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「ドント・ブリーズ」&「バイオハザード:ファイナル」 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
サスペンス&バイオレンス系を続けて鑑賞[目]
 
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ドント・リーズだと思っていたらリーズだった[ダッシュ(走り出すさま)]
いやぁ、老眼にはなりたくないもんです... 
 
街を出るための資金が必要なロッキーは、恋人マニー、友人アレックスと共に、大金を持っているといううわさの目の見えない老人の家に忍び込む。だが、老人(スティーヴン・ラング)は、驚異的な聴覚を武器に彼らを追い詰める。明かりを消され屋敷に閉じ込められた若者たちは、息を殺して脱出を図るが……。(シネマトゥデイより) 
 
...という「息をしては危険」の内容なのです。
 
全盲の老人宅に忍び込んだ一攫千金を夢見た若者達が、「ちょろい仕事」と思った矢先、その老人の逆襲に遭い、一人づつ狩られていく...恐ろしくもユニークな設定である。
 
若い男女が惨殺されていく馴染み深いホラー映画は、不死身の謎の殺人鬼と、森の中を最後まで生き残るヒロインが主役のパターンが大半である。本作も、その方程式を大きく外れてはいないが、一般的に社会の弱者と言われる全盲の老人が殺人鬼と化す設定が斬新だ。そしてロケ地も、人里離れた別荘地ではなく、閑静な住宅の一軒家である。
 
「こんな小さな住宅なんて簡単に脱出!」といかないのが、この映画のミソ。何しろ、視覚障害の老人は、かつての歴戦の陸軍兵士であり、超人的な聴覚を兼ね備えていたのだ。しかも、彼の家の奥深くには、人には知られたくない「秘密」があった。
 
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ヒロイン・ロッキー役にはジェーン・レヴィ
初見だが、恐怖顔と青あざが似合う[あせあせ(飛び散る汗)]ナイスなブロンド娘であります[黒ハート]
 
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「死霊のはらわた」のリメイク版(2013年)でも主役を演じていたらしく、このまま経験を積めば、小生の愛するB級映画のブロンド女王『ラダ・ミッチェル』の後継者になる日も近い[あせあせ(飛び散る汗)]
 
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 結構、似ています^^
 
題名通り、観客にも息をつかせない[exclamation×2]
かつてのサスペンス・ホラー映画のエキスを凝縮したような緊張感の持続力は、必見である[どんっ(衝撃)]
老人の異常なまでの執着力と猟奇的な行動には、彼の哀しい過去が起因している事も明らかになり、作品のバランスとしても趣深い佳作である。 
 
 
 
もう1本は、日本発のゲームから派生した人気アクション・ホラー・シリーズ最終作だ[パンチ]
 
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アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、レッドクイーンから48時間後に人類が滅びると告げられる。そして、宿敵アンブレラ社が放った膨大な数のアンデッドが地上を占領。アリスはラクーンシティに戻って、生還したクレアやコバルトらと合流し、アンブレラ社の心臓部であるハイブを潰そうとするが……。(シネマトゥデイより) 
 
バイオハザード・シリーズの劇場鑑賞は実は初めてで、過去作は全てDVDによるものだ。
今回は、最終作という事もあり、ミラ様に敬意を表し、大スクリーンで(3Dではないが...)
 
まだまだ、現役アクションいけるぜ、ミラ・ジョヴォビッチ[exclamation×2] 第1作が2002年、20代だった彼女も、今作で四十路を迎えたわけだが、全く違和感が無い。リュック・ベンソンとの破局から、このシリーズで出会ったポール・アンダーソン監督との再婚・出産により、私生活での充実ぶりが「母の力」をみなぎらさせ、かえってパワーが増幅された感がある。
 
4年ぶりの、しかもファイナル作なので、自分の女房の為にもハッピーエンドに違いないと高を括っていたが...アンダーソン監督は、奇特な芸術家である前に善き夫でした、やはり...(いや、女房が怖いに違いない[わーい(嬉しい顔)]) 
 
おなじみのキャストから新顔まで、個性的なメンバーを取り揃えた上に、ただでさえ死者多量のシリーズが、ファイナルゆえにほとんどが生き残らない潔さ[ぴかぴか(新しい)]快感です[あせあせ(飛び散る汗)] 
 
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なんだか、見覚えのある女優がいるなぁ〜と思ったら日本のローラでした[がく~(落胆した顔)]
 
序盤で簡単に喰われちゃうけど[失恋]
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同じモデル系なら、小生はルビー・ローズだね[ハートたち(複数ハート)] 
 
粉々になっちゃうんだけど[失恋] 
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 タトゥーはいらんけど
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前作からの唯一の生き残ったアリスの仲間〜正統派女優として、やっぱりアリ・ラーター[黒ハート]
 
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 いやぁ、彼女が生き残って良かった[キスマーク]
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...と、魅力的な女優陣の活躍と第一作からの復習も織り込みながら、安心してドキドキできる内容だった。
アリスの出生の秘密も明らかになり、なんとも爽やかなエンディングでございました[ぴかぴか(新しい)] 
 
 [ぴかぴか(新しい)]これがヒント[ぴかぴか(新しい)]
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 アリス最期の雄姿を堪能すべし[パンチ]
 
 
 

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「人魚姫」 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
新春1本目から「大当たり」[exclamation×2]
 
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抱腹絶倒、少々お下品だが低俗ではなく、真正面からの社会問題を織り込んでのナイスなロマンチック・コメディー。まさに大亜細亜的ごった煮状態の中国版「人魚姫」の傑作の誕生だ[ぴかぴか(新しい)]
 

青年実業家のリウ(ダン・チャオ)はリゾート開発のため、香港郊外の海辺にある美しい自然保護区を買収。しかし、そこには絶滅の危機にひんする人魚族が住んでいた。人魚族は、刺客として美しい人魚のシャンシャン(リン・ユン)を人間の女性に変装させて送り込む。ところがリウとシャンシャンは惹(ひ)かれ合い、やがて人魚族の存在が人間に知られてしまう。(シネマトゥデイより)

 
固定電話が家庭に普及するよりも先に、一気に全国民が携帯電話を保有してしまった大国〜中華人民共和国。かつての日本の経済発展を凌駕したスピードは、世界標準のモラル・価値観が国家に熟成される時を置き忘れてしまったのかもしれない。半世紀前の我が国も、戦後からの奇跡の経済復興と引き換えに、「公害」という大きな傷跡を国中に広めてしまった。「京都議定書」などと、現代の経済発展国に偉そうに環境保全を訴える優等生も、そんな辛い過去があったからこそなのである。
 
「少林サッカー(2002年)」で驚異の映像でデビューしたチャウ・シンチー監督は、前作「西遊記〜はじまりのはじまり〜(2014年)」で、更に最新の映像技術で我々を楽しませてくれたが、彼の集大成というべくアナログとCGの奇妙なる完全合体に、「環境保護」という明確なメッセージを乗せた最強の娯楽作品として、この新作は結実したと言って良い。
 
