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「奥久慈の紅葉」with Nex-5 [ざれごと写真日記]

先週は、徳川秀忠・江を祀る増上寺に伺ったが、本日の目的地は水戸徳川家ゆかりの場所である。
 
昨日の綿密な夫婦の打ち合わせでは、6時半起床・8時出発、愛妻弁当持参による「ノンビリ紅葉狩り」の予定。
人間は歳をとると朝方目覚めるのが早くなるというが、そのような常識は私達夫婦には通用しない。
10時起床[がく~(落胆した顔)]慌ただしく朝食も摂らずに10時半出発。コンビニで朝・昼飯双方を買い込み、車中で肉まんを頬張りながら、ひたすら常磐道を突っ走る必死の寝坊夫婦の姿があった。
 
茨城県常陸太田市「西山荘(せいざんそう)」・・・水戸光圀(黄門)が、元禄4年から元禄13年に亡くなるまでの10年間を過ごされた隠居所・通称「西山御殿」と呼ばれた所である。御殿は1817年に野火により消失し、現在の建物は1819年に規模を縮小して再建されたもの。現在は、徳川ミュージアムの分館として保存公開されている。
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茨城県では紅葉の名所として「筑波山」が今週、見頃を迎えているらしいのだが、大混雑を予想し、足を伸ばして紅葉の穴場と呼ばれる此処にやってきた。
 
今年の紅葉は天候不順により色付きが良くないと云われている。確かに1枚1枚の葉の色のりは「燃えるような」には程遠いようだ。しかし、この西山荘は多種の木々の微妙な配置により、遠景からの色のコントラストが見事。晩秋の哀愁を体一杯に吸い込む事ができた。今日もカメラはNex-5。久しぶりに最近出番の無いα-700も単焦点レンズを付けてサブカメラとして同伴。(普通の人はNexがサブだと思うのだが...)あいにくの薄曇りで撮影が一番難しいコンディションだったのが少々残念[ふらふら]
奥様は、いつものようにスケッチブックを持参。お互い寝坊しても気合いだけは入ってます[パンチ] 
 
彩り絵巻の入口
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 御殿というには質素な茅葺きの母屋が七色の木々に覆われる
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竹林の脇の小川のせせらぎ 
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[右斜め下]久々α700+STF135mmの4枚[左斜め下]
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[右斜め下]α700+シグマ50mm F1.4で2枚[左斜め下] 
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昼食。コンビニおにぎりを食いながら眼下を眺める... 
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苔の緑と紅葉のコントラスト 
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妻も3枚のスケッチを描き上げご満悦のご様子[わーい(嬉しい顔)] 
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西山荘とほぼ隣接した池の畔に茶屋が見える 
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当然、抹茶セット注文。本日は「柿の練り切り」 
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駐車場併設の土産屋で、さらに「黒糖饅頭」「五家宝」なぜか「無添加味噌」を購入し、帰宅準備完了。
と、思いきや出口で地図を眺めていた妻が突然、「ここも行きた〜い[ぴかぴか(新しい)]」と指差しながら叫ぶ[exclamation×2]
 
この[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)]を身に纏った時の奥様に逆らってはいけない[がく~(落胆した顔)]
ボチボチ日没近い時刻なのだが、此処からさらに20キロ北へ車を走らせる。 
 
 「竜神大吊橋」
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橋のたもとから山を下る遊歩道もあるらしい 
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快晴の朝に訪れたら絶景だっただろうに...竜神峡
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ついに日没タイムアップ[時計]
 
妻「今度は早起きして、ここのハイキングコースを歩きましょうね」
夫「今度っていつ?来週の日曜は、お互い仕事入ってるじゃない」
妻「なに言ってんのよぉ〜来年の話よぉ〜」
 
女って本当に気が長い。その前にお前も早く起きろぉ[ちっ(怒った顔)]とは言えないご主人さまなのでした[あせあせ(飛び散る汗)]
 
その後、脱兎のごとく自宅へ引き返し午後8時の大河ドラマ最終回に間に合わせる暴走中年夫婦の姿があった... 
 
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『憂国忌』 [〜老眼はつらい〜]

11月25日は『憂国忌』・・・三島由紀夫の命日である。
 
遥か昔の記憶。1970年、小学生だった私が学校から帰宅すると母親が「大変な事になったわ!」とテレビを見入りながら興奮気味に呟いていた。なにやら、世間で大事件が起きたらしいのだが、当時小学校低学年の私には流れるニュースの内容も正確に理解できない。母の説明により「有名人が切腹自殺した」という事実だけが何とか吞み込めたのだが、翌日の新聞で血みどろの部屋の片隅に転がる人間の首らしきものが写っている白黒写真を見て、強い衝撃を受けたのであった。当然「三島由紀夫」という人物も事件の背景も解らなかったが、「切腹」という歴史ドラマの中でしか知らない行為が、あの昭和の時代に現実に起きたという事実が子供心に鮮烈であり、生々しい写真の残像と共に、「ミシマ」の名は私の脳裏に深く焼き付く事になった。
 
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中学の夏休みの読者感想文の宿題。 
前年の京都旅行の連想から偶然書店で見つけた「金閣寺」を題材にした。文学者・三島由紀夫との初めての邂逅である。それまで、純文学と呼ばれる作品には全く縁の無かったロック少年は、聖水でできた氷の結晶の如く美しい文体に、瞬く間に囚われの身となった。今思えば、14、5歳の少年に、この名作の心髄を読解できる道理も無いのだが、滅び行く美への憧憬とオドロしいまでの人間の精神世界に踏み込んだ筆致は、記憶の底の生首写真と渾然一体となり、初めて「三島由紀夫」なる者が私の頭の中で形作られた。それは淳朴な心に、触れていけない禁断の木の実の味を知ってしまったような、一種の罪悪感と優越感を覚えさせ、その美味には逃れられない微かな毒が含まれていた。
 
その後、三島氏の主要作品を読み漁り、三島事件に関する文献・資料に目を通すほど、彼に傾倒した時期が暫く続いたのだった。右傾化耽美主義ニヒリズム・・・思春期の少年はかぶれやすいものである。(幸い、同性愛だけは影響を受けなかったが...)しかし、自分自身が少年を脱皮し、多くの社会経験を積んでいくに従い、彼の思想や生き様への心酔度は薄れていき、成人を過ぎた頃には純粋に単なる「文学者」としての三島の一ファンなっていくのであった。
 
