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『女子ーズ』とBuono! [上映中飲食禁止じゃ!]

 日本敗戦のショックから立ち直るため
こ〜んなアホらしい作品で...
 本日は珍しくアイドルタレントネタです[あせあせ(飛び散る汗)]
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監督・脚本:福田雄一
 
出演:桐谷美玲 藤井美菜 高畑充希 有村架純 山本美月
 
キャラクターデザイン:島本和彦
 
世界征服を企む邪悪な怪人たちに立ち向かうため、司令官チャールズが集めたのは5人の女子たち。なぜならそれぞれの名字に“色“が入っているから。不本意ながら戦隊“女子ーズ“となった少女たちだが、恋に仕事に美容にヤボ用と大忙しでなかなか揃わない。(ぴあ映画生活より)
 
別にヤケクソになった訳では無く、バラエティ界の奇才・福田雄一監督(「コドモ警察」「HK/変態仮面」)の新作に心惹かれての鑑賞なのだ。無論、小生はコスプレ好きでもなければアイドル・オタクでも断じてございません[ダッシュ(走り出すさま)]
 
今、旬と言われる若手美人女優揃い踏みらしい[かわいい]
世情に疎いこのオッチャンでも全員、面識アリだったので、看板に偽りなしである。 
 
 
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民放TVドラマを滅多に見ない小生だが、NHK朝ドラの有村架純(あまちゃん)、高畑充希(ごちそうさん)、先週の大河ドラマ・「官兵衛」で見事な最期を遂げた桐谷美玲は、記憶に新しい。山本美月は最近CMでやたら見かけるし、昔、甲子園のポスターに出ていた藤井美菜も覚えていた。
 
女優」というより、まだ「タレント」イメージが強いこの5人の美女を、世界征服を目論む怪人達と戦う「正義の戦隊」に変身させた発想がユニークである。キャラクターデザインの島本和彦は、私と同じ「ウルトラマン」「仮面ライダー」世代。福田監督は、世代を超えたスーパーヒーロー達のイメージを遊び心一杯に取り込みながら、今時の「女子(ジョシ)」の姿を、軽いタッチで描いてみせた。
 
基本的な構成は、「仮面ライダー」+「ゴレンジャー」。これに「チャーリーズ・エンジェル」の風味が加わり、戦うアイドル「桃色クローバーZ」みたいな雰囲気を醸し出す。子供達が憧れた70年代ヒーローも、今や友達感覚のファイティング・アイドルにとって変わった世相を反映する。
 
主役は、大河ドラマ出演で頭一つ抜きん出た桐谷美玲。可愛いけど鼻につく男顔負けの仕事人間、真面目過ぎて協調性に欠けるが、実は寂しがり屋さんだ。彼女をリーダーとして、戦隊「女子ーズ」は、日夜、地球平和を守る為、仕事の合間に、怪人どもと死闘?を繰り広げる。
 
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5女優の実力は紙一重で、その差はここまで来ると個人的な好き嫌いの範疇である。美人さんはヘルメット被っても美人さんで、とにかく昨今の売れ線女優は皆スリムなお人形さんタイプだ。色気ムンムンのファラ・フォーセットみたいなタイプは居ない。しがないオッチャンが選り好みするのは贅沢な話しだが、どの女優も自分の娘だったらサイコーという感じで、残念ながら愛人タイプは存在しない。唯一、イエローの高畑充希の女優としての存在感が、ひとり際立っていたように私は感じた。
 
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今時女子は、上司に敬語を使わない。自分が興味の無い男性に対してはゴミ並みの扱いだ。
「女子ーズ」と司令官チャールズや怪人達とのやり取りは、絶滅した大和撫子を懐かしむオッチャン世代は、呆れて笑うしか無いのだ。美人女優達に「ウ◯コ」を連発させる脚本は、ギャグを超越してM的な趣向さえ感じてしまう[たらーっ(汗)]
それでも、仕事に恋に一生懸命な麗しき彼女達は、まさしく今の素敵な日本女性の代表なのだ。ナンセンスギャグ満載の中で、今作はサラリと現代の世相を表現している処が憎い仕上がりとなっている。
 
「女子ーズ」の扱いに辟易するチャールズ(佐藤二朗)の苦々しい表情が、今の自分に重なったりして、冷や汗かきながら笑える[ふらふら][わーい(嬉しい顔)]作品だった。シネマの大画面で観る価値の是非は別にして、「こんな映画もあっていい」のだ[exclamation&question]
 
10年後、この5人の中から真の女優が生まれる事を心から望む。
北川景子もデビュー作は「セーラームーン」だぜ[パンチ]
 
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◎おまけ
 
前述の通り「女子ーズ」は今やAKBと並んで空前の人気グループ「桃色クローバーZ」に重なるイメージが強いのだが、このタイプなら、へそ曲がりの小生のイチ押しはこのグループだ[パンチ]
 
ベリーズ仮面
 
 
 
3年程前、BS深夜番組で偶然で発見してお気に入りになった。無知な小生は、コミック・グループだと思っていたが、その実態はハロプロ所属の「Berrys工房」という正真正銘のアイドル・グループだった。既に結成10年が経過しているが、「モーニング娘。」や「AKBファミリー」「ももクロ」とは一線を画し、マニア向けの二流路線を地味に走り続けている。ベテランの割には素人臭い歌とダンスとコントが味わい深く、私の眠っていたアイドル魂を、ちょびっと刺激したグループなのだ。とにかく7色全部揃っているのが素晴しい[ダッシュ(走り出すさま)]
 
その中でも、小生はピンク脚線美に釘付け[揺れるハート]
 
 あなたは何色がお好き?
 
 
◎衝撃のオマケ
 
このBerrys工房から派生したユニットBuono(ボーノ)
これは、一聴の価値あり[るんるん]
 
「カタオモイ」
 
 
Berrys工房のホワイト(嗣永桃子)、オレンジ(夏焼雅)、同じハロプロ所属の℃-ute(キュート)から鈴木愛理の三人から成るロック・アイドル・ユニット。
正直、小生は、生まれて初めてアイドルグループのパフォーマンスに感動してしまいました[もうやだ~(悲しい顔)]
どの娘が可愛いとかの視点ではなく、生のロックバンドと、このレベルで歌えるアイドルは希有だ。プロのミュージシャンと比較するのは酷だが、超絶の歌唱力とは言えないまでも、三人とも低音までしっかりコントロールされているし、声質の組み合わせのせいか何しろユニゾンが美しい...48人で歌っているどこぞのグループとは、音楽的な質感が段違いだ。「しっかりロックしているじゃん」のアイドル達なのだ[exclamation×2]
 
 「初恋サイダー」
 
 
 メンバーの学業上の理由からか、2013年以降、実質活動停止状態。
再活動を期待するオッチャンは、君達の復活コンサートなら恥ずかしくても絶対行くぜ[exclamation×2]
 

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『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』 [上映中飲食禁止じゃ!]