単なるコメディーとしても十分楽しめる内容だ。チャウ監督の笑いのツボは、チャップリンなどの洒落た西洋喜劇よりも、どうも我が国70年代のコント55号やドリフターズを彷彿させる東洋的な、しつこ〜いギャグ連発に近いような気がする。これが、昭和のオッチャンにはたまらない魅力なのである。
 
そして、何よりも魅惑的なキャスティング。
成り上がり実業家役ダン・チャオと、彼の暗殺に奔走する人魚役リン・ユンのフレッシュな組みわせ。
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若干20歳のリン・ユンの清楚な色気とコケティッシュな表情が今作のヒットの一因であるのは明らかだ。だが、彼女の魅力を最大限引き出したのは、紛れもなく脚本・演出の巧みさだ。シャンシャンが暗殺に乗り込むシーンやチキン屋での歌合戦は白眉。
 
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実業家リウと手を組む資本家のご令嬢役にはキティ・チャン。リン・ユンと対照的なナイスバディの色気満載、典型的な中国八頭身美女だ。シャンシャンにリウを奪われた嫉妬と傷つけられたプライドが、後半の懺劇を生む。
 
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そして、人魚族の中で、何故だか一人だけタコの足を持つ男を演じたシャウ・ルオ。台湾のタレントらしいのだが、彼のコメディアン能力により、本作の笑劇度は絶頂となる[パンチ] 鉄板焼きのシーンでは、場内は爆笑の嵐[わーい(嬉しい顔)]
 
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少々辻褄の合わない展開は、香港映画の伝統なので、全く気にしてはいけない。現在の中国が抱える社会問題を、絶妙な喜劇の中で、声高らかに訴えた勇気溢れる一作だと感じた。 
爆笑の渦の中で、人魚達がなぶり殺される後半では、人間の残虐性を見事に描く。美しいラストシーンと共に、『地球にきれいな水と空気が無ければ、どんなにお金があっても、なんの意味がない』の言葉が染み渡る。某国の新大統領にも聞かせたい科白だな[どんっ(衝撃)]
 
上映館が限定されているが、今の日本人にも必見の作品だ。
小生は、新宿と錦糸町で、既に2回鑑賞です[あせあせ(飛び散る汗)] 
 
 
◎おまけ
今作に、日本女性がチョイ役で出演し、さらりと日本語を披露しています。
「松岡李那」・・・なんと香港では、一番人気の日本人モデルだそうな[がく~(落胆した顔)]
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水着姿よりカジュアルな方が個人的にはお気に入り[揺れるハート]
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「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」 [上映中飲食禁止じゃ!]

久しぶりの家族3人での映画鑑賞 
筋金入りのポッタリアンである長女に「この映画なら一緒に観てあげてもいい」と、言われ
完全に言いなり状態のお父ちゃんなのでした[あせあせ(飛び散る汗)]
 
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J・K・ローリング原作のハリーポッター・シリーズの新作である。
但し、ヴォルデモートを倒したポッター達のその後を描いたものではなく、ポッター時代から70年遡ったアメリカが舞台の物語だ。登場人物も前シリーズとは別キャストだが、人間界と魔法界の調和と対立を描く構図は同様である。
 
魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、魔法動物の調査と保護のためニューヨークを訪問する。ある日、彼の魔法のトランクが人間のものと取り違えられ、魔法動物たちが人間の世界に逃亡してしまう。街中がパニックに陥る中、ニュートはティナ(キャサリン・ウォーターストン)らと共に追跡を開始するが……。(シネマトゥデイより) 
 
前シリーズは、ポッターら主人公と自分の子供たちの成長が年代的に重なり、自然と映画への思い入れが強くなっていった。ハーマイオニーが、あんなに素敵な女性に成熟し、我が長女がこんなに生意気な娘になろうとは...親として感無量なのでございます[あせあせ(飛び散る汗)] 
 
今作の主人公は、すでに大人の魔法動物学者の設定であり、前作との関連性も薄い(シリーズが進むにつれて、複雑に絡んでくる予感はあるのだが...)ために、中途半端な親の思い入れは抜きにして全く新しい作品として楽しむのが正しい鑑賞法のようだ。
 
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その観点からすると、ハリーポッターをリアルタイムで知らない子供達でも十二分に「ハラハラドキドキ[揺れるハート]」を味わえる娯楽性の高い佳作である。
 
まず、初期のポッターシリーズとは雲泥の映像技術。リアルティ溢れる魔法動物達の描写は秀逸である。今作鑑賞後に「ハリーポッターと秘密の部屋」がTV放映され、家族で鑑賞したが、「今、観るとものすごくアナログよねぇ〜でも、こっちの方が被り物の『ゴジラ』っぽくて、かえって新鮮かも」と、またまた生意気な事をのたまう娘がいたのだが、それほど技術の進化は甚だしい。
 
とにかく、小生のお気に入りは、光り物に目がないニフラーくん。モグラとカモノハシを足して二で割ったようなヘンテコな奴だが、セリフ無しで観客を笑わせる腕は、超一流のコメディアン並である。
 
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個性豊かな魔法動物達の生態を緻密かつコミカルに描きつつ、対極の「悪の象徴」を登場させ、シリアス面を拡大させる手法は原作ローリングの十八番だ。そこへ、ラブロマンスの隠し味を少々加えた絶妙のバランスの娯楽作だ。
 
女優陣では、ニュートの相棒となるキャサリン・ウォーターストーンのボーイッシュなショートヘアも魅力的だが、やはり、その妹役で登場したアリソン・スドルのブロンド姿に勝るものは無い[パンチ]
 
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姉妹で髪の色が違うのはあえて詮索しない... 
この絶世の美人魔法使い、男を寄せ付けないエレガントさを醸し出しながら、アクティブにニュート達の危機を随所で救うのだ。さらに、事もあろうに、間抜けなデブの人間のおっさんに一途になってしまう、極めて珍しい男趣味の魔法使いを熱演した。
 
映画初出演という彼女のもう一つの顔は・・・
米国のシンガーソングライター別名「ファイン・フレンジーA Fine Frenzy)」だ。
実は小生は、彼女の歌姫としての魅力に、さらに打ちのめされてしまったのだ[ぴかぴか(新しい)]
 
2007年デビュー、現在3枚のオリジナル・アルバムを発表している。 カントリーを基調にオルタナ系ロックに傾斜した、小生好みの音楽性だ。何よりも声がいい[わーい(嬉しい顔)] 柔らかいハスキーボイスというべきか、非常に耳に心地よい歌声である。無理のないファルセットにも情感を込められ、思わず引き込まれてしまう。
 
デビュー当時は、赤毛の少々田舎っぽいオネエ様だが、確かな音楽生に支えられ、堂々したライブだ[ぴかぴか(新しい)]
 
 
 
