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『ミッション:8ミニッツ』 [上映中飲食禁止じゃ!]


やっと観られた待望の作品である〜素晴しい、本当に観て良かった[exclamation×2]
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監督:ダンカン・ジョーンズ
製作:マーク・ゴードン 
脚本:ベン・リプリー
撮影:ドン・バージェス
音楽:バリー・チューシッド
 
キャスト: ジェイク・ギレンホール ミシェル・モナハン
      ヴェラ・ファーミガ ジェフリー・ライト
 
シカゴで乗客全てが死亡する列車爆破事件が発生。犯人捜索のため政府が遂行する極秘ミッションに、米軍エリートのスティーブンスが選ばれる。事故犠牲者の事件発生8分前の意識に入り込み、その人物になりすまして犯人を見つけ出すという作戦で、必ず8分後には爆破が起こり元の自分に戻るスティーブンスは、何度も「死」を体験するうちに次第に作戦への疑惑を抱きはじめる。(映画.com)
 
 
「警告:このラスト、映画通ほどダマされる」
 
という浅薄な宣伝文句に、小生は不快感を隠せない。
観客を騙す事に主眼を置いた安手なサスペンスではないし、多くの人に観てもらい感動を分かち合いたい秀作だ。決してマニアだけに送るコアな作品ではない[パンチ]
 
 
とは言いながら、この作品の時間軸の魔法に、軽い脳内パニックによる頭痛が襲ってきて、その痛みが快感に変わってしまう私は、やっぱり偏執狂[がく~(落胆した顔)]
タイムマシンに乗って過去に舞い戻り現在を修復する「バック・トウ・ザ・フューチャー」を彷彿させる『タイムマシンもの』を捻りに捻った快作なのだ。
しかし、この「ソースコード」がタイムマシンと大きく異なるのは、いくら過去を変えても「現在」は不変であるという事。
 
スティーヴンス大尉(ジェイク・ギレンホール)の時空脳内旅行は、何度でもリセットできるが、結末は変えられないシュミレーション・ゲームのようなものなのである。8分間のうちに爆弾犯人を探し出す使命であるが、必ず8分後に自分の死と共にゲームはリセットされる。
スティーヴンスは「さぁ、もう一回死んでこい!」とばかりに幾度も爆発寸前の列車内に送り込まれるのだ。無事に戻れる事が判っていても、自ら進んで死の体験はしたくないもので、こんなゲームが実際市販されても、まず売れないとは思うのだが・・・
 
実は犠牲者の死ぬ直前の残存意識に、実在している人間の意識をシンクロ・侵入させる事により、 事故現場の光景が体感できる科学技術を駆使しているのである。この設定がなんともユニーク。
 
スティーヴンスは、この試練を繰り返す毎に、真犯人に一歩一歩近づき、同時に列車内で向かい合わせた女性(ミシェル・モナハン)に淡い恋心を持つようになる。そして、彼は自分自身の存在についても驚愕の事実に辿り着き、途方に暮れるのあった。
しかし、いつしか彼の目的は、爆破事件の事実が不変である事を承知しながらも、プログラミングされた世界において事故を未然に防ぎ、愛した女性の命を守る事に変わっていく。自分の迸る命を絞り出して・・・
 
彼の最期の8分間のミッションが、奇跡を呼ぶ[exclamation×2]・・・泣けます[もうやだ~(悲しい顔)]
 
脚本の秀逸さに拠る所大ではあるが、スピード感溢れるサスペンスフルな展開の中で、ジワジワと人間の想いの強さが増幅されていき、それが不変の世界を揺り動かすまでに見せる演出も出色の出来。
4人に集約される主要登場人物を演じる俳優陣も、それぞれの個性を十分に発揮、特にジェイク・ギレンホールヴェラ・ファーミガは、微妙な感情変化を見事に表現していた。これでミシェル・モナハンがブロンドだったら、私は狂喜乱舞の悶絶死だったろう[あせあせ(飛び散る汗)] 
 
多くの観客は、目まぐるしく繰り返されるミッションに戸惑い、頭を振り回され、スティーヴンスの境遇を知るにつれ胸が切なくなるであろう。いくら足掻いても変えられない過去世界に主人公共々、地団駄を踏むであろう。そして最期に、澄み切った心で臨んだ彼の決死の行動により迎えられる極上のエンディングに対し、果てしない命の素晴しさを実感し、涙を流すであろう[たらーっ(汗)][たらーっ(汗)]
 
