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「オブリビオン」 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督・原作:ジョセフ・コシンスキー
脚本:カール・ガイダシェク マイケル・デブライン
撮影:クラウディオ・ミランダ
音楽:M83
 
キャスト
 
トム・クルーズ
オルガ・キュリレンコ アンドレア・ライズブロー
モーガン・フリーマン ニコライ・コスター=ワルドー メリッサ・レオ
 
2077年、地球はエイリアンの襲撃によって壊滅的な被害を受ける。やがて生き残った人類は他の惑星へと移住し、人々のいなくなった地球では、ドローンと呼ばれる無人偵察機による監視が続けられていた。そんな地球に残り、ドローンのメンテナンスやパトロールなどの任務に当たるジャック。ある日、未確認の宇宙船の墜落現場へと向かった彼は、そこでカプセルの中で眠る美女を発見する。やがて目を覚ました彼女はジュリアと名乗り、なぜか会ったこともないジャックの名を口にする。しかし肝心な記憶は曖昧で、彼女自身が何者なのかも分からなかった。一方ジュリアとの出会いをきっかけに、自分にも失われた記憶があることに気づくジャックだったが…。(allcinemaより)
 
 
 
小生と同年代のトム様の最近の作品は、押し寄せる老いの恐怖に打ち勝つテキストとして、必ず鑑賞するのである。
 
さて、この作品の主題を、独りよがりの小生なりに考えますと・・・
 
要するに愛人を選ぶか?本妻を選ぶかなのである[ダッシュ(走り出すさま)]
 
アンドレア・ライズブロー
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オルガ・キュリレンコ
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 愛人か[キスマーク]
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本妻か[黒ハート]
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我が同輩トムは、愛人を囲う以前の記憶を都合の良い事に消去されております。
そして、境遇した謎の美女に不思議な郷愁を感じ、いつしかそれが恋情に変わっていきます。
しかしこれは、内縁の妻同然の愛人に対しての明確な背信行為です。
また、自分が目覚めたら知らぬ間に亭主が寝取られていた本妻にすれば、青天の霹靂。
 
こんな血みどろの三角関係にも関わらず、トムは爽やかに軽やかに未来の無人の地球で八面六臂の大活躍[パンチ]
 
[ぴかぴか(新しい)]流石です〜男の鑑[ぴかぴか(新しい)] 
 
さぁ、果たしてトムは、この難局をいかにして切り抜けるであろうか[exclamation&question]
 
 
・・・気楽に観られた娯楽SF映画。
家族向けにディズニーが製作予定で映画化権を落札したが、一悶着あって、原作に忠実な映像化を主張したユニバーサルが更に買い倒した曰く付きの作品らしい。
...ならば、もっとエロチックかつバイオレンスな演出を!と、最近刺激不足のオッチャンは思うのでした[バッド(下向き矢印)]
 
CGと実写の区分が明確過ぎて、カネをかけている割にリアリティ欠如の映像に陥っているのが残念だ。
ストーリーの骨格自体は練られたものだが、周辺の状況説明が弱い。地球上に残された者達の想いや、何故トムがこのような境遇に陥ったかをもっと丁寧に描いたなら、種明かしの驚愕の真実にも重みが出たはずなのだが・・・
この作品の見所は、ひとえに一人のナイスガイと二人の美女の魅力に尽きる。
 
さて、愛人か?本妻か? 怒ったらどちらが恐い[がく~(落胆した顔)]
 
愛人か[あせあせ(飛び散る汗)]
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本妻か[たらーっ(汗)]
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我が愚妻なら本気で撃ってくるはずだ[ふらふら]
 
 
 
 

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「クロユリ団地」 [上映中飲食禁止じゃ!]