そんな三島由紀夫氏が亡くなって41年が経過したのだが、久方ぶりに「読書の秋」に併せて、当時読まなかった彼の作品を何点か続けて読んでみた。
 
若きサムライのために (文春文庫)

若きサムライのために (文春文庫)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1996/11
  • メディア: 文庫
 
 
 
  
対談が主。 彼独特の文体の美しさは堪能できない。
しかし、半世紀前に発した「病める現代ニッポン」を見通したような数々の警句は、「目から鱗」であり、作者の千里眼には驚きを隠せない。そして彼が紛れもない「憂国の士」で在った事を再認識する。三島事件への端緒を彷彿させる発言にも出会える。
 
近代能楽集 (新潮文庫)

近代能楽集 (新潮文庫)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1968/03
  • メディア: 文庫
日本古来の能楽を下敷きに現代風に創作した戯曲集。いわゆる台本なのだが、瀟洒な会話が男女の機微を見事に表現されている。原典は知る由もない能楽音痴の私でも十分楽しめる内容で、すべての短編が味わい深い。
最後の会話・一行が「オチ」となっており、一編ごとに読む側は苦笑い、感嘆の声を上げ、途方に暮れ、想いに耽る事ができる。
 
音楽 (新潮文庫 (み-3-17))

音楽 (新潮文庫 (み-3-17))

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/02
  • メディア: 文庫

 
 
 
三島小説の中では異色作であるが、絶品だ。 
発表当時は婦人雑誌に連載されており、一般の女性読者を意識してか、主要な作品と比べて非常に読み易い。
三島独特の研ぎすまされた文体は影を潜めているが、登場人物の緻密な描写や流れるような展開には、やはり舌を巻かざるを得ない。
精神科医による不感症の女性の治療記録の形式をとる。彼女の幼児体験まで遡り根本的な治癒をめざす医師は、この絶世の美女に幾度も翻弄される事となる。淡い恋情と医師の誇りの狭間で、彼女の本性との激しい戦いが続けられ、一歩一歩核心に迫る展開はサスペンス小説並の緊張感を醸し出す。
「性と生」の深き課題を、精神医学的側面も取り込みながら解き明かし、「女の魔性」の領域にまで踏み込んだ三島氏の隠れた名作だ。
〜それは色彩の少ない部屋の中に、小さな鮮やかな花のように浮かんでいるが、それが語りだす言葉の底には、広漠たる大地の記憶がすべて含まれており、こうした一輪の花を咲かすにも、人間の歴史と精神の全問題が、ほんの微量ずつでも、ひしめき合い、力を貸し合っているのがわかるのである。私たち分析医は、この小さな美しい花をとおして、大地と海のあらゆる記憶にかかわり合わねばならぬのだ。」(62頁)
美しい文章だなぁ[ぴかぴか(新しい)]
 
最後に極めつけの作品。
不可能

不可能

  • 作者: 松浦 寿輝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/06/22
  • メディア: 単行本

 
 
 
三島作品ではない。しかし、強烈に面白かった[どんっ(衝撃)]
1970年、市ヶ谷の自衛隊総監室で壮絶な割腹自殺を遂げた本名・平岡公威が、実は死にきれずに生きていたという設定である。その平岡が動乱罪による永い獄中生活から解放され、齢八十翁として現代に生きる姿を描いている。 
たぶんに松浦氏は、相当な三島由紀夫ファンであり研究者なのだろう。随所に作者の「三島への愛」を感じるのだが、私が少年期に心酔したような経験が彼にも同様にあったに違いない。同じ者を偏愛した人間だけが共有できる連帯感を勝手ながら覚えてしまう。
三島由紀夫に興味の無い読者には全く売れないであろう超限定コア読者向け小説なのだが、私は一気に読み込んでしまった。若き彫刻家に首の無い石膏像を作らせる件から平岡老人の前半生を振り返り、後半は一転してミステリー仕立ての完全犯罪劇に変貌する摩訶不思議な作品。三島を彷彿させる文体や諸作品からの借用・パロディが散りばめられ、現実に三島が演じた「生と死」を大いなる皮肉と溢れんばかりの愛情を持って再検証した幻想譚だった[ぴかぴか(新しい)]
 
 
 
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「増上寺と東京タワー」with Nex-5 [ざれごと写真日記]

週末から関東も不安定な陽気となり、遠出の紅葉狩りは諦めて、本日は都内の近場に散策という事になった。
 
妻との協議の結果、NHK大河ドラマ『江(ごう)』も終盤を迎え、目的地は徳川家ゆかりの芝の増上寺である。
...と当日、昼近くに目覚めれば、空一面の青空〜秋晴れ[晴れ]である。
「もったいねぇ〜、早起きして遠出が出来たのに」と私が思うよりも早く、妻の方は「わ〜い[ぴかぴか(新しい)]やっと洗濯物を外に干せる〜」と、家族3日分の洗濯に闘志を燃やすのであった[exclamation&question]
 
結局、増上寺到着午後3時[あせあせ(飛び散る汗)]
この大寺院、仕事上での葬儀の参列で何度か来た事はあるが、プライベートでの訪問は東京に永く住みながらも初めてである。自家用車で入口らしき場所から訳もわからず進入すると、本堂の裏手の駐車場に着いた。通常の参拝客の三門から本堂に向かうルートとは全く逆の経路で歩く事となった。
 
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 京都のモミジは絶品だが、東京のイチョウも私は好きだ。
 
裏手から本堂を望む
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正面から本堂と東京タワーを 
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「お江ブーム」の影響で、境内は多くの観光客で賑わっていた。そのNHK効果により、当寺院も今年に限り、通常非公開の寺宝などが特別公開されている。
 
まず「徳川霊廟」徳川家6人の将軍と5人の正室が埋葬されている。
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 歴代徳川家の霊廟と東京タワーの取り合わせ
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葵の御紋の御門(洒落じゃ) 
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本堂でお参りして御朱印を戴く。(修行中のお坊さんらしく、達筆ではない〜大寺院では仕方のない処だ) 
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本来の入口である三門に廻る。
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此処でも特別拝観が行われていた。通称三門と呼ばれるこの「三解脱門」内部が戦後初の一般公開。
「初」モノに弱い日本人。当然、長蛇の列だ。
行列と貧乏揺すりが大嫌いの私は早々に諦めモードに突入していたが、
妻曰く「私が並んでてあげるから、アンタは写真でも撮ってらっしゃい[カメラ]
「おっ〜なんとできた女房[exclamation×2] お言葉に甘えま〜す[わーい(嬉しい顔)]」...能天気な旦那。
 
