SSブログ
上映中飲食禁止じゃ! ブログトップ
前の10件 | 次の10件

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 [上映中飲食禁止じゃ!]

東京帰還後、初の映画鑑賞〜ほぼ一ヶ月以上スクリーンから遠ざかっていたのだが...
う〜ん、久しぶりのこの感覚!
こんな素晴しい作品と出会えた幸福を噛み締める[ぴかぴか(新しい)]
 
544c3b4f40684_155799b.jpg
 
監督
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
撮影
エマニュエル・ルベツキ
キャスト
マイケル・キートン エドワード・ノートン
エマ・ストーン[揺れるハート] ナオミ・ワッツ アンドレア・ライズボロー エイミー・ライアン
 
かつてヒーロー映画『バードマン』で一世を風靡(ふうび)した俳優リーガン・トムソン(マイケル・キートン)は、落ちぶれた今、自分が脚色を手掛けた舞台「愛について語るときに我々の語ること」に再起を懸けていた。しかし、降板した俳優の代役としてやって来たマイク・シャイナー(エドワード・ノートン)の才能がリーガンを追い込む。さらに娘サム(エマ・ストーン)との不仲に苦しみ、リーガンは舞台の役柄に自分自身を投影し始め……。(シネマ・トゥデイより)
 
「バベル(2006年)」で注目を浴びたアレハンドロ監督だが、「21グラム(2003年)」「BIUTIFUL(2010年)」にも完全に嵌った小生としては、待望の新作なのである。
 
渇いたドラム音のみをBGMに、空中浮遊する半裸の男性の後姿を映し出す異様な雰囲気のオープニング。
ヒーロー映画のかつての大スターも、いまや落ちぶれ、ブロードウェイ演劇に活路を見出し、一世一代の大勝負に出る。自分の分身とも言うべき「バードマン」の幻影に常につきまとわれ、もがき苦しむ初老の俳優リーガンにマイケル・キートン。30年近く前に「バットマン」で成功を収めた本人を、等身大で起用した配役は、洒落や皮肉を超越して、俳優マイケル・キートンの鬼気迫る演技を引き出した。
 
splash_780.jpg

脚本・演出・主演を一人でこなし、初のブロードウェイの舞台に挑む彼を取り巻く人間模様。
レイモンド・カーヴァーの短編小説を舞台化した「愛について語るときに我々の語ること」への出演者は、リーガンを含めて4人。この共演陣の演技がまた素晴しい。
 
birdman02.jpg
 
急遽抜擢された売れっ子舞台俳優マイクにエドワード・ノートン。リアルティ溢れる演技には定評があるが、自堕落な私生活と奇行は、リーガンの悩みの種となり、二人の衝突は日常茶飯事。演技の中でしか、素直な自分を表現できない屈折した青年を好演だ。一般社会に適応できない変人二人の絡みの場面が何ともユニークで、次々と笑いを誘う。
 
そして二人の女優。
ナオミ・ワッツは、永年夢見たブロードウェイの初舞台に胸膨らませる苦労人の女優レスリーを演じ、リーガンの恋人として公私ともに彼を支える黒髪の女優にアンドレア・ライズボローが務める。
 
Birdman-Naomi-Watts-Andrea-Riseborough-interview-slice.jpg
 
揺れ動く女性心理を二人のディーバは、美しく時に激しく魅せてくれた。
ハプニング的な黒髪・ブロンド入り乱れてのキスシーンに、小生はドキュン[ハートたち(複数ハート)]
 
screenshot-4595-i-m-in-supreme-appreciation-of-the-birdman-soundtrack-and-everything-else-in-this-delightful-flick-png-245943.jpg
 
そして今作の最大ドキュンは何と云ってもエマ・ストーン嬢。
薬物依存症から立ち直ったばかりの精神不安定なリーガンの娘・サムは、父親のアシスタントとして働くが、父娘の気持ちは常にすれ違う。
 
hr_Birdman_141.jpg
 
 「アメイジング・スパイダーマン」「L.A.ギャング ストーリー」で、当然見初めていたブロンド姫だが、外見だけでなく、一歩づつ大女優への道を歩んでいるようだ。エレガントな雰囲気が売りだったが、蓮っ葉なヤンキー娘役もサイコーである。
 
更に、リーガンの前妻シルヴィア役にエイミー・ライアンを配し、登場人物達の想いが錯綜する中、リーガンの一世一代のブロードウェイ舞台の初日を迎える事になるのだが...
 
映像の魔術師〜エマニュエル・ルベツキ
「ゼロ・グラビティ」に次いで今作で2年連続アカデミー撮影賞を受賞。彼のカメラアイは、対象の内面まで刳り出していく。手持ちのワンカット撮影がほとんどという信じ難いプロの技が、俳優陣の名演の奥に眠る深層心理をスクリーンに炙り出すのだ。そして、唐突なドラムソロがいつしかメロディを叩き出したかと思いきや、深淵たるラベルのクラシック音楽が流れ出す...奇抜な挿入音楽が映像に更に深みを与えて行く。
 
崖っぷちの老優が、かつての栄光の残像に苦しみ、精神が徐々に蝕まれていく様を洒落たブラック・コメディ風に描いた佳作...と一見では思える。だが、作品の中核を成すのは『愛』である。
舞台の題名「愛について語るときに我々の語ること」が、そのままこの映画のモチーフになっているのだ。
自己愛から親子の情愛、男女の愛憎、芸術への愛...溢れんばかりの愛を、卓越した映像技術と奥深い構成そして俳優陣の名演により描き出したパーフェクトな映画ではなかろうか。
 
ラストシーンのエマ・ストーンの笑顔に、えも言われぬ清涼感と陶酔感に襲われた[exclamation×2]
 
昨年度のオスカー4部門受賞も納得[パンチ] やっぱり、映画って素晴しい[ぴかぴか(新しい)]
 
 
 

nice!(32)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

『真夜中の5分前』 [上映中飲食禁止じゃ!]

10185003_1200x1000_0.jpg
 
監督:行定勳
原作:本多孝好
 
出演
三浦春馬 リウ・シーシー ジョセフ・チャン
 
上海で時計修理工として働くリョウ(三浦春馬)は、プールで見掛けた清楚(せいそ)な雰囲気漂うルオラン(リウ・シーシー)と出会う。リョウは知り合ったばかりの彼女に、ティエルン(チャン・シャオチュアン)と婚約中の一卵性双生児の妹ルーメイ(リウ・シーシー)への結婚プレゼントを選んでほしいと頼まれ
る。そのことをきっかけに二人は親しくなっていくが……。(シネマトゥデイより)

 
「国内の観客に適合したものを追う日本の映画界より、アジア市場の方が企画の受け皿が大きい。僕らにすれば自由に作れる」と語った行定監督。本多孝好の小説の舞台を上海に置き換え、スタッフ・キャストに多くの中国人を起用し、中国映画として発表した意欲作であり、無国籍の空気感が何とも味わい深いラブサスペンスの佳作だ。
 
冒頭から「音」に、ハッとさせられる。
機械式時計が時を刻む音、彼女がプールで泳ぐ水音...静寂の中から飛び出す音の欠片が心に滲み入る。
『桃(タオ)さんのしあわせ(2011年)』 サウンド・デザイナーのドウ・ドゥチー氏の造り出す独特の音響効果が、作品全体に愁いを与える。
 