 
監督 中田秀夫 
企画 秋元康
主演 前田敦子
 
 
◎つむじ風的アイドル考
 
AKBには全く興味が無い。
とは云っても、忌み嫌っている訳では無く、無意識の内にメディアに触れているだけで、メンバーの顔と名前が一致するのは、とりあえず片手は超えるであろう中年親爺である。
前田敦子なる者は、そのAKB王国の頂点を極めたトップ・アイドルであり、昨年からグループを卒業し、女優としてソロ活動を展開している。
そもそも彼女がトップを勝ち取った事実自体が理解できず、メンバー中、ビジュアル面ならダントツで小嶋陽菜だし、光る個性なら篠田麻里子、リーダー力なら高橋みなみ、イヤラし度No.1なら板野友美であり、前田に際立つ魅力を感じた事はないのである。
 
そんな彼女をトップに据える演出を仕掛けた秋元康の戦術こそが、AKB成功の秘訣なのではと、感じた。
 
現代のアイドルには、ファンの手の届かない高みで光輝くカリスマは必要では無く、それはかえってファンとの一体感を喪失させる。必要なのは自分と等身大の「彼女」なのだ。
昨日まで隣の席に座っていたクラスメイトが、スターを夢見て東京に出て行く。彼女は長い下積みの後、漸く日の当たる場所に登場する。しかし、次に彼女を待ち受けるのは、グループ内での熾烈な戦いなのである。
人それぞれ好みのタイプは千差万別の中、自分を投影したクラスメイトに声援を送り、それが「総選挙」という大仕掛けな儀式により明確な順位付けが決まるシステム。ファンはその結果に我が事のように一喜一憂するのだ。(こんな単純な仕込みが、社会現象になる事の方が異常なのだが...)
 
日本人は「努力と忍耐」の民族である。 
戦後の復興からジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれる経済大国に成長したのは、この民族の持つアイデンティティに拠る処が大きい。
 
前田敦子は、きっと『努力の人』に違いない。
恵まれた容姿と溢れんばかりの才能を持った生まれながらのスターが天下を取っても、日本人には支持されないのは明白だ。だから、センターは普通の女の子だが人一倍頑張る「前田敦子」でなければならなかったのではないか。
 
同時に、グループ内での生存競争を目の当たりにするのは、オトナ社会での出世競争や学生の受験戦争を丸写しにしたようなものであり、お気に入りアイドルの優勝劣敗の現実は、即、自分自身に重なるのである。
そして、このファンを巻き込んだ勝ち抜きゲームを、全くの部外者として観戦する立場の者にもまた、デスマッチに興奮する観客の如く、若干の残虐性を孕んだ快感を持って受け入れられているのだ。
 
80年代「オールナイターズ」「おニャン子クラブ」を成功させた秋元康は、素人発掘パターンを更に試行錯誤しながら、90年代つんく「モーニング娘。」の絶頂と凋落を踏み台に、ついに「21世紀日本式アイドルの作り方」を完成させたのだ。
 
...という前提なので、前田見たさではなく、中田秀夫監督久々のホラー映画に惹かれての鑑賞である。
好んで観るジャンルではないが、1998年公開のリング は、やはりジャパン・ホラーの記念碑的作品だと思うからだ。そして、この名作ホラーのヒロインに、映画初主演のモデルあがりの新人女優「松嶋菜々子」が抜擢されていたのが、今回の作品と不思議とダブるのである。 
 
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今回の作品は、視覚的な恐怖は皆無に等しい。
ヒタヒタと迫り来る恐怖感よりも、全編を覆い尽くす痛々しいまでの悲しみが観る者に押し寄せる。
昨今の社会問題でもある『孤独死』にも婉曲に触れつつ、不遇な独りの女性の深層心理に深く分け入った作風となっている。巷で喧伝されている「ホラー映画の最高峰」とは全く異質の個性を持つ、New中田ワールドだ。
 
そのヒロイン役の前田敦子。
天賦の才は全く感じられない・・・前述の通り、「努力の人」である。アイドル時代のはち切れんばかりの笑顔を封印し、目に見えぬモノに取り憑かれ、徐々に精神が崩壊する様を必死に演じた。 
蒼褪めたスッピンで呆然とした演技をする彼女を観ていると、敢えて演技力の巧拙は述べる気が失せてしまった。 
 
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知らぬ間に彼女を応援したい気分になった時点で、完全に「秋元マジック」の術中に嵌りそうな自分を正気に戻す。
 
アイドル・グループを卒業、ソロに転向し、長期に亘り一線で活躍したタレントは幾ばくもない。
個人的趣向から挙げれば...
 