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満足して行列に並ぶ妻の元に戻ると、彼女の後には誰も並んでおらず、その代わりにポールを持った若いお坊さんが立っている。
妻「拝観受付終了。私がギリギリ最後尾を勝ち取った[手(チョキ)]」 
我々の後にも「遠くから来たので、なんとか入れて下さい」とお坊さんに頼み込む何組かの観光客がやって来たが、つらい終業に耐えた僧侶は微動だにしないのであった。
そんな慈悲深い?お坊さんが、割り込み客に目を光らせつつも、行列に並びながら器用に立って写生をしている妻と「お上手ですねぇ」「そんなことないわよぉ〜」などと談笑しているのであった。 
(妻がどんな手を使って滑り込んだかは私は知る由もない...中年おんなの色気が通用しないのは確かなのだが[たらーっ(汗)]) 
 
急な階段を登りきると・・・内部は当然撮影不可だが、こんな感じ[右斜め下]
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  楼上から浜松町方面の景色
 
「三解脱門」内部の公開は今月末まで。次回が何年後になるかは判らない。
女房様のおかげで、 また冥途の土産がひとつ増えたわい〜感謝[ムード]
 
因に、三つの「解脱(げだつ)」とは「むさぼり(貪欲)」「いかり(瞋恚しんに)」「おろそか(愚痴)」だそうだ。いまだ世間の毒にまみれる小生に、極楽浄土の道は遠い[ふらふら]
 
この後、増上寺会館で開催中の茶道具即売会に行きたいという妻の申し出に素直に応じたが、当然ひとつ伍拾萬円の茶碗など買えるわけが無い夫婦が会場を跡にした頃は、すっかり外は夜の帳が落ちていた。
 
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ライトアップされた東京タワーを見ながらティー・タイム。感謝の気持ちで旦那様のおごり[決定]
と、突然雲行きが怪しくなり...ポツリ・ポツリと[雨]
 
「ギャー、洗濯物がぁ〜[むかっ(怒り)][むかっ(怒り)][むかっ(怒り)]
 
自宅に急行したが、時すでに遅し。妻の昼間の2時間の激務は徒労に終わったのであった[がく~(落胆した顔)]
 
奥様、いつもお疲れさまです[たらーっ(汗)]」 
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『アジョシ』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督・脚本:イ・ジョンボム
撮影:イ・テユン
音楽:シム・ヒョンジョン
アクション監督:パク・ジョンリュル
 
キャスト:ウォンビン キム・セロン
キム・ヒウォン ソン・ヨンチャン キム・テフン
タナヨン・ウォンタラクン キム・ソンオ
 
ある出来事がきっかけで世間から遠ざかって生きる元特殊要員のテシクにとって、隣に住む孤独な少女ソミだけが唯一心を開ける存在だった。しかし、ソミの母が犯した事件によって親子は麻薬密売組織に誘拐されてしまう。ふたりを救おうとするテシクも危険に巻き込まれていく。
 
話題の韓国アクション映画を、終映まぢかギリギリで観てきました。
 
『韓国四天王』と云われてもなんのこっちゃ解りません。我が国では遥か昔に「御三家」「新御三家」が存在したが、そういえば最近国内では、このように呼ばれる芸能人は皆無だ。やはり古き良き日本を隣の韓国に重ね合わせているのかもしれない。
 
 
その四天王の一人だというウォンビン主演。
衝撃作『母なる証明』(2009年)の知的障害を持つ青年役での熱演が記憶に新しい。同映画では、それほどのイケメンには感じられなかったのだが、本作では男の私から見ても「めちゃ、カッコいい奴」に変身である。
 
        「母なる証明」                    「アジョシ」前半
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「アジョシ」後半 
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短髪に刈り上げ、程よい筋肉の精悍な姿が惚れ惚れするほど美しい[ハートたち(複数ハート)](但し、私にはそっちの趣味は断じて無い[パンチ]
この圧倒的美男子が、正確無比なる殺人マシーンに変貌するのだから女性ファンが痺れまくるのも納得なのだ。
 
小生もサッカー少年だった中高生時分には、腹筋に縦横の線が刻まれ、当時で云うブルース・リー並の肉体美を誇ったものだが、それも遠い過去の栄光。
それが今では、鋼のような腹筋の上を何重ものラード層が覆い隠し、熟成30年の贅肉は自分の◯◯◯を上から目視できない領域まで膨張し、その進化は留まる事を知らない[ふらふら]
餓えた黒豹時代を知らない妻からは、今が食べ頃の三元豚と揶揄されるのも致し方ないところ(そういいながら高価な飼料を与え続けられているが...)
ここまでウォンビン君と絶対的な肉体美の格差を見せつけられればこそ、小生は素直に彼を賞賛するのである。
 
肝心の内容は、韓国で大ヒットも頷ける爽快バイオレンス・アクション[exclamation×2]
”爽快”とはいってもR15+。骨が軋み、鮮血迸る格闘シーンは、観る者を選ぶかもしれない。
アジア映画のアクション・シーンが欧米のそれと決定的に違うのは、殺戮に対して型とリズムがある事だ。
日本・韓国・中国とも自国の伝統的な武道を下敷きにした殺陣が売り物であり、本作に関しても残虐なれども私には「美しく」感じられるシーンの連続なのである。
元情報特殊部隊員のテシクは、「効率的に人を殺す」プロであり、人間の急所を確実に傷つける技は「必殺仕事人」並に心地良いのである。
 