当然、全編中国語であるが、三浦春馬が設定通りの日常会話がやっとの日本人青年リョウを熱演だ。時折、複雑な会話に戸惑い、日本語で独り言を呟くシーンが非常にリアル。何故、上海で時計修理工をしている理由は明らかにされないが、そんな彼が、同じプールに通うミステリアスな美女ルオランに逆ナンパされて物語が始まる。
 
c14111182_9.jpg
 
次第に惹かれ愛し合って行く二人だが、実はルオランには瓜二つの双子の妹のルーメイがいた。ルーメイは売出し中の新人女優。容姿は同じでも、奔放で常に日の当たる世界に立つ妹をいたわりながらも、かつての恋人を奪った彼女に強い嫉妬心と劣等感も抱える姉の葛藤が描かれていく。
 
blogcaption.jpg
 
劉詩詩(リウ・シーシー)...正統派のアジアン・ビューティですな[わーい(嬉しい顔)]
 
cf8e0e506886fe1fdc156a10db62a535.jpg
 
この彼女が一人二役で双子の美女を演じるのだから、スクリーンから目が離せません[揺れるハート]
更に、同じ顔でも性格が違う役柄を微妙に演じ分けており、これが後半の展開で観客をも戸惑わせるのだ。
 
64981987201409112223052042727446227_000_640.jpg
 
独身最後の旅行にと、結婚間近の妹ルーメイとルオランはモーリシャスに出掛けるが、そこで悲劇が待ち受ける。
海難事故に遇い、姉のルオランが海の藻屑と消えてしまうのだった...
 
生き残った妹ルーメイは、その後、幸せな結婚生活を送り、女優業も順風満帆な勢いだったが、夫ティエルンには沸々と疑惑がもたげ始める。「妻はルオランではないのかと?」夫は、傷心のリョウに「確かめて欲しい」と懇願するのであった。
 
一年ぶりにルーメイと再会したリョウの胸に去来したものは...そして彼の出した答えは...何よりも真実は...
 
題名でもある「5分」が種明かしのキィワード。だが、答えは観る者に委ねられる。
ラストシーンの「不確かな爽やかさ」がやけに心地よい異質のラブ・ラスペンスであった。
この雰囲気は確かに国内製作では不可能かもしれない。好き嫌いが別れる作品だが、小生には堪らない空気感だった[exclamation×2]
 
そして、緊張状態が未だ改善されない日中関係の元で、この作品を作り上げた行定監督に改めて敬意を表したい[パンチ]
 
 
 
 
 

nice!(49)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

 『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
1011026_fr_casse_tete_chinois_1386063460695.jpg
監督:セドリック・クラピッシュ
 
キャスト
 
ロマン・デュリス オドレイ・トトゥ 
セシル・ドゥ・フランス ケリー・ライリー サンドリーヌ・ホルト
 
 
大学時代、30歳と、ダメ男グザヴィエを主人公に描いてきた群像劇『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』の続編。時を経て、40歳になったグザヴィエ役をロマン・デュリスが続投。前作同様セドリック・クラピッシュが監督を務め、家庭も仕事も行き詰まってしまったグザヴィエが失意の底から這い上がる様をユーモラスに綴る。(ぴあ映画生活より) 
 
今年の一本目は、帰省中に渋谷で妻とのおフランス映画鑑賞で始まりました。
個人的には「毛皮のヴィーナス」or「ゴーン・ガール」という選択肢もあったが、エロエロもしくは夫婦の愛憎サスペンス劇では、新春ムードぶち壊しの危惧があり、涙を飲んで終映間近のコメデイ風の作品を選んだ。
それが何と、この判断が功を奏し、夫婦仲良く楽しい映画鑑賞で新年を迎えました( ̄ー+ ̄)
 
3部作の最終章という作品であるが、初作(2001年)前作(2005年)とも未見。それでも十二分に楽しめる構成内容になっている。フランス語の原題は意味不明だが、英訳「Chinese Puzzle」から窺われるように、ダメ男の女性関係が、グチャグチャのパズルのように入り乱れ、同じ男としては冷汗をかきながらも、笑わずにはいられないおフランスらしい洒落たラブ・コメディに仕上がっている。
 
ChinesePuzzle_2931012a.jpg
 
前作で、熱愛の末に結ばれたグサヴィエ(ロマン・デュリス)とウェンディ(ケリー・ライリー)。
その10年後の設定で、この第3作がスタートする。二児にも恵まれ、パリで幸せ一杯に暮らす夫婦だが、徐々に亀裂が生じて来る。元来、グサヴィエは天下無敵の優柔不断な性格の上、収入が安定しない売れない作家。
 
そして、愛する女性?との子供を欲しがっていた大親友のイザベル(セシル・ドゥ・フランス)の頼みを、グサヴィエは二つ返事で快諾してしまう。なんとレズビアンであるイザベルに精子提供するのである。
 
cedric7.jpg
 
その事実を、無神経にも妻に正直に告白するグサヴィエ。夫婦関係崩壊は決定的となり、ウェンディはニューヨーク出張中に芽生えたロマンスを成就する為、子供を連れて夫の元を去って行くのだった...
 
この超いい加減男をロマン・デリュスがいつもながらの飄々として演技でコミカルに魅せる。病院のトイレで精子を放出するシーンなど、貞淑?なる我が妻も腹を抱えて笑っておりましたぁ[がく~(落胆した顔)]
 
常に場当たり主義だが、熱い父性は抑えきれないグサヴィエは、子供会いたさにイザベルを追って単騎ニューヨークに乗り込む。英語は片言、金無し、職無しの彼が頼りにするのは、無事赤ちゃんを出産し、同じニューヨークで新婚?生活を送るイザベル。
 
ウェンディとの子供の養育権争いを対等に戦う為に、見知らぬ国で悪戦苦闘する元夫の姿は、情けなく憐れなはずなのだが、彼が必死になればなるほど面白さが増して来る構成は、脚本の力と、やはりロマン・デュリスの個性に拠る処大である。
 
アメリカ永住権獲得に向けて、見知らぬアメリカ国籍の中国人女性と偽装結婚したかと思えば、パリから出張でやってきた元彼女と焼け木杭に火が点いてしまい、更にイザベルの浮気トラブルにも巻込まれて、まさに人間関係ぐちゃぐちゃに入り乱れる中でのグサヴィエ孤軍奮闘の大活躍???
 
tumblr_myveyywuiB1qzoziho6_r1_500.jpg
 
Nueva-vida-en-Nueva-York6_ampliacion.jpg
 
この元彼女マルティーヌ役がオドレイ・トトゥ。シリーズ第一作で、グサヴィエは大学時代から付き合っていた彼女を振ってウェンディに乗り換えた経緯が描かれているらしいが、10年以上経ってお互いバツイチの子持ちの立場で、再び燃上がる炎〜というより成り行きで結ばれた大人の恋というべきか〜この局面も笑えます[わーい(嬉しい顔)]
 
アメリ(2001年)』でコケティシュな魅力全開だったオドレイが実に良い雰囲気を醸し出している。まさにあけすけな大人のオンナの色気は、決して下品にならず、実に爽やかなイヤらしさは、彼女の真骨頂かもしれない。
 
ムード・インディゴ うたかたの恋(2013年)』に続いてのロマン×オドレイのコンビ復活となった訳だが、今作を観ると、やはり二人は悲劇より喜劇が似合う俳優だと感じる。
 
chinese_puzzle_scene.jpg
 
ラストシーンは、コメディお決まりのハッピーエンドだが、ここまでハチャメチャな展開をしつつも、どことなく品位を保って楽しく見せるのがフランス産の素晴しさ。若いカップルのデートにはオススメの一本[exclamation]
 
えっ、熟年カップルには...
だらしないその場しのぎの亭主を再認識させる、観賞後の女房の視線が少々痛い映画でもございました(^▽^;)
 
 
 
 

nice!(39)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

『MOVIE IN 2014』総括 [上映中飲食禁止じゃ!]