ブロンドに染め直したか、地毛に戻したのかは不明だが、大人の色気を纏った最近の彼女は、エレガントとコケティッシュを兼ね備えた最強ブロンド歌姫へと洗練されていく[キスマーク]
彼女の魅力は、弾き語りのバラードでひときわ際立つのだ[るんるん][揺れるハート][るんるん] 
 
 
 
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One Cell in the Sea

One Cell in the Sea

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Virgin Records Us
  • 発売日: 2007/06/28
  • メディア: CD
BOMB IN A BIRDCAGE

BOMB IN A BIRDCAGE

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: VIRGI
  • 発売日: 2009/08/28
  • メディア: CD
PinesPines
  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Virgin Records Us
  • 発売日: 2012/10/16
  • メディア: CD

 
...映画の話題より、ファイン・フレンジーに傾倒してしまったが、ブロンド歌姫フリークゆえお許しください[ダッシュ(走り出すさま)]
 
とにかく、シリーズ第2弾の一作目としては、上々の滑り。久しぶりに童心に帰って鑑賞できた。次作からいかなる展開に進むか?今回の登場人物達にどんな運命が待ち受けるのか?ニフラーくんは果たして?そして、ラスト間際に一瞬だけカメオ出演したジョニー・デップ様は一体?
 
期待膨らむシリーズ作のスタートだ[exclamation×2] 
 

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「湯を沸かすほどの熱い愛」 [上映中飲食禁止じゃ!]


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大きな母性の持ち主・双葉は、ある日、余命宣告を受ける。双葉には死ぬまでにやっておくべきことが4つあった。失踪した夫を連れ帰り、休業していた家業の銭湯を再開させ、気が優しい娘を独り立ちさせること。そして4つ目は誰も知らない双葉だけの秘密だった。(ぴあ映画生活より)
 

我が家は祖父の代から銭湯を営んでいた。
 
燃料にする廃材をのこぎりで切り分け、火の焚べ方を祖父に教えられた。父と一緒に、広い洗い場を隅々まで清掃した。幼少期の懐かしい思い出だ。そして、母が家事で手いっぱいの時には、番台に座ることも度々あった。「男子一生の夢」と云われた番台座りが日常的だったが、思春期前の少年には、その「素晴らしさ」は実感できなかったのだが...
 
中学生になり、番台厳禁になった頃から、客足が極端に遠のいてくる。近所の新築のアパートは、ユニットバス完備が当たり前の時代になり、学校の友人宅でも風呂なしの家は数える程となっていった。燃料を木材から重油に切り替えて間も無く石油代が高騰し、更に井戸水が枯渇し始め、水道水利用が多くなったのは、銭湯経営には致命的だったようだ。
 
小生が社会人になった翌年、父は廃業を決意する。
往時には、向島界隈で一番高い建物であった我が銭湯の煙突も、立ち並ぶマンションの陰に隠れ、ひっそりと取り壊されていった。新社会人として仕事に没頭していた私は、「時代の流れだから」と、当時は冷静に受け止めていたが、父の無念はいかほどのものだったろうか。昨年亡くなった父が、今の小生の年齢の時の決断だった。更地になった銭湯跡に立った時、私は初めて、失くしたモノを重みを感じるのであった。
 
という次第で、世が世なら風呂屋の三代目だった小生なので、この映画は当然必見なのであります[パンチ] 
 
さて、銭湯の『三種の神器』と言えば...
 
まず、「ケロリンの風呂桶」
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そして、入浴後のジュース
コーヒー牛乳が定番であるが、私の一押しは「パンピー」 
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絶対条件である「富士山」
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2、3年おきに職人さんが描き換えるんですよ。その姿を眺めるのも楽しかったな^^
我が家は、廃業前はタイル張りの富士山に替えたけど... 
絵の下のスペースには、近所の商店などの広告板をはめ込みます。 
 
今作のロケ地は、実在する栃木県の銭湯のようだ。3種の神器は当然の如く、昭和のお風呂屋さんの条件を完璧に残したままの、まさに天然記念物的銭湯である。銭湯のシーンが映し出されるだけで、小生は懐かしさに打ち震えるのでした[もうやだ~(悲しい顔)]
 
...と、ほとんど映画の内容に触れていませんが...とにかく「宮沢りえ」の独壇場であります。
 
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パワー漲るスーパーお母さんを熱演[exclamation×2]
余命短い事を知った彼女は、家族再生と休業中の銭湯の再興に奔走する。いじらしいまでに一途な正義感を持ち、「太陽に愛される生き方」を身も持って家族に示す。個人的には、宮沢のオンナの一面をもっと演じさせて欲しかったが、「これじゃ旦那も逃げ出すわ」と思わせる「男前」の女の設定だ。
NHK朝ドラでブレイクした杉咲花・19歳も、今後を期待させる好演技だった。童顔・幼児体型が、今役にはベストマッチした。
 
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最近、情けない男役が定番のオダギリジョーは、定番通りのご活躍。この3人の演技が、お風呂さんが家族労務中心でなくては成り立たない商売である事を観る人に納得させる。
 
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ストーリー展開は、お決まりのお涙頂戴パターンであり、目新しい演出やテクニカルな映像は皆無。銭湯の商売同様に地道に愚直に作られた作品だ。まぁ、小生は懐かしい昭和のお風呂屋さんを見せてもらっただけで、感無量なのだが...
 
主人公の「家族・人間」に対する気持ちを強く描き過ぎて、「家業」への拘りが表現されていなかったのが残念だ。「銭湯を再開する」必然性が感じられないのは、先代からの暖簾への想いや地元のお客さんとの絆を描ききれなかった事に他ならない。それができれば、奇抜なラストシーンが更に際立ったと思う。
名作「おくりびと」の銭湯のおばちゃん・吉行和子には、少々及ばなかった。
 
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こうやって汗だくになって風呂を沸かすんですよ^^
薪で炊くとお湯は本当に柔らかく感じます! 
 