普段は質屋の優男が、突如として昔の殺戮機械に変貌する発端となったのが、彼に懐いていた近所に住む少女・ソミが誘拐された事に始まる。
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このソミ役のキム・セロンが巧い。劣悪な家庭環境に育ちながらも健気に生きる女の子を等身大で演じた。更に、格闘シーンに彩りを加えたのが、マフィア側に雇われた殺し屋・ラム・ロワン役を演じたタナヨン・ウォンタラクン
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自分と同じ匂いを持つテシクに共鳴するのものを感じながら、プロとして最期の戦いに臨む潔い姿は、日本の武士道を彷彿させる。タイの俳優の為、韓国語ができず、すべて無言の演技だが、絶体絶命のソミを救いながらもテシクに切り刻まれる最期は御見事[手(チョキ)]
この個性溢れる二人の競演者により、ウォンビンの魅力が200%フル・スロットル[どんっ(衝撃)]
加えて悪役マンソク兄弟も、いかにもずる賢い大陸マフィアの味を存分に出していた。
 
リュック・ベッソン監督の名作『レオン』(1994年)との重複感は否めないが、観賞後に何とも言い難い柔らかい爽快感が押し寄せて来た。
 
韓国社会の闇の現実〜貧富の拡大・クスリ汚染・臓器売買・中国マフィアの暗躍etc.〜を曝け出しながら、一線級のアクションシーンを中心に哀しき男の生き様を描いた、まさに気分爽快な韓国の男伊達の物語であった[ぴかぴか(新しい)]
 
 

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『フェア・ゲーム』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:ダグ・リーマン

脚本:ジェズ・バターワース                ジョン=ヘンリー・バターワース        原作:ジョセフ・ウィルソン ヴァレリー・プレイム  撮影:ダグ・リーマン                音楽:ジョン・パウエル

出演:ナオミ・ワッツ ショーン・ペン 
ノア・エメリッチ タイ・バレル ジェシカ・ヘクト 
トーマス・マッカーシー ノーバート・レオ・ブッツ
レベッカ・リグ
 
CIAエージェントのヴァレリーは、潜入捜査でイラクに核開発計画がないことを突き止めるが、ブッシュ政権は彼女の報告を無視し、宣戦布告する。イラク戦争を止めるため、愛する家族と正義を守るため、ヴァレリーは命懸けで国家権力に立ち向かうが……。(ぴあ映画生活)
 
 
「私は折れることを知らない」 
 
少々お堅い映画であろう覚悟を決めての観賞であったが、予想通りのお堅さ以上に、練り込まれた作りに思わず唸り声を上げてしまった佳作であった。
 
実話である。
日本国内では当時大きく取り上げられなかったが、2003年のイラク大量破壊兵器疑惑に関する「プレイム事件」が題材だ。当時のブッシュ政権下での強行なイラク侵攻は、世界中の世論を二分したのだが、その根底にあったのが「大量破壊兵器は存在する!」という開戦に踏み切ったアメリカの金科玉条の理由が、非常に曖昧だった事に他ならない。
当時、テロ撲滅と国威発揚に執念を燃やすブッシュ政権下のホワウトハウスがCIAに命じた指令は「イラクの大量破壊兵器存在の確たる証拠」の発見であった。
今作の主人公・CIA工作員のプレイム(ナオミ・ワッツ)は、その指令のもと、元外交官の夫ウィルソン(ショーン・ペン)の協力も得て、世界中を駆け巡り、その答えが「NO EXIST」である結論に至り上層部に報告する。 
しかし、その報告は無視され、アメリカはイラクとの開戦に踏み切るのだった。
政府の不当を訴えたウィルソンだったが、妻プレイムの素性がマスコミに暴露され、「イラク憎し」に情報操作された世論から逆に冷たい制裁を受ける羽目に陥っていくのである・・・ 
 
ダグ・リーマンと云えば「ボーン・アイデンティティー」「Mr.&Mrs.スミス」などのアクション映画を撮らせたら天下一品の監督である。
今作は、派手な銃撃戦もカーチェイスも全く無いのに、「こんな実話があるはずがない」と思わせる位の緊迫感に満ち満ちた演出は、お見事の一言に尽きる。彼の新境地だ。
 
そのダグ・リーマン自らカメラも持って映し出した美しき被写体がナオミ・ワッツ 
彼女との最初の出会いはデヴィット・リンチ監督「マルホランド・ドライブ」(2001年)
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リンチ特有の訳解らんストーリーに頭を抱えたのだったが、無邪気な清楚さの中に妖艶な色香を漂わさせたブロンド美女[黒ハート]
 
あれから10年。さすがに10年。
43歳の彼女もそれなりの皺と共に、大女優という貫禄を身につけた。
 
 
世間には共働きの幸せな主婦と見せかけながら、実はCIAの特殊工作員という、あり得ないが事実だったという難しい役どころを見事に演じた。
そして、濡れ場やセクシーな場面は皆無なのだが、ふと魅せる40女のむせ返るような色気に小生はまたまた[揺れるハート]
 
ストーリーは、CIAのエリート工作員だった彼女が、一夜にして世間から売国奴扱いされる立場に追い込まれる。
生まれて初めて「折れることを知らない女」が挫折し、家族は生命の危険に曝され、独り政府と戦う夫が妻には徐々に疎ましく感じられ、夫婦の絆も希薄となっていくのだった。
 
この辺りの夫婦の微妙な感情のすれ違いから、決定的な関係に陥るまでの描写が緻密で、更にオスカー俳優二人の熱演によって、政治色の強いノンフィクションに人間の温もりを与えている。
一度は離婚を決意し家を出たプレイムが、再度、夫の元に戻り卑劣な政府と戦う決意をするのだが、夫婦が言葉少なく固く抱き合うシーンには胸を打たれる[もうやだ~(悲しい顔)] 
 
事実に即した政治ドラマにサスペンス色を取り込み、張り詰めた緊張感を保ちつつも、夫婦の愛の形を平行して描き、崇高な人間ドラマに仕立てた他に類を見ない逸品である。
 
原作が事件当事者のプレイム女史によるものであり、当然ストーリーは彼女の視点に沿って展開している。
フセイン亡き今となっては、「死人に口無し」「真実は闇の中」であるが、 戦後調査によっても大量破壊兵器も核開発施設も発見されていない状況からすれば、プレイム側の主張通りイラク戦争が「アメリカのでっち上げのいいがかり」が契機であったと見るのが衆目の一致するところ。
当時から揶揄されていた「能無しブッシュ」の影で暗躍した政府高官の書いた絵の通り、シナリオは進み、その障害となるものはすべてが、闇に葬り去られようとされた事実は、やはり衝撃的だ。
 