総括...というほどの作品は観ていませんが...(-。−;)
とりあえず、この一年の映画鑑賞を振り返ります。 
 
 
今年観た映画(旧作DVD鑑賞は除く)を、ざぁ〜と羅列すると・・・
 
 1.鑑定士と顔の無い依頼人
 2.ゼロ・グラビティ
 3.ハンガーゲーム2
 4.ジャッジ!
 5.トリック・ラストステージ
 6.オンリーゴッド
 7.アメリカン・ハッスル
 8.17歳
 9.土竜の唄
10.ダラス・バイヤーズ・クラブ
11.キック・アス/ジャスティス・フォーエバー
12.大統領の執事の涙
13.早熟のアイオワ
14.アナと雪の女王
15.LIFE!
16.アデル、ブルーは熱い色
17.そこのみにて光輝く
18.テルマエロマエⅡ
19.キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
20.マレフィセント
21.ワールド・エンド
22.とらわれて夏 
23.インサイド・ルーウィン・デイヴィス
24.女子ーズ
25.グランド・ブタペスト・ホテル
26.サード・パースン
27.オール・ユー・ニード・イズ・キル
28.超高速!参勤交代
29.her/世界でひとつの彼女
30.300帝国の進撃
31.アメイジング・スパイダーマン
32.小さいおうち
33.チームバチスタFINAL ケロベロスの肖像
34.武士の献立
35.るろうに剣心/京都大火編 
36.ニシノユキヒコの恋と冒険
37.思い出のマーニー
38.グレート・ビューティー/追憶のローマ
39.LUCY
40.るろうに剣心/伝説の最期編
41.フランシス・ハ
42.リスボンに誘われて
43.蜩の記
44.グレース・オブ・モナコ 公紀の切り札
45.悪童日記
46.福福荘の福ちゃん
47.祝宴!シェフ
48.西遊記 はじまりのはじまり
49.ミンヨン 倍音の法則
50.天才スピヴェット
51.インターステラー

 
邦画17本、外国映画34本)
 
後半戦が業務過剰につき伸び悩んだものの、なんとか4年連続の50本超え[exclamation×2]
 
機中での鑑賞作やレビューしきれなかった作品もあり、もちろん見逃した良作が多数あるのを承知の上で...
恒例の超個人的嗜好に基づく「ベスト・ランキング」の発表で〜す[ひらめき] 
 
◎第5位 グレート・ビューティー/追憶のローマ 
 

グレート・ビューティー 追憶のローマ [DVD]

グレート・ビューティー 追憶のローマ [DVD]

  • 出版社/メーカー: オデッサ・エンタテインメント
  • メディア: DVD

独自の芸術論を振りかざす金持ち老人が、自己の半生を振り返り哀愁に浸る鼻持ちならないお話...
といってしまえばそれまでの作品なのだが...
とにかく、「映像と音楽」が抜群[パンチ] 
頽廃の美を誇る「ローマ」の表と裏の顔を余す所無く炙り出し、1人の男の人生と掛け合わせた演出は、奇才・パオロ・ソレンティーノ監督の異次元の感性からしか生まれ得ない[どんっ(衝撃)] 
 
◎第4位 『アデル、ブルーは熱い色』
 

アデル、ブルーは熱い色 スペシャル・エディション [Blu-ray]

アデル、ブルーは熱い色 スペシャル・エディション [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: Blu-ray

いまだかつてないレベルの「同性愛」をテーマにした作品だった。
レア・セドゥのフルヌードだけでも個人的には衝撃〜賞賛だったが、ヒロインとのラブシーンの繊細かつ粘着質なカメラワークは規格外であり、「ふたりの愛」をものの見事に描き切った。
そして、単なるレズ作品に終わる事無く、ひとりの少女が自立したオンナに変わる様をリアルに映し出したのだった。
 
◎第3位 『悪童日記』
 

悪童日記 [DVD]

悪童日記 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
  • メディア: DVD

衝撃度、今年ナンバーワン[ぴかぴか(新しい)]
映像化不可能と云われた原作から過激なエログロ描写を抜き去り、文学的に構築された映画になったのだが、それでも凄い、凄過ぎる[どんっ(衝撃)]
人間の本質を抉り出し、正義と悪の価値観を観る者に叩き付けてくる映像に、背筋が凍りながらも凝視してしまう。双子の少年を含めた無名の俳優陣の研ぎすまされた演技と冷徹なまでのカメラ・アイ。 
ラストシーンでは、未体験の胸が張り裂けそうな感動に襲われ、涙も出なかった[どんっ(衝撃)][どんっ(衝撃)][どんっ(衝撃)] 
 
◎第2位 『そこのみにて光輝く』
 
そこのみにて光輝く 豪華版Blu-ray

そこのみにて光輝く 豪華版Blu-ray

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • メディア: Blu-ray

あまり話題に上がらなかった低予算の邦画だったが、モントリオール世界映画祭グランプリ受賞で一躍脚光を浴びた作品だ。なにしろ観賞後の余韻の美しさは希有のものだ[ぴかぴか(新しい)]
不遇の作家・佐藤泰志の原作を、呉美保が女性らしい繊細かつドライな視線で映像化。その立役者は、綾野剛池脇千鶴菅田将暉の3人の実力派俳優陣。三人三様の心象風景を、スクリーンに見事に浮かび上がらせた、壮絶かつ静かなる演技と演出の数々。挿入音楽のマッチングもGOOD。
哀しみと愛おしさを湛えた珠玉の「家族の物語」だ。
 
 
 
外国の映画祭で話題にならないと、国内では日の目を見ない傑作の典型的なパターンだ[むかっ(怒り)]
外人さんの方が、邦画を理解している昨今の日本の映画事情って一体どうなってるの??? 
 
◎第1位 『アナと雪の女王(吹替え版)』
 

アナと雪の女王 MovieNEX プラス 3D [Blu-ray]

アナと雪の女王 MovieNEX プラス 3D [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • メディア: Blu-ray

笑わないで下さい...だって感動したんだもん(・・;)
但し、あえて云わせていただければ、「日本語吹替え版」限定での金メダルである[パンチ] 
 

 
ディズニー屈指のアニメーション技術と演出力により、トップクラスの芸術作品に仕上がっているのは、字幕版を観れば当然、理解できる。ただそれ以上に、小生が心を揺さぶられたのは、「日本語」の力なのだ。 
英語の発音での口の動きに合わせた「日本語訳」は、精緻なまでに自然であり、意訳の素晴しさを痛感させれる。そして、その「日本語」を詩情たっぷりに歌い込んだふたりの声優・・・松たか子神田沙也加。 
珠玉のディズニーアニメに命を吹き込んだ日本人スタッフ陣は、世界屈指の表現者ではなかろうか[わーい(嬉しい顔)]
 
 
 
 
・・・という具合で、ひとりよがりの映画レビューに、来年もおつきあい頂ければ幸いです。
 
今年1年、大変お世話になりました。
皆様も、良いお年をお迎え下さい。
 
 
しつこくおまけ
 
[揺れるハート]今年一番ハマった歌姫[揺れるハート] ...笑わないでください...
 berrys工房がついに解散〜BUONO!の勇姿もこれが見納めか[exclamation&question]
クチパクアイドルとは一線を画す彼女達の生声を聴け[パンチ] 
 
 

nice!(33)  コメント(19)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

『インターステラー』 [上映中飲食禁止じゃ!]

