『LUCY/ルーシー』&『グレート・ビューティー/追憶のローマ』 [上映中飲食禁止じゃ!]
監督:リュック・ベッソン
キャスト
スカーレット・ヨハンソン
モーガン・フリーマン チェ・ミンシク
ルーシーは訪れた台北のホテルで、人体にある物質を埋め込んで密輸を企む、マフィアの闇取引に巻き込まれてしまう。そこで誤ってルーシーの体内に物質が漏れ出すアクシデントが発生する。その影響でルーシーの脳は覚醒し、人知を超えた能力に目覚めていく。(ぴあ映画生活より)
難解な作品というよりは、スピード感溢れる支離滅裂な展開に、観客をワクワクドキドキさせ、ストーリーを思い返す暇も与えず、あっという間にエンドロール・・・という非常に独りよがりな「さすが、リュック・ベッソン!」と叫びたくなる異色作だ。
とにもかくにも、スカーレット・ヨハンソンあっての作品でもある。
『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウ役以降、最近はアクション女優としての評価も高まる、非常に広い芸風を誇っているが、小生は「真珠の耳飾りの少女」「ブーリン家の姉妹」の清楚なイメージが強過ぎて......
アンジーやミラ・ジョヴォヴィッチ、ユマ・サーマンなどの歴戦のアクション女優達と比較すると、正直、彼女は太すぎる〜ムチムチ体型である。この違和感が、なんとも心地よい艶っぽさを醸し出す
そんなダイナマイトボディの彼女が、韓国マフィアの闇取り引きに巻込まれて、未知の薬品の運び屋に仕立てられてしまう。そして、身体内に隠された薬品が体内で溶け漏れてしまった彼女に異変が訪れる。10%しか機能しないと言われる脳が覚醒し、通常の人間では持ち得ない能力を発揮していくのだ。
「ドラゴンボール」的に言えば超サイヤ人に変身だぁ〜という荒唐無稽なストーリー。
リュック・ベッソンは、生物学・物理学的なまどろこっしい説明は一切省いて、このスリリングな展開を一気に見せてくれる。脳科学者モーガン・フリーマンが、いつも通りの「それらしい」演技で、ストーリーに説得力を持たせようとするが、かえってナンセンスさに拍車をかける感じだ。
だが小生は、決して本作をこき下ろしている訳では無い〜ルーシーの行き着く先が全く予想がつかず、カウントダウン風に彼女の脳機能が70%、80%、90%と上昇するごとにワクワク度も高まっていった。
超サイヤ人から超サイヤ人ゴッドにまで昇格したルーシーの結末は如何に...
既存のSFアクションとは全く異質の今作を駄作と呼ぶか、魅惑の実験作に位置づけるかは観客の感性に委ねられる。
初めて直立二足歩行した人類の祖先・アウストラロピテクスの化石人骨に付けられた名が「ルーシー」。地球上初の女性と言われる猿人とヒトの能力を超越した現代女性〜二人のルーシーの強引なこじつけが楽しい。
B級香港アクション映画をフランス流にお洒落に取り繕って作るとこうなる・・・
そんな面白さ満載の凝縮した89分間〜あなたはどう観る???
もう一本は、上記作とは対極、長尺の難解さなのだが...感動作、傑作である
監督・脚本・原案:パオロ・ソレンティーノ
音楽:レーレ・マルキテッリ
キャスト
トニ・セルヴィッロ
カルロ・ヴェルドーネ サブリナ・フェリッリ ファニー・アルダン
作家でジャーナリストのジェップは、華やかなセレブ生活を送りながらも虚無感を拭いきれずにいた。ある日、初恋相手の訃報を聞き、喪失感を抱いたジェップは、これまでの人生で見つけることができなかった“究極の美“を探し求めてローマの街を彷徨い歩く。(ぴあ映画生活より)
「きっと、ここが帰る場所(2011)」・・・ショーン・ペンが初老の元ロック・スターに扮してのロードムービーの異色作だったが、斬新なカメラワークとえも言われぬ空気感に強烈な印象を受けた。一筋縄ではいかないパオロ監督の2年ぶりの今作は、故郷イタリア・ローマを背景に人生の哀切を綴った感動作となった。昨年度のアカデミー外国語映画賞受賞もうなずける内容である。
と云っても、観る者を選ぶ難作であるのも事実。局面ごとに映像と音楽が極端に変調し、シーンの繋がりも曖昧模糊な為、多くの観客の混乱は避けられないだろう。更に、主人公ジェップ(設定は65歳)と同様に、人生の寂寥を味わえる年代でないと、黄昏の芸術家の心情を共有するのも困難と思われる。小生自身は、そこまでの年齢ではないが、自己の恥ずべき半生を振り返れる領域に一歩踏み入れた親爺として、この作品の心髄の3割位には触れられたのではないかと思う。それでも十分、傑作だ
トニ・セルヴィッロ演じるジェップが、なんとも粋なお洒落ジジイである。役者自身は55歳らしく小生と同年代だが、劇中では完全に黄昏れた哀愁が滲み出る老人を好演だ。