GW明けから、洋画・邦画、大作・ミニシアター系に関わらず、食指をそそられる映画がめっきり減っていたのだが、漸く「これは観たい[exclamation]」という作品と出会えました[わーい(嬉しい顔)]
 
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監督・脚本:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
撮影:ブリュノ・デルポネル
音楽:T=ボーン・バーネット[るんるん]
 
キャスト:オスカー・アイザック キャリー・マリガン[黒ハート] ジョン・グッドマン ギャレット・ヘドランド 
ジャスティン・ティンバーレイク F・マーレイ・エイブラハム スターク・サンズ アダム・ドライバー
 
1960年代。フォークシーンが静かに勃興する中で、ライブハウスで歌うシンガーのルーウィンは、売れない現状や女友達を妊娠させてしまったりで、音楽の道を諦めようかと悩んでいた。様々な想いが渦巻く中、売り込みのためシカゴのライブハウスへ向かい……。 
(ぴあ映画生活より)

 
60〜70年代アメリカン・フォーク好きには堪らない作品だ。
小生は筋金入りのブリティッシュ・ロック小僧であったが、ボブ・ディランを筆頭にPP&MやCSN&Y、ポピュラーな処ではS&Gなどは、それなりに聴いていた。だが、当時から英語力弱しの為、フォークの命である「詩」の意味をダイレクトに感じられず、このジャンルの音楽には残念ながら嵌り込むまでには到らなかった。
但し、最近は、歳のせいかアコースティック主体のルーツ・アメリカン・ミュージックがお気に入りになってきており、歌詞の対訳も流れるこの映画に、すっかり身も心も奪われた感じになった。
 
音楽が主役ではあるのだが、ひとりの売れないフォークシンガーの生き様をリアルに描いたコーエン兄弟の感性が光る佳作である。フォーク・ミュージックに興味が無くても十分鑑賞に堪えうるどころか、本作に感動し、古き良きアメリカの音楽に目覚める方が続出してもおかしくない位の出来映えである。
 
冒頭のオスカー・アイザックの弾き語りから一気に引き込まれる。
気分はいきなり、映画館のシートから紫煙くゆる60年代のニューヨークのライブハウスにタイムスリップだ。
 
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アメリカのトラディショナルソング「HANG ME, OH HANG ME」
 
歌の吹替え無しの一発生録らしいのだが、映画初主演オスカー・アイザックが凄すぎる[exclamation] 
本物のミュージシャン並のギターの巧さと声の存在感に圧倒される。(なんと彼はジュリアード音楽院卒業なのだ)
まさにハマり役、音楽家に進んだ方がもっと早く成功したかもしれないと思わせる実力の持主だ。
 
デュオを組んでいた相棒の自死により、ソロ活動を続けるフォーク・シンガーのルーウィンは、今夜もNYのガスライト・カフェで切々と歌う。カネ無し、宿無しの彼だが知人は多い。借金はお手のもの、女にもモテる、ギター片手に友人宅を転々とし、リビングのソファを拝借する日々が続く。持ち前の人懐こさと図々しさは、他人からは疎まれる事はあっても嫌われはしない独特の彼の才能だ。
 
音楽に命を賭けている訳ではない。名声も名誉にも興味が無い。
ただ、彼にとって歌う事自体が生活そのものなだけであって、不幸なのは生活の糧をそれに頼っている事なのだ。
そんなその日暮らしから脱する気もなく完全順応しているルーウィン役を、オスカー・アイザックが自然体で好演。
 
或る日、昔いつものように一晩世話になった女友達ジーンから「妊娠」している事実を告げられる。
60年代の米の無節操な男女関係を彷彿させるのだが、恋人同士でもない二人が出産を決意する道理は無い。
ルーウィンは、中絶費用捻出の為、珍しく稼がざる得ない状況に追い込まれるのであった。
 
紅一点ジーン役にキャリー・マリガン
その恋人であり歌仲間ジム役にジャスティン・ティンバーレイク(彼は本業ミュージシャン)
 
ネイティブ・ブロンドかは定かではないが、ショートヘアがメチャ似合う[黒ハート]
最近は良作への出演が目立つ、赤丸上昇中の女優だ[exclamation×2]
ルーウィンのデュオ時代を偲ばせる曲が劇中流れる設定なのだが、歌っているのは
オスカーとマーカス・マムフォードというイギリスのフォーク歌手
実はキャリー・マリガンの旦那様なのだ[かわいい]
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彼らが歌う「FIVE HUNDRED MILES」も味わい深い[ぴかぴか(新しい)]
のだが、これってほとんどPP&Mの世界なのだ[るんるん]
 
オリジナルはコチラ[左斜め下]
 
 
一念発起のルーウィンは、くだらないコメディソングのレコーディングに進んで参加。見ず知らずの男達とシカゴまで車を走らせ、大物プロデューサーのオーディションを受けに行く。そして、初めて自分の音楽を見つめ直したルーウィンは、実家に戻り、ついに船乗りとして稼ぐ道を選択するのだが...
 
ルーウィン・デイヴィスの永かったであろう音楽生活の内のたった1週間に光を当てた構成だ。
コーエン兄弟は、NYの無名のミュージシャンの人間そのものに、さりげなくしかし冷酷なまで繊細に迫る。
 
非常に中途半端に優しい男であり、かつ無責任な野郎である。決断力に乏しく、最期には「逃げる男」である。
飼い主に返す為、四六時中、猫を可愛がる姿。(この猫の演技も秀逸[exclamation&question]
道中を共にした意識不明の仲間を助けながらも、結局、車の中に猫と共に置き去りにするシーン。
ジーンより以前に妊娠させた女性が、彼に内緒で子供を産んでいた事を知りながら、彼女の家を通り過ぎる場面...
そんなルーウィンの人間的な弱さを刳り出しながら、彼が造り出す天上の音楽を賞賛し、なおかつその音楽が必ずしも売れるとは限らない人生の切なさを垣間見せる。そんな淡々と続き、誰にも知られぬまま朽ち果てるであろう彼の音楽、生き様への大いなる賛歌になっているのである。
 
年老いた認知症の父親の前で歌った「THE SHOALS OF HERRING」
 
 
今宵もガスライト・カフェのステージに立つルーウィン。
デュオ時代の曲「FARE THEE WELL」を思いを込めてソロで歌い切る。
これからの道を自らに納得させるかのように...
一瞬デジャヴを彷彿させるラストシーンは、しがないその日暮らしが永遠に繰り返される事を暗示する。
その傍らに、若き日の「ボブ・ディラン」の後姿が...次代を席巻する事になる彼の歌声が閑かに鳴り響くのだった。
 
 
 ボブ・ディラン「FAREWELL」(未発表曲)をバックに予告編を...
 
 
60年代の冬のNYを舞台に、名も知られぬまま消えていったフォーク・シンガーの他愛も無い一週間を濃密に炙り出した、まさにガスライトのように仄かに煌めくポエムである。
人間一人一人に人生があるように、音楽家それぞれに「自分の歌」があるのだ[ぴかぴか(新しい)]
 

インサイド・ルーウィン・デイヴィス

インサイド・ルーウィン・デイヴィス

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2014/01/15
  • メディア: CD

サントラ盤即買い〜蘇る映画の感動〜流石、T=ボーン・バーネットの世界[ぴかぴか(新しい)]
 
 
◎おまけ 何と云っても本作の成功はオスカー・アイザックの歌唱力に拠る処大なのである[パンチ]
 
 彼の2011年の出演作「10 years」(日本未公開)でのシーン
やっぱり、いい声しています[るんるん]ほんまに俳優さんかい[がく~(落胆した顔)]
 
 
 

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『とらわれて夏』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督・脚本
ジェイソン・ライトマン
原作
ジョイス・メイナード
キャスト
ケイト・ウィンスレット ジョシュ・ブローリン
トビー・マクガイア ガトリン・グリィフス
 
9月の“レイバー・デイ“を週末にひかえたある日。アメリカ東部の静かな町で暮らしていたシングルマザーのアデルと息子のヘンリーの前に逃亡犯のフランクが現れる。強要され、ふたりは自宅でフランクを匿うことになるが次第に3人は心を許しあうように。(ぴあ映画生活より)
 