 
 

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「この世界の片隅に」 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
「君の名は。」と双璧、いや凌駕する作品に
こんなに早く出会えるなんて...[ぴかぴか(新しい)]
 
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世界に誇る日本アニメの多様性とレベルの高さを実感する2016年となった。
異例のロングヒット快進撃中の「君の名は。」と対照的な表現法を用いて、「人間の在るべき姿」を尊く訴えた珠玉の名作がまたも誕生した。

1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。(シネマトゥデイより) 
 
最近の精緻なアニメに慣れすぎた者からすると、昭和の「劇画」を彷彿させる柔らかいタッチと淡い色彩に、親しみと郷愁を覚えてしまう。そして、時折主人公が描く鮮やかなスケッチが差し込まれ、その対比が胸を弾ませる。
 
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一人の少女の成長の物語。
見ず知らずの家に嫁ぎ、出戻り小姑にいびられながらも、変わりない日常に小さな幸せを感じ始めるすず。
 
おっとりとした性格で今風で言えば天然系の女の子。彼女の反応の鈍さは、周辺を在る時は苛立たせ、また和ませる。写生の腕前には卓越したものがあり、彼女の絵には、人を元気にする力を持つ。こんなすずの不思議な魅力を「声」で見事に表現した声優が素晴らしい。「のん」という2文字でクレジットされた彼女は、なんと「能年玲奈」。『あまちゃん』フィーバーの反動で一時、世間から姿を消したらしいが、今作で改名してのカムバックだ。やはり彼女は天才だ[exclamation×2]不器用な天才ゆえに役柄を選ばざるを得ないが、今作でのすず役はベストマッチであり、彼女以外の声優では、今作は全く別の印象になったかもしれない。
 
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戦争末期、日本の軍事拠点でもあるすずが住む呉市には、連日、米軍の空襲が繰り返される。ある日、義姉の娘と街に出たすずに、本格的な爆撃が襲う。可愛がっていた姪っ子と自分の右腕を失ったすずは悲嘆にくれる。追い討ちをかけるような実家のある広島への原爆投下そして唐突に訪れた終戦。 
 
見知らぬ土地での新生活でも、持ち前の「ふんわり性格」により、新しい家族や周りの人々と絆を深めていったすず。だが戦争が、昔からの縁や新しい出会いで得た彼女の大事な人たちを次々と奪っていく。「どうして私みたいに価値の無い人間が生き残ってしまうの!」大好きな絵を描く右手まで失い、人生で初めて自暴自棄に陥った時、傍にまだ自分を必要とする大事な人の存在に気づくすず。寡黙な亭主と共に、焼け野原のヒロシマから孤児を連れ帰ったすずの家からは、また笑い声が聞こえるのだった...
 
どんな運命でも受け入れ、なおかつ無理せず少しづつ前に進む」すずの姿に心打たれる。
脱力感溢れる天然系すずは、環境の変化や唐突なトラブルも自然に受け入れてから出直せる得意な才能を持つ女性だ。全く攻めないが、受けが滅法強い負けない格闘家みたいだ。その不敗の女性に、戦争がこれでもかと悲劇を叩きつけていく・・・「それでも諦めない」
 
今作は「人間が生きる理由」を回りくどい説明抜きに、一人の少女がオンナになり母となる姿を通して訴える。 そして人生の本質とは「別れと出会いの繰り返しの中で生かされている」のだと。
 
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ストーリーを支える背景が、戦前・戦中・戦後のニッポンの国民生活の移り変わりを過度な演出に頼らず自然に描かれている。ゆえに、その時代の変遷に翻弄される主人公の運命が際立って浮き彫りにされる。かつ随所に、すずの天然系行動や妄想癖が差し込まれ、思わず笑いを誘う。これは、前述の声優「のん」のコメディアンヌ能力の高さが大きく寄与した。
シーンごとの機微を表現した挿入音楽は、あくまでもBGMの範疇に収まり大変心地よい。すずの「その後」を想像させるエンドクレジット時にコトリンゴのか細い歌声が流れ、オッチャンは胸と目頭が熱くなり、場内がずっと暗いままでと願ったのでした[たらーっ(汗)][たらーっ(汗)]
 
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こうの史代の原作漫画のエッセンスが、片渕須直監督の脚本と演出により、稀代の名作アニメとして昇華した。
単なる反戦映画では無い。何の変哲も無く繰り返される日常の尊さを高らかに謳い、数奇な運命に翻弄されても人間は生きねばならない意味を問う。別れた大事な人の想いを胸に刻み、絶望の中から新しい出会いが、また幸せな日常を育んでいく煌めく人間賛歌だ。
 
若者に圧倒的支持を受けた「君の名は。」の緻密・完璧な構成には、小生も完全にやられてしまったが、本作の実直な作り込みと普遍的な「生きる」意味のメッセージには、世代を超えて多くの人々の心を打ちふるわすに違いない。我々昭和世代には「漫画」の香りを残す哀愁感が、更に追い討ちをかけて。
 
日経のコラムで知ったが、ネットで資金を集めるクラウドファンディングにより、原作漫画のファンなどから8日間で2000万の目標額を達成したという。次代の映画産業の在り方にも一石を投じた本作は、多くの意味で歴史的な邦画アニメの傑作となった。
 
 
 
 

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「淵に立つ」 [上映中飲食禁止じゃ!]

〜隠れた話題作を公開終了間際に滑り込み〜
 
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カンヌ国際映画祭「ある視点」部門での審査員賞受賞作だそうな...
 
郊外で小さな金属加工工場を営む鈴岡家は、利雄、妻の章江、10歳の娘・蛍の3人家族。ごく平凡な毎日を送っていたある日、利雄の古い知人で最近まで服役していた八坂草太郎が現れる。利雄は章江に断りを入れずに八坂を雇い入れ、自宅の空き部屋を提供する。(ぴあ映画生活より)
  
浅野がいい、浅野忠信が実に素晴らしい[exclamation×2]
 
少女が弾くたどたどしいオルガンの旋律にメトロノームの正確なリズム音が重なっていく。ハッとするような静かなオープニングが、かえってこの物語の暗い先行きを暗示させる。
 
8年ぶりに再会した友人を、当然のように、住み込みの職工として自分の工場で働かせる利雄。唐突な亭主の決断に戸惑い、不安を隠せない章江。一人娘の成長を楽しむ幸福な家庭に分け入った来客が起こす小さな波紋が、徐々に大きな亀裂になっていく。 
 
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ムショ帰りの律儀な男・八坂。常に白ワイシャツを身に着け、能面の如く表情を崩さない。極道の世界に身を置いたらしい事を想像させるが、物腰は極めて柔らかい。身体の奥底に抱えている周りを瞬時に切り刻む刃物を使わぬよう、必死に耐え忍んでいる。一貫した静かな演技を見せながら、観る者に絵に言われぬ不安感を与え続ける浅野忠信の「凄み」は、今作の白眉である。
 
この謎の闖入者の親友という利雄だが、二人の以前の関係も謎のままだ。その身元不明の男に淡い恋心を抱いてしまう利雄の妻・章江。幅広い芸風の筒井真理子が、オンナと母を行き来する人妻役をリアルに好演する。
 
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隠し持っていた刃物が暴発し、一家に大きな傷跡を残したまま消息不明となる八坂。事件から8年後、夫婦に漸く安らぎが戻ってきた矢先、新たな闖入者により、古傷からおどろおどろしい膿が吹き出し、家族を奈落の底に落としていくのだった...
 