 
 
最後の二人の会話がとびきり素敵。(字幕の訳とはニュアンスが違うのだが)
スティーヴンス「人生があと1分しかなかったら、どうする?」 
クリスティーナ「Make every second count」 (すべての瞬間を意味在るものにするわ)
 
個人的に、近年のサスペンス系映画では最上位ランクの傑作である。
 
 
おまけ
 
監督のダンカン・ジョーンズは、あのデビッド・ボウイの息子なのである[どんっ(衝撃)]
父親の音楽的感性が子供には映像的感性に転換されて引き継がれたようだ。血の成せる技である。
 
グラム・ロックにはあまりハマらなかった小生は、バリバリのロック・スター時代の父・ボウイの音楽に触れる機会は少なかった。70年代当時の私は、正統派ハード・ロックもしくはプログレに若い血潮を滾らせていた。
しかし、ブライアン・イーノと組んだ「ベルリン3部作」と呼ばれる作品群は、プログレ・ファンも仰天の内容だ。初めてラジオから第一弾のロウ(1977年)からの1曲「ワルシャワ」が流れた時は、「これがボウイか[exclamation&question]」という驚きと共に、彼の音楽性の深さに感銘し、このアルバムだけは極端に聴き込んだのだった。(ほとんどインストルメンタル・ナンバー〜歌が極端に少ないのでボウイ・ファンの間では物議を醸した異色作だ)
 
「WARSZAWA」(1978年東京公演から若かりしボウイの美貌を) 
 
 (長〜い、夢の中へ[眠い(睡眠)]完璧プログレ[exclamation]
 
 「SOUND AND VISION」(「ロウ」からのシングルカット曲〜2002年ライブから)
 
 (30年以上経っても色褪せないビート)
 
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『コンテイジョン』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
撮影:スティーヴン・ソダーバーグ
美術:ハワード・カミンガス
音楽:クリフ・マルティネス 
 
キャスト:マット・ディモン ケイト・ウィンスレット ローレンス・フィッシュバーン ジュード・ロウ
グウイネス・パルトロウ マリオン・コティヤール ブライアン・クランストン ジェニファー・イール 
ジョン・ホークス ジェニファー・イーリー サナ・レイサン
 
接触感染により、数日で命を落とすという非常に強い新種のウィルスが香港で発生する。その感染は、アメリカ、ヨーロッパ、北アフリカ、南米、そして日本と世界中に散らばっていく。アメリカ疾病予防センター(CDC)と世界保健機構(WHO)はワクチンの開発を急ぐが……。(ぴあ映画生活)
 
私のお気に入り俳優が目白押し[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)] 
Labyrinth様のおすすめ(http://pinkylabyrinth.blog.so-net.ne.jp/2011-11-13-2)に従い観て参りました[わーい(嬉しい顔)]
 
この映画に、あえて主人公は存在しない。 
ピンで十分主演を張れる名優達が、ひとりひとりの人間としての生き様をそれぞれ演じた事により、単なるウィルス・パニック映画の枠にとどまらない重厚なヒューマン・ドラマとして観る者の心を打ち、グローバル社会への警鐘をもかき鳴らした秀作である。
 
ドクター・エリン役ケイト・ウィンスレット。このオスカー女優が、作品前半で早々とスクリーンから姿を消してしまうケイト・ファンの私としては意外な展開。CDC(疾病予防管理センター)から派遣されたエレンは、正体不明の伝染病のパンデミックを防ぐべく、罹患者を隔離する作業を命じられ、感染域の真っただ中に身を投じる。そして自分の感染を自覚し狼狽しながら、それでも愚直なまでに医師としての使命を全うしようする彼女の姿に心打たれる。その演技は、人間の意思の強さなど事もなげに打ち砕く自然の脅威を浮き彫りにさせた。登場時間は短くても、強烈な印象を残した。
 
ローレンス・フィッシュバーン演じるエリス・チーバー博士。エリンの上司であるCDC幹部の医師は、冷静沈着に事態の収拾に向け指示を出し、一刻も早いワクチン生成に執念を燃やす。が、愛する者達に危険が迫るや、医師としてのモラルをかなぐり捨てて、彼女達の生命の救出を優先するのであった。この部下と上司、エリン医師とエリス博士の行動の対比が際立った演出となって我々に問いかけて来るものがある。
 
第一発症者・ベス役のグウイネス・パルトロウ。『セブン』のヒロイン役と同じく非業の最期を遂げ、それがこの作品の序章となるのだが、香港出張で羽を伸ばし、昔の恋人との密会を楽しむ「できる女」に魔が差す瞬間を、そして「誰にでも突然襲ってくる死」を抑揚をつけた演技で魅せた。卒倒場面はお見事!
 