0.jpg
 
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
音楽:ハンス・ジマー
 
キャスト
マシュー・マコノミー アン・ハサウェイ
ジェシカ・チャスティン ビル・アーウィン エレン・バースティン
マイケル・ケイン マット・ディモン マイケル・ケイン マッケンジー・フォイ
 
近未来、地球規模の食糧難と環境変化によって人類の滅亡のカウントダウンが進んでいた。そんな状況で、あるミッションの遂行者に元エンジニアの男が大抜てきされる。そのミッションとは、宇宙で新たに発見された未開地へ旅立つというものだった。地球に残さねばならない家族と人類滅亡の回避、二つの間で葛藤する男。悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを決意して宇宙船へと乗り込む。(シネマトゥデイより)
 
実は、初のIMAX鑑賞なので・・・これは絶品[ぴかぴか(新しい)]
 
ダークナイト・シリーズ」ほどの前人気は無くとも、好評価も納得のクリストファー監督のSF意欲作かつ難解ながらも心温まるヒューマンドラマの秀作でもある。
3DやCGに頼らない同監督は、今作もIMAXカメラを使用したフィルム撮影により拘りと驚愕の映像を造り出す。
 
XnoUDBm.jpg
 
CE2AE4EBC7DEA3C571CD50E01B95E6FA.jpg
 
未曾有の食糧難に襲われた世界各国は、もはや戦争や宇宙開発に賭ける欲求も資金も枯渇した 。理由は説明されないが、環境汚染による異常気象の為か、大規模な砂嵐が常時発生し、穀物生産が危機的状況に陥った近未来が設定だ。
元宇宙飛行士だった男クーパーも、今や実父の農家でトウモロコシ作りに勤しむ。妻に先立たれ、幼い一男一女を抱えて、慎ましい生活を送る彼は、砂害に怯える毎日を送っていた。
 
前半部は、砂の惑星と化す地球の危機を不気味に映し出し、宇宙飛行などとは全く縁の無い農場一家の生活を刻々と描く。
 
6068331,yx+QqXsSZ2kl4JTh5udHCNE8LBY1zwUym_PxyEv52NyJpWh9I576iqgS_YXdUkHdq6xNfwrS0X9nszBaDVkEzw==.png 
 
姉弟は2人とも優秀な子供達だが、特に長女のマーフは、科学的感性が非常に強い父親似の娘。その彼女が宇宙への扉を開ける。マーフは、部屋の本棚に起きる不思議な現象から座標軸を導き出し、父と共にその場所を探しに行く。
なんと、そこは既に解体したはずのNASAの秘密基地だったのだ[exclamation×2]
 
 このマーフ役のマッケンジー・フォイが実に知的で愛らしい[ハートたち(複数ハート)]
373702.jpg
 
極秘裏に造られた新生NASAで、クーパーは飛行士時代の恩師ブラント教授(マイケル・ケイン)と再会し、人類が移住できる惑星を探す計画への参加を請われる。彼は悩んだ挙げ句、人類を救うため、子供達を守る為に、ブラント氏の娘アメリア(アン・ハサウェイ)らと共に、再び宇宙に旅立つ決意をするのであった。
 
 娘の必死の静止を振りほどいて...
 is7.jpg
 
美人科学者と宇宙の旅へ...
 Interstellar-05.jpg
 
少々、強引さを感じる展開なのだが、その契機となった「本棚の秘密」が後半で明かされ、合点がいく巧妙な仕掛けになっているのだが・・・(それは置いといて)
 
中盤以降は、昔習った物理の授業を思い出さなければならない。
アインシュタインの相対性理論である。「光速に近い宇宙船で宇宙を駆けめぐり、何年か後、出発地点に戻ってきたような場合、出発地点にいた人は年を取り、宇宙船にいた人は年を取らない」現象で、ウラシマ効果とも呼ばれる。
 
第一候補の惑星「ガルガンティア」での1時間が地球上の7年間に相当するという訳の判らん理屈は、そのまま素直に受け取って、とにかくクーパー達の惑星探査は時間が限定されたミッションであり、仮に移住可能な惑星を発見しても時間がかかれば、戻った頃の地球は人類が滅亡している可能性もあるのである。
 
第一の惑星は、到底人類が住めない「水の星」だった。
不時着した宇宙船は、小山のような100m級の大波に、危うく飲み込まれそうになるが、間一髪で脱出。だが、それに要した時が、地球時間で23年の歳月だった。(この大波の描写も秀逸[exclamation×2]
母船に戻ると、地球の家族からのビデオメッセージが何年分も送られていた...長男トムは結婚し、二児の父になっていた。長女マーフは、NASAに入社し、ブラント教授の助手になっていた。父の帰還を信じて疑わなかったが、あまりの時の経過に「もう諦める」と話す子供達の姿に、ただ涙するクーパー。
 
第2の惑星は「氷の世界」だったが、先発隊の宇宙船を発見。その中で、スリープ状態になっていたマン博士(マット・ディモン)を蘇生させる事に成功する。天才科学者の生存は、果たして人類に希望をもたらすのか[exclamation&question]
  
interstellar_3110693b.jpg
 
ここで、マット・ディモンが久しぶりの悪役〜孤独な宇宙生活で人格が変貌したマン博士は、宇宙船を乗っ取り、クーパー達を置き去りにして、単騎で地球に帰ろうとする。だが、母船とのドッキングに失敗した彼は、宇宙の藻屑となり、母船自体も損傷してしまう。なんとか、母船に辿り着いたクーパーとアメリアは、最後の望みの第3の惑星に向かうが、母船の航行能力は限界に達していた。実は、第3の惑星に向かった先発隊のメンバーには、アメリアの恋人エドモンドがいたのだった。
クーパーは、ブラックホールの強大な重力を利用しながら、更に自分の乗る小型宇宙船を切り離し加速度をつけ、アメリアの乗る母船を、第3の惑星に送り込む事に成功する。
そして、虚空に浮かぶクーパーは、徐々にブラックホールに吸い込まれて行くのだった...
 
