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『思い出のマーニー』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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 監督:米林宏昌
原作:ジョーン・G・ロビンソン
作画:安藤雅司
美術:種田陽平
音楽:村松崇継
 
声の出演
高月彩良 有村架純 
松嶋菜々子 寺島進 根岸季衣 森山良子 吉行和子 黒木瞳
 
喘息の療養のため、養父母と離れて海辺の村の老夫婦に預けられた杏奈は、心を閉ざし、孤独な日々を過ごしていた。ある日、杏奈は不思議な少女マーニーと出会う。ふたりは仲良くなり毎日のように一緒に遊ぶが、なぜか村人は誰もマーニーのことを知らなかった。 
(ぴあ映画生活より)

 
 
ジブリ第二世代の手による心温まる佳作です。
 
宮崎駿・高畑勳の二大巨頭の昨年の作品は、戦中派の両名の集大成であり、昭和アニメの極致であった。
破壊と創造を実体験した二人の描くファンタジーは、夢と希望に満ちた「逞しさ」と「熱情」を常に内包していた。
 
宮崎吾郎そして今作の米林宏昌の、バブル崩壊以降の「成功を知らない」世代が描く世界は、母に抱かれし乳飲み子の如く「温もり」と「安堵感」に包まれている。
 
本作は、ジブリ伝統の青い空を突抜ける様な冒険談ではなく、ヒロインの心象心理に基づくファンタジー仕立ての私小説である。自分の出自を知らぬまま思春期を迎えた少女・杏奈が養母との関係に思い悩み、心の病いに捕われようとした時、小さな奇跡が訪れる。イギリスの児童文学を、舞台を北海道に代え、孤独だった少女が自我に目覚め、おとなの階段を登り始める様を、とことん優しいタッチで描いている。
 
美しい背景処理はお手のもののジブリだが、今作は作画監督に「千と千尋の」「もののけ姫」の安藤雅司が復活し、実写映画で数々の名作に携わった種田陽平が美術監督としてアニメ初デビューを果たした。二人の相乗効果で、幻想的なのに緻密なリアリティを伴った独特の世界観を造り出している。
 
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そして杏奈が出会った謎の金髪の青い目の美少女・マーニー。
アニメであっても、ブロンド登場だけで、私の期待度200%なのだ[どんっ(衝撃)]
 
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北の僻地・道東の湿原地帯で繰り広げられる二人の密会。
 
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物語の中盤から、マーニーが杏奈の空想の人物である事に観客を気づかせる演出だ。
杏奈の行動は、世間一般ではアブナイ夢遊病患者のそれなのだが、マーニーの謎にひとつひとつ迫るごとに、妄想が普遍の命の連鎖の証明へと変化していくという、サスペンス調も忍ばせた構成が、過去のジブリでは味わえなかった種類の感動を与えてくれるのである。自己を認識し、自分を愛してこそ他人に優しくなれる・・・子供が大人になる為の大事なことを、本作は教えてくれる。
 
声の出演は、プロの声優を使わないジブリ流の俳優陣のみで固められている。杏奈役の高月彩良を除いては、若手・ベテランとも有名どころの起用だ。高月は無難に主役をこなし、「あまちゃん」でブレイクした有村架純は、薄幸のマーニーを好演した。ベテラン勢は言うに及ばず。だが、プロの声優でも優れた人材はいるはずなので、ジブリの依怙地な伝統は、そろそろ破ってもいいののでは...と、個人的な感想。
 
本質は極めて内向的な小説を、幻想と現実の往き来を美しく優しく描き、非常にポジティブなファンタジーに変える日本アニメの魔法。常にその時代が求めるモノを先取りしてきたジブリが贈る、今の病めるニッポンの子供達に捧げる詩なのかもしれない。
外国の純文学のエッセンスを、日本人向きのの美しい絵本に散りばめたような米林監督の世界は、更に進化した描写力を得て、スタジオ・ジブリを次のステップに引き上げた
 
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コメント 5

suzuran

思い出のマーニー、良かったです。
主人公を取り巻く霧のような漠然とした不安や虚無感が
柔らかい幻想的な展開で、ゆっくりと晴れて行く様子が
丁寧に描かれていました。
by suzuran (2014-09-14 00:32) 

yuzman1953

先月、妻と一緒に「思い出のマーニー」を観賞しました。
絵がすばらしく、ストップモーションで観たいシーンの連続でした。
ストーリーも最後に杏奈とマーニーの関係が分かりホロりときました。
by yuzman1953 (2014-09-16 23:26) 

つむじかぜ

> suzuran 様
ヒロインの心情と絵心が見事にマッチしていましたね!
by つむじかぜ (2014-09-16 23:58) 

つむじかぜ

> yuzman1953 様
実は私もラストシーンにはジ〜ンときてしまいました^^
by つむじかぜ (2014-09-16 23:59) 

末尾ルコ(アルベール)

話はまったく違いますが(笑)、カナダのトップ女子テニス選手ウージニー・ブシャールはご存知でしたでしょうか?きっとつむじかざ様のお眼鏡にかなう素敵な選手だと…。さらに本年全米オープン準優勝のキャロライン・ウォズニアッキも。

                              RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2014-09-18 23:02) 

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