サスペンス調の形式をとりながら、人間の根源的な「罪と罰」を謳った作品である。 
緻密な脚本・演出は、古舘寛治を含めた個性的な3名の名優の演技力により、全編を通じて張り詰めた緊迫感を持続させる事に成功している。サスペンス系にありがちな回想場面は一切登場せず、過去の事件や八坂の生い立ちは、観客の想像力に任される。最大の鍵である八坂の「現在」は見れず、彼の真の正体も、事件の真実も闇の中だ。利雄の告白により、ひとつの答えは出たものの、結局、喉に魚の小骨が刺さったまま一晩過ごしたような不快感は、エンドロールが流れるまで徹底してつきまとってくるのだ。
 
人間の弱さと逃れられない血の宿縁を在る一家に投射し、『因果応報』という世の常を、極めて冷徹かつ緻密に映像化した深田晃司監督の表現力に打ちのめされる。個人的には、奇を衒い過ぎたようなエンディングが、悲劇の根幹の理由を観客の判断に丸投げしているようで、「もう一歩踏み込んで欲しい」消化不良を感じてしまったが...ただ、この感性は圧倒的だ[どんっ(衝撃)]
 
浅野忠信の鬼気迫る演技だけでも、一見の価値ありだ[パンチ]
 
 
 
◎おまけ
HARUHIが歌う挿入曲「Lullaby」
 
 
彼女が My Little Lover のヴォーカル akko の娘とは知らなかった。(当然、父親は小林武史だが...)この声質は稀有だ。歌唱力自体は母親同様に???だが、人を惹きつける“何か”を持っている。宇多田ヒカル以来のビッグなサラブレッド歌姫の出現かもしれない[exclamation&question]
 

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「世界一キライなあなたに」 [上映中飲食禁止じゃ!]

センスが感じられない邦題はご愛嬌
[ぴかぴか(新しい)]感動と衝撃問題作です[ぴかぴか(新しい)] 
 
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上映館も限られ、話題にも上がらない映画だが、一部の評価が良さげなので予備知識なしで、久々に新宿へGO!
 
イギリスの田舎町で暮らすルイーザは現在、独身の26歳。ある日、勤務先のカフェが突然閉店して無職になった彼女は、交通事故で車椅子生活を送るウィルの介護の仕事を得る。持ち前の明るさで対応するルイーズは、いつしかウィルと心を通わせ、惹かれていく。(ぴあ映画生活より) 
 
ナイスガイと麗しいブロンド嬢がベッドの中で睦まじく目覚めるシーンがオープニング。
「お〜今回のヒロインも金髪じゃ〜[黒ハート]」と、喜ぶのもつかの間、家を出た彼氏がバイクに轢かれ、場面が転換。イギリスの片田舎のカフェで働く少々バタ臭いオネエちゃんがクローズアップされる。
 
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決して絶世の美人ではない。表情を崩すと見せる額のシワは如何ともし難いし、金髪でもないし、スタイルが良い訳ではない。とにかくいつも前向き・天真爛漫、話好き、世話好き、お洒落好き。そんなヒロインのルーをエミリア・クラークが熱演だ。「ターミネーター:新起動/ジェニシス(2015年)」のサラ・コナー役でブレイクしたが、常に男勝りの演技を続けながら、時折見せる色気でドキッとさせる不思議な魅力に小生も注目だった。
 
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6年勤めたカフェが閉店し無職となったルーは、家計を支えるため、地元の資産家の家政婦として雇われることになる。6ヶ月限定の主な仕事は、車椅子生活の一人息子の世話である。
 
舞台はウェールズのペンプローグ城とその城下町 
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この古城を持つ名家の息子ウィルが、冒頭の交通事故で実家に戻り、年若くして隠遁生活を送っているのであった。誰もが羨む将来を嘱望されたエリートを襲った悲劇。首から下は、僅かに指が動かせるのみ。現実を受け入れきれず、外部に心を閉ざしたきりの元ナイスガイをサム・クラフリン。「スノーホワイト」「ハンガーゲーム」シリーズに連続出演した売り出し中の男優だ。
 
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 この時は走り待ってたんですがねぇ...
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天真爛漫のルーに厭世観に溢れたウィルは嫌悪感を丸出しにするが、彼女は「お金のためよ!」と吐き捨てながらも、持ち前の前向きさで彼との接点を探っていくのだった。ルーの照らす真っ直ぐな陽の光に、少しづつ氷の心を溶かされてるいくウィル。彼から滲み出てきた本来の人柄と高い教養は、ルーが今まで出会った人には感じられなかったものだった。全く育ちも境遇も違う二人は次第に惹かれあっていく。
 
在る雨の日、二人がフランス映画のDVD「神々の男たち」を観る。生まれてこのかた字幕付き映画には無縁だった彼女の驚きと、鑑賞後の二人の感想の違いは、この映画の後半をも暗示する象徴的なシーンだ。なんと巧みな演出[exclamation]
 
小生は、外見に無頓着だったウィルが、ルーに無精髭を剃ってもらう場面が好きだ。非常にリアルかつセクシーな描写が、心を解き放った彼と、それを受け止めた彼女を表現した美しいシーンだった[黒ハート]
 
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ここまで鑑賞していると、仏映画の「最高のふたり(2011年)」とのダブり感が増幅される。主役の二人が男女となりラブロマンスに味付けを変えただけの設定に思えたが、中盤からストーリーの色合いが大きく違ってくる。
 
「ディグニタス」・・・スイスの尊厳死協会。安楽死を人間の権利として認め、医師の立会いのもと、自殺幇助する機関である。世界中からの受け入れを可能とし、過去に利用した人間の20%は社会生活に不安の無い健常者と言われている。 
 
ウィルは既にこの団体との契約を完了し、「その日」は刻々と近づいていたのだ。悲しみにくれながらも、息子の意志を尊重することにした両親は、「その日」以前に発作的な自死を選ばぬ為の監視役として、ルーを雇い入れていたのだった。
 
事実を知ったルーは、ウィルの「生きる目的」を取り返すべく懸命の努力を試みる。その試みが最終的に「二人の愛の成就」に連なっていく。好奇心から信頼そして恋愛に移りゆく男女の感情の機微の描き方が丁寧かつロマンチックだ。特に野暮ったい田舎娘のルーが、コケティッシュかつ一種異様なファッションを次々と纏いながら、美しく大人のオンナに洗練されていく様は、本作の見所の一つでもある。
 
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車椅子のダンスシーンでの輝くふたり
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ありきたりのストーリーであれば、ウィルが生きる喜びを掴み、愛し合う二人はメデタシメデタシ〜ハッピーエンドになる訳だが、今作のエンディングは違う。彼は、彼女を愛するがゆえの決断を下すのだ。
 
エンドロール時に、とめどもない寂寥感と共に秋風のような爽快感が入り混じった不思議な感覚に包まれる。男の生きる支えになろうと必死に愛を注ぐ女。女を愛するがゆえに、未来ある若い彼女の足枷になるまいと考える男。純愛と尊厳が幸せの意味を問う。悲しい結末ながら、ウィルの愛を一身に受けたルーは、一回り大きな女性となって人生の次の一歩を踏み出すのである。
 