そのベスの夫・ミッチ・エンホフ役のマット・ディモンは、不器用な男が瞬く間に妻と息子を亡くし途方にくれる様を情感豊かに演じた。そして、妻の感染ルート解明と共に彼女の不義密通まで明らかになり、喪失感と疎外感に打ちのめされながら、過剰なまでに残された長女の命を守り抜こうとする父親の姿は、哀しみを通り越して病的なほど鬼気迫るものがあった。
 
主要人物では一番美味しい役どころであろうマリオン・コティヤール。「NINE」「インセプション」での色香は封印しているが、やはり美しい〜[ハートたち(複数ハート)]ウィルスの起源を探索するWHOから派遣されたオランテス医師を演じる。使命に燃える知的な若き女医は、貴重なワクチンとの引き換えの為、地元の医療チームに誘拐され中国の片田舎に監禁される。そこで彼女が見たものは、そして感じたものは・・・先進国のエゴと命の軽重を痛烈に表現。
 
主要登場人物の中で異彩を放ち、かつ作品のモチーフとも言えるフリージャーナリスト・アラン役にジュード・ロウ。いち早く新伝染病に警鐘を鳴らし、CDC、WHOの不実を訴え、真実の解明に孤軍奮闘するのであるが、その彼の行為がデマを拡散させ、世界中の人々をパニックに陥れる。各地で略奪・暴動が続く中、アランは著名なブロガーとして巨万の富を得てほくそ笑むのである。この不可思議な欲深き男を、まさに大胆不敵に演じた。
 
こうして各俳優陣の一人一人の人間の内面が浮き彫りにされるような、自然かつ等身大の演技が繰り広げられる。ストーリーは日めくりカレンダーの如く淡々と進行し、日ごとにウィルスが増殖する様子と共に次第に恐怖が積み上がっていく構成になっている。しかし、その恐怖感は致死率の高い未知の伝染病からもたらされるものだけではない。人間の根深い本質をえぐっていくような人物描写に背筋が寒くなるのである[がく~(落胆した顔)]
 
人間だれしも併せ持つ。悲劇が我が身に及ばない限り、多くの人間は他人に対して善人のままでいられる。仮に辛苦の極限下に「」に転がった人間がいても、誰が咎められる事ができるのであろうか。いつでもその「」は自分に感染し発症しないとも限らないのだ。その悪の発露は、時として現在のグローバル社会においては、ウィルスの感染よりも広範囲に拡散されるのである。「」の伝播よりも遥かに速いスピードで。
(半年前には「放射能には昆布を食え」のデマが広まった我が国は、どんな劣悪な環境でも暴動が起きず、瞬く間に多額の募金が集まる国民性が喧伝されながら、一方では福島産の材木が五山の送り火に使われようとすれば一転集団ヒステリー状態に陥る民族なのである。) 
  
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最後に、惜しくも6大俳優の線に洩れたジェニファー・イールの演技は胸に熱く残った。
ワクチン開発に携わる女医・アーリー役。 
試行錯誤の上、動物実験で唯一効果のあったワクチンが完成。
しかし、人間への副作用は計り知れず、実用化には更に多くの検証の為、時間が必要となる。
その間に犠牲者が爆発的に増える事は明白だった。
彼女は、誰にも知られずに、自らの体にそのワクチンを打込むのだった。自分の命と引き換えに、この薬の効果を1日も早く世に知らしめるために。
 
表向きパニック映画の体裁をとりながら、人間の信念の強さと業の深さを名優達の抑えた演技で表現した味わい深くかつ慄然とする作品である。スティーヴン・ソダーバーグの非凡さを改めて感じ入った[ぴかぴか(新しい)]
 
 
 
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