Interstellar-02-GQ-30Oct14_pr_b_1083x658.jpg
 
子供達と再会する事を諦め、人類を救う為に、アメリアにすべてを託し自らを犠牲にしたクーパー。その信念には、アメリアだけは生きて恋人に会わせたいという強い想いも含まれていた。
 
ここでフィナーレではないのが、クリストファー・ノーランのノーランたる由縁[exclamation&question]
ブラックホールの5次元空間に吸い込まれたクーパーが体験する驚愕の出来事[どんっ(衝撃)]
鍵を握るのは、成長した科学者マーラ(エレン・バースティン)。
この展開は誰もが予想不可能なレベルであったろう〜そして心温まるラストシーン[もうやだ~(悲しい顔)]
 
子供時代の可愛らしさが薄れてしまったような...個人的に少々残念なキャスティング
interstellar_2.jpg
 
『インセプション(2010)』での複雑な時間軸の交差には、頭を悩まされながらも胸躍ったが、今作もそれに近い難解さと爽快さが同居した驚くべきSFヒューマン・ドラマの傑作である。
 
宇宙の中の塵の如く小さな惑星・地球に暮らす一家族が起こす奇跡。
環境破壊、家族愛、相対性理論から神の存在に至るまでを強引に結びつけるのだが、それをあくまでも自然に論理的に見せてしまうノーラン・マジック
 
0013729e471315de22ae04.jpg
 
人智を超えた絶対的な宇宙の存在を、IMAXカメラによる圧倒的な映像で描ききり、同時に登場人物達の情愛をきめ細やかに表現し、人間の本質である絶対的な「愛」と比較した。宇宙SF映画の金字塔「2001年宇宙の旅(1968)」の哲学的な佇まいにエモーショナルな薫りをブレンドしたような極上の仕上がりである。音響効果も抜群[るんるん]
3時間近い長尺にも関わらず、持続して観客を引っ張る映画のパワーに完全にノックダウンされてしまった。
 
 
 
 

nice!(37)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

『天才スピヴェット』 [上映中飲食禁止じゃ!]

reading.jpg
 
監督・脚本:ジャン・ピエール・ジュネ
撮影:トマス・ハードマイアー
美術:アリーヌ・ボネット
 
キャスト
カイル・キャトレット
ヘレナ・ボナヌ=カーター ジュディ・デイヴィス カラム・キース・レニー
ニーアム・ウィルソン ジェイコブ・デイヴィース リック・マーサー ドミニク・ピノン
 
モンタナで暮らす10歳のスピヴェットは生まれながらの天才。しかし風変わりな家族たちは弟ばかりを可愛がりスピヴェットの言動は理解されなかった。さらに弟の突然の死により家族の心はバラバラになってしまう。そんな中、スピヴェットの発明が認められ……。(ぴあ映画生活より)
 
 
映画の面白さが凝縮された極上の一品[exclamation×2]
 
「アメリ(2001年)」のジャン・ピエール=ジュネ監督の新作とくれば、自ずと期待は大きく膨らむのだが、想像を遥かに超えた出来映えに心は弾みっぱなしだ[わーい(嬉しい顔)]
 
遅れて来たカウボーイのような無骨な父と、超マニアックな昆虫学者の母。有り得ない不可思議な夫婦から生まれた双子は、それぞれ両親の遺伝子を極端に受け継いだ。
 
一人称でナレーションされる兄の(スピヴェット)の語り口には、母親譲りの知的で詩的な香りが漂う。10歳にして、学術雑誌に論文が掲載されるほどの天才科学者だが、その偉大さを理解出来ない周りの人々からは、変わり者として扱われている。一方の兄とは正反対の性格の双子の弟レイトンは、まさに野生児、父は自分の分身のように彼を溺愛する。アイドルを夢見る能天気な姉・グレイシーを加えた、この風変わりな5人家族は、モンタナの牧場で閑かに幸せに暮らしていた。
 
TS-Spivet-Festival-Cine-Sebastian_TINIMA20130928_0369_5.jpg
 
そんなある日、レイトンが鉄砲の暴発事故で亡くなってしまう。
物語は、一見平和に暮らす家族が、それぞれ喪失感に苛み、暗い水の底で呻いている姿を描く所から始まる。変わらぬ日常生活の中にふと見え隠れする悲しみを、敢えて明るい描写に落とし込み、その深さを際立たせる演出。ただ部屋に籠りウィスキーを呷る毎日の父、家事を脇に新種の昆虫探しに没頭する母。そこには、家族の明るい未来が見えて来ない。そんな光景を、モンタナの雄大な大自然と対比させながら、優しく浮き上がらせていく。観る者の心に溶け込んで来る絵本風の映像は、ジャン監督の真骨頂であり、ハリウッドには無い繊細な心象描写手法である。

6d6db12b1042d61161f06d58ae321733066098fd.jpg

21041606_20130919110817665.jpg-r_640_600-b_1_D6D6D6-f_jpg-q_x-xxyxx.jpg
   
TSSpivet-00.jpg
 
そして、主役のカイル・キャトレットが、 子供特有の純粋な感性と大人顔負けの洞察力を持つスピヴェットを等身大で好演だ。今作中、特異な存在感を見せてくれた母親役のヘレナ・ボナム=カーターの演技は特筆モノだ。
 
El-extraordinario-viaje3_reference.jpg
個性的過ぎる役柄が多い彼女だが、よ〜く見ると美人さんです。
 
その最中、スピヴェットにワシントンのスミソニアン協会から彼の論文が優秀賞に選ばれ、授賞式への出席を請われるのだった。当然、父親の発明と思い込む協会側を、咄嗟の機転で騙し、スピヴェットは、一人で授賞式に向かうべく、密かに家を抜け出る。ここからの彼の冒険譚が、ロードムービー風に描かれていくのだが、子役の演技と背景の美しさに目を奪われてしまう。モンタナからシカゴ経由でワシントンへ、貨物列車に飛び乗り、ヒッチハイクで目的地を目指す10歳の少年は、明晰な頭脳で冷静な計算をしつつも、子供らしい抑えきれない衝動を持って、このアドベンチャーを成功させるのだった。
 
130853_o.jpg
 
The_Young_and_Prodigious_T-S_Spivet_still_Chicago.jpg 
 
そして、彼の決死の大冒険がもたらせたモノとは...
 
292392.jpg-r_640_600-b_1_D6D6D6-f_jpg-q_x-xxyxx.jpg
 
 Jean-PierreJeunet06.jpg
 
天才少年の止めども無い孤独と哀しみを、練り込まれた映像とウィットに富んだ演出に包み込みながら、次第にそれが、家族の再生と明るい未来に移り行く様子が、情感たっぷりに描かれた傑作である。音楽も秀逸[るんるん]
 
こんな映画が、私は大好きだ。
 
 
 

nice!(29)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

『西遊記 はじまりのはじまり』 [上映中飲食禁止じゃ!]

ハラハラドキドキ
こんな楽しい映画を待っていた[exclamation×2]
Journey-to-the-West-2013-13.jpg
 
監督/脚本/製作:チャウ・シンチー
キャスト
ウェン・ジャン スー・チー ホアン・ポー ショウ・ルオ
 
“わらべ唄 三百首“が得意技の若き妖怪ハンターの玄奘は、妖怪の善なる心を呼び覚まそうと奮闘するが、失敗ばかり。やがて師匠に「修行に励め」と諭された彼は、わらべ唄がまったく通用しない魔物に出くわし、美しき女性妖怪ハンターの段に救われて……。(ぴあ映画生活より)
 
これぞ、アドベンチャー映画の心髄[exclamation]
抱腹絶倒の傑作「少林サッカー(2001年)」のチャウ・シンチー監督が放つ新作は、驚愕の「西遊記」パロディだ[どんっ(衝撃)]
三蔵法師が、まだ玄奘と呼ばれていた若かりし頃、妖怪ハンターの修行を重ねながら、人間的成長を遂げる姿を描く。
 
妖怪と聞けば、中国映画伝統の安っぽいB級ホラーと思い込むが、今作は特殊メイク、CGをふんだんに使っての本格的な娯楽大作となっている。山河を描くオープニングから半端な映画ではない雰囲気に満ちている。美術面、カメラワークに製作陣の強い拘りが感じられ、息もつかせぬアクションはチャウ監督の真骨頂である。
 