Labor Dayとは、アメリカの祝日「労働者の日」であり、9月の第一月曜日と定められているそうだ。
そして、米国人にとって夏の終わりの意味するイベントでもあるのだ。
 
ケイト・ウィンスレット主演の心温まる小品。
オスカー受賞の 愛を読むひと<完全無修正版> [Blu-ray] 並のハードな濡れ場てんこ盛りを、予告編からイメージしていたのだが、良い意味で裏切られた。
 
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閑静な住宅地に暮らす母子家庭に強引に住みついた脱獄犯。
恐怖の時間のはずが、いつしか永遠に続いて欲しい幸福の時に変わる様を、ヘンリー少年の視点で描く。
 
悲惨だった離婚劇からこころの病いに陥った母アデルを、必死に支える息子ヘンリー。
男の愛を失った母に笑顔を取り戻そうと、可愛いく模範的な子供役から逞しい恋人役まで必死に演じるが、母の心の隙間を埋める事は出来ない。子供はあくまでも子供であり、母親の「オトコ」にはなれないのだ。そしてアデルは息子の成長をただ見つめているだけの無味乾燥な日々を閑かに送っていた。
 
日常生活に大きな支障は無いが、心を病んだ母親役を、冒頭からケイト・ウィンスレットが巧みな演技で魅せてくれる。些細な事で神経過敏となり放心する症状をごく自然に演じる彼女は、紛れもなく今のハリウッドのトップ女優だ。
 
この不思議な関係の母子の間に突然の闖入者が現れる。この心優しき脱獄犯にジョシュ・ブローリン。良作に多く出演する名バイプレイヤーだが、日本では全く知名度が上がらない残念な俳優でもある。この逃亡者フランクの存在が、いつしか母アデルの心と身体の隙間を徐々に埋めていく。
 
そこに至る描写が非常に心憎いばかりだ。過激なベッドシーンより遥かにエロチックなのだ。今作では、ケイトは自慢の豊満な裸体を全く披露しないが、想像力を掻き立てる演出により扇情的な映像となっている。しかも、息子ヘンリーの視点から描く事により、「母親を取られる」恐怖と「男女の性」への興味の狭間で打震える思春期の少年の心情をも見事に表現している。
 
偶然の手のふれあいから...
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徐々にエスカレートし...
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そして「オンナ」に戻ってしまった母に呆然のヘンリー
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干涸びた中年女性が瑞瑞しい少女の潤いを取り戻す
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母親の変身ぶりを驚き喜びながらも、微かな嫉妬をヘンリーはフランクに覚える。だが、ヘンリー自身も彼に「強い父親像」を重ね始め、離れ難い存在として認めていく。
 
男に愛されて本当にケイト・ウィンスレットが徐々に美しくなっていく。 まさに17年前の「タイタニック」の輝きを取り戻したようで、彼女の演技力の高さと緻密な演出が功を奏した感じだ。いや、ケイトの素の美しさと言うべきか。(だから彼女には、垂れ乳は別にして、常にスリムでいてほしいと思うのです。彼女の体重増減率の高さは恐ろし[あせあせ(飛び散る汗)]
 
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ついにアデルは町を出て、国外の新天地でフランクと生活をする決心をする。一方、脱獄犯への捜査網は徐々に近隣にまでおよび始める。ヘンリーは、自分が棄てられる危惧を感じつつも、この脱出劇の完遂に全力を尽くすのだが...
 
サスペンスタッチながら、手に汗を握る展開というより、中年男女の熱く短い愛の5日間を濃密に描いたラブロマンスの色彩が濃い。過去の恋愛による大きな傷痕を抱える二人が、お互いの失くしたパーツをまさぐるように愛し合う様を、過激な描写抜きの美しい映像に落とし込んだ技術が秀逸である。更に、母が女に変わる様を目の当たりにした思春期の少年の揺れる心情をも描き、彼自身も少年から青年に脱皮する青春映画の側面をも見せる心憎い構成となっている。
 
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5日間という僅かな時間で、一生賭けて貫ける男女の恋愛はあり得るか?
現実離れした設定に思えるが、小生も今の年齢になって解る気がする...答えはYESなのだろう。
生涯の伴侶と信じた者に裏切られ、永年に亘り愛に渇ききった孤独な男女が偶然出会い、心を通わせれば、自然と身体も重ね合わせるのは自然の道理。そこから捧げるものと求めるものの二人の価値が一致したなら、ゆきずりの恋が本物の愛に昇華するのに、時の経過は意味をなさない。
 
...と云う風に、自分にとっては現実離れした話しなのだが、感じ入った次第です[ダッシュ(走り出すさま)]
 
ありきたりながら心温まるラストシーンに納得。
真実の愛は永遠であり、女性は「オンナ」として愛されれば、いつ迄も美しい「女」で在り続けるのだ[どんっ(衝撃)]
 
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 [ぴかぴか(新しい)]ピーチパイのほのかな甘味が、永遠に3人を包み込む[ぴかぴか(新しい)]
思い出で終わるはずだった少年の短い夏の日が、家族の生涯の幸せに繋がっていく...
3俳優の演技の波長が美しく絡み合う 
素敵な小品[ハートたち(複数ハート)]
 
 
 
 

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『キャプテンアメリカ/ウィンター・ソルジャー』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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監督:アンソニー・ルッツ ジョー・ルッツ
 
キャスト:クリス・エバンス スカーレット・ヨハンセン セバスチャン・スタン
アンソニー・マッキー コビー・スマルダーズ フランク・グリロ エミリー・ヴァンキャンプ
ロバート・レッドフォード サミュエル・L・ジャクソン
 
アベンジャーズのメンバーとともに最大の危機から地球を救ったキャプテン・アメリカ。それから2年、彼は国際平和維持組織“シールド“の一員として活動していた。ある日、長官が何者かに襲われ、その事件を機に仲間であるはずの“シールド“から命を狙われ……。(ぴあ映画生活より)
 
 
アベンジャーズの熱狂的ファンでは無いのだが、評判の良さに惹かれての鑑賞である。
 
各ヒーローの単発映画をほとんど知らずに観た「アベンジャーズ(2012)」が、細かい設定は判らずとも、とにかく面白かった。今回もキャプテンアメリカ前作を未鑑賞のままのチャレンジなのだが...何とかなると思っていたが、何とかなった[わーい(嬉しい顔)]
 
そもそも、第2次大戦中のアメリカン・ヒーローが現代に蘇っている事自体に違和感を覚えていたのだが、前半の30分でその理由を婉曲的に教えてくれる、非常に初心者にも優しい構成になっている。今回の宿敵となるウィンター・ソルジャーことバッキーとスティーブの過去の関係も一応理解出来た。
初心者ゆえに、冒頭でフューリーが殺されてもショックを受ける事なく、それよりもロバート・レッドフォード(喜寿でっせ!)の登場に唖然とする小生だったのだが...
 
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前作を観ていたら、登場人物への思い入れ含めてもっと映画にのめり込めたと、残念がらせるほどの素晴しい出来映えである。無用な考えの暇を与えないスリリングな展開と圧倒的な映像は、まさに現代アメリカ映画の王道であり、136分の上映時間が、あっという間に過ぎ去った感覚だ。
 
そして「アベンジャーズ」に登場の男どもにはあまり興味の無い小生でも、女性陣との再会には大喜びなのである。
 
 ムチムチのブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンセン
相棒のホーク・アイは何処行った?
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スリムなマリア・ヒル(コビー・スマルダーズ
前作以上にアクティブに大活躍[パンチ]
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 両名とも素顔も素敵な女優だ
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今更ながらだが、キャプテン・アメリカが他のアベンジャーズ・ヒーロー達と異なる点は、生身の肉体が武器である事だ。アイアンマンのような装備は無く楯しか持たない。ハルクみたいに変身もしなければ、神の子ソーとは生まれが違う。人間そのものであり、戦い方は第二次大戦時と変わらぬ必殺アナログ式なのだ。この設定が、荒唐無稽なSFアクションでありながらも、高純度なリアリティを維持している秘訣のような気がする。
ブラック・ウィドウと比較されるスティーブの時代遅れで堅物な道徳観も、親爺世代からすれば拍手喝采[exclamation&amp;question]
 
「清く正しく美しく」の正統アメリカン・ヒーロー〜まさに古き良き米国の良心の象徴〜をストレートかつCGには見えない最新の映像技術と、緻密なアクション演出をもってスケール豊かに描いた秀作であった[手(チョキ)]
 
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日本で云えば「のらくろ」かな[あせあせ(飛び散る汗)]
 
爽快感と余韻を残しながらエンディング。エンドロール後には、お決まりの次回予告だ。
ハリウッドある限り半永久的に続くであろう「アベンジャーズ・シリーズ」。まさにヒーローは永遠なり。
 
ここまできたら、「スーパーマン」も「バットマン」も「スパイダーマン」も仲間に加えて、えーいキックアスの「ヒット・ガール」も入れて、空前のアメコミ・ヒーロー戦隊結成じゃ[どんっ(衝撃)]
これに立ち向かう悪の結社などこの世に存在しないだろうが...[ダッシュ(走り出すさま)]
 
◎とにかく次作へのオッチャンの興味深い点は・・・
 
堅物キャプテンアメリカと冷徹ブラック・ウィドウ(S・ヨハンセン)の恋愛はあり得るか?
 
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それとも、或る時は看護師、或る時はシールドのエージェント13のケイト(エミリー・ヴァンキャンプ)の清楚な魅力にキャプテンはイチコロとなるのか・・・
 
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果たして、赤毛かブロンドか? 
と、下世話な趣向に思わず走ってしまうのでした( ̄ー+ ̄) 
 
とにもかくにも気分爽快な1本でございました[ぴかぴか(新しい)]
 
 
 

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『テルマエロマエⅡ』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 シリアスな映画鑑賞が続いたので...今回は軽めに[グッド(上向き矢印)]
 確かに『T2』ではあるが...
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監督:竹内英樹
出演:阿部寛 上戸彩
 
斬新なテルマエ(浴場)を作ったことで人気者になった浴場設計技師のルシウスは、コロッセオに剣闘士の傷を癒すテルマエを作るように命じられ、悩んでいた。そこでルシウスは再び古代のローマ帝国から現代の日本へとタイムスリップし、平たい顔族と再会する。(ぴあ映画生活より)
 
 
実は我家は、銭湯を営んでいたのです。
 
北陸の片田舎から裸一貫で上京した祖父は、風呂屋に住み込み、番頭さんの永い下積みを経て、漸く独立開業した銭湯が、東京の下町・向島の地。そして商売熱心な祖父は、戦前には都内に4軒の銭湯を経営するまでの立身出世を遂げたらしい。しかし、仕事に情熱的な祖父は、「飲む」「打つ」「買う」にも貪欲だったらしく、戦争の混乱と共に、戦後はほとんどの財産を失くし、結局は、最初に開業した銭湯だけで自ら身を粉にして働く生活に逆戻りする事になったそうだ。
 
子供だった私は、祖父の仕事を手伝うのが大好きだった。燃料となる廃材を一緒にリヤカーで運び、燃えやすい長さにノコギリで切リ出す。ボイラーに種火から火を起こし湯を沸かす。男子一生の夢と云われる「番台」も当たり前のように座っていた。銭湯は連日盛況で、まさに下町の社交場となっており、子供心に我家の商売に誇りを感じていた。
 
燃料が薪から重油に変わった直後に石油ショック、続けてざまにマンションブーム。多くの家庭が、自宅にユニットバスを持つ時代となり、銭湯の経営も徐々に悪化。その最中に祖父は逝ってしまった。別の仕事に就いていた父は、人を雇い入れながら、二足のわらじで経営を続けたが、結局、私が大学生の時に廃業したのだった。当時、まだ近所では一番高かった銭湯のトレードマークである煙突が取り壊された時は、涙が止まらなかった。
 
そんな訳で幻の銭湯三代目旦那としては、「風呂」には拘りがあるのです[パンチ]
銭湯廃業後も、風呂に入らない日は、重病の時を除いて一日足りとも無い。真夏でも、必ず湯船に浸かります。
その為、単身赴任中の現在でも水道料金は高め、頻繁な追い炊きによりガス料金は4人家族並みであります[ダッシュ(走り出すさま)]
そして、無類のサウナ・温泉マニアです。とにかく、定期的に広〜い湯船で身体を温めないと、アイデンティティを維持できないのです。
 
...と、思い出に浸りましたが、そんな愛着を持っての鑑賞です。
 
前作ほどの笑撃度は無いものの、気楽に拝見できました。
我々とって当たり前の日本の生活様式が、世界標準では非常に「斬新かつユニーク」で或る事。
まさに「COOL JAPAN」を日本人自身に再発見させてくれる構成になっている。
 
特に今回は、国技である「相撲」にも脚光を当てている。
 
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曙、琴欧州の登場はご愛嬌として、神事から派生した現在の相撲に対する異国人の評価が面白く、かつ小気味好かった。しかし、白木みのる、松島トモ子、イカ八郎、そして浪越徳治郎のそっくりさんの登場は、私の世代なら「ニタリ」なのだが、若い方々には到底理解不能であったろう。随所に仕込んだコネタは、幅広い客層を掴み切れておらず、オッチャン限定となっており、手の込んだキャスティングのつもりがかえって致命傷となった新作であった。
海外ロケ、高度なCG、高価な役者を揃えた意気込みは完全に空回りで、単なるエンタメ作品の域を越せなかったのは残念だ。お笑いだけなら、ここまでカネ使う必要なし[パンチ]
 
ストーリー云々を語るほどの映画では無いので、私が訴えたいのは2点[exclamation&amp;question]
 
上戸彩が最近妙に色っぽい件
 
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以前は気になる女優では無かったが、結婚後のCM、出演作はそそられます[キスマーク]
童顔系の彼女が、ガツガツと肉食女子となりながら、ふと見せるオンナの色気[黒ハート]
 
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結婚し、心身共に愛されて、初めて「オンナ」になった典型的な女優かもしれない。
イヤらしい意味では無く、いつまでも幸せに、美しくなり続けて欲しいと思わせる女優さんになりました[わーい(嬉しい顔)]
 
 
②劇中の温泉紹介[いい気分(温泉)][いい気分(温泉)][いい気分(温泉)]
 
真美の実家である温泉に登場人物達が入浴するシーンが何度か登場しますが、実際は別々に存在する温泉宿です。
草津温泉の湯畑も見られましたが、 小生が10年ほど前に群馬県で仕事をしていた頃にべた惚れした秘湯が2つ現れて、思わず感極まってしまいました[どんっ(衝撃)]
 
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1982年、熟年夫婦の旅行を推奨した旧国鉄の「フルムーン」キャンペーン。
上原謙と高峰三枝子が仲良く混浴しているのが、法師温泉・長寿館
群馬県の猿ヶ京温泉の更に奥地、人里離れた1軒宿です。
 
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この木の温もりが堪りません。映画でも混浴がテーマになっていますが、此処は事実「混浴風呂」です。
初めて伺った時、先客に若い美しい女性が独り湯船に浸かっておりました[揺れるハート]
彼女の風呂上がりの全裸を眺めようと、助平なオッサンも湯船で、彼女とじっと我慢比べをしましたが、結局私の方が先にのぼせてしまい、目的達成できなかった悲しい思い出があります[あせあせ(飛び散る汗)]
湯温は低めで、冬場なら30分以上は入らないと身体が温まらない位です。
 
 
もう一つが超おススメ[exclamation×2] 宝川温泉・汪泉閣
 
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水上ICから30分ほどの山の中腹に在る秘湯。
源泉掛け流しでありながら圧倒的な湯量と広大な敷地に驚かされる。目の前の宝川の急流の音が涼を与えてくれる。
まさに「湯ートピア」の再現と云って良い位の気持ちよさです[ぴかぴか(新しい)]
日帰り温泉でも、4つの露天風呂に入れます。そのうち3つは、もちろん混浴[わーい(嬉しい顔)]
此処に初めて伺った時も、若い女性グループが入浴中。しかし〜オンナは集うと怖い〜逆に私の方が、マジマジと見つめられ、湯船から出るに出られず、やはりのぼせ上がって倒れそうになった苦い過去があります[あせあせ(飛び散る汗)]
2度目は妻と行ったが、自分の女房の裸を他人に拝ませるのが許せなくなって、女専用風呂に即移動させました[ダッシュ(走り出すさま)]
 
まぁ、混浴はオマケとして、とにかく群馬県には良質な温泉が非常に多い。 
人情に厚い上州人気質と合わせて、非常に思い出深い仕事場でした・・・群馬県サイコー[手(チョキ)]
 
法師温泉 長寿館

法師温泉 長寿館

  • 場所: 群馬県利根郡みなかみ町永井650
  • 特色: 国登録有形文化財 日本秘湯を守る会の宿【近日楽天トラベルでも予約開始!】弘法大師が発見したと伝えられる、人里離れた一軒宿
 
 
 
 
宝川温泉汪泉閣

宝川温泉汪泉閣

  • 場所: 群馬県利根郡みなかみ町藤原1899
  • 特色: 毎分1,800Lもの源泉を贅沢にも掛け流し♪天下一の大露天風呂(“混浴”3箇所と“女性専用”1箇所)を誇る一軒宿。

 
 
 

幻の風呂屋の旦那による映画レビューならぬ温泉紹介でした...[あせあせ(飛び散る汗)] 
ちなみに鑑賞日は封切りの4月26日〜良い風呂の日〜だとさ[いい気分(温泉)]
 
 
 

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『そこのみにて光輝く』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
『ヒミズ』(2012)以来、久方ぶりに心打震える邦画と出会う...
 
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 監督
呉美保
 
原作
佐藤泰志
 
出演
綾野剛 池脇千鶴 菅田将暉
 
仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックに は、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。と ころがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知り……。(シネマトゥデイより)
 
 
哀しみと愛おしさを湛えた珠玉の家族の物語である。
ストーリーの主体は、達夫と千夏の恋愛劇だが、敢えて「家族」を描いた作品と呼んだ理由は、終盤の絶望的な事件から一気に光輝くフィナーレに向かう展開の中に色濃く滲み出て来る。
 
採石場の事故で部下を亡くしたショックから立ち直れず、仕事もせず酒浸りの自堕落な生活を続ける達夫。
寝たきりの父、介護にかかりきりの母、ムショ帰りの弟を守る為に家計を支える千夏は、毎夜、ネオン街で身体を売る。
そして偶然の出会いから、悲しみを背負った男女は、強力な磁力で引かれ合うように結ばれて行く。
 
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函館のと或る港町の短い夏の柔らかい光線、廃れた地方都市の繁華街の沈んだネオンに浮かび上がる若者達を、ごく自然に切り取るカメラワークが、彼らの深い想いを際立たせる
 
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夜は娼婦として稼ぐ千夏は、保護観察中の弟・拓児の保証人である植木農園の社長とも不倫関係にあり、家族の生活の為、この男に何かと便宜を図ってもらっていた。何も希望の無い貧しい家族生活をただ続けるだけだが、彼女は自分の肉体を捧げものにし、抜けられない苦しみを日常として受け入れていた。
池脇千鶴の演技力の高さは「ジョゼと虎と魚たち(2003年)」で実証済みだが、10年の時を経てオンナの色気を纏った名女優が魅せる心象風景は、見事としか云うべき言葉が無い[exclamation×2]
 
今や、売れっ子俳優の筆頭と云って良い綾野剛。TVドラマ、映画に引っ張りだこの彼だが、どんなタイプの役柄にも自然に溶け込む天才的な能力を持つ男優である。
今回は、落石事故のトラウマによる悪夢と幻聴に付き纏われた孤独な男・達夫を、圧倒的に少ない台詞の条件下で、まさしく「表情」のみで表現した。
 
お互いの中に「生きる希望」を見出した二人は、一歩前の未来に向かって踏み出していく。
親の納骨にも興味を持てなかった達夫は、生まれて初めて「守るべきもの」と出会い、千夏達と「家族」になる為、悪夢の仕事場であった採石場に戻る決意をする。千夏も夜の仕事を抜け、不倫関係も精算し、愛する男を支え、自分自身も幸せに成る事を夢見る。
 
暗闇の中で蠢くように陰鬱だった男女関係が、中盤以降「光の方へ」向かってはっきりと形作られていく過程が、俳優陣の熱演と過度な説明無しの映像主体の演出により、美しく描かれている。
 
千夏の弟役・拓児に菅間将暉。人懐こいチンピラ青年を好演する。個人的にも懐かしい北海道弁(長万部方言)で、寡黙な達夫にまくしたてる姿が、大変微笑ましい。常に家族には悪態をつきながらも、達夫と姉の交際を喜び、義兄になるであろう男と共に採石場で働く事にはしゃぎ廻る。そんな拓児の後の行動が、輝き始めた「一家」を絶望の底に突き落とす。
 
千夏を忘れられない不倫相手の社長は、弟の保証人で或る事につけ込み、脅迫まがいに千夏の身体を執拗に求める。
夜店で賑わう町の夏祭りの晩、姉を玩具のように弄び、人前でそれを吹聴する男に、拓児は正気を失くして襲いかかる。社長の腹部から飛び散る鮮血...拓児の手には千枚通しが握られていた...
 
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交番に出頭する直前、拓児が達夫に抱きつき、泣き叫ぶ言葉に胸が熱くなる...
家族への想いを吐露する菅間将暉の迫真の演技[たらーっ(汗)]
 
事件を聞き及び呆然とする千夏と母。その隣の寝室で、何も解らない寝たきりの父が妻の身体を求めて悶え始める。
いつものように母の代わりに実父の性処理をする為、千夏は無言で寝室に消えていくのだった...「やはり、私は幸せには絶対なれないのね」と、すべてを受け入れたような後姿が語る。
しかし、手淫の為の2本の小さな手は、いつしか父の首を締め付けているのだった...
 
 
登場人物達の唐突な行動を、あくまでも自然に描きながら、その理由を感情の裏側まで透かし彫りしたように見せつける演出、映像表現が、心憎いばかりだ。人間が理屈通りに行動できない動物である事を暗に指し示している。
新鋭・呉美保監督の女性らしい繊細な視線は、スクリーンの隅々まで行き渡っているようで、何気ない風景描写にも、彼らの深い想いが息づいている。そして、現在の邦画界の珠玉の若手俳優達の熱演が、これに応える。挿入される音楽も秀逸、ピアノの調べが特に美しい。
 
廃れた港町を背景に、その底辺でもがき苦しむ人々に差し込む僅か光を、優しい視点で写し込んだ傑作である。
どんな逆境でも「家族」を守る決意をした綾野剛の『意志の眼差し』が、感動のラストシーンを飾る[たらーっ(汗)][たらーっ(汗)]
 
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名古屋の映画好きが集る平日夜のミニシアター...エンドロール中に席を立つ者は、誰ひとりいなかった[ぴかぴか(新しい)]
 
 
原作は佐藤泰志。
芥川賞に4回もノミネートされるも、一度も受賞叶わなかった不運の小説家である。
享年41歳、自死であった。太宰治を彷彿させる...
彼の唯一の長編小説が本作である。
 
そこのみにて光輝く (河出文庫)

そこのみにて光輝く (河出文庫)

  • 作者: 佐藤 泰志
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/04/05
  • メディア: 文庫
この自分の書いた原作のように、彼の廻りには光が届かなかったのだろうか?
 
 
 

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『アデル、ブルーは熱い色』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ
 
キャスト
レア・セドゥ アデル・エグザルコプロス
 
教師を夢見る高校生アデル(アデル・エグザルコプロス)は、運命的に出会った青い髪の画家エマ (レア・セドゥ)の知性や独特の雰囲気に魅了され、二人は情熱的に愛し合うようになる。数年後、念願の教師になったアデルは自らをモデルに絵を描くエマと 一緒に住み、幸せに満ちあふれた毎日を過ごしていた。しかしエマの作品披露パーティーをきっかけに、二人の気持ちは徐々に擦れ違っていき……。(シネマトゥデイより)
 
非常に純度の高い恋愛映画の傑作である[exclamation×2]
 
ただ、過去の名作達と決定的に違うのは、麗しき二人の女性同士の愛の物語という事なのだ。
過激なベッド・シーンに話題が集中しがちなようだが、勿論、浅はかなレズビアン映画とは次元が違う。
徹底的な写実主義と危うい色彩映像により、 思春期の繊細な女性心理を切々と詠い、大人のオンナに生まれ変わる刹那を見事に描き切った。
 
「何色がお好きですか?」と聞かれれば、
私は「」と答える...身も心も吸い込まれそうな清々しく不気味なディープ・ブルーが。
 
女子高生アデルは、街ですれ違った髪にブルーのメッシュを入れた一人の女性に心を奪われる。
ボーイフレンドと愛し合っていても、燃えきれない自分の意識の中に、この女性のイメージが刻み込まれている事に気づくのに、大した時間は掛からなかった。
思春期の率直さで、彼女はその想いに忠実に従う...もう一度、あの人に会いたいと...
 
偶然の再会で、想い人がバイセクシャルの美大生と知り、更にこの女性の知性と感性に魅せられていくアデル。
そして、それが「」である事を確信するのだった。
 
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アデルは、既に恋人がいる美大生エマに「猛アタック」をかける。
年上の女性に恋をしてしまった「普通の女子高生」が、自分の想いに正直に突き進む姿を、アデルが等身大で演じ、それをカメラはあくまでも自然に切り取っていく。
そして、献身的に尽くす彼女に愛おしさを感じていくエマ・・・ついに結ばれる二人。
 
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正統派女優二人の歓びに溢れるベッドシーンは、衝撃を超越して感動的である。
 
初めての経験におののきながらも、愛する女(ひと)にむしゃぶりつくアデル。
女子高生の率直な想いを受け入れ、慈しむように優しく相手を包む込むエマ。
絶頂を迎える美しく若きふたつの裸体達には、紛れもない『愛の形』が表現されている。
 
男女のベッドシーンでも、この域までに「愛」を写し込むのは困難と思わせる『至高の濡れ場』である。
いや、女性同士だからこそ描けた精細な表現かもしれぬが、それを可能にした二人の女優の迫真の演技には、惜しみない拍手が送られるべきだ。異例のパルムドール女優賞受賞も納得である。
 
アデルが女子高生仲間に「レズビアン」と詰られるシーン。娘の恋人と紹介され、戸惑いながらも受け入れてしまう両親の姿。物語は、日常の延長線上で小さな抑揚を付けながらも淡々と進んで行く。そして、随所に何気なく取り込まれる「青色」の洒落た演出。チュニジア出身・アブデラティフ監督の美醜共に描き切る徹底した写実主義と小さな遊び心は、ハリウッドの娯楽映画とは対極を成す。
 
お互い社会人となった二人は同棲を始める。保育士となったアデル、芸術家の卵として歩み始めたエマ。
だが、幸せな生活は長くは続かない。裕福かつ教養ある家庭に育った知的なエマが、アカデミックな世界に飛び立って行くと、貧しく粗略な家庭環境だったアデルは孤独感に徐々に苛んでいく。
以前の熱い想いは、身体の相性だけでは繋ぎ止められず、二人の関係にひびが入り始める。
これが、普通の男女の関係であれば、ありがちな陳腐な恋愛崩壊劇なのだが、女性特有の繊細な感情表現を演じる二人の力により、哀しくも愛おしいエンディングに向けて緊張感は維持されていくのである。
 
 
同性愛者やマイノリティを支援する短絡的な作品では全くない。
思春期の女の子が、脇目も振らず突き進んだ恋愛とその終わりを通して、おとなのオンナに生まれ変わる姿を、頭のてっぺんからつま先で描く冷徹なカメラアイが写し込む事により、感情の機微を克明に表現した崇高な恋愛映画である。ただ、彼女が「女性を愛した」という一点だけが「普通ではない」だけなのだ。
そして、女性同士の狂おしいほどの深い恋愛を男性の視点で描いた、文字通り容赦ない描写が異彩を放つ、異色のラブロマンスなのである。
気がつけば、上映時間3時間[exclamation&amp;question] 全く弛緩の無い恐るべき吸引力であった[がく~(落胆した顔)]
 
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主人公アデルと同性のアデル・エグザルホプロス20歳。いつも唇を半開きさせた少々怠惰な雰囲気の女子高生役を、熟れる前の青い果実の如き演技で大胆に魅せた。
 
そして、何と云ってもエマ役のレア・セドゥ[黒ハート]
『ミッドナイト・イン・パリ』『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」で、チョイ役ではあったが、抜群の存在感を表した。今作では、青毛・青目のボーイッシュな女子大生役だったが、素顔はとんでもないブロンド美人であります。
 
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出演3作品すべてが、全く異なる役柄である。髪型一つで、イメージも大きく変わる女優だ。
生粋のパリッ娘28歳。今まで脚光を浴びなかったが、この娘は本物の役者だ[exclamation×2]
 
 
 

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『LIFE!』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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監督:ベン・スティラー
脚本:スティーブン・コンラッド
原作:ジェームズ・サーバー
 
キャスト
ベン・スティラー クリステン・ウィグ
シャーリー・マクレーン ショーン・ペン アダム・スコット
 
雑誌『LIFE』の写真管理部で働くウォルター・ミティは毎日、有名人や歴史に名を残す人々の顔を眺めて暮しているが、本人の日々はいたって平凡で、現実逃避のために空想ばかりしている。そんなある日、彼は雑誌の最終号に掲載する写真がないことに気づく。(ぴあ映画生活より)
 
「ライフ誌」に郷愁を感じる年代である。
 
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写真雑誌の草分けとして、フォトジャーナリズムの象徴として、僕らの世代にとっては神格化された雑誌だ。
40年近く昔、一流フォトグラファーの作品が表紙を飾る、この「LIFE」とファッション写真をARTの域まで引き上げた「VOGUE」の2誌は、当時、写真家に憧れていた少年つむじ風にとって、未だ見ぬ海外の世相を伝える夢のような雑誌であり、たった1枚の写真が持つとてつもない力を教えてくれた教科書でもあった。
 
当作品は、Webの波に押されて休刊(廃刊)となったLIFEのフィルム管理部門に勤める一人の男の物語だ。
妄想癖の有る、そのさえない主人公にベン・スティラー。自作自演の八面六臂の大活躍である。
「メリーに首ったけ(1998年)」でのキャメロン・ディアス相手の迷演技が懐かしいが、一流コメディアンとしての魅力が、今作でも十二分に発揮されている。
 
LIFE最終号の表紙を飾るはずだったネガが紛失。管理責任者のウォルター(ベン・スティラー)は、そのネガの在り処を聞き出すため、伝説の放浪カメラマン・ショーン(ショーン・ペン)を追う旅に出る。
常にアドベンチャーな妄想に浸ってばかりのウォルターが、生まれて初めて踏み出したチャレンジが、自分の思い描いていた以上の冒険譚に変わって行く様が実に楽しい。
 
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野性味溢れる冒険者に大変身した彼を見るにつけ、小生も含めてしがないサラリーマン諸氏の「遊び心」を大きく刺激することであろう。男というのは、どんなに歳を取っても、子供の頃に染み付いた「夢」を捨てきれないものだから...
ウォルターの旅は、本人が意図もしていなかった大自然との出会いを生み出す。厳寒のグリーンランドの海からアイスランドの火山、そして雄大なヒマラヤ山脈の映像が、自然を前にしたちっぽけな人間の存在と、それに挑む人間の高潔さを際立たせる。
 
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そして何よりも、私の心を揺さぶったのは、世界の秘境を渡り歩く冒険写真家ショーンの姿である。
 
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出番は少なかったが、ショーン・ペンの存在感は流石であった[exclamation×2]
 
作品自体は、夢を捨てきれない男達への応援歌にコミカルとファンタジーを交えた好感の持てる佳作である。
宣伝文句も「この映画には[exclamation]がある」という具合で、夢の実現を疑似体験させる狙いが窺えるが、私はその主題以上に、LIFE誌の廃刊に想いを馳せる。
 
デジタルカメラ・Web全盛の現在、既に絶滅危惧種になりつつあるフィルムカメラ。ショーン・ペンが持つのは、日本が誇る名機「ニコンF3」ではないか[パンチ]そして、ネガフィルムから印画紙に焼きつける暗室作業。そこから製版・印刷し完成された紙の雑誌が売店に並んで行く...一昔前の光景だ。
 
急造暗室と化した物置で、フイルムを現像し、引き伸ばし機で印画紙に焼く。薬品に浸しながら徐々に浮き出て来る画像に、胸躍らせた学生時代。白黒写真1枚を完成させるだけでも一晩を要した。
今や、デジカメで撮った画像を印刷するのに1分とかからない時代だ。そして元カメラ小僧の小生自身も、最近はデジイチ一辺倒で、このIT進化の恩恵に預かりながら、時間・経費含めて効率的なカメラライフを楽しんでいる訳である。
 
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この作品を見ながら、遠い昔に置き忘れてしまった一心不乱に取り組む手作りの歓びを、叶わなかった自分の夢と共に、しんみりと噛み締めるのだった。
アナログでしか成し得ない「人の温もり」を表現したような洒落たラストシーンに、心が洗われる[ぴかぴか(新しい)]
 
嗚呼、東京に置きっぱなしのフィルムカメラを持ってこようかなぁ〜[かわいい]
 
劇中、デヴィッド・ボウイの「Space Oddity」が挿入され、更に哀愁を深めます[もうやだ~(悲しい顔)]
 
 

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『アナと雪の女王《吹替版》』 [上映中飲食禁止じゃ!]

[ぴかぴか(新しい)]お父さんも納得のディズニー・アニメの極致[ぴかぴか(新しい)] 
 
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監督
クリス・バック ジェニファー・リー
 
 声の出演
神田沙也加 松たか子 ピエール瀧
 
 
 
エルサ(松たか子)とアナ(神田沙也加)は美しき王家の姉妹。しかし、触ったものを凍らせてしまう秘められた力を持つ姉エルサが、真夏の王国を冬の世界に変化させてしまった。行方不明になったエルサと王国を何とかすべく、妹のアナは山男のクリストフ、トナカイのスヴェン、夏に憧れる雪だるまのオラフと一緒に山の奥深くへと入っていく。(シネマトゥデイより)
 
評判の良さに誘われて、春休み中の子供達に囲まれながらも、あえて《吹替版》の鑑賞である。
 
ジブリアニメに哀愁を覚える日本男児としては滅多に劇場で観る事は無いディズニー・アニメだが、今作はそんな偏狭な自国自慢を吹き飛ばす「映画の力」がある。
 
我が国の手書き主体の平面的な描写とは対極の3次元CGは、特に人物の表情に違和感を当初感じるのだが、圧倒的存在感の背景処理、細部に拘った質感表現にいつしか虜になり、この雪と氷の物語に引き込まれていく。
 
エルサが氷の宮殿を作るシーンは白眉[どんっ(衝撃)]
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凍えた手の質感
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アンデルセン「雪の女王」を下敷きに生まれ変わったミュージカル・アニメ『Frozen(原題)』は、自己犠牲をテーマにした究極の愛の物語である。しかし、白馬に跨がった王子様の口づけでお姫様が目を覚ます昔のディズニー映画「白雪姫」のような激甘のロマンスとは大違いだ。
 
幼くして両親を失くした仲良し姉妹。アレンデール国王に就いた姉エルサは、自分の氷の魔法を封印すべく、城門を永きに亘り固く閉ざし、独り部屋に閉じ籠るのだった。それは、幼少期に妹アナを誤って、氷の刃で傷つけた事がトラウマになっていたのである。自分の隠された力が、周りの人々を不幸にすると信じて疑わなかった。
 
そしてエルサ成人の日。国を挙げての戴冠式が催され、城門が久しぶりに明けられた。久しぶりに顔を合わせた姉妹は昔通り仲睦まじく、国中の人々の祝福を受けるが、ひょんな事からエルサの魔法が暴走してしまう。彼女の力は知らぬ間に強大になっており、真夏の国を氷河期の如く氷の世界に変える。彼女は、辺境の山岳地に氷の宮殿を築き、「雪の女王」として独り暮らす事を決意するのだった。
 
妹アナは、失われた太陽と優しい姉の真の姿を取り戻す為、山男のクリストフ・雪だるまのオラフと共に、山頂にそそり立つ氷の宮殿を目指すのだった。同時に、このアレンデールの混乱に乗じて、国の乗っ取りを目論む外国勢の陰謀も渦巻き...果たして姉妹の運命は、アレンデールの行く末は、如何に・・・
 
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ストーリーが進むにつれ、観客の多くは「真実の愛に目覚めたアナ王妃」のありきたりなラストシーンを予想するが、結局大きく裏切られる事となる。いや愕然としたのは大人達だけで、ディズニー映画の対象であろう子供達は自然と受け入れたのかもしれない。「惚れた腫れた」の薄っぺらな男女の恋愛に慣れてしまった大人が忘れてしまった「もっと崇高な愛」を、この映画は思い出させてくれる。冷め切った氷の世界で感じる「人の温もり」が、否が応でも我々に押し寄せて来る。
 
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そんな思いを深く味わいたければ、是非とも《吹替版》をおススメしたい。
 
母親が松田聖子というだけで「七光りタレント」の烙印を押され、正当な評価がされない「神田沙也加」
松本幸四郎を父に持ち、若かりし頃から天才女優の名を欲しいままにした「松たか子」
 
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対照的な二世タレントの声優としての共演が実に素晴しい。
オリジナル字幕版と見比べた訳では無いが、この「愛の物語」の心髄は、母国語の方がでストレートに心に響くであろう。二人のピュアな歌声が、ディズニーの至高の映像に命を吹き込んでくれる。
 
個人的に大絶賛だったジブリ高畑監督作「かぐや姫の物語」。
日米アニメの描画手法の違いはあれど、人間の根源的テーマを気の遠くなる様な緻密な作業で紡ぐ姿勢は同じだ。
伝統のディズニー・アニメが、ひとつの到達点に達したかのような傑作であると共に、邦人スタッフによる見事なトランスレーションと声優キャスティングが、奇跡的な《吹替版》を完成させた[ぴかぴか(新しい)]
 
母・聖子を彷彿させながらも遥かに素直な歌声[るんるん]神田沙也加
 
 
 ほぼ4年ぶりの松たか子の歌声は鳥肌レベルの出来だ
オリジナルのイディナ・メンデル、エンディングのMay J.を凌駕する[かわいい]
歌唱力の巧拙ではない、声のオーラが別格なのだ[ぴかぴか(新しい)]
 
自分を解き放ち、氷の宮殿を築くエルサの想いを、松たか子は熱唱で表現する。
何度観ても涙腺緩くなるPVだぁ[もうやだ~(悲しい顔)]
 

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『早熟のアイオワ』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 小生のお気に入り女優
炎の少女」と「ヒット・ガール」の共演
 
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監督・脚本:ロリ・ペティ
 
CAST
ジェニファー・ローレンス クロエ・グレース・モレッツ
セルマ・ブレア ポキーム・ウッドパイン ソフィア・ベアリー
 
1976年、アイオワ州にある閑散とした町カウンシルブラフス。売春婦サラ(セルマ・ブレア)の娘に生まれた14歳のアグネス(ジェニファー・ローレンス) とキャミー(クロエ・グレース・モレッツ)は、ポーカーハウスと呼ばれる不法居住者たちが集う屋敷で暮らしていた。夜ごと、ポーカー賭博やセックスを求め るドラッグディーラーたちがポーカーハウスにやって来るという異様な環境から、彼女は幼い妹たちを懸命に守ろうとする。そんな中、サラに自分と一緒に売春 をするように迫られてしまう。 (シネマトゥデイより)
 
2008年製作国内未公開作品が漸く日の目を見た。
ジェニファーとクロエの昨今の活躍にあやかっての本邦初公開であるのは明白だが、理由がどうあれ、好きな女優のブレイク前の映像をDVDではなく、大スクリーンで観られる事は大変喜ばしい[わーい(嬉しい顔)]
 
ロリ・ペティ監督の自叙伝的作品である。
「ハート・ブルー(1991年)」「プリティ・リーグ(1992年)」で準主役級の活躍をした女優だが、今回の満を持しての監督作は、彼女の痛々しいまでの青春時代を吐露した私小説的色彩と、若き女優陣の今まさに華開かんとする蕾の美しさが、濃厚に絡み合った映像詩となった。
 
ポーカーハウス」と呼ばれる賭博場兼売春宿に暮らす母と3姉妹の一家。母親は、客引きである愛人の言われるままに客をとり、生活の糧としている。その母親の「仕事場」で生活を共にする姉妹達。70年代のアメリカ地方都市とはいえ、この悲惨な環境で暮らしていた子供達の現実に、驚きを隠せない。
 
撮影当時、長女アグネス役・ジェニファー17歳、3女キャミー役・クロエは10歳。
 
既に、大器の片鱗を見せるジェニファー・ローレンスの演技には、舌を巻く...というより、演技と思わせない自然体の感情表現に、知らぬ間に引き込まれる。絶世の美人では決してないのだが、17歳の素顔の飾らない美しさが、スクリーン上では何倍にも光輝いている。やはり生まれながらのカリスマである。
 
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バスタブに浸かりながら母親に泣きつこうとするシーンは鳥肌モノだ[どんっ(衝撃)]
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2年後の出世作「ウィンターズ・ボーン」や「ハンガーゲーム」シリーズでの役柄に似て、劣悪極貧な環境の中で光輝く命の迸りを演じさせたら、同年代では彼女の右に出る者は無かった。今や、芸域も広がり、オスカー受賞作「世界にひとつのプレイブック」や最新作「アメリカン・スロットル」の演技に触れれば、メリル・ストリーブを凌駕するであろう若き女神で或る事に疑いは無い[パンチ]
 そんな彼女の未知の可能性を見出すに十分の小品だ。
 
かたや、クロエ嬢...というより、この作品ではクロちゃんと云うべきか...
 
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あどけないカエル顔の小学生役なのだが、「ふっ」とした表情にロリコン趣味を超越した「色気と存在感」を匂わせる。巧い子役は、星の数ほど居る訳だが、演技力以前に「この存在感」で女優の価値が決まるのだ。その意味で、当時10歳のクロエは及第点だ。
 
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「共演」とは云っても、二人が有名になってからの「後付け」であり、クロエはあくまでも脇役の域を出ない。この作品は完璧に、『ジェニファー・ローレンス』の映画となっている。唯一、彼女に対抗するのは、壊れた母親役を演じるセルマ・ブレア。
 
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優しく貞淑な妻だったはずが、離婚後は階段を滑り落ちるように荒れ果て、今やジャンキーの売春婦。その母親が、アグネスに「そろそろお前も稼げ」と迫る。実の処女の娘に売春を唆すのである。この「壊れ方」が実にイイ。
 
アグネスは母に抗いながら、二人の妹だけは穢されまいと必死に守り抜く。長女の健気な想いと、それを知ってか知らずか、無邪気に遊ぶ妹達との対比が、ストーリーに唯一明るい色彩を醸し出す。一方で、アグネスは母の情夫に仄かな情欲を覚えてしまうのだった。正反対の性格の母娘のはずが、深い所で「女」としての血の繋がりを感じさせる。この絶望的な環境の中での抜け出せない「居心地の良さ」を、揺れる乙女心と共に、ジェニファーは見事に演じ切る。
 
そして、或る事件を契機にアグネスは、淀んだぬるま湯から飛び出る決意を胸に、妹達を車に乗せ、夜の街を疾走するのだった。
 
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ロリ・ペティ監督の私小説的作品であり、これが事実に基づいている事自体が衝撃なのだが、数奇な青春を送った主人公を演じたジェニファー・ローレンスの才能には、更に衝撃、いや感動的ですらあった。
 
今年もアカデミー賞助演女優賞にノミネート。
小生は、受賞は当然と確信していたが...栄冠は映画初主演の伏兵ルピタ・ニョンゴの手に。
思うに、昨年主演女優賞獲得者の連続受賞を意識的に外した感がなきにしもあらず。
ジェニファーが毎年コンスタントに良作に出演し続け、まともに評価されたなら、オスカー連続受賞新記録を作るのは確実と思われ、アカデミー賞の権威を脅かす存在になりかねない逸材なのだから。
 
そんな彼女のデビュー直後の作品。蛹から羽化したばかりの生命力漲る蝶の飛翔を観て頂きたい[ぴかぴか(新しい)]
青みがかった淡い色彩とブラック・ミュージックの取り合わせにも引き込まれます[わーい(嬉しい顔)]
 
 
 
ラストは黒人好きアグネスのお気に入り
マービン・ゲイ「Ain't No Mountain High Enough」の3姉妹合唱で〜
唯一ブレイクしていない次女役ソフィア・ベアリーもgood
 
 

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