まさに事実は小説より奇なり〜ノンフィクションはどんな映画より映画的だという典型だ。民主主義の名を借りた卑劣な蛮行がまかり通るのがアメリカであり、またこのような国家の不正を白日の下に晒した作品が抹殺されずに公開されるのもアメリカ合衆国の民主主義なのだろうか[パンチ]
 
最期にプレイム本人ナオミ・ワッツの瓜二つにトドメの衝撃[がく~(落胆した顔)]
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 こんな女スパイなら私は何度でも騙されたい(^▽^;)
 
 
 
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『ステキな金縛り』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督・脚本:三谷幸喜
製作:亀山千広 島谷能成
撮影:山本英夫
音楽:荻野清子
美術:種田陽平
 
出演:深津絵里 西田敏行 阿部寛 中井貴一 竹内結子 浅野忠信 市村正親 小日向文世 KAN 草薙剛 山本亘 小林隆 山本耕史 戸田恵子
 
エミ(深津絵里)は失敗続きで後がない三流弁護士。彼女が新しく担当になったのは、とある殺人事件。被告人は無実を主張。完璧なアリバイがあるという。な んと事件当夜、旅館の一室で金縛りにあっていたというのだ。無実を証明できるのは一晩中彼の上にのしかかっていた落ち武者の幽霊だけ。エミはその幽霊、六 兵衛(西田敏行)に会い、彼を証人として法廷に召喚する。しかしこの六兵衛の姿は、すべての人に見えるわけではなかった。しかもエミの前には、一切の超常 現象を信じない敏腕カタブツ検事、小佐野(中井貴一)が立ちはだかり……。人生のどん詰まりに立たされたダメダメ弁護士と、421年前に無念の死を遂げた 落ち武者の間に生まれた奇妙な友情。果たして彼らは、真実を導き出す事ができるのか……?(goo映画より)
 
 
 
誰もが安心して楽しめる「三谷ワールド」
まずハズレル可能性皆無のコメディ伝道師の作品であり、観る前から鑑賞後の自分の感想も想像できるのであるが、やっぱり観てしまうわけで・・・[目]
 
設定がユニークである。
幽霊を法廷の証言台に立たせるという、現実ならばどんな迷宮事件も一件落着・大岡裁きでぇ~ なのだが、もちろんあり得るわけがない。
そんな誰もが信じない荒唐無稽話が、女弁護士の熱意によって、ひとり・またひとりと宗旨替えしていき、気がつけば幽霊を信じない者がいなくなってしまう・・・舞台で磨いた三谷氏お得意のパロディの連鎖~くだらない話にいつしか登場人物全員が染まっていく・・・手法が連想されずにはいられない。
 
西田敏行が圧倒的にいい[exclamation×2]
三谷作品に共通する「健康的な笑い」には、彼の嫌味の無いひょうきんな演技はベストマッチである。
そして各場面に有名俳優を配置して、彼らに「普段は見せない」コミカルな演技をさせて観客の笑いを誘う手法は健在。
市村正親のつくつく陰陽師は爆笑、奥様の篠原涼子コールガールの金髪[揺れるハート]
「普段通り」に演じさせたのは、西田敏行と阿部寛、生瀬勝久の喜劇お得意俳優くらいかもしれない。
常に芸風を拡げる深津絵里ではあるが、今作では監督の演技指導が強烈だったのか、コメディを自分なりに咀嚼して表現するまでには至っていないようだ。 今後に期待である。
 
個人的な最大の見所は深田恭子のウェイトレス姿に[揺れるハート][揺れるハート][揺れるハート]注入
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豊満な胸元に目のやり場が無い・・・訳はなくて「釘付け」[ぴかぴか(新しい)]
 
中学生で華麗なデビューを飾った彼女も今や29歳。
一時激太り気味になり、泣かず飛ばずの状態もしばらくあったが、「下妻物語」のロリータ・ファッション高校生が起死回生の一発[パンチ]
 いまや、演技力の伴ったコスプレ女優として現役最強であり、芸能界でも特異な個性を持った数少ない役者だと小生は思うのだが・・・
 
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  ・・・完全に脱線しております[あせあせ(飛び散る汗)]
 
 
 
先日偶然に見ていたテレビで「制約された状況下での仕事が好き」 という内容の話しを三谷氏が語っていた。
舞台という限られた空間の中での創作を最も得意とする彼が、「映画」という無限の可能性を秘めたフィールド上で一流俳優という手駒を手に余るほど持ち、自由奔放に創り上げた作品が今作とするならば、本人にとっても決して満足のいく仕事ではなかったのではあるまいか?「産みの苦しみ」の中での幸福感を味わえた作品と云えるのだろうか?明らかに本作は新鮮味や感情のほとばしりが欠けており、残念ながら「三谷監督の挑戦」を感じ取れなかった。
 
「水戸黄門」や「フーテンの寅さん」のような『究極のマンネリ=永遠の安心』も楽しいが、それらはTVの前で横になってマッタリと見るもので、金払ってスクリーンで観たいとは私は思わない。三谷作品がその道を辿らなければと願うばかりだ。
 
先日観た『一命』と比較してしまうが、映画監督としての旬は『三谷』より『三池』[exclamation×2]
 
 
 
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『一命』2D版 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:三池崇史
脚本:山岸きくみ
原作:滝口康彦
製作総指揮:中沢敏昭 ジェレミー・トーマス
撮影:北信康
音楽:坂本龍一
美術:林田裕至
 
出演;市川海老蔵 瑛太 満島ひかり 役所広司
竹中直人 青木崇高 新井浩文 浪岡一喜 笹野高史
中村梅雀 天野義久 平岳大
 
戦国の世は終わり、平和が訪れたかのようにみえた江戸時代初頭、徳川の治世。その下では大名の御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家もなくし生活に困った浪人たちの間で“狂言切腹”が流行していた。それは裕福な大名屋敷に押し掛け、庭先で切腹させてほしいと願い出ると、面倒を避けたい屋敷側から職や金銭がもらえるという都合のいいゆすりだった。そんなある日、名門・井伊家の門前に一人の侍が、切腹を願い出た。名は津雲半四郎(市川海老蔵)。家老・斎藤勘解由(役所広司)は、数ヶ月前にも同じように訪ねてきた若浪人・千々岩求女(瑛太)の、狂言切腹の顛末を語り始める。武士の命である刀を売り、竹光に変え、恥も外聞もなく切腹を願い出た若浪人の無様な最期を……。そして半四郎は、驚くべき真実を語り出すのだった……。 
 