そしてキャスティング。とにかく全員の個性が強烈、濃すぎて、笑いを堪えるのに苦労する程だ。主人公役のウェン・ジャンは、心優しき半人前の若い僧侶を好演。とにかく全く頼りにならない気の優しいハンターだ。対して、快刀乱麻の女ハンター・段にスー・チー。結構色っぽいです[黒ハート]この男勝りの彼女が、事もあろうに玄奘に一目惚れ。ラブコメディの要素も織り込みながら、ストーリーはドタバタと展開していく。
 
2014-7-31-1.jpg
 
 河の妖怪〜後の沙悟浄
image.jpg
 
段ファミリーの一員・クリッシー・チャウ(左)も美形です[揺れるハート]
journey-to-the-west03.jpg
 
VS 猪八戒
2013-0409-a03.jpg
 
 虚弱体質の妖怪ハンター「空虚王子」
20141109143201876.jpg
 
奇怪な妖怪達、それを狩る賞金稼ぎのハンター達、玄奘の師匠、段の手下達、笑える個性豊かなキャラが続々と登場する。そしてクライマックスは、孫悟空と妖怪ハンター達との死闘。原作でも、孫悟空は釈迦如来の怒りをかって、五行山に500年間閉じ込められた石猿の王の設定だが、本作はそれを圧倒的映像で再現する。玄奘が騙され、封印を解いてしまい、孫悟空の妖怪魔力が解き放たれる。神仏を怖れぬ悪の化身と化した悟空とハンター達との闘い。玄奘は、この闘いを通して、愛を学び、悟りの境地に辿り着く。
 
最初は小汚いオッチャンが...
(JPEG 画像, 640x480 px).jpg
 
 悪徳非道の孫悟空へ変身
82210635.jpg
 
見どころ、笑いどころ満載のノンストップ・アクション・コメディだ[exclamation×2] (段の純愛にはホロリだけど[もうやだ~(悲しい顔)]
少々合点の行かない展開は、中国映画の常道の為、全く気にする必要なし。
怒濤の如く押し寄せる拘りの映像と演出に身を任せればよろしい[どんっ(衝撃)]
 
ラストシーンで「Gメン75」のテーマが流れた時には、苦笑を通り越して拍手喝采だ[ぴかぴか(新しい)]
 
 ここから三蔵法師一行の天竺への旅が始まるのであった[ひらめき]
63570195201303021814391256327903948_000.jpg
 
「ドラゴンボール」の実写版をチャウ監督に撮ってもらいたい[映画]
 
 
 
 
 
 

nice!(36)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

『福福荘の福ちゃん』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 意外と評判が良さそうなので...
poster2.jpg
 
監督/脚本:藤田容介
撮影:池内義宏
美術:安宅紀史
 
出演
大島美幸(森山中)
水川あさみ 荒川良々
芦澤興人 飯田あさと 黒川芽以 平岩紙 山田真歩 北見敏之
 
古めかしいアパート「福福荘」で暮らし、福ちゃんの愛称で親しまれている中年塗装工の福田辰男(大島美幸)は、仕事に忠実で血の気が多く女性には二の足を踏んでしまう性格。そんな福ちゃんのもとに、中学時代に初めて好きになった女性の千穂(水川あさみ)がおよそ20年ぶりに訪ねてくる。カメラマン修業中の千穂と一緒に過ごすうちに、福ちゃんはかつて自分を女性恐怖症に陥れた張本人の千穂に思いを募らせていく。(ぴあ映画生活より) 


「お笑い女芸人を男装させてのベタなコメディ」と、高を括っていると返り討ちに遭う、喜劇という皮を被っシュールなヒューマン・ドラマの秀作である[ぴかぴか(新しい)]
 
 
1380624_329196807223133_925241309_n.jpg
 
今時、探すだけでも難儀であろうこんな古臭いアパートに住む福田辰夫はベテラン塗装工。仕事に忠実、義理堅く世話好きな彼は、仲間から「服ちゃん」と頼られ親しまれる存在だが、女性関係だけは大の苦手。
この不器用かつ不格好な独身男性を森三中の大島美幸が演じる。
 
srfkY1DcaAPFt3w0PtOazf3wd8AUo6tl.jpg
 
本物の「おっちゃん」よりも「おっちゃんらしい」雰囲気を漂わせ、宝塚歌劇とは別次元の男装パフォーマンスを見事に披露した感じだ。粋でシャイな男で、まるで「フーテンの寅さん」風なのだが、女性が演じる事により、男臭さの裏に彼の隠された心の傷を垣間見せるのが、この作品の演出のツボでなかろうか。
 
今作は、親友役の荒川良々の怪演やアパート住民達の奇行、セクハラカメラマンなど、随所にギャグを埋め込み、冒頭から一気に観客を笑いの殿堂に引きずり込んで行く。
 
荒川良々の演技は神がかり的だな[わーい(嬉しい顔)]
1 - F5uDBGB.jpg
 
だが、福ちゃんの初恋の女性(水川あさみ)の登場により、彼が女性にだけは心を開けない理由が、少年時代の忌わしい過去と共に浮き彫りにされていく。こんなに頼もしく男気のある福ちゃんが抱える心の闇。
そして、いつしか、登場人物の多くが、心に傷を負った人々であるのに、観る者は気づかされるのである。
 
この作品を、仮に小説として活字で読んだとしたら、救いようの無い気分に落ち込んで、頁をめくる指も重くなるだろう。そこが映画の魔法というべきか、一癖も二癖もある俳優陣の個性的な演技と、笑いを散りばめた演出により、テーマは重いがライトなコメディに仕上がってしまうのだ。
 
圧倒的に「変な役者達」に囲まれ、常識的な演技と美貌が際立った感のある水川あさみ嬢。
美女優軍団に入れば分が悪いが、今キャストなら「可愛さ」倍増に見えてしまうから不思議なものだ[かわいい]
(今まで観た彼女の作品の中で個人的にサイコーです[揺れるハート]
 
o0573037813063810672.png
 
学校や職場で日常に起きているイジメや、幼少期のトラウマにより、心に傷を抱えた人々の苦しみを正面から捉えた力作だ。しかし、彼らが暗い世界から戦い這い出る姿を、決して悲惨に見せず、優しい視線で描いているのが最大の見所である。
 
変人と心の病いに冒された人の差なんて紙一目。あまりにも可笑しな登場人物が多過ぎて、鬱々と悩むのが馬鹿らしくなるほどの映画のパワーにも満ち溢れている。まさに、大島を始め役者陣のチカラの賜物[ぴかぴか(新しい)]
 
心の病いが繁殖する現代社会において、人間同士の触れ合いがいかに大切な事かを、今作は強く訴える。
古き良きニッポンを思い起こさせる、昭和の香りを感じるレトロ調に仕上げた美術・音楽も秀逸。
ありそうで無かった邦画の新しいスタイルだ。
 
in_sub3_large.jpg
 
04_px240.jpg
 
現実には有り得ないハッピーエンドにも拍手喝采なのだ[exclamation×2] お見事[パンチ]
 
 
 

nice!(33)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

『悪童日記』 [上映中飲食禁止じゃ!]