末期医療患者の尊厳死や老々介護殺人を扱ったシリアスな作品も最近は少なくない。(「ミリオンダラー・ベイビー(2004年)も傑作であったが...」今作は、若い男女の「ラブロマンス」という全く異質のアプローチを持って、コミカルかつロマンチックに描きつつも、この現代の大きな社会問題を真正面から、観る者に訴えてきている。何よりも「ディグニタス」という自殺幇助団体の存在を知った衝撃[exclamation×2]
 
当然、賛否両論の評価の作品のようだ。それは、単に意外な結末に対してのもので、映画自体の完成度を非難するものではないはずだ。正直、小生は、ウィルの決断に対して、肯定も否定もできない。自分が当事者にならなければ答えは迂闊に出せない。明確なのは、ありきたりなハッピーエンドであれば、記憶に残らない映画になったという事だ。
 
未だかつてないタイプの「傑作」だと思う。
 
 
 
 
◎今回の注目[目][目][目]
 
エミリア・クラークが徐々に美しくなってく様は圧巻だったが、妹役の女優さんには最初から視線が釘付けなのでした。
 
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ジェナ・ルイーズ・コールマン
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 イギリスTVドラマ界では結構有名らしいが、本格的な映画出演は今作が初めてのようだ。
 
 
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[揺れるハート]結構、タイプなんです[揺れるハート] 
 

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「メカニック:ワールドミッション」&「ジェイソン・ボーン」 [上映中飲食禁止じゃ!]

似た者同士のお気軽なアクション作を続けて...
 
まずは、こちらから 
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殺し屋稼業から足を洗い平穏に暮らしていたビショップのもとに、過去に彼を裏切り逃走した兄弟子のクレインから殺しの依頼が入る。何の罪もない女を人質にとられたビショップは、やむなく依頼を受けることに。ターゲットは世界を裏で操る巨大フィクサーで……(ぴあ映画生活より)
 
シリーズ前作は未見なのだが、正直、ジェシカ・アルバ見たさだけなのであ〜る[黒ハート]
 
「トランスポーター」シリーズのジェイソン・ステイサム主演のアクション活劇。腕利きの暗殺者が組織を離脱し、隠遁生活へ。でも見つかってしまって、人質を取られ、いやいや指令をこなしながら、人質奪還をもくろむ...というありがちな設定である。何も考えず、ボッ〜と観るには最高の映画だ[あせあせ(飛び散る汗)]
 
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派手なアクションシーンや斬新な暗殺テクニックは見応えあり。禿げ上がったオッサンだが、ジェイソン49歳、頑張っております。兄貴分の54歳トム・クルーズがM:Iシリーズでいまだに奮闘しているので負けるわけにはいかないのだ[パンチ]
但し、この手の作品を見過ぎている為か、残念ながら新鮮な驚きは皆無。自然と見所は、女優陣に向かってしまう。
 
何と言ってもジェシカ・アルバ抜きでは、この作品の魅力は半減どころか消費税8%並みになる。童顔だが既に35歳〜熟しています[揺れるハート][揺れるハート][揺れるハート] 
 
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ゴールデンラズベリー賞の常連さんの面目躍如。B級ゲスアクションの傑作「マチェーテ(2010年)」でのキュートな大根役者ぶりに小生はトキめいたのだが、身体は成熟したが、おかげさまで演技力は全く成長しておりません[もうやだ~(悲しい顔)]
  
いいんです!こんなB級女優が存在しているからこそ、多様な映画を我々は楽しめるのである[どんっ(衝撃)][どんっ(衝撃)][どんっ(衝撃)] 
こんなに可愛くてセクシーなんだから〜染めブロンドでもOK
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熟女系演技派という範疇ならミシェル・ヨー54歳だ[exclamation&question] 
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「グリーン・デスティニー(2000年)」カッコよかったなぁ
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若い頃からオバサン顔なのだが、時折急に色気が滲み出るんだな〜
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今作中の隠れたヒットはラター・ポーガーム〜タイ出身の歌手兼女優だ[exclamation×2]
 
敵側のメッセンジャーとしてジェイソン親父を脅迫する役だが、なんとも魅力的だった[ハートたち(複数ハート)]
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これら美女軍団の強力なサポートの元、ジェイソン・ステイサムが八面六臂の大活躍の後、めでたしめでたしのハッピーエンド。そして次回に続く・・・というお決まりの作品でした。 
そうそう、 後半に、いぶし銀のトミー・リー・ジョーンズが予定調和的に登場して苦笑いしたりして...
 
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[ぴかぴか(新しい)]続いては、お待ちかねのシリーズ最新作[ぴかぴか(新しい)]
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世間から姿を消して生活していたジェイソン・ボーンの元に、元同僚ニッキ―が現れ、CIAの極秘プログラムが始動したという情報とボーンの過去にまつわる衝撃的な真実を告げた。ボーンは再び世間に姿を現すが、CIAエージェントのリーによって追跡され…(ぴあ映画生活より) 
 
「ボーン・シリーズ」は前3作すべてを観ており、結構お気に入りのアクション映画なのだ。前作「ボーン・アルティメイタム」も秀作であり、洒落たエンディングで「シリーズ見事完結」と拍手喝采だった。それからなんと9年の歳月をかけて復活するとは、新鮮な驚きと大いなる期待...そして一抹の懐疑心が絡み合う。
 
まずは、マット・デイモン〜老けたなぁ[かわいい][かわいい][かわいい]
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実年齢46歳だから前出の禿面・ジェイソンよりかは若いのだが、過去作のフレッシュな悩める暗殺者のイメージとは大分かけ離れてしまった。 
 
前作で、ボーンと生死を共にしたニッキー役のジュリア・スタイルズも老けたというより肥えたな...[たらーっ(汗)]
 
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9年の歳月を感じざる得ないが、深い絆で結ばれた元エージェント二人が命がけで再会する経緯は、シリーズを通して観ていないと理解できないかも。その点を完全にクリアしている小生は、二人に感情移入しながら序盤を観ていたが、嫌な予感通りというか、早々にニッキーが射殺される展開だ。これにて第1作「ボーン・アイデンティティー」からの共演者はすべて抹殺もしくは、出演交渉失敗?と相成った。
 
ニッキーが命に代えてボーンに渡した彼の消えた記憶の糸口が、CIAから命を狙われる毎度のストーリーとなる。真実を知りたいだけのボーンの行動が、組織に敵対したと断定され、抹殺指令をくだされるのだ。その陣頭指揮を執るのが、若くしてCIAのIT捜査部門の責任者となったヘザー・リー〜上昇志向が強い女捜査官をオスカー女優アリシア・ヴィキャンデルが好演した。自分の組織の暗闇を知らぬ彼女は、上司の命令に疑問を持ち、ボーンのCIA復帰を視野に入れ、作戦を開始するのだった。
 
ボーンに敵対するCIA内部に協力者が現れる展開も過去シリーズと全く同じ。2作目「ボーン・スプレマシー」から出演したパメラ・ランデイ役のジョアン・アレンと完全に被る。
 
