの物語に一貫して流れるのは、「偽った自分との決別」である。
過去に犯した罪を自覚しながらも、廻りに対しては決して認めず、自分自身を騙し続ける事は、なかなか出来るものではない。それは相手以上に自分を傷つけているからだ。
そんな哀しい男女達が各々のストーリーに登場し、相手を痛めつけながら自らも血を流し続ける。そして、もがき苦しみ、偽りの自己を見つめ直し、漸く愛の終着駅に辿り着く彼らの姿をドラマチックに描く。唯一、作家マイケルを除いて...
 
「愛ある人生」より、作家で在り続ける事を選んだ哀しくも逞しき男・・・そんな彼こそ実は愛深き人間なのかもしれない。
 
前宣伝の「愛のミステリー」に踊らされて映画の謎解きばかりに固執すると、作品自体の面白みが半減するので、素直に鑑賞する事をお勧めする。最期の最期に「ええっ〜〜〜[exclamation&amp;question]」と、軽い衝撃と深い愛の余韻に浸れるであろう。
出色の「愛の物語」である[ぴかぴか(新しい)]
 
 
 
 

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『グランド・ブタペスト・ホテル』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 映画の面白みがギュウギュウ詰め[ぴかぴか(新しい)]
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監督・脚本・原案・製作
ウエス・アンダーソン
 
出演者
レイフ・ファインズ F・マーリー・エイブラハム マチュー・アマルリック エイドリアン・ブロディ
ウィレム・デフォー ティルダ・スウィントン ジェフ・ゴールドブラム ジュード・ロウ
ハーヴェイ・カイテル ビル・マーレイ レア・セドゥー シアーシャ・ローナン エドワード・ノートン
 
音楽
アレキサンドラ・デスプラ
 
撮影
ロバート・D・イェーマン
 
1932年、品格が漂うグランド・ブダペスト・ホテルを仕切る名コンシェルジュのグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)は、究極のおもてなしを信条に大勢の顧客たちをもてなしていた。しかし、常連客のマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺されたことでばく大な遺産争いに巻き込まれてしまう。グスタヴは信頼するベルボーイのゼロ(トニー・レヴォロリ)と一緒にホテルの威信を維持すべく、ヨーロッパ中を駆け巡り……。(シネマ・トゥデイより)
 
 
魅惑の作品。
小生のお気に入りの渋めの俳優陣の名が、こうも整然と並んだだけで壮観なのだが、古典映画への尽きぬ憧憬をベースにウエス・アンダーソンの瑞々しい感性が満ち溢れた佳作である。
 
若き作家(ジュード・ロウ)が、寂れたかつての名ホテルで出会った一人の老人(F・マーリー・エイブラハム)が、実はこのホテルのオーナーだった。元々は此処のベルボーイであったと云う彼から、このホテルの隆盛期での或る事件を聞かされた作家は、数奇な運命を背負ったグランド・ブタペスト・ホテルの真の姿に驚愕するのだった...
 
1930年代、欧州での指折りの名ホテルを支える伝説的コンシェルジュ〜グスタヴ・Hにレイフ・ファインズ。
 
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彼のおもてなしは、宿泊する老貴婦人達との夜伽にまで及ぶ徹底ぶり。あくまでもダンディに老人達と戯れる彼の姿は、まさにパロディ仕掛けだ。そのグスタヴが、一人の身寄りの無い移民の子供ゼロを目にかけベルボーイに取り立てる。前半、二人の師弟関係とグスタヴの人間性が丁寧に描かれており、これが後半のクライマックスに繋がる。
 
物語は、永年の得意客マダム・Dが突然謎の死を遂げ、彼女の遺産の一部がグスタヴに譲られる事となり、風雲急を告げる。殺人犯にでっち上げられたグスタヴは、刑務所から脱獄し、ゼロ少年と共に逃避行を続けながら、真犯人探しに奔走するのであった。
 
ティルダ・スウィントンのマダムDにはビックリ[がく~(落胆した顔)]
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 マダムDの遺児にエイドリアン・ブロディ
彼に雇われた執拗な殺し屋にウィレム・デフォー
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 若き日のゼロ少年(トニー・レヴォローリ)と恋人アガサ(シアーシャ・ローナン
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脇役陣の嫌みの無い濃い目の演技が、登場人物個々を際立たせ、作品に彩りと重厚感を与える。
 
私は、メイド役のレア・セドゥー[揺れるハート](出番は少ないが...)
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手に汗握るサスペンスタッチながら、随所にパロディも忍ばせた絶妙なバランス。
更に、精巧なミニチュアを使用した古典的な特撮と浮世離れした装飾美術は、戦前のキートンやチャップリンの喜劇映画を現代に復活させたような哀愁を伴うものだ。
 
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漸くマダムDの正式な遺言を手に入れ、身の潔白を証明したグスタヴ。物語は大団円を迎えたように見せたが、更に訪れた悲劇を語る老人となったゼロの涙は止まらない。大富豪となった彼は、師の深い想いを引き継ぐため、グランドブタペストホテルを買い取ったのだった。
 
現代のCG技術とは一線を画した華麗な映像美と、名優達の粋な演技。
「ドキドキ感」と「笑い」を一杯に詰め込みながら、最期は「しっとりと」涙を誘うという、映画本来の喜劇・悲劇の醍醐味に溢れた作品である。アナログの手触り感覚がたまらなく嬉しい[わーい(嬉しい顔)]
 
 劇中に登場するメンドルのケーキの作り方と共に・・・

 

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