[どんっ(衝撃)]戦慄を覚える大傑作[どんっ(衝撃)]
 
 el-gran-cuaderno-3.jpg
 
監督・脚本:ヤーノシュ・ハース
原作:アゴタ・クリストフ
撮影:クリスティアン・ベルガー
 
キャスト
アンドラーシュ・ジェーマント ラースロー・ジェーマント
ピロシュカ・モルナール ウルリュヒ・トムセン
 
戦時下、まだあどけない双子の兄弟が農園に疎開する。そこで彼らは祖母にこき使われる過酷な日々に耐え、日記を書く。そして兄弟は万引きする少女、負傷した兵士、ナチス・ドイツの将校らと出会い、母親の言いつけを守って自らの肉体と精神を鍛えていく。(ぴあ映画生活より) 
 
 
『純粋ほど残酷なものは無い...そして残酷ほど美しいものも無い』
 
双子の少年の穏やかな寝息から始まる物語に、徐々に息苦しさを覚え、訳の解らぬ不安感に苛まれていく。その不安の正体が、穢れ無き者への畏れと汚れきった大人達の羞恥心に在る事を、観客は気づいて行くのである...
 
大戦末期のナチス・ドイツ管理下の某国(ハンガリーと思われる)。
片田舎の母親の実家に疎開してきた双子の兄弟は、眉目麗しい瓜二つの美少年である。
 
le-grand-cahier.jpg
 
輝きに満ちた4つの瞳は、嘘や愚行で凝り固まった大人達の本質を見透かすように鋭く、正視できないほどの純粋さには、我々は恥じらいと畏れをも抱いてしまう。
 
Le_grand_cahier.jpg 
 
この双子の無名の子役を主人公に抜擢した事で、空恐ろしい物語に圧倒的な説得力とリアリティをもたらしたほど、二人の演技と存在感は強烈であった。そのカリスマ的チカラは、とりもなおさず、双生児だけが持つ一種の生命の驚異がもたらす不気味さに起因する。仮に、主人公が普通の兄弟であったなら、ここまでの映像には辿り着けなかったであろう。
 
幸せだった都会での家族生活から一転して、疎開先での兄弟と祖母の3人の共同生活が始まる。
 
E1411985639157_4.jpg 
 
実の娘を「メス犬」と呼び、子供達を血を分けた孫として一片の慈しみの欠片も見せない祖母は、醜く肥えた容姿と共々、近所の人々から「魔女」と呼ばれていた。(ピロシュカ・モルナール・・・凄い迫力[どんっ(衝撃)]
 
PiroskaMolnar.jpg 
 
ジブリの湯婆場(ゆばーば)か、狂ったマツコ・デラックスという感の「魔女」のイジメと過酷な労働に耐えながら、二人は次第に「生きる力」を身につけていく。
別れた母が残した「絶対に生き延びて...」の言葉を胸に、父から渡された日記に、日々の出来事を書き綴っていく形でストーリーは進んでいく。ナレーションは双子の複数一人称「僕ら」であり、二人が一心同体であるのを推し量らせ、ふたりの名前は最後まで明かされる事は無い。
 
兄弟は「生き延びる術」を純粋な子供心で必死に考え、自分達を精神と肉体の鍛錬へと駆り立てていく...
母との約束を守るために。
延々と二人で殴り合い、「痛み」に耐える練習...
食べ物があるのに4日間絶食し、「餓え」に耐える練習...
空襲時に耳と目を塞ぎ歩き回る、「恐怖」に耐える練習...
 
legrandcahier-640x360.png 
 
観客は、当初は健気な少年達に同情心を抱くようなる。 だが、その鍛錬が次第に過激になっていき...
昆虫採集がいつしか可愛がっていた鶏をあえて殺す...好きな者を殺めても胸を痛めない能力を身につけ、両親の写真や手紙を燃やし、愛する者を忘れ去る努力を必死でするのである。更に、祖母に家にある唯一の書物「聖書」から読み書きを覚え、彼らなりの「倫理観」を構築していくのである。
 
汝、殺す事なかれ、って言うけど、みんな殺してる。」 
人間の本性が露になる戦時下において、虚飾に満ちた大人の世界を目の当たりにした少年達は、日々逞しくかつ狡猾に生き残る術の実践を続けていく。戦火は辺境の村にも及び始め、弱き者達は声も無く命の灯火を消して行く。
 
見知らぬ街で多くの人間と出会い、また、美少年ゆえに彼らを愛でる人々も少なくなかった。盗癖のある兎唇の少女、同性愛趣味のナチス将校、司祭館で働く美しきブロンド女性...そして二人は、彼らの道徳心に乗っ取って「敵」を嗅ぎ分け対峙していくのだ。
 
1395916583-3586568324_n.jpg
 
心優しいお姉さんが、ユダヤ人狩りに協力した事を知るや否や、彼らがとった行動は衝撃的であった[がく~(落胆した顔)]
 
終戦直前、漸く息子達を迎えに母親が訪れて来る。忘れ去ったはずの想いが沸き上がるが、彼女を送って来た車には父親ではない男性が待ち、母親の手に赤子が抱えられていた。二人は母親を拒絶し、祖母と残る決断する刹那、爆撃で消える母と名も知らぬ弟の姿。・・・二人は更に逞しくなっていくのである。
 
終盤には、捕虜に捕われ人が変わってしまった父親との再会、心の交流が成った意地悪祖母との別れにも、鋼の精神力を見せつける双子の姿が強烈に映し出されていく。
ラストシーンで、二人が選んだ最期の試練には、背筋が凍りながらも胸が熱くなる今まで体験した事の無い感動に捉えられてしまう。
 
29THENOTEBOOK-articleLarge.jpg
 
悲惨な戦争の現実を訴え、人間の本質を問う作品は多い。
今作では、人の善悪の基準などは主観的なものに過ぎない事を、主人公の視線を通して突きつけてくる。
幼気な少年が徐々に人間離れした精神力を身に付けていく様は、感情を失い狂気を纏った悪魔の子供達に見えるが、実は神から使わされた天使なのかもしれない。穢れた人間に正義の鉄槌を下す冷血無垢なエンジェルが、なんと美しく神々しい事か。
 
ジェーマント兄弟を発掘したヤノーシュ監督の審美眼は、映画化不可能と云われた原作のエッセンスを全編に亘っても鮮やかに染み込ませた。終始、不安感を掻き立てる挿入音楽と、リアリティ溢れる映像が、無垢なふたつの魂の成長を、残酷なまでに冷徹にしかも美しくスクリーンに描ききった傑作中の傑作である。
 
重苦しい作品は、普通ならやるせなさが募るはずなのだが、本作の圧倒的な映像の力には、ただ打ちのめされて言葉も無い。双子の少年のこれからも続くであろう試練に、「幸あらん事を」と願うのみである。
 
 
 
 

nice!(28)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

『グレース・オブ・モナコ 公紀の切り札』&『蜩ノ記』 [上映中飲食禁止じゃ!]