今回は三池ワールド生真面目バージョンである。
 
三池崇史・・・ホラーからコメディ、硬派な時代劇まで、B級映画・粗製濫造と批評されようが、おかまいなし。
依頼された仕事はすべて受け、しかも三池独自の拘りを貫いてやり遂げる「必殺映画人」と、私だけは呼ぶ[exclamation×2]
 
前作「忍たま乱太郎」という子供映画でも、「くだらなさ」の中に徹底した生真面目な拘りを潜り込ませ、大人こそ楽しめる極上B級エンターテイメント作品に仕上げた。 
今回の作品は、前作とは対極の「十三人の刺客(2010年)」の延長線上の「シリアス時代劇」である。
昨年の「十三人〜」は、三池氏にしては珍しく大金ぶち込んでの大掛かりな作品で、世間の評価は低くなかったが、私個人としては、彼独特の「毒」の盛り方が中途半端に感じられ、独りよがりの「黒沢映画」へのオマージュ作品の域を出ない評価だった。
 
今作「一命」は、『切腹』(1962年)のリメイクであるが、彼の拘りが十二分に凝縮された力作であり、数ある三池作品の中でも異色の傑作の部類に入る[ぴかぴか(新しい)]
 
市川海老蔵・・・凄い、素晴しい[exclamation][exclamation][exclamation]  
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彼の存在なくして、この作品の成功はあり得なかった。
プライベートではお騒がせこの上ない俳優だが、元々歌舞伎役者なんてものに、まともな人格を期待する方が誤りであって、「芸で人を魅了さえできれば」すべてが許される日本国認定・血統書付き人種なのである。
私の持論(歌舞伎役者に限る)だが、特に「酒・女・博打」は芸人の肥であり、彼らのご乱行を笑って見守る位の余裕が日本人には必要なのだ。その代わりに彼らが素晴しい「魂の贈り物」を舞台で魅せてくれるはずなのだから。
 
井伊家の門を叩いた初老の浪人・半四郎(市川海老蔵)の姿は、薄汚い衣服を纏いながらも燐とした佇まいと風格を感じさせる。この言葉少ない圧倒的な演技に、冒頭から一気に引き込まれる。
半四郎から語られる回想シーン〜福島家改易の経緯と浪人生活、貧しかったが幸せな日々そして筆舌に尽くし難い娘夫婦の悲劇。海老蔵の喜怒哀楽の演技は、決して歌舞伎的手法に陥らずに人間の内面を見事に表現。
最期の大立ち回りで、哀しみと怒りを押し殺し、ゆっくり振りかぶって抜いた「竹光」に、彼の心情を重なり胸が締め付けられる。 
 
この日本伝統芸能を背負ったプリンスに真っ向から立ち向かうのが「叩き上げ雑種系」・元千代田区役所勤務の
役所広司[exclamation×2] 
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武士の誇りと井伊家の面目を守り抜く家老職・斎藤勧解由を圧倒的な存在感で演じた。
左足が不自由な老武士であるが、彼が足を引きづりながら廊下を歩く様は、かつて戦場を駆け巡った「もののふ」であった事を想像させ、左肩を少し落とした座り方に、もの言わぬ威厳と迫力を感じさせる。武士の尊厳を守ろうとすればするほど、戦の無い平和な武家社会のジレンマに苦しみ、半四郎の心情に同調しつつも、それをおくびにも出さず、家の面子に固執せざる得ない侘しい重臣役を、迫真の演技で表現した。
 
この稀代の名優に挟まれて分が悪いのは当然であるが、瑛太満島ひかりも過去の現代劇とは違う抑えた演技で悲劇の若夫婦を好演。瑛太の切腹シーンは天晴だったし、満島は本当に不幸な女性役が似合う。
 
これらの名演技が、俳優陣のポテンシャルの高さあってであるが、三池監督の演技指導と演出によって更に磨き上げられ、至高の時代劇へと構築されていく。
驚く事に今作の三池演出は全く「おちゃらけ」「毒々しさ」無しなのである。 原作の精神性を純粋に抽出し、愚直にスクリーンに焼き付かせる事に終始したようだ。三池特有の際立ったモノが感じられない分、歴史的考証は所作や小物の隅々まで行き届き、淡々と厳かに描く手法が逆に斬新でさえある。そして殺陣は、美しい位自然である。
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僅かに、井伊家の家紋と赤備えの甲冑を、現実にはあり得ないほど肥大化させ、それが虚飾に満ちた「武士の誇り」のシンボルとして表現する処に、三池氏の遊び心を垣間見た。(今回の最大の「お遊び」は、時代劇初の3D化なのだろうが。)
 
坂本龍一の音楽も、ストーリーと渾然一体となっており、観客の心の抑揚と同化させる事に成功している。
 
「三池監督の毒」を期待し完全に肩すかしに会いながら、想いもよらぬ感動を与えてくれた彼の新境地の拘りが感じられる純度の高い時代劇の傑作である。
 
いつもの深夜の錦糸町映画館での2D観賞だったが、観客は一桁...[ふらふら]
三池監督の戦いはまだまだ続くのである。 
 
 
 
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秋の夜長は『ソフィー・ミルマン』で... [〜私の歌姫〜]

数あるJAZZヴォーカリストの中でも、最近では一番のお気に入りである[るんるん]
 
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Sophie Milman

  • アーティスト:ソフィー・ミルマン
  • 出版社/メーカー: Linus
  • 発売日: 2006/03/21
  • メディア: CD

当然の事ながら、[右斜め上]の2006年のデビューアルバムはブロンドジャケ買いだった。
キュートな顔立ちと強い眼差しは、決して人間に懐かない高貴なペルシャ猫を想わせ、その鳴き声を聞いてみたい衝動を抑える事はできなかった[揺れるハート]
 
Sophie Milman(ソフィー・ミルマン)・・・ロシア生まれイスラエル育ちの若干23歳のブロンド歌姫は、カナダから彗星の如くプロデビューし、瞬く間に世界中で「次代の大物歌手」として絶賛を浴びた。 
 
