「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」 [上映中飲食禁止じゃ!]
個人的趣向から絶品
監督:デレク・シアンフランス
撮影:ショーン・ボビット
音楽:マイク・パットン
キャスト
ライアン・ゴズリング ブラッドリー・クーパー エヴァ・メンデス
ベン・メンデルゾーン レイ・リオッタ マハーシャラ・アリ
ディン・デハーン エモリー・コーエン ローズ・バーン
天才ライダーのルーク(ライアン・ゴズリング)は移動遊園地でバイクショーを行う刹那的な日々を送っていたある日、元恋人ロミーナ(エヴァ・メンデス)と再会。彼女がルークとの子どもを内緒で生んでいたことを知ると、二人の生活のためにバイクテクニックを生かして銀行強盗をするようになる。ある日銀行を襲撃したルークは逃走する際、昇進を目指す野心的な新米警官エイヴリー(ブラッドリー・クーパー)に追い込まれるが..(シネマトゥデイより)
夜の遊園地のきらびやかなネオンに浮き上がる男女...冒頭から美しい映像に一気に引き込まれる。
ライアン・ゴズリングの前作『ドライブ』は、男の哀愁溢れるクライム・アクションとして非常に秀逸な作品であった。今作は、それをも凌ぐスピード感と重厚感を持って、主人公ルークの儚い生き様を描ききる。
全身をタトゥーで埋め尽くすバイクに乗るしか能が無い半端者。そんな彼が、行きずりのかつての恋人が自分の子供を産んでいる事を知る。初めて覚える父性〜束の間の家族の暖かさ。しかし、彼には母子を養う術が無い。必然的に、犯罪に手を染める道を選ぶ哀しきライダー。
ライアンは、この無骨な無頼漢を、時にとてつもなく暴力的に、時に雛の羽毛の如く優しく魅せる。社会の底辺でもがき苦しむナイスガイ〜ライアンの面目躍如たる演技だ。
大金を手にし掴んだ幸せも一瞬。ついにルークに破滅の時が訪れる。
時折挿入されるアルヴォ・ポルト「Fratres」の弦の軋みが、観客の不安感を一層駆り立てていく。
壮絶な逃走シーンの末、新米警官エイヴリー(ブラッドリー・クーパー)との邂逅。
緊迫感を維持したまま、そして呆気ない幕切れ...
と、ネタバレはここまでで
ライアン・ゴズリング主演の非常に秀逸なアクションドラマは、実はこの映画の序章にしか過ぎないのである。
中盤は、正義感の塊のようなエイヴリーの苦悩に光を当てる。
不器用な優等生が、徐々に逞しさを身につけると同時に、汚い駆け引きや世渡りを覚えていく姿を、ブラッドリー・クーパーが、ごく自然かつクールに演じる。
この過程が、あまりにも「人間臭く」て私はスクリーンに釘付けとなった。どんな偉人だろうが、正義の人と呼ばれようが、絶対に隠し通したい「嘘」は誰しも持つ。小さな自分の悪行を自身で昇華できねば、大きい善行を成す事が出来ないのが、人間社会の現実であると
ちなみに中盤は、エイヴリーの妻ジェニファー役のローズ・バーンの美貌も何気に見所
そして15年後。
後半は、ルークとエイヴリーの子供達の話である。
厳格な父エイヴリーに反発するように非行に走るお坊ちゃん〜ビル。
ルークの面影を残し父同様に生まれつきのワル〜ジェイソン。
決して会ってはいけない二人の少年が、運命の皮肉か、出会う事になる。
そして、見知らぬ父の過去を知ったジェイソン少年が、ついにルーク親子の人生すべてを変えた張本人、今や司法長官にまで登り詰めたエイヴリーと対峙する。
果たして、二人のとった行動はいかに・・・・
ライアン・ゴズリング、ブラッドリー・クーパーという、今や世界中の女性のハートを「2人占め」するほどの旬の男優の個性を見事に活かしきった演出。感情を揺さぶる挿入音楽
親子2代に亘る、血の成せる宿縁。生まれ落ちた環境の差で決まらざる得ない、人生の勝者と敗者。
緻密な構成と脚本には脱帽である。
お互いに幸せを掴む為、手法は違えど必死に戦った二人の父親。ひとりは子への想いを残しまま無惨に散り去り、ひとりは悔恨の情を胸に秘めたまま生き抜く。時間の経過にも微動だにしない不変の二人の父親の生き様を、正攻法でフイルムに焼き写し、「人生の不可思議さ」と「偉大なる父の姿」を観る者に問いてくる。
「お天道様に恥ずかしい生き方をしちゃぁ、いけないよ」とは、よく言ったものだが...
そんな綺麗事ではなく、悪行だろうが善行だろうが、必死に生きる親の後ろ姿を見せるのが、子供達の血肉になるのではなかろうか、と。
ほとんど話題に登らないマイナー作品の位置づけだが、これは個人的に「大好きな本物映画の1本」となった。
単なるクライム・アクションではない 崇高なる「父の物語」である
嗚呼、なんて清々しいラストシーンなんだ
初夏の涼風が「人生って素敵!」と耳元で囁いた
ダニエル・ラノワが見出した天才歌姫 [〜私の歌姫〜]
2010年、ダニエル・ラノワが結成した『Black Dub』〜私好みの絶品バンドです
guitar:Daniel Lanois
bass:Daryl Johnson
drums: Brian Blade
このメンバーで思い起こされるのはエミルー・ハリスの「Wrecking Ball」〜私の絶対的な超愛聴盤である。
そしてBlack Dub〜この超絶ミュージシャン達に気後れせず堂々とでリード・ヴォーカルを取るのは、ベルギー生まれのブロンド美女〜Trxie Whitley(トリクシー・ホワイトリー)
歴戦の雄の先輩方に一歩も引けを取らないプレイぶり。
一寸のぶれも無いある意味醒めたリズム・セクションに、粘着質のダニエルのギター音。そこへ、彼女の熱いブルース調の歌声が絡んでいく。この奇妙なアンバランスが、独特の雰囲気と共に快感を呼び起こす。
オルタナ・カントリーの浮遊感が漂うエミルー・ハリスとの共作とは対極のガチなブルースロック。だが、各プレイヤー達の研ぎすまされた感性が、単なるブルージーな泥臭さだけでない煌びやかさを散りばめる。
トリクシーの想いを込めたストレートなハスキー・ヴォイスはバラードで更に真価を発揮する
泣けるダニエルのギター、ブライアンが気持ち良過ぎるリズムを刻む
『Surely』 これは名曲だと思う
当時22歳にして、既にミューズに見入られた如くの歌声
瞬く間に自己の世界に引き込む「力」
この娘は『本物』だ
未だに、Black Dubとしての作品は冒頭のデビューアルバム一枚のみ。現在も、このユニットで活動しているのか、手元に資料が無く、不明である。ダニエル・ラノワが、交通事故で重体となったのが2010年の秋で、このグループを結成して間もなくの事である。既に彼は奇跡の復活劇を遂げ、今夏には来日、フジ・ロック・フェスティバルにも参戦予定である。しかし帯同メンバーに、トリクシーの名は無い。
この魅惑の歌姫の最近の動向を気にしていたのだが、なんと、ついにソロ・デビュー・アルバムを4月末(国内盤)に発表したではないかぁ
冒頭のビデオで、ブライアン相手に無謀にもドラムを叩いている彼女だが、実はマルチ・プレイヤーなのである。
ギターはダニエル仕込み?の渋いプレイを魅せてくれるし、ピアノも当然のように弾きこなす。
ついにベールを脱いだデビュー作は、詳細は不明だが、クレジットを見る限り、ストリングスとプログラミングを除いてほぼ全楽器を彼女が演奏しているようだ。
ダニエルの元を離れたトリクシーは、まさに自己の世界観を自らの手で作り込んでいく。マルチ・プレイヤーぶりには当然、脱帽なのだが、やはりこの命漲るヴォーカルのパワーに圧倒されてしまう
この彼女が今秋に来日との情報をゲット
具体的なスケジュールは未定のようだが、名古屋にも絶対に来てくれよぉ〜
トリクシーの音楽的素養の源泉には非常に興味を惹かれる処なのだが...
実は、彼女の父親は、あの伝説のブルースマンなのである
◎おまけ
クリス・ホワイトリー(Chris Whitley)
(1960〜2005)
45歳の若さでこの世を去ったブルース界のジミヘン
確かに父娘ソックリである。
トリクシー18歳時に偉大なる父は天に召される。
しかし、熱きブルース魂は着実に娘に引き継がれ、今まさに華開かんとしているのだ
この偉大なる孤高・異色のブルースマンに関しては、改めて別の機会にじっくりと語りたいと思います
「藁の楯」 [上映中飲食禁止じゃ!]
監督:三池崇史
脚本:林民夫
撮影:北信康
音楽:遠藤浩二
原作:木内一裕
主題歌:氷室京介
出演:
大沢たかお 松嶋菜々子 藤原竜也
岸谷五郎 伊武雅刀 永山絢斗 余貴美子
山崎努 本田博太郎
日本の財界を牛耳る大物・蜷川隆興の孫娘が惨殺された。容疑者は8年前にも少女を殺害し、釈放されたばかりの清丸国秀。警察の懸命の捜査が続く中、全国紙に“清丸を殺害すれば10億円を支払う”との蜷川による全面広告が掲載される。日本中がにわかに色めき立ち、観念した清丸は潜伏先から福岡県警に自首することに。さっそく清丸を警視庁に移送するため、SPの銘苅一基をリーダーとする5人の精鋭が集められる。タイムリミットは送検までの48時間。だがその行く手には、ありとあらゆる所に潜み、“クズ”を仕留めて10億円をいただこうと殺気立つ日本全国民が待ち構えていた。(allcinemaより)
やはり観てしまう「三池作品」
前作「悪の教典」では、“生真面目に高校生を殺し過ぎて”良識ある?多くの観衆から酷評を浴びた、我が敬愛するB級映画の巨匠・三池崇史監督。今回もおふざけパロディ路線ではなく、結構マジに撮っています
大沢たかお・・・いい男になりました 昔のモデルあがりの優男イメージから年を追う毎に「線」が太くなり、体型は変わらずとも最近は「渋み」と「凄み」が出てきた。
そして、大ヒットTVドラマ『仁』の主人公同様、今作のような正義感溢れる実直な男が似合ってしまう今時では、貴重な存在の男優である。内に秘めた心情を見事に表現していた。
松嶋菜々子・・・これまたヒット・ドラマ『家政婦ミタ』で驚異の復活劇。過去に無い無表情な役柄がよほどお気に召したのか、今作もその延長線上の演技である。出産のたびに休養と復帰を繰り返し、容姿重視のモデルあがりがいつしか「オバサン刑事」をスッピンで演れる女優となった。個人的には「笑った菜々子」も観たかったのだが...
藤原竜也・・・新人時代から蜷川幸雄に鍛えられただけに巧い、巧過ぎる 演劇畑出身だけあって、映画の中では過剰演技気味に見えるシーンもあるが、それがかえって今回の情緒不安定な犯罪者役にマッチしていた。感情表現は抜きん出ている俳優だ。彼の特色であり唯一の弱点は、ピュアな美男子すぎるので「真の悪役」が似合わない処かもしれない(「デスノート」しかり)
前半でいなくなってしまったが...
永山絢斗君の激しくも軽い演技や
ベテラン・山崎努御大の怪演も
非常にそそられるモノがあった
こんな魅力溢れる俳優陣を奇をてらった手法はとらず、引く場面は引き、近づくべき所は目一杯のドアップの抑揚のついたカメラ遣いで、彼らの心情心理を表現していく。次々と現れる賞金目当ての人間達の狂気を、凶弾に倒れた仲間達の命の灯火が消える刹那を、劇的かつ美しいまでに描ききった。
更に三池氏らしさが光ったのは、大掛かりなアクションであろう。高速道路上の何十台ものパトカー群へのダンプカーの突進シーンなどは、徹底したリアリティに拘る彼の面目躍如たる処だ。
それにしても、今回は彼にしては珍しく大枚はたいているなぁ〜という感じで、原作からしてあり得ない話しを、三池監督の魔法によって観客は現実の出来事と錯覚してしまうのだ。
「ゼブラーマン」「忍たま乱太郎」などの低予算の子供向け作品でも、細部への“変な”拘りを見せる三池氏が、今作は豊富な資金をバックに、伸び伸びと「三池流」を貫いたようである。(個人的には「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」「愛と誠」のバイオレンス・パロディ路線が大好きな小生だが)
クライマックス・シーンでの藤原の一言の台詞が、この作品のすべてを物語る。
『すげぇ』
少々鳥肌モノの場面だった
カンヌ映画祭公式選出だそうだが、仕事に殉じる日本人の姿は、果たして海外の方々の共感を得られるであろうか?
ただ、仮に自分も家族を失っていたら、仕事のみに生きる価値を見出さざる得ない哀しい会社員かもしれない...と思ったりするのだが。
憎しみの連鎖を断ち切ったひとりのSPの生き様が、人の命の軽重を問うた問題作であり感動の人間ドラマである。
◎おまけ
エンドロール時の氷室京介のヴォーカルを聴いて、思わず自分の若い頃を思い出してしまった
50代の氷室&布袋の幻の復活ライブ
見事な合成です(^▽^;)
「天使の分け前」 [上映中飲食禁止じゃ!]
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
製作:レベッカ・オブライエン
撮影:ロビー・ライアン
キャスト:
ポール・プラニガン ジョン・ヘンショー
ガリー・メイトランド シヴォーン・ライリー
ジャスミン・リギンズ ウィリアム・ルアン
ロジャー・アラム デヴィッド・グッドール
ジョイ・マカヴォイ フォード・キアーナン
長引く不況で若者たちの多くが仕事にあぶれるスコットランドの中心都市グラスゴー。教育もままならない環境に育ち、親の代から続く敵対勢力との凄惨な抗争が日常と化した日々を送る青年ロビー。恋人の妊娠が判明し、心を入れ替えようとした矢先に再び暴力事件を起こしてしまい、裁判所から300時間の社会奉仕活動を命じられる。そこで彼が出会ったのは、同じく社会奉仕を命じられた男女3人の若者と、彼らの指導にあたるウイスキー愛好家の中年男ハリーだった。ロビーはやがて、親身に接してくれるハリーからウイスキーの奥深さを学び、興味を持つようになる。そして、ひょんなことから“テイスティング”の才能に目覚めるロビーだったが…(allcinemaより)
『天使の分け前』〜Angel's Share〜なんと美しい響きの言葉だろう
樽の中で何年間も熟成されるウイスキーが、その間に酒に含まれる水分やアルコールが蒸発して減少する分〜年間に全体の2%減ると云われる〜これを「天使の分け前」と呼ぶ。極上の蒸留酒を造る過程での神様への捧げものと云った意味であろうが、ネーミングに洒落た英国人気質を感じざるを得ない。
神戸で仕事をしていた10年程前。三宮のクラブのお姐さんとの「アフター」で、シングルモルツ専門の或るBARを度々使った。何度か彼女と通ううちに、本来の大事な目的を忘れ、BARのマスターと意気投合してしまった。しまいには、彼女の店に顔を出さず、そのBARにひとりで通う常連になっていた。バーテンダーの全国大会でも輝かしい業績を残したマスターから、ウイスキーの奥の深さをよく教えられたものだった。
因に、私は酒は滅法弱い。酒の味は好きだが、アルコールが体質的に合わない為、完全下戸まではいかないが、仕事以外では滅多に酒を口にしない。
マスターからオススメのウイスキーを次々と試飲できればカッコいいのだが、ワンショットをストレートでチビチビ戴きながら、チェイサーにこれまたマスターお手製のオリジナル・ジュースを並べる「変な常連さん」だったのだ。
...であるので、小生にウイスキーの蘊蓄を語る権利も知識も持ち合わせていない。しかしながら、スコッチウイスキー独特の薫り(スモーキー・フレイバーと呼ばれる)は、葉巻の匂いと同様に、男心をくすぐるものがあると確信している次第である。
そんな経験と僅かの予備知識で臨んだ今作は、非常に興味深く、ストーリー自体も愉しめるものであった。
舞台は英国とはいってもウイスキーの聖地、スコットランドである。洗練されたイングランド映画とは一線を画し、田舎臭さが漂う。そしてカメラは、中世を代表する都市、グラスゴーからエジンバラの不況に悩む「今」を見せながら、魅力溢れる登場人物達に光を当てていく。主人公ロビーを含む4人の犯罪常習者が個性的だ。
そして、彼らが生まれつきの悪人ではなく、生まれ育った環境によって犯罪者になった事を自然と匂わせる演出が実にいい。小柄だが、ぶち切れると手を付けられない主人公・ロビーを始め、自国の誇りのエジンバラ城も知らない無知の塊・アルバートは実に笑わさせてくれる。
そんな世間から人間のクズと呼ばれる彼氏を、必死で立ち直らせようとするレオニーが、実に美しくかつ逞しい、まさに「母は強し」なのである。
う〜ん、我が夫婦を見ているようだ
不良青年が社会奉仕活動の指導員・ハリーと出会い、酒好きの彼からウイスキーの世界を垣間見る事からロビーの更正の物語がスタートする。キルト衣装を着ながらの小旅行は、スコットランドの自然と文化を全面に押し出した興味深いもので、更にスコッチウイスキーの世界的権威のチャーリー・マクリーン本人が登場する熱の入れよう。ロジャー・アラム以外はほとんど無名の俳優達で、しかも多くがグラスゴー出身者というスコットランド魂の塊のような映画なのである。
犯罪者が更正する為に小さな罪を犯すラストシーンを、快く受け入れられない観客も多いようだ。
しかし私は、それこそ題名通り〜誰も傷つけない小さな罪は、新しい人生を掴む為の『天使の分け前』〜であると、ニヤリとしてしまうであるが...
英国の片田舎で繰り広げられる幸せ探し〜ホックリと心温まる作品でした
そして、実はこの作品の中で一番ドキドキした場面は、ウイスキー蒸留工場でのガイドさんの色気たっぷりの説明ぶりだったりするのでした
ジョイ・マカヴォイ
彼女もスコットランド・グラスゴー出身
無名の女優さんだが、グッと来るムチムチ感でした
『ザ・ストロークス』の新作を聴く [〜ロックの神さん〜]
『New York City Cops (2002)』
ぶち切れるツィン・ギター。煙草を噴かしながら毒づくヴォーカル。
気持ちいい奴らだ
デビューアルバムのジャケ写も衝撃的だったが、中身の音がこれまた新鮮・抜群だった
The Strokes(ザ・ストロークス)・・・ 1999年、ニューヨーク結成のロックバンド。60年代ロックンロールの薫りを残しつつの斬新なサウンドが若者に大いに支持され、成功を収める。「ガレージ・バンドの旗手」と評され、その後のポスト・パンク・バンドに大きな影響を与える。
仮にこのバンドが、ツィン・ギターでは無くリズム・ギター1本で、なおかつ明るく軽めのヴォーカルであったなら、まさしくオールド・ロックンロールだ。
まさにこのバンドの最大の魅力は、ニック・ヴァレンシとアルバート・ハモンドJrによる個性的かつ対照的なギター・プレイに拠る処大なのである。
セミアコ型のギターを腰の位置に低く構え、図太くで粘っこい音を信条とするニック。一方、ストラトキャスターを胸の位置高く構え、シングルコイル特有の切れのあるカッティングが持ち味のアルバート。アドリブバトルをひけらかす事は決して無いこの2本のギターが、時に共鳴し合い、時に反発しながら作り上げるハーモニーに、どちらにも相容れず我が道を行くように淡々と歌い続けるヴォーカルのジュリアン・カサブランカス。
このシンプルかつ荒削りに聞こえながら、実は計算し尽くされたサウンド構成に小生はゾッコンなのである。
とにかく、ツィン・ギターをメインとした現存する数多のギターバンドの中で、ザ・ストロークスは別格のお気に入り度ナンバーワンなのである
2006年、3rdアルバムは、サウンドが更に重厚になり、ジュリアンのヴォーカルには“甘味”と“苦み”が加わって、何とも味わい深い出来なのである。リズムは明るく楽しく、音像は深く沁み渡る。
『You Only Live Once(2006)』
私好みのご機嫌なビート
ジュリアンの抑えたシャウトはU2のボノを彷彿させる。
そして5年ぶりに発表された4thアルバムは、過去作を踏襲しながらも、リズムは洗練され、ギターの絡みが緻密度を増した「大人のロック」 ザ・ストロークスの集大成と云って良い内容だった。
『Under Cover of Darkness(2011)』
アルバートの頭髪のブラックモア化が5年の歳月を感じさせるが...
「何とも気もちいい音です」
そして...飾り気もセンスも全く無いジャケット...
今春発表された5thアルバムを先日購入。
こ、これは・・・ぶっ飛んだ戸惑った・・・全く別のバンドかと、思わずジャケットを見返した程の変貌ぶり
「Chances(2012)」
ロックンロールの面影は遥か彼方へ。シンセサイザーと電子音化され単調なギターのリフが全体を覆い、ジュリアンのヴォーカルは虚空を漂うようにただ囁くのみ。
前作の一部の曲から進化の兆しは感じられてはいたのだが、今作でここまで別人格に変わり果てたようなサウンドを聴かせられると驚愕を通り過ぎて困惑であった。
しかし、何度かこのCDを聞き返す毎に、戸惑いが快感に変わって来る。
(これは、何やらデジャヴ体験...「男のルーツロック」を貫いていたU2が1993年に突如「アクトン・ベイビー」を発表。打込み多用のダンス・ビートに変貌したサウンドは世界中の物議を醸した。私自身も戸惑いを隠せなかったものだが、いつしかお気に入りのU2アルバムの一枚になっていった。)
そして、当時のU2に対する違和感が快感に変わる刹那を、このストロークスの新作にも感じてしまったのだ。
過去作とは一線を画す捉え処の無いリズムの渦に。極限まで簡素化したようなギターの音色に。感情を捨て去った中性的なヴォーカルに・・・熱きロックの血潮が見えるのである
過去の伝説のアーチスト達が繰り広げた大いなる音楽的挑戦の数々
ザ・ストロークス...これから一体、彼らは何処へ向かって行くのか
伝説への第一歩が始まったのかもしれない
『はかならずReハネムーンなのだ』 [ざれごと写真日記]
ヒトツバタゴ〜別名「なんじゃもんじゃ」が一斉に咲き乱れた快晴の日に彼女はやってきた。
G・W後半戦、亭主の新生活の偵察と自身のリフレッシュを兼ねて、エルメスの鞄ひとつで名古屋駅を降り立った我が妻は、いかにも生まれ育った街のように堂々と闊歩していた。
我が新居に案内するや否や、彼女が到着する1時間前に必死に私が大掃除をした部屋を物色する。大阪単身時代に何度か彼女の襲来を受け辛酸を嘗めた小生であるので、流石に学習効果により準備万端、自信あり。
「ふっふっふっ。俺も単身が慣れて来たから綺麗なもんだろ」
しかし彼女は、隅々まで乾拭きまでしたフローリングには見向きもせず、台所チェックから始める。
「あっー汚い、洗った食器は乾いたら片付けなさい。まな板を置くスペース無いし、鍋底に赤錆びがでているわよ」
「んがっ」
「あっ〜、やっぱり部屋干しした服は干しっ放しだし、なにっ、このクローゼットの中 着ない衣類を引越用の段ボールに丸めて詰め込んだままでぇ〜私が去年置いといた下着をこんな所へ、ふんっ」
「んがっんがっ」
「掃除は当たり前ですが、あなたはモノをしまう、たたむという事を覚えて下さい」
「ご指摘、拝聴いたしました」
その後2時間。彼女は手際良く片付けと家具類の配置替えを行った結果、開放感溢れる室内に生まれ変わりましたさ。亭主、感激 そして彼女が一言。
「こんな広い部屋にひとりで暮らせて愉しいでしょうねぇ〜」
「グサっ」
こんな今や恒例のやり取りの後は、奥様ご接待タイム到来である。
実はG・W中に彼女の誕生日を迎えるのだが、今年は私に遅れること2年、節目の生れ落ちて半世紀の記念すべき年回りなのである。普段は100均と由仁黒を旨とする節約夫婦だが、記念日だけは豪華主義を貫く小市民です。おかげで、彼女のバックやアクセサリーが毎年増えるごとに、私の私生活は困窮を極めるのだが、今年は例年とは違う企画を私は考えていた。
とりあえず・・・
初日は近場の「ノリタケの森」で、陶器の絵付け教室へ連れて行く。(私は、館外の庭園で結婚披露宴中の乙女達を被写体に写真撮影)
2日目は「国宝・犬山城」へ歴史のお勉強。
そして3日目。二泊三日伊勢志摩の旅を敢行
実は、私達夫婦の新婚旅行と同じコースを企画したのだ。
思い起こせば24年前〜嗚呼、あの頃の君は可憐な乙女だった...
名古屋駅から近鉄特急で「伊勢神宮」をめざす。
車内で妻が突然囁く・・・「アンタ、鼻毛が伸びてみっともない」
いきなり、参道の「菊一」という老舗刃物店をめざとく見つけた妻からプレゼント
「鼻毛切り」
俺がプレゼントを貰ってどうすんねん
宇治橋〜今年、『式年遷宮』を迎える為、既に予想通りの大混雑
五十鈴川で身を清める〜あの頃が思い出されてくる
皇大神宮へのお参りは1時間待ち
行列が大嫌いな小生も国家の最高神である「天照大御神」には従順である
ひたすら並ぶ、待つ...
そして・・・願い事というよりも「24年間」の感謝の気持ちを捧げる
神楽殿でお札とお守りを戴く
もちろん「御朱印」も
大混雑の「おはらい町」で昼飯にありつく〜名物「伊勢うどん」
(こしのなさは天下一品。讃岐うどんとは対極の珍品です)
河川敷に出て、妻は写生、私は写真
新緑と山藤を愛でた後、バスで本日の宿泊地に向かう
「志摩観光ホテル クラシック」
此処が24年前の新婚旅行に宿泊したホテルなのだ
そして昔とほとんど変わらぬディナー・メニュー
奇をてらわない王道のフランス料理
“変わらない素晴らしさ”を持つ「ラ・メール」
24年前にタイムスリップ〜舌の記憶を辿る
当時と若干違うのは、私の体重と妻の酒量
大きく違うのは二人の力関係か
白ワインがぶ飲みの女房はご満悦の様子
・・・翌日は昼過ぎまでノンビリとホテル内と近辺のお散歩
ホテル屋上から臨む英虞湾
今は使用されていない旧館
そして英虞湾クルーズ
映画「タイタニック」のように穂先で抱き合おうと思ったが
歳を考えて控えました...
賢島駅から2時間で名古屋駅到着は19時。
駅ビル内で名物「味噌カツ」をビール片手に平らげ、妻はそのまま新幹線で颯爽と東京に向かう。
「ありがとう」の一言を残して...
怒濤の3泊4日の奥様滞在を無事乗り切った旦那様は、疲労困憊・財政困窮状態。
今年は何も買ってやらなかったが、妻殿も『時間旅行』のプレゼントはお気に召してもらえたようだ。
これで、暫くは大丈夫。連休明けからは遊ぶぞぉ〜 錦のネオン街でおネェ様方が待っている
ん...肝心のカネが無い
Marc Ribot IN NAGOYA [〜ロックの神さん〜]
ついに『Marc Ribot』との対面である。
マーク・リボー率いるセラミック・ドッグの来日コンサートをNAGOYA CLUB QUATTROで観られる転勤早々のなんという僥倖
会社から至近のテナントビルのスポーツジムに先日入会したのだが、そのジムの下のフロアにクラブ・クアトロが在った。そして偶然見つけたポスター〜『Marc Ribot's Ceramic Dog Japan Tour 2013』〜の文字が
一昨年に来日、FUJI ROCK FESTIVALなどで「偽キューバ人バンド」のリーダーとして怪演を披露したのだが、仕事の都合がつかず断念。
しかし今回は一日でも日程が前後したら困難であったが、5/2の夜は仕事の予定も無し。
この絶好の機会は逃せません
Marc Ribot(マーク・リボー)・・・何度か当ブログで取り上げているが、小生が現存する世界最狂ギタリストとして敬愛して止まないミュージシャンです。
1954年ニュージャージー州生まれ。1984年にラウンジ・リザーズの2代目ギタリストとしてメジャー・デビュー。
同時にセッション・プレイヤーとして世界中の一流アーチストから声がかかり、多くのロック,ポップスの名盤と呼ばれる作品の影の立役者となっている。トム・ウエイツ「レイン・ドック」ロバート・プラント「レイジング・サンド」などは有名であるが、私の溺愛するジョー・ヘンリーのバックも多く務めており、要するに小生のお気に入り音楽の裏方さんでもあるのだ。
彼の音楽スタイルは変幻自在〜カントリー、ブルース、フリージャズ。ゆるロックからバリバリハード、サルサなどラテン音楽もお手のもの。ジャンルは多岐に亘れどギター・プレイは一貫して「リボー色」が滲み出る。
不協和音を入れたコード・ストローク、味わい深いダウン・チョーキング、予測不可能のアドリブ・ソロ、超キモチいいカッティング。普通の楽曲が、彼が参加する事により異質の空気感を醸し出す。
ジョージ・ハリソン作のビートルズの名曲がこんな感じになる
さて、今回はどんな「変体プレイ」を魅せてくれるか....胸が膨らむ
CLUB QUATTRO オールスタンディング ギター目の前の2列目に陣取る 19:10演奏スタート
マークが静かにギターを奏でたと思いきや、いきなり『ガツン』と来たぁ〜 『すげぇ〜』
Ceramic Dogというトリオ編成の来日メンバー・・・メチャ、ハード路線でしたぁ〜
但しHM系でも正統ブリティッシュ系でもない。リズム・音圧が第2期キングクリムゾンを10倍ド迫力化した上に、フリージャズを基にしたインタープレイが延々と続く。天高くシンバルを掲げたドラムの兄ちゃんが縦横無尽にリズムを刻む。スリムなベーシストは、シンセを弾いたりギターに持ち替えたり、ドラムも叩いて楽曲に変化をもたらす。そしてマークの狂人的プレイの連続。
このめくるめく音像がまともに体中に染み込んで来る
嗚呼〜なんという至福の時
New Albumに納められているこの曲が当日もオープニングでした。
マークのヴォーカルはリーダーアルバム以外では絶対に聴けない
それにしてもなんちゅうソロ弾くねん
雰囲気を味わって頂きたいのでアンコール曲をヴォイス・メモで少々
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
今週始めから風邪気味の洟垂れ小僧状態でこのライブに臨んだのだが、一発で鼻水止まったわぁ
ライブ終了後CD即売会
既に持っているCDだが、サイン欲しさにもう一枚買ってしまいました
マーク 素敵な音楽をありがとう
握手、握手
(AKBの追っかけと変わらない精神状況になっておりました)
◎おまけ
マークの活動・交友範囲は広く、日本人アーチストとのセッションも少なくない。
矢野顕子
まさに海外コラボの白眉
FAYRAY
作曲もマーク いぶし銀のバックギター
ヘタウマSingerも光輝く