自称ブロンド・フリークとして見逃す訳にはいかない[どんっ(衝撃)]
 grace-of-monaco-poster.jpg
 
監督:オリヴィア・ダアン
 
キャスト
ニコール・キッドマン
ティム・ロス フランク・ランジェラ パーカー・ポージー デレク・ジャコビ
 
女優を引退しモナコ大公レーニエ3世(ティム・ロス)と結婚した公妃グレース(ニコール・キッドマン)は、アルフレッド・ヒッチコック監督からの新作オファーに心が揺れていた。そんな折、夫の推し進めていた政策が当時のフランス大統領シャルル・ド・ゴールを激怒させ、武力衝突に発展する可能性もある危機に直面。彼女はスクリーン復帰か、家族そして国家のために全てをささげるかの選択に直面し……。(シネマトゥデイより) 
 
 
夭逝したブロンド女優といえば、真っ先に「マリリン・モンロー」が挙げられるのは映画界では常識だろうが、この伝説的セックスシンボルであるノーマ・ジーンの対極にあって、彼女に負けず劣らずのひときわ別の輝きを見せるのが『グレース・ケリー』であると、私は確信しているのだ[exclamation×2] 
 
15f23grace1-476003.jpg
 
e886072514d4519d2ccc71b89df647d3.jpg 

裏窓 [Blu-ray]

裏窓 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • メディア: Blu-ray


泥棒成金 [Blu-ray]

泥棒成金 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: Blu-ray


The Swan (Remaster) (1956)

The Swan (Remaster) (1956)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2011
  • メディア: DVD


喝采 [DVD]

喝采 [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD


ダイヤルMを廻せ [DVD]

ダイヤルMを廻せ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD

彼女の出演作に関してコメントを綴ったらきりがない。もちろん、リアルタイムで鑑賞できた訳は無く、私が生まれる以前に活躍した女優であり、私の知るグレースはDVDの画面の中だけだ。だが、サスペンスだろうとコメディだろうとラブロマンス、西部劇に至るまで、彼女が銀幕に躍り出れば、たとえモノクロ映像であろうと画面一杯を、今も色褪せないグレース色に染めてしまう。
 
「裏窓(1954)」から
 
 
エレガント」 という言葉は彼女の為にあるような、気品溢れる女優である。古今東西、多くの名女優の艶技の中でも彼女ほど「美しいキス」を魅せてくれる役者を私は知らない。
 
粗野な部分が全く無い端正な顔立ち、凛とした佇まい。男をそそる猥雑なモノまで排除してしまった完璧な創造物にも見えるが、ここまで純粋な「美」を見せつけられたら、男どもは恋い焦がれる前に崇めてしまうしかないのである。
 
隣のちょっと可愛いお嬢さん的なタレントがもてはやされる昨今であるが、近寄り難いほどのカリスマを持った選ばれし人間こそが、真の映画女優と呼ばれるべきではなかろうか。その意味で、グレース・ケリーはまさに「女優」の伝説的存在なのだ。そして、ヒッチコック監督を始め世界中の男性のハートを鷲掴みにしてきたこのグレースを射止めたのは、なんとモナコ公国大公だった。 1956年、女優業を引退し、モナコ大公レーニエ3世と結婚、公妃として迎えられる。
 
 grace_kelly_jpg_2551_north_560x745_white.jpg
 
前置きが長〜くなったが、今作はモナコ公妃となったグレースが自国の苦難に立ち向かう姿を描いた、史実に基づいた伝記的作品である。この元伝説的ハリウッドスターを演じるのがニコール・キッドマン。グレース同様に「クール・ビューティ」と賞賛される美形ブロンド女優だ。
 
grace-of-monaco__140415112847.jpg
 
トム・クルーズと離婚直後(2001年)の「ムーラン・ルージュ」「アザーズ」の頃の氷のような美しさは鳥肌モノだったが、40歳を越した辺りから色香が強い演技が目立ってきた印象が強い。今作は、久しぶりに「クール&エレガント」を全開である。 
 
保護関係にあるフランス国と一触即発の状況にあったモナコ公国の危機を救った妃として、 グレースを必要以上に美化して描いているのは少々鼻につくのであるが、それを差し引いても、ベールに包まれていた彼女の宮廷生活を映像化した点は興味深く、楽しく鑑賞できた。但し、フランス・アメリカ・ベルギー・イタリアの4カ国の合作の為か、登場人物達の掘り下げ方が中途半端で、特にグレースの国と夫を想う深い気持ちを描ききれていなかったようだ。荘厳な宮殿内や美しいモナコの背景など美術・撮影面は申し分なかっただけに、残念な演出力不足であった。
 
どちらにしても、グレース・ケリーを思い出させたくれただけで十分、感謝感謝の作品でした[わーい(嬉しい顔)]
 
1982年9月。別荘からの帰路、自らの運転中に脳梗塞を発症し、ガードレールに激突、死亡した。享年52歳。
「クール・ビューティ」は永遠となった... 
 
 to-catch-a-thief_grace-kelly-cary-grant-coral-top_hair-bmp.jpg
 
 
 
 
 
 
[ぴかぴか(新しい)]もう一本は、サムライ映画の心髄[ぴかぴか(新しい)]
 
139885577895086458228.jpg
 
監督:小泉堯史
脚本:古田求
原作:葉室麟
 
出演
役所広司 岡田准一
堀北真希 原田美枝子 寺島しのぶ
青木崇高 三船史郎 井川比佐志
 
若き藩士、庄三郎は、7年前に犯した重罪から3年後に切腹する武士、秋谷の監視を命じられる。秋谷は死を待つ身でありながら、幽閉先で妻子とともに落ち着きをもって毎日を過ごしていた。そんな彼に感銘を受けた庄三郎は、7年前の事件の真相を調べ直し……。(ぴあ映画生活より)
 
直木賞作家の秀作をいち早く映画化。
藤沢周平ブームが一服し、新たな潮流を模索する邦画界が放つ今秋の作品は、東宝VS松竹の時代劇戦争となった。
松竹の浅田次郎『石榴坂の仇討』と一騎打ちの様相の本作だが、今回はゴジラ生誕60周年に敬意を表して東宝様を鑑賞してみる事に...
 
円熟の重鎮・役所広司と今や絶好調の新鋭V6岡田准一との取り合わせ。
「軍師・官兵衛」で毎週お会いしている岡田君なのだが、日増しに巧くなっていきますね。
藩命により、罪人・秋谷の監視を命ぜられる若侍役だが、秋谷の人柄に徐々に惹かれ、彼の無罪を明らかにする実直な姿を好演である。
 
m_E89CA9E3838EE8A898EFBC94.jpg
 
一方の役所広司に関しては云う事は無いだろう。無実の罪を敢えて被り藩の危機を救った英雄である。だが、事実を明かさず、切腹の日まで淡々と過ごす武士(もののふ)を閑かな演技で表現した。
 
迫り来る夫の死に、狂わんばかりの気持ちを抑え、優しく家族を包み込む妻役の原田美枝子と、現代劇だとヤンキー顔が際立つ堀北真希が、着物姿で一変、楚々とした武家娘として物語に花を添える。一途な武士を取り巻く「家族」の描き方が素敵だ[exclamation] 
 
original.jpg
 
 347266_002.jpg
 
現代人には理解し難い「美徳」と呼ぶには凄まじ過ぎる武家社会の因習を、芸達者な俳優陣が違和感無く演じた秀作である。だが、今作の心髄はやはり、出色の原作にあるのではなかろうか。
 
葉室麟の作品は、大分昔に短編集を1冊読んだだけのなのだが(http://tsumujikaze2.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19)、主人公に向けた深い人間考察に感銘を受けた記憶がある。この映画によって、当時の想いが蘇り、久しぶりに時代小説を読んでみたい気持ちになった。
 

蜩ノ記 (祥伝社文庫)

蜩ノ記 (祥伝社文庫)

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: 文庫

ほとんど判りきったラストシーンなのだが、無性に胸が熱くなる〜日本人の習性だろうか〜

家族を振り返りながら颯爽と死出の旅に向かう役所広司の姿が、今でも瞼に焼き付いている。

6_275619_615.jpg
 
 
 

 

nice!(31)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画
前の10件 | 次の10件 上映中飲食禁止じゃ! ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。