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彼女の存在が、前2作の鍵となり、ヒットの要因のひとつだったと確信している私は、今作でのパメラのブロンド姿の復帰も期待していたが、それは叶わなかった。ジョアン・アレンは現在60歳...ん〜定年で無理かぁ〜[ふらふら] 
 
ジョアンの後を引き継いだ感の強いアリシア・ヴィキャンデル だが、前任とは全く違う性格のCIA局員を演じた。情に流されない頭脳明晰な若きエリートITお嬢様。出世欲も自己顕示欲も半端なく、自分の美しさも自覚しているが、周りに嫌悪感を抱かせない処世術も心得ている...完璧だぁ...小生には縁遠いタイプではあるが...[あせあせ(飛び散る汗)]
 
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出きれば、こんなシーンも観たかったけど[ハートたち(複数ハート)]
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そして、ボーンを付け狙うヒットマンにヴァンサン・カッセル
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こっちにも出てくるかぁ[exclamation&question]〜CIA長官にトミー・リー・ジョーンズ登場には苦笑い
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と、なかなかの共演者を揃え、圧巻のカーチェイス・シーン等で結構盛り上がるのだが、何せ脚本が過去作の焼き直し度が強すぎて、どうにも夢中になれない自分がいた。P・グリーングラス監督は、「キャプテン・フィリップス」では気を吐いたが、今作は「ボーンの亡霊」(洒落ではない)に取り憑かれすぎて、空白の9年間を埋める新味が出せなかったようだ。007のダニエル・クレイグも加齢と戦う主人公として敢えてリアルに描かれているのに。
 
唯一共感したのは、IT全盛時代の世代間のギャップだ。最新機器を駆使して、かつての難問をいとも簡単にクリアする若き世代は、人の心も容易にコントロールしようとする。国・組織への忠誠を誓い、情にかられながらも、盲目的に突き進むアナログ親父は、IT世代からは邪魔な存在なのだ。故に、トミー・リー・ジョーンズはアリシア・ヴィキャンデルにゴミのように排除されてしまうのだ。お〜怖っ[がく~(落胆した顔)]小生も気をつけよう...
  
シリーズは続くものと思われるが、次回以降は新展開が望めるのか?それとも、マット・デイモンが還暦を過ぎても頑固にワンパターンを踏襲し、ボーン=水戸黄門レベルまで延々と貫き通せるか?「ボーン・レガシー」のように主役交代となるか?これはこれで興味深い。 
 
 
◎おまけ
2作を通しての一番のオススメは、やはり微笑みの国タイの歌姫・ラター・ポーガームだね。 
なんとなく見覚えがあったのだが、迷作「オンリーゴッド(2013年)」で、ライアン・ゴズリングと共演していたのでした[exclamation&question]
 
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そんなクールな彼女の別の一面を[揺れるハート][揺れるハート][揺れるハート]
 
 
...そして、ラーマ9世=プミポン国王に黙祷
 

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「ハドソン川の奇跡」 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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御年86歳のダーティーハリーは、今もバリバリ健在なのである[パンチ]
 
2009年1月。マンハッタン上空で突如、飛行機が制御不能となる。サレンバーガー機長は飛行機をハドソン川へ不時着させ、乗員乗客155名全員生存という奇跡を成し遂げた。しかしその裏側では、機長の判断をめぐり国家運輸安全委員会の追及が行われ……(ぴあ映画生活より) 
 
実話である。
2009年当時、日本のNewsでも流されており、当然記憶には残っている。
だが、日本のマスコミが「事故」なのか「美談」 として報道したかは、うる覚えで、「川に強制着陸した」衝撃的な映像のみがクローズアップされていたイメージなのだ。勿論、その後の機長を取り巻く状況変化を詳しく報道する国内メディアは残念ながら無かったようだ。海外ニュース報道の限界を感じつつ、すでに記憶から消えかけている事件にスポットライトを当てたクリント・イーストウッド監督の眼力に拍手を送る[ぴかぴか(新しい)]
 
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トム・ハンクスが素晴らしい。
乗客の安全を守る為、永年のキャリアから得た最善の判断と正確な操縦をしただけで、一夜にして「英雄」に祭り上げられたベテラン機長の戸惑い。だが、判断を謝れば大惨事となった現実に目覚め、時間の経過と共に、恐怖心が増大していく。そして、自分の下した揺るぎない決断にも僅かな猜疑心も芽生え始める。彼の憶測を見透かしたように、安全委員会は、「空港に戻れるにもかかわらず、機長の判断ミスにより、最も危険な水上着陸を断行した」事件として調査を開始していく。
 
オープニングが、事故後の冷静さを取り戻した機長の悪夢から描かれ、彼の複雑な心境とこれから巻き起きる状況を示唆する見事な演出となっている。プライドと自信を漲らせながらも、自分の行動への疑問が、ミクロンのガン細胞が繁殖するように、徐々に大きくなっていく様を、トム・ハンクスが抑えた演技で見事に表現した。
 
中盤からは、事故当時の再現である。
本物のエアバスを購入して、撮影に使用するなんて・・・ハリーの本気、面目躍如だ[どんっ(衝撃)] 
作品を通して貫かれるリアリズムの源泉は、製作者達の妥協なきプロ魂と、やっぱりお金持ちは凄いよね〜なのだが、この重厚な迫力は一線級のアクション映画さえも凌駕する。鳥の大群が両エンジンに飛び込む想定外の事故から不時着までのわずか208秒間を、機長の決断と共に操縦室・客室及び管制塔でのそれぞれの人々の行動が濃密に描かれている。
 
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更に、後半の公聴会のシーンはサスペンス映画さながらである。
小生なら「全員助かったんだから、いいじゃない」なのだが、それでは済まさない正義の国アメリカ[exclamation&question] 英雄から一転して容疑者の立場となった機長が、徐々に追い詰められていく。理論上のフライトシュミレーションが、何度も無事に空港に帰還する場面がPCゲームのように再現されていく。万事窮した副操縦士の傍で、最後にサリー機長が示した提案とは...そしてその結果は...
 