おニャン子クラブ→工藤静香[揺れるハート]
東京パフォーマンス・ドール→篠原涼子[ハートたち(複数ハート)]
ribbon→永作博美[黒ハート] 
 
グループ内での戦いよりも更に熾烈な生存競争に、乙女達は卒業と同時に投げ出されるのである。
 
この「日本式アイドルの作り方」から生まれた何百羽の雛鳥達の中から、10年後にも我々に夢を与え続けられる「タレント」として羽ばたき続けるのは果たして何羽いるのだろうか。
おじさんは、贔屓目なしで、冷静に温かい目で見守りたいと思うのです[ぴかぴか(新しい)]
(まぁ、「総選挙」がいつまで人気を維持したまま続けられるかという少々意地悪な気持ちも持ちつつ...) 
 
※ちなみに、現在放映中NHK「あまちゃん」は、80年代と現在のアイドル事情をものの見事に融合させた、オジサン世代も抱腹絶倒の憎らしいほど巧い脚本です。 
 
◎おまけ
 
この映画に触発されたわけでもないが、
自宅からチャリンコで10分程の「ユリ公園」に行って参りました...with Nex7
 
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さすがに黒百合は無かったけど...
 

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神の領域〜アルヴォ・ペルトの世界〜 [素人の扉〜Jazz&Classic〜]

先日鑑賞した絶品映画『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』の中で度々流れた旋律。遥か昔を思い出しながら、彼の造り出す深き弦の調べに身を投じた[ぴかぴか(新しい)] 
 
クラシック素人につき、現代音楽となると更に、まるっきり???の小生なのである。 
 
しかし、新婚間もない25年前の札幌で、FMラジオから偶然流れていた旋律に、まさに戦慄が走った[exclamation&question] 
 
 
 
ほぼ変わらぬテンポで、単純なテーマが延々と繰り返されるが、徐々に弦の響きが幾層にも重なり合い、いつしか溢れんばかりの光の束となって部屋中を照らし、一面、純白の王国を作り上げる。どこまでも澄んだ鐘の音は、天空からの神の声か?
 
素人の私でも一聴しただけで葬送曲だと解る。
「天にも昇る気分」とは良く使われる表現だが、これは今まさに昇天した魂が、天国に導かれる様を描いた中世の宗教画を見ている心持ちになる。 決して悲しみにくれるだけではない。ひとつの完結した命が無上の歓びを持って天国に迎えられる姿を、崇め、尊んでいるのだ。
 
こんなに透明度の高く、精神性を感じる音楽に、当時の私はとてつもない衝撃を受けた。
翌日、書店に走り、ラジオで聞き漏らした曲名を、FM雑誌(当時の『FMレコパル』だったような)の番組表から探し当てた。
アルヴォ・ペルトベンジャミン・ブリテンへの追悼曲』 
 
そして、すぐさまその足でCDショップに向かう...
 
Tabula Rasa

Tabula Rasa

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ecm Records
  • 発売日: 2011/09/02
  • メディア: CD
 
中世もしくは近代の作品かと思っていたが、20世紀の現代作曲家の手によるものであった...[がく~(落胆した顔)] 
そして「ベンジャミン・ブリテン」とは、イギリスの作曲家。1976年没。 
 
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アルヴォ・ペルトArvo Pärt)・・・現在77歳。エストニアで生まれオーストリアに亡命、その後ドイツ・ベルリンに移住した現代作曲家である。
当初は厳格な古典主義派だったが、70年代からミニマリスム楽派として宗教的なアプローチが主となっていく。
音楽理論には全く以てチンプンカンプンな小生であるが、「ミニマル・ミュージック」とは、最低限の音数とパターン化された音型を反復させる音楽で、ドラマチックな展開は皆無、単純な曲調の中での微細な変化が特徴なのだそうだ。ゆえに、クラシックに留まらず、プログレッシブ・ロック、テクノ・ポップにもミニマル派は存在する。ブライアン・イーノ坂本龍一も、ミニマル・ミュージックを多用した音楽家なのである。

所謂、癒し系ミュージックと呼ばれる環境音楽等に使われる手法なのだが、アルヴォ・ペルトの音楽は、癒されるどころか、胸が締め付けられ、己の魂が磨き込まれていくような感覚に陥るのである。信仰心の薄い仏教徒の私が「キリストに跪く」と云っても何の説得力も無いのだが、まさにその感覚なのだ。 
 
