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『コンテイジョン』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
撮影:スティーヴン・ソダーバーグ
美術:ハワード・カミンガス
音楽:クリフ・マルティネス 
 
キャスト:マット・ディモン ケイト・ウィンスレット ローレンス・フィッシュバーン ジュード・ロウ
グウイネス・パルトロウ マリオン・コティヤール ブライアン・クランストン ジェニファー・イール 
ジョン・ホークス ジェニファー・イーリー サナ・レイサン
 
接触感染により、数日で命を落とすという非常に強い新種のウィルスが香港で発生する。その感染は、アメリカ、ヨーロッパ、北アフリカ、南米、そして日本と世界中に散らばっていく。アメリカ疾病予防センター(CDC)と世界保健機構(WHO)はワクチンの開発を急ぐが……。(ぴあ映画生活)
 
私のお気に入り俳優が目白押し[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)] 
Labyrinth様のおすすめ(http://pinkylabyrinth.blog.so-net.ne.jp/2011-11-13-2)に従い観て参りました[わーい(嬉しい顔)]
 
この映画に、あえて主人公は存在しない。 
ピンで十分主演を張れる名優達が、ひとりひとりの人間としての生き様をそれぞれ演じた事により、単なるウィルス・パニック映画の枠にとどまらない重厚なヒューマン・ドラマとして観る者の心を打ち、グローバル社会への警鐘をもかき鳴らした秀作である。
 
ドクター・エリン役ケイト・ウィンスレット。このオスカー女優が、作品前半で早々とスクリーンから姿を消してしまうケイト・ファンの私としては意外な展開