「藁の楯」 [上映中飲食禁止じゃ!]
監督:三池崇史
脚本:林民夫
撮影:北信康
音楽:遠藤浩二
原作:木内一裕
主題歌:氷室京介
出演:
大沢たかお 松嶋菜々子 藤原竜也
岸谷五郎 伊武雅刀 永山絢斗 余貴美子
山崎努 本田博太郎
日本の財界を牛耳る大物・蜷川隆興の孫娘が惨殺された。容疑者は8年前にも少女を殺害し、釈放されたばかりの清丸国秀。警察の懸命の捜査が続く中、全国紙に“清丸を殺害すれば10億円を支払う”との蜷川による全面広告が掲載される。日本中がにわかに色めき立ち、観念した清丸は潜伏先から福岡県警に自首することに。さっそく清丸を警視庁に移送するため、SPの銘苅一基をリーダーとする5人の精鋭が集められる。タイムリミットは送検までの48時間。だがその行く手には、ありとあらゆる所に潜み、“クズ”を仕留めて10億円をいただこうと殺気立つ日本全国民が待ち構えていた。(allcinemaより)
やはり観てしまう「三池作品」
前作「悪の教典」では、“生真面目に高校生を殺し過ぎて”良識ある?多くの観衆から酷評を浴びた、我が敬愛するB級映画の巨匠・三池崇史監督。今回もおふざけパロディ路線ではなく、結構マジに撮っています
大沢たかお・・・いい男になりました 昔のモデルあがりの優男イメージから年を追う毎に「線」が太くなり、体型は変わらずとも最近は「渋み」と「凄み」が出てきた。
そして、大ヒットTVドラマ『仁』の主人公同様、今作のような正義感溢れる実直な男が似合ってしまう今時では、貴重な存在の男優である。内に秘めた心情を見事に表現していた。
松嶋菜々子・・・これまたヒット・ドラマ『家政婦ミタ』で驚異の復活劇。過去に無い無表情な役柄がよほどお気に召したのか、今作もその延長線上の演技である。出産のたびに休養と復帰を繰り返し、容姿重視のモデルあがりがいつしか「オバサン刑事」をスッピンで演れる女優となった。個人的には「笑った菜々子」も観たかったのだが...
藤原竜也・・・新人時代から蜷川幸雄に鍛えられただけに巧い、巧過ぎる 演劇畑出身だけあって、映画の中では過剰演技気味に見えるシーンもあるが、それがかえって今回の情緒不安定な犯罪者役にマッチしていた。感情表現は抜きん出ている俳優だ。彼の特色であり唯一の弱点は、ピュアな美男子すぎるので「真の悪役」が似合わない処かもしれない(「デスノート」しかり)
前半でいなくなってしまったが...
永山絢斗君の激しくも軽い演技や
ベテラン・山崎努御大の怪演も
非常にそそられるモノがあった
こんな魅力溢れる俳優陣を奇をてらった手法はとらず、引く場面は引き、近づくべき所は目一杯のドアップの抑揚のついたカメラ遣いで、彼らの心情心理を表現していく。次々と現れる賞金目当ての人間達の狂気を、凶弾に倒れた仲間達の命の灯火が消える刹那を、劇的かつ美しいまでに描ききった。
更に三池氏らしさが光ったのは、大掛かりなアクションであろう。高速道路上の何十台ものパトカー群へのダンプカーの突進シーンなどは、徹底したリアリティに拘る彼の面目躍如たる処だ。
それにしても、今回は彼にしては珍しく大枚はたいているなぁ〜という感じで、原作からしてあり得ない話しを、三池監督の魔法によって観客は現実の出来事と錯覚してしまうのだ。
「ゼブラーマン」「忍たま乱太郎」などの低予算の子供向け作品でも、細部への“変な”拘りを見せる三池氏が、今作は豊富な資金をバックに、伸び伸びと「三池流」を貫いたようである。(個人的には「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」「愛と誠」のバイオレンス・パロディ路線が大好きな小生だが)
クライマックス・シーンでの藤原の一言の台詞が、この作品のすべてを物語る。
『すげぇ』
少々鳥肌モノの場面だった
カンヌ映画祭公式選出だそうだが、仕事に殉じる日本人の姿は、果たして海外の方々の共感を得られるであろうか?
ただ、仮に自分も家族を失っていたら、仕事のみに生きる価値を見出さざる得ない哀しい会社員かもしれない...と思ったりするのだが。
憎しみの連鎖を断ち切ったひとりのSPの生き様が、人の命の軽重を問うた問題作であり感動の人間ドラマである。
◎おまけ
エンドロール時の氷室京介のヴォーカルを聴いて、思わず自分の若い頃を思い出してしまった
50代の氷室&布袋の幻の復活ライブ
見事な合成です(^▽^;)