アルヴォが若い頃、ある高僧に訊ねた。
「作曲家としてどうすれば自分をもっと磨く事ができるでしょうか? 私は今、祈りの言葉とか賛美歌のテキストに曲をつけているが、そのことは作曲家として自分に役立っていると思うのですが・・・」
僧は答える。 
『祈りの言葉はすでにすべて書かれてしまっています。あなたはそれ以上増えす必要なないのです。お祈りするための言葉や準備は全部整っているのです。ですからあとは、ひとえにあなたがそうする気があるかどうかにかかっているのです。』
 
彼の音楽を物語る『真理』である。
禁欲的な生活を全うし、純粋に神への祈りのみに自己の全身全霊をかけて取り組む彼の姿が目に浮かぶ。
 
後年の彼の言葉。
「私が見出したのは、たったひとつの響きが美しく奏でられるだけで十分だという事だ。静けさと沈黙ともいえる。私は、わずかな音素材、ひとつの声部、またはふたつの声部で作曲する。わたしはもっとも単純な手段で、3和音で、ある特定の調で曲を構成する。3和音の3つの音の響きは、鈴の音に近い。だから私はそれを「ティンティナブリ(鈴音)」と名付けたのだ。
 
自己満足・独りよがりの現代音楽とは一線を画すアルヴォの作品群。
伝統的な要素と前衛的な身振りが奇妙に結合した「祈り」の音楽。時代を超越した普遍性
彼を初めて聴いた当時は、アルヴォ・ペルトは日本では全くの無名であった。CDショップには冒頭のECMから発売された1枚しか在庫は無かった。昨今、「癒しブーム」に乗って漸く国内でも彼の作品が多く発表され始めたのは、きっかけは別にしても嬉しい処である。そして更にできるなら、彼の正当な評価も願いたいものだ。アルヴォの音楽は、単なる「癒し」では決して無い、崇高なる「祈り」なのである。
 
前述の映画に挿入された『Fratres』を(前半部分のみ)
 
 
Very Best of Arvo Part

Very Best of Arvo Part

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI Classics
  • 発売日: 2010/08/09
  • メディア: CD
 
入門用としてベストな2枚組。 
彼の後期の代表作は、ほぼ網羅されている。
 
 
Passio

Passio

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ecm Records
  • 発売日: 1994/02/15
  • メディア: CD
 
ヨハネ受難曲〜深淵なる世界です。
 
 
 
ペルト:タブラ・ラサ/交響曲第3番

ペルト:タブラ・ラサ/交響曲第3番

  • アーティスト: 湯浅卓雄,ペルト,アルスター管弦楽団,レズリー・ハットフィールド,レベッカ・ヒルシュ
  • 出版社/メーカー: Naxos
  • 発売日: 2001/01/01
  • メディア: CD
 
初期の交響曲やバッハのコラージュが収められている貴重盤。
声楽曲が含まれていないのも珍しい。
 
 
 

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「くちづけ」 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:堤幸彦
脚本・原作:宅間孝行
撮影:班目重友
美術:相馬直樹
音楽:朝川朋之
 
出演:貫地谷しほり 竹中直人 宅間孝行
田畑智子 橋本愛 麻生祐未 岡本麗 嶋田久作
伊藤高文 谷川功 屋良学 尾畑美依奈 
 
知的障害を持つ娘のマコ(貫地谷しほり)を、男手ひとつで育てる愛情いっぽん(竹中直人)は、かつては人気漫画家だったが休業し、すでに30年がたっている。知的障害者のためのグループホーム「ひまわり荘」で住み込みで働き始めたいっぽんと、そこで出会ったうーやん(宅間孝行)に心を開くようになったマコ。しかしそんなある日、いっぽんに病気が見つかる。(シネマトゥデイより)
 
深いです[どんっ(衝撃)]
 
劇団「東京セレソンデラックス」の名作舞台の映画化。「泣ける映画[もうやだ~(悲しい顔)]として結構評判でしたので、「アイアンマン3」で賑わうスクリーンを素通りし、じっくり鑑賞して参りました。泣けなかったけど...[あせあせ(飛び散る汗)]
 