30年前に大ヒットした小説以来、ペンを置いたままの彼は、ローマの高級コンドミニアムに優雅に暮らし、毎夜社交界のセレブ達が集うダンスパーティーに顔を出す無為な日々を送っていた。
冒頭、ローマ観光を愉しむ初老の日本人男性が心臓マヒで絶命するシーン。ストーリーには全く関連の無い人物の死が、実は「この人の人生って一体何だったろう・・・」という訝しさを投げかけ、今作のテーマを暗示する。と、一点、場面はセレブ達が狂騒に明け暮れる夜のディスコパーティへ。
「現代のローマの夜」の頽廃ムードの中、ジェップは常にダンディに振る舞い、彼の残した実績と共に格別の文化人としてセレブ仲間からも一目置かれる存在だ。
続いてカリスマ舞踏家の理解不能なパフォーマンス。インタビューと称して、崇高な芸術家気取りの彼女を完膚なきまで論破し、「偽物」と決めつけるジェップの姿。
自暴自棄な生活を送り、自ら「俗物の王」たる事を望みながら、自己の美意識は妥協しない彼の頑な自尊心を垣間見せる。そんな彼に、初恋の女性の訃報が届く。生涯独身を貫き、何不自由ない生活を送ってきたジェップは、無味乾燥な日常にふと疑問を抱き、寂寥感に苛むようになるのであった。
初恋の女性と結ばれなかったトラウマと成功後の半生を振り返りながら、ジェップはローマの街を徘徊し、多くの友人・知人・女性との関わりを経て、65歳にして初めて自分の人生観を導き出す...という構成である。
ジェップと関わった人々の「生と死」が短編映画の連続上映のように淡々と連なっていく。
登場人物が多過ぎて少々混乱するのだが、多くは頽廃に身を任せる高貴を気取る俗物ばかりである。
その中で印象深いのは、二人の「聖人」との出会いである。
ジェップとは対極の世界に暮らすストリッパー・ラモーナ。
彼女との深い友愛と別離にジェップは「命」を教えられ...
アフリカからバチカンに招聘された104歳の修道女から「生きる信念」を学ぶ。
ローマ・・・かつての栄華は、帝国時代の遺跡とルネッサンス期の美術品で偲ぶしかない、今や観光が経済の中心である世界42番目の都市である。だが、経済規模以上にこの街の魅力...いや幻影と云ってよいかもしれない...惹かれて多くの文化人が暮らし、世界中からの観光客で日々賑わう。
優雅と頽廃に溢れた街が見せるいくつもの顔を、登場人物達の生き様と絡めて切り取る重厚なカメラアイ。その映像に、静謐なクラシックから爆音のダンス・ミュージックが被さっていく。極めて芸樹的密度が高い作風でもある。
ローマの持つ幻影そのままに俗人的生活から抜けきれない主人公の人生の終末期に訪れた転機。
「もう一度、小説を書いてみたい」30年間、筆を置いていた老小説家を揺り動かしたものとは・・・
ラストシーン〜長い人生を例えるようなテヴィレ川の流れをじっと見つめるジェップの姿に、自分自身を重ね合わせ、無性に胸が熱くなった
久しぶりにもう一度観たい映画と出会った。 嗚呼、ローマに行ってみた〜い
うーん ^^; つむじかぜ さんがご覧になったと有れば、観てみようかしらん!? w
by Labyrinth (2014-09-20 14:40)
ルーシー、今自分の中で一番観たい映画です!
なかなか映画館に足を運べてませんが... ^^;
by haku (2014-09-21 16:15)
> Labyrinth 様
ぜひとも、Laby様の感想も聞いてみたいです^^
by つむじかぜ (2014-09-24 01:25)
> haku 様
わけわからん躍動感は、なかなか見ものですぞ( ̄ー+ ̄)
by つむじかぜ (2014-09-24 01:27)
出鱈目で最後まで突っ走る爽快感。それを可能にしたスカヨハの魅力。
わたしにとって、「こんな映画を観たかった!」一本です。
ところでブシャールなどの件、さすがのご見識・ご慧眼でございます!
RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2014-09-24 19:02)
『ルーシー』は公開初日に見に行きました。旅行で行った台湾でもヒットしていましたし、面白かった。『追憶のローマ』めっちゃ面白そうですね。是非、見たいです。
by シルフ (2014-09-25 22:19)
> 末尾ルコ(アルベール)様
異色の気分爽快作品でしたね!
なお、オススメブロンドを発見したら、また共有したくお願い致します^^
by つむじかぜ (2014-09-27 00:25)
> シルフ 様
「追憶のローマ」は、シルフさんの感性にピッタリだと思うのですが...^^
by つむじかぜ (2014-09-27 00:27)