歌唱力の高さは当然として、デビューしたての新人とは信じ難い表現力の豊かさは希有である。
そして声域は決して広くはないが、特筆なのは独特の彼女の掠れた声質だ。巷で聞かれるハスキーヴォイスとは、掠れて消え入るような余韻を残すものが大半であるが、彼女の掠れ声は憂いを帯びたスモーキーヴォイスと呼んでよく、それはボリューム感溢れる声量と相成って、活き活きとした『詩』をくっきりと浮かび上がらせる。
爽やかで濡れた涸れ声」という相反する味わいが同居する、一度聴いたら忘れられない魅力を持った「声」なのである。 
 コール・ポーター作「My Heart Belongs To Daddy」(アルバム10曲目をライブで) 
 
 
カナダの腕利きミュージシャンを従えての多彩な楽曲群は、彼女の魅力と共に今後の可能性を期待させるのに十分な出来映えであった。ジャケ買い転じて彼女にゾッコン[ハートたち(複数ハート)]
 
そして、彼女の成長は留まる事が無かった[exclamation×2]
 
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Take Love Easy

  • アーティスト:ソフイー・ミルマン
  • 出版社/メーカー: Koch Records
  • 発売日: 2009/06/02
  • メディア: CD
  • 1. Beautiful Love
    2. Take Love Easy
    3. I Concentrate on You
    4. Day in, Day Out
    5. Be Cool
    6. My One and Only Love
    7. I Can't Make You Love Me
    8. That Is Love
    9. Love for Sale
    10. I'm on Fire
    11. Triste
    12. 50 Ways to Leave Your Lover
    13. Where Do You Start? 

2009年発売の3rdアルバムが絶品中の絶品[ぴかぴか(新しい)]
ソフト・ジャズヴォーカルの2000年代の歴史的名盤と云えば「ノラ・ジョーンズCome Away With Me」を挙げられるが、個人的にはその名盤を彷彿いや凌駕する内容だ[どんっ(衝撃)]
 
まず演奏・録音が素晴しい。各楽器の生音がバランス良く、ごく自然に録られており、コンポの前で目を閉じれば、実際の生演奏を聴くが如く音空間が広がってくる。演奏技術は当然の事ながら極上で、ドラムとベースのリズム感は特筆、それに溶け込むホーン・セクションとセンス溢れるピアノ。しかも、それらは主役を引き立たせる役目を心得ているというか、出過ぎず突出せず、まさにいぶし銀の輝き
楽曲群は、往年のスタンダードに留まらず、ポピュラーソング(ボニー・レイット、ブルース・スプリングスティーン、ポール・サイモン、ジョニ・ミッチェル)をブルージーなアレンジで「JAZZ」の名曲に生まれ変わらせている。デビューアルバムが3人のプロデューサーの手によるものだったが、セカンドアルバムに引き続いてのSteven Mackinonひとりによる本作は、アルバム全体の統一感に破綻の欠片も見られない。 
そして、そして、やはりソフィーの歌唱の進化[exclamation×2]
持ち前のスモーキー・アルトは、さらに憂いを帯びる。アクセントの強弱は、以前の表現力を凌ぎ、語尾の美しさには溜め息が出る。前述の多彩な楽曲群をすべて“ソフィー色”に染めてしまう[黒ハート]
 
ボニー・レイット作「 I Can't Make Love Me」(アルバム7曲目)
 
[右斜め上]本作中、6曲目と並んで私の最愛聴曲[左斜め上]
 
 スタンダード曲「Take Love Easy」(アルバム2曲目をライブで)
 デビューから3年でこの貫禄[どんっ(衝撃)]
 
今秋発表された4theアルバム。
 
In the Moonlight

In the Moonlight

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ent. One Music
  • 発売日: 2011/09/27
  • メディア: CD

どこまで巧くなるのか〜染み渡るスモキー・ヴォイス[もうやだ~(悲しい顔)]
 
ただロシア女性の典型というか、10,20歳代に絶世のスリム美女が「あっというまに」横に広がって逞しいオバサマに変身する様を、彼女も歩んでいるようなのが私の唯一の気がかりなのである[がく~(落胆した顔)]
 
2011年最新映像 
 
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『ウィンターズ・ボーン』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督・脚本:デブラ・ブラニック
製作・脚本:アン・ロッセリーニ
製作:アリックス・マディガン=ヨーキン 
   ケイト・ディーン 
原作:ダニエル・ウッドエル
撮影:マイケル・マクドノー
音楽:ディコン・ハインクリフェ
キャスト:ジェニファー・ローレンス 
     ジョン・ホークス デイル・デッキー 
     ギャレット・ディラハント 
     ローレン・スウィートサー 
     シェレル・リー テイト・テイラー 
     ケヴィン・プレズナーン
 
米国中西部のオザーク高原。女子高生リーは家事と弟妹の世話を一手に引き受ける孝行娘。しかし、父親が裁判を放棄し行方をくらましたことで、担保として自宅が差し押さえられてしまう。リーは親族に父の消息を尋ねるも手掛かりはなく、厳しい選択を迫られる。(ぴあ映画生活より)
 
アカデミー賞4部門ノミネート作品
抑揚の無い淡々とした展開の中、後方席のオッサンの寝息を聞きながらであったが、アメリカ貧困地区の現実とひとりのひたむきな少女が大人に生まれ変わる姿をじっくりと味わった...静かな感動が押し寄せる佳作である。
 
舞台のミズーリ州オザークの山村は、アイルランド系移民が開拓し定住した地域で、現在では最貧困地域にあたり、一般社会からは隔離された地位にあるという。ゆえに、そこに住む多くの者は、犯罪や麻薬に手を染めなければ生き抜けない環境に追い込まれている。日本で云えば、一昔前の釜ヶ崎(大阪)山谷(東京)寿町(横浜)の所謂「ドヤ街」なのだろうが、この山村は都心から遠く離れている点と、住民がルーツを同じくした民族で構成されている点が大きく異なる。
 
そんな予備知識を持ってこの作品に臨むと、更に「リアルに重〜い」映画となる。
村の貧困さをサラリと映し出すカメラワークが、かえってドキュメンタル・フィルムを見せられているような現実感を呼び起こし、終始日の射さないダークな映像と共に、観る者の気持ちもどんよりと曇り空にさせる。中盤からはサスペンス映画の香りも若干匂わすが、一貫してのリアル感に変わりはない。
 