単なる美談の再現ではなく、一人のプロフェッショナルが揺るぎない自信に忍び寄る影に怯える葛藤まで掘り下げて表現した人間ドラマである。同時に真実の実証の困難さ・・・ 反証の材料を提出できなければ、「英雄」は「犯罪者」として簡単に裁かれる「恐ろしさ」をも同時に描いている。そして人々の運命が、一瞬の偶然に左右されてしまう儚いものである事まで静かに訴えている。
 
夫との電話でしか登場しない妻役のローラ・リニー、憎らしいほど体制側を演じた安全委員会の紅一点アンナ・ガン、毅然とした客室乗務員役アン・キューザック(ジョン・キューザックの実姉らしい)など、渋い小生好みの脇役女優も充実しているが、何と言っても副操縦士ジェフ・スカイルズ役のアーロン・エッカートが秀逸だ。
 
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操縦室という密室で機長の唯一のパートナーとして、「サリーの判断」を一片の曇りもなく支持する実直な男を好演した。サリーの孤独な戦いの中、自己を貫き通せたのは、家族の支えとこの親友かつ信頼すべき相棒ジェフの存在があってこそなのである。公聴会での最後の彼の言葉〜張り詰めた雰囲気でのナイスなジョーク〜アメリカという国の深さが味わえる場面だった。 
 
老境の域に達した映画監督が、常人では考えつかない演出や奇抜な映像で世間を驚かせる事が多いが、イーストウッドほど一貫した正攻法で「人間」を描き続ける人も珍しい。奇を衒わず、緻密な構成・演出を自然に魅せる力は、現代の映画界にあって特筆される。圧巻の作品であった[ぴかぴか(新しい)]
 
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「怒り」 [上映中飲食禁止じゃ!]

評判らしいこの作品も平日夜の錦糸町なら
ガラガラなのです( ̄▽ ̄) 
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これだけのキャスト&スタッフを集めたのだがら、きっと凄い作品か!
いや、4番バッターばかり集めても試合には勝てないのだ[むかっ(怒り)] 
 
八王子の閑静な住宅地で陰惨な殺人事件が発生する。室内には夫婦の遺体と、被害者の血で書かれたと思われる赤黒い“怒“の一文字が残されていた。担当刑事の南條と北見は捜査を進めた。しかし、逃亡した犯人に関する有力な情報は得られないまま1年が経ち……
(ぴあ映画生活より) 
 
高評価もうなずける完成度の高い作品である。
 
3つのストーリーは、決して交わる事なく、別個の完結する愛憎劇として展開していく。 どの物語を中心に置くかは、観客の感性に任される。そして傍観者たる我々は、三つの物語に潜む殺人犯を胸を痛めつつも、推理する権利を与えられるわけだ。
 
いずれの物語も愛深きゆえの底無しの疑惑から導き出される答えが待ち受ける。それは、絶望的な裏切りか真実の愛か深い悲哀と悔恨か。
 
原作の持つ深い闇と呪縛を振り払うかのようにもがく俳優陣の激しい演技が続出!
 
一人で社会生活を送るには若干の知能障害を抱える娘・愛子の幸せを心から望む父・洋平。東京生活で身も心も壊れかけ、実家に連れ戻されたのも束の間、娘は父と同じ漁協に勤める男と同棲を始めてしまう。仕事に実直な青年に好感を持つ洋平は、二人の交際を喜びながらも、前歴不詳の彼に一抹の疑惑を持つ...千葉編での渡辺謙宮﨑あおいによる父娘の描写は、想像通りの真に迫った非常に体温の高い演技の応酬であった。俳優としての存在感を消した謎の男役の松山ケンイチもある意味、名演技か。
 
「男に尽くすのが習性と化した女」をはかなく演じた宮﨑あおい
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東京編は異色の組み合わせ。
藤田優馬は、病弱の母親を抱えてはいるが、生活面では何不自由ないありふれたエリートサラリーマンだ。唯一、彼がゲイである事を除けば...夜な夜なパーティーに顔を出し、「お相手」を探す彼が、見初めた男が大西直人。同棲を始めた二人は徐々に信頼と愛情を深くしていく。明るく元気、母想いの好青年が、夜になると猛禽の如く目を光らせて、「男を漁る」姿を、妻夫木聡が熱演。一方の綾野剛は、いわゆる「ネコ(受け)役」として女性的な柔らかい演技を披露する。二人とも芸域の広い俳優ではあるが、「ここまでやるか」レベルの演技には拍手喝采である。
 
二人のラブシーンも、意外や、全く不快感無し[パンチ]
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沖縄編は、フレッシュな新人と性格俳優の組み合わせ。
沖縄の無人島に住み着く自由人風の男・田中信吾に森山未來。この奔放な男に憧れを感じる現地の高校生カップルに、1200名のオーディションから選ばれた佐久本宝と、今や売り出し中の広瀬すず。千葉・東京編と違い、青い空と海をバックに、明るく爽やかな展開が続くが、後半から暗転。森山の人間の2面性を極端に表現した演技は圧巻である。
 
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「愛する人を信じることができますか」という有り体の宣伝文句が全面に押し出されている。だが、この作品は、誰しもがが心の奥底に抱えている「悪」とそれに抗えない「心の弱さ」を主題とし、人間の根源的な本能をえぐり出していると思われる。
 
原作から映画化に至るまで、大変練りこまれて作られているのは理解できるのだが、残念ながら個人的には全く胸を打たれなかった作品となった。日本を代表する俳優陣の演技の応酬が激しすぎて、長時間の鑑賞に疲労感が伴う。主人公が設定されていない作品だが、出演者はほぼ全員がピンで主役を張れる役者達。例え、抑えた演技でも、どうしても強い個性が滲み出る。全員主役では、ストーリー自体を「喰って」しまう。原作の吉田修一氏が、豪華キャストを要望した結果らしいが、たとえ一流小説家でも映画は所詮素人なのだ。スポーツ界では、フロントが選手起用に口を出すチームは、まず勝てない。
 
また、原作・演出の嗜好が、小生の感性と合わなかったのが、最大の理由かもしれない。 
多くのとめどもない「怒り」が様々な場面で迸る。名優たちの心の叫びが激しく木霊し、見る側の神経まですり減らす。三つの独立したストーリーを、あえて犯人探しと結びつけ、サスペンス風に仕上げた本作を、素直に受け取れない。
「怒り」が主題であるならば、愛する人を疑った自分に怒りを覚える甘いセンチメンタリズムに焦点をあてずに、今作の「怒り」の源泉である「今の社会」に対する問題点を正面から捉えるべきではなかろうか。
 
犯人が凶行に及んだ動機に潜む今の格差社会を...
米軍兵士の沖縄での暴行事件が後を絶たない訳を...
 
おのずと、現在の病んだニッポンの姿が浮かび上がるのだが、今作は、その点をサラリとかわした。 まぁ、そこに踏み込んだ作品なら、間違いなく一般受けしないだろうが...
最近の邦画のヒット作が、やたらと観客を感傷的にさせる事に腐心しているのが非常に気になるつむじかぜでした。
 
今作の収穫は、多くの主役級が跋扈する中、ちょい役で軽い光る演技の「池脇千鶴」と朝ドラとは別人の美しさを魅せた「高畑充希」かな[わーい(嬉しい顔)]
そして何と言ってもあえて売れている今、清純派女優から脱皮宣言した「広瀬すず」の勇気[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)]
 
CMでしか見たことがなかったが、 
この娘は、将来が楽しみです[exclamation] 
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デビュー時の宮沢りえを彷彿させるが、この「役者の目」は本物かもしれない[かわいい]
 

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