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『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』 [上映中飲食禁止じゃ!]

GW明けから、洋画・邦画、大作・ミニシアター系に関わらず、食指をそそられる映画がめっきり減っていたのだが、漸く「これは観たい[exclamation]」という作品と出会えました[わーい(嬉しい顔)]
 
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監督・脚本:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
撮影:ブリュノ・デルポネル
音楽:T=ボーン・バーネット[るんるん]
 
キャスト:オスカー・アイザック キャリー・マリガン[黒ハート] ジョン・グッドマン ギャレット・ヘドランド 
ジャスティン・ティンバーレイク F・マーレイ・エイブラハム スターク・サンズ アダム・ドライバー
 
1960年代。フォークシーンが静かに勃興する中で、ライブハウスで歌うシンガーのルーウィンは、売れない現状や女友達を妊娠させてしまったりで、音楽の道を諦めようかと悩んでいた。様々な想いが渦巻く中、売り込みのためシカゴのライブハウスへ向かい……。 
(ぴあ映画生活より)

 
60〜70年代アメリカン・フォーク好きには堪らない作品だ。
小生は筋金入りのブリティッシュ・ロック小僧であったが、ボブ・ディランを筆頭にPP&MやCSN&Y、ポピュラーな処ではS&Gなどは、それなりに聴いていた。だが、当時から英語力弱しの為、フォークの命である「詩」の意味をダイレクトに感じられず、このジャンルの音楽には残念ながら嵌り込むまでには到らなかった。
但し、最近は、歳のせいかアコースティック主体のルーツ・アメリカン・ミュージックがお気に入りになってきており、歌詞の対訳も流れるこの映画に、すっかり身も心も奪われた感じになった。
 
音楽が主役ではあるのだが、ひとりの売れないフォークシンガーの生き様をリアルに描いたコーエン兄弟の感性が光る佳作である。フォーク・ミュージックに興味が無くても十分鑑賞に堪えうるどころか、本作に感動し、古き良きアメリカの音楽に目覚める方が続出してもおかしくない位の出来映えである。
 
冒頭のオスカー・アイザックの弾き語りから一気に引き込まれる。
気分はいきなり、映画館のシートから紫煙くゆる60年代のニューヨークのライブハウスにタイムスリップだ。
 
InsideLlewynDavis_gaslightcafe_620.jpg
 
 
アメリカのトラディショナルソング「HANG ME, OH HANG ME」
 
歌の吹替え無しの一発生録らしいのだが、映画初主演オスカー・アイザックが凄すぎる[exclamation] 
本物のミュージシャン並のギターの巧さと声の存在感に圧倒される。(なんと彼はジュリアード音楽院卒業なのだ)
まさにハマり役、音楽家に進んだ方がもっと早く成功したかもしれないと思わせる実力の持主だ。
 
デュオを組んでいた相棒の自死により、ソロ活動を続けるフォーク・シンガーのルーウィンは、今夜もNYのガスライト・カフェで切々と歌う。カネ無し、宿無しの彼だが知人は多い。借金はお手のもの、女にもモテる、ギター片手に友人宅を転々とし、リビングのソファを拝借する日々が続く。持ち前の人懐こさと図々しさは、他人からは疎まれる事はあっても嫌われはしない独特の彼の才能だ。
 
音楽に命を賭けている訳ではない。名声も名誉にも興味が無い。
ただ、彼にとって歌う事自体が生活そのものなだけであって、不幸なのは生活の糧をそれに頼っている事なのだ。
そんなその日暮らしから脱する気もなく完全順応しているルーウィン役を、オスカー・アイザックが自然体で好演。
 
或る日、昔いつものように一晩世話になった女友達ジーンから「妊娠」している事実を告げられる。
60年代の米の無節操な男女関係を彷彿させるのだが、恋人同士でもない二人が出産を決意する道理は無い。
ルーウィンは、中絶費用捻出の為、珍しく稼がざる得ない状況に追い込まれるのであった。
 
紅一点ジーン役にキャリー・マリガン
その恋人であり歌仲間ジム役にジャスティン・ティンバーレイク(彼は本業ミュージシャン)
 
ネイティブ・ブロンドかは定かではないが、ショートヘアがメチャ似合う[黒ハート]
最近は良作への出演が目立つ、赤丸上昇中の女優だ[exclamation×2]
ルーウィンのデュオ時代を偲ばせる曲が劇中流れる設定なのだが、歌っているのは
オスカーとマーカス・マムフォードというイギリスのフォーク歌手
実はキャリー・マリガンの旦那様なのだ[かわいい]
carey-mulligan-gatsby.jpeg
 