その貧しい村の中で、父親の失踪により生活の糧を失った高校生のリーは、幼い兄弟と精神病の母を支えるべく、大人の世界に入り込まざるを得なくなるのである。 家屋と家族を守り抜く為の行方不明の父親探しが、いつしか自分の村のダークサイドを知り始め、驚愕の真相解明に及んで彼女は大いなる「大人の決断」を迫られる事となるのであった・・・
 
リー役のジェニファー・ローレンスのオスカーノミネート当然の真摯かつ自然な演技が光る。
さほどの美形には見えなかったが、なにげに足が長く(常にGパン姿だが)スタイル良さげな上に、時折魅せるショットに「はっ」とする美しさを振りまく[揺れるハート]
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今作では垢抜けない少女役だが、素顔は洒落たブロンド美人で、化粧・服装によってどんな役柄もこなせそうなタイプだ。
 
健気な田舎娘だが、持ち前の強い意思により多くの困難や生命の危機を乗り越えて真実に向かっていく。
 
そんな彼女を、当初は邪険にしながらも徐々に心を通わせ、最後には強い味方となった麻薬中毒の叔父役・ジョン・ホークス
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彼のいぶし銀の演技なくしては、この作品の重厚さはあり得なかっただろう。こちらも素顔はナイスガイだが、作中ではどうしようもないジャンキーを演じつつ、姪っ子を守る男気をサラリと魅せた。
 また、村の裏社会に生きる連中がすべて「それらしい」役者陣で、特にデイル・ディッキーの怪演は鬼気迫る。
 
 
作品全体を通して、寒々としたトーンが貫かれており、当然の事ながらハッピー・エンドではない
されど、バッド・エンドでもないのが、この映画の味わい深いところなのだ。
 
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エンド・クレジットでの末妹・アシュリーの穢れなき姿をまじまじと見つめていると、この作品が訴えたかったものが朧げながら感じられてきた。
 
 「血」の成せる人間の宿業。
家族・親戚・一族・民族...血の繋がりがなんと愛おしく、恐ろしく、強きことを... 

 
2度目、3度目の観賞ができたら、更にこの作品の味わいが深まりそうな、ちょっと手強い映画だった。
付け加えて、挿入されるカントリー・ミュージックが乾いたアメリカの闇と対比されて、胸に沁みる[るんるん] 
 
 
 
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秋の『小石川後楽園』with NEX-5 [ざれごと写真日記]

先月は、出張にかこつけて自分だけ楽しむ家庭を顧みない日々が続きましたので、そろそろ危ない
 
夫婦関係が冷え込むと、最近はウルトラマンのカラータイマーの如く、私の危険察知装置が自然と点滅するようになっているのである。
 
そういう訳で、今日の祝日は、以前から紅葉狩りに妻とドライブの予定になっていた。
まだ首都圏では紅葉シーズンには早い為、少々遠い茨城県の袋田の滝方面にまで足を延ばすつもりだった。
 
昨日は、大阪出張であったのだが、北新地の倶楽部のおネェ様の色香[ハートたち(複数ハート)]を豆腐より脆い意志で振り切って、何とかのぞみ最終列車で帰京した。しかし、想いを残すのはやはり精神衛生上良くないようで、寝床に入っても頭の中は新地のネオンオンナが交錯し、なかなか寝付けなかった・・・
 
起床、午前10時...茨城なんぞ行ける時間かい〜[がく~(落胆した顔)]
 
なにもなかったように、黙々と洗濯をしている妻...カラータイマー消滅寸前である。
 
なにもなかったように朗らかに話す亭主。 
「 えぇ〜都内の庭園でも少しは色付いてるかもしれませんから...近場でノンビリというのは如何でございましょうか[あせあせ(飛び散る汗)]」(極めて下手に出ながら、決して謝らない戦法。非を認めた時点で、夫婦のパワーバランスは崩れるのである〜浮気の自白と同じだ)
 
妻も心得たもので、戦線拡大を避けるべく執拗な攻撃は自粛する。
「まぁ、いいか」←(この言葉を妻に云わせるのが、何事にも重要である[たらーっ(汗)]
 
予定変更、午前11時30分、『小石川後楽園』到着。
 
 おおぉ〜僅かだが、紅葉発見[わーい(嬉しい顔)] 
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本日は庭園内でイベントも多数開催されており、小物作りが好きな妻は真っ先に「木の実工作コーナー」に向かう。
「我が意を得たり」の亭主は、胸をなでおろし、写真撮影に没頭するのであった。
 
 野点も開催中
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 隣は東京ドーム
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着物とモミジ(女房ではありません) 
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ビルと緑の対比が都会の庭園らしく味わい深い 
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久しぶりにエルマリート90㎜で 
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ツワブキの群生 
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池面に映える 
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工作を終えたご機嫌妻とふたりベンチに佇み[ムード]、コンビニおにぎりを頬張って遅い昼食。
そして、私が写真撮影、妻はスケッチといういつもの夫婦のパターンで、ノンビリ庭園内を過ごす。
 
夕刻近くなり、妻の洋書購入の為、神保町に向かう。
途中の寄り道も、いつもの夫婦のパターン。
 
ニコライ堂(東京復活大聖堂教会)
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我が学び舎と目と鼻の先ながら、一度も教会内には入った事がなかった。今回、初体験[exclamation&question]
馴染みが薄いギリシャ正教会であり、「八端十字架」と云われるそれは、ラテン十字と異なる形状をしている。
 
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湯島聖堂
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此処も初めて。
孔子を祀った大聖堂であり、その偉容には圧倒される。 
 
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聖橋から臨む
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「聖橋」の由来は、この2つの聖堂(ニコライ堂・湯島聖堂)を結ぶ事から来ている。(知らなかった〜)
そして、妻の買物につきあい、神保町近辺をブラブラ。 
 
神保町は本日まで「神田古本まつり」
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神保町で夕食となれば、やっぱり「カレー」
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やっぱり、食後は古い喫茶店で珈琲
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結局、女房の機嫌を取る為の企画が、すっかり自分で満足してしまう楽しい休日でありました[わーい(嬉しい顔)]
 
やはり女房は「ウルトラの母」より偉大なのである。
 
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