 
NHK朝ドラの歴代出演者は、なんだかんだ云って素敵だなぁ〜と感心しきり[ひらめき]
 
ヒロイン・マコ役〜貫地谷しほり
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 2007年『ちりとてちん』女落語家・徒然亭若狭
「華が感じられない地味キャラ」で花が咲く女優さん
しかし良〜く見るとフェロモン漂う豊乳美女[キスマーク]
 
うーやんの妹・宇都宮智子役〜田畑智子 
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 2000年『私の青空』シングルマザー〜北山なずな
ボーイッシュな面が強調され過ぎる役柄が多いが
実は「オンナ」を濃厚に演じられる女優だ
 
施設オーナー夫婦の娘・国村はるか役〜橋本愛 
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現在放映中『あまちゃん』ヒロインの親友・足立ユイ役でついにブレイクか[exclamation&question] 
 弱冠17歳〜3年程前からマイナー映画・TVドラマに多数出演
端役であっても異彩を放っていた未完の大器だ
この目力に引き込まれ、そして「キレる演技」には笑える[わーい(嬉しい顔)]
 
こんな魅力溢れる女優陣と、今や大俳優の貫禄の竹中直人を始めとしたいぶし銀のベテラン俳優達、セレソンの主宰者・宅間孝行が紡ぐ舞台仕立てのコメディ・ドラマ。
しかし、テーマは暗い・重い・痛い。
 
知的障害者とその家族を取り巻く、現在の社会環境に対し、振り上げた怒りの拳をそっとポケットに隠し、微笑みながら我々に悲痛の想いを語りかけてくる。
 
こんな重いテーマを、穏やかな気持ちのままで鑑賞できたのは、大ヒットした舞台演劇を更に映画化に向け、趨向に趨向を重ねて脚本を練り混んだ宅間氏の手腕によるものであろう。
「20世紀少年」では大いに小生の期待を裏切った堤監督も、今作では持ち前の緻密な構成力と独自のカット割りで、問題作の映像化を成功させた。(元々、有能な映像作家である。「20世紀少年」の世界観が余りにも壮大過ぎたのだ)
 
しかし、やはり、知的障害者になり切る演技は困難を極める。
うーやん役、自作自演の宅間氏は舞台でも同役を演じていたわけであるが、舞台と映画の違いがどうしても露呈される。舞台ではオーバーアクション気味の演技の方が見栄えは良いが、自然な描写の中で、しかもアップ多用の映画では、過剰な演技は致命傷となる。他の障害者を演じた俳優陣にも同様な事が云え、貫地谷も含め、この演技の壁を乗り越えるのは残念ながら無理があったと言わざるを得ない。
レインマン』でのダスティン・ホフマンの演技と比較してしまうのも可哀想ではあるが...
 
本来の守るべき弱者に対しての杜撰な社会システムへの警鐘、一般人の障害者への不理解。宅間氏の怒りは、笑いと涙のホーム・コメディの形態を通じて、果たしてみんなに届いただろうか?
 
同傾向の社会派映画として是枝裕和監督『誰も知らない』の徹底して醒めたカメラアイによる静かなる告発が、個人的に思い出される。スクリーン一杯に拡がる悲しみと怒りは、善人ばかりが登場する笑劇と共には成立しない。
しかし、今作のような柔らかい表現方法が「今風」で受けるのかなと、この映画で全く泣けなかった自分が少々時代遅れではないかと、自問する処ではあるが。 
  
だが私は、劇中にすすり泣く作品よりも、エンドロール後にも衝撃で席を立てない映画の方を断然支持する。誠に勝手ながら...
 
 
レインマン [Blu-ray]

レインマン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray
誰も知らない [DVD]

誰も知らない [DVD]

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • メディア: DVD
 
◎おまけ
朝ドラと云えば、このベテラン女優を忘れてはいけない[パンチ]
 
麻生祐未 『ほんまもん』『カーネーション』
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 年を重ねるごとに芸風が広がり
風格とコケティッシュな面を併せ持つ希有な女優 
実は今作で一番存在感を感じた俳優が彼女でした[ハートたち(複数ハート)]
 
 
 
 

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