 
彼らが歌う「FIVE HUNDRED MILES」も味わい深い[ぴかぴか(新しい)]
のだが、これってほとんどPP&Mの世界なのだ[るんるん]
 
オリジナルはコチラ[左斜め下]
 
 
一念発起のルーウィンは、くだらないコメディソングのレコーディングに進んで参加。見ず知らずの男達とシカゴまで車を走らせ、大物プロデューサーのオーディションを受けに行く。そして、初めて自分の音楽を見つめ直したルーウィンは、実家に戻り、ついに船乗りとして稼ぐ道を選択するのだが...
 
ルーウィン・デイヴィスの永かったであろう音楽生活の内のたった1週間に光を当てた構成だ。
コーエン兄弟は、NYの無名のミュージシャンの人間そのものに、さりげなくしかし冷酷なまで繊細に迫る。
 
非常に中途半端に優しい男であり、かつ無責任な野郎である。決断力に乏しく、最期には「逃げる男」である。
飼い主に返す為、四六時中、猫を可愛がる姿。(この猫の演技も秀逸[exclamation&question]
道中を共にした意識不明の仲間を助けながらも、結局、車の中に猫と共に置き去りにするシーン。
ジーンより以前に妊娠させた女性が、彼に内緒で子供を産んでいた事を知りながら、彼女の家を通り過ぎる場面...
そんなルーウィンの人間的な弱さを刳り出しながら、彼が造り出す天上の音楽を賞賛し、なおかつその音楽が必ずしも売れるとは限らない人生の切なさを垣間見せる。そんな淡々と続き、誰にも知られぬまま朽ち果てるであろう彼の音楽、生き様への大いなる賛歌になっているのである。
 
年老いた認知症の父親の前で歌った「THE SHOALS OF HERRING」
 
 
今宵もガスライト・カフェのステージに立つルーウィン。
デュオ時代の曲「FARE THEE WELL」を思いを込めてソロで歌い切る。
これからの道を自らに納得させるかのように...
一瞬デジャヴを彷彿させるラストシーンは、しがないその日暮らしが永遠に繰り返される事を暗示する。
その傍らに、若き日の「ボブ・ディラン」の後姿が...次代を席巻する事になる彼の歌声が閑かに鳴り響くのだった。
 
 
 ボブ・ディラン「FAREWELL」(未発表曲)をバックに予告編を...
 
 
60年代の冬のNYを舞台に、名も知られぬまま消えていったフォーク・シンガーの他愛も無い一週間を濃密に炙り出した、まさにガスライトのように仄かに煌めくポエムである。
人間一人一人に人生があるように、音楽家それぞれに「自分の歌」があるのだ[ぴかぴか(新しい)]
 

インサイド・ルーウィン・デイヴィス

インサイド・ルーウィン・デイヴィス

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2014/01/15
  • メディア: CD

サントラ盤即買い〜蘇る映画の感動〜流石、T=ボーン・バーネットの世界[ぴかぴか(新しい)]
 
 
◎おまけ 何と云っても本作の成功はオスカー・アイザックの歌唱力に拠る処大なのである[パンチ]
 
 彼の2011年の出演作「10 years」(日本未公開)でのシーン
やっぱり、いい声しています[るんるん]ほんまに俳優さんかい[がく~(落胆した顔)]
 
 
 

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DEBDYLAN

いやぁ、イイ映画を紹介していただき感謝です!!
コレは僕の好きな世界かも。
映画はモチロン、サントラも楽しみたいっす♪

by DEBDYLAN (2014-06-05 22:49) 

つむじかぜ

> DEBDYLAN 様
DEBさんワールドだと思いますよ^^
お楽しみを!

by つむじかぜ (2014-06-06 01:31) 

haku

「FIVE HUNDRED MILES」 懐かしい~♪
PP&Mの動画、初めて見ました!
あるんですねぇ、YouTubeには ^0^w
by haku (2014-06-11 20:27) 

つむじかぜ

> haku 様
青春時代の記憶が、映像として気軽に蘇るユーTube!
有難いと同時に、子供の頃の思い出が非常に曖昧だった事に気づきます^^;
by つむじかぜ (2014-06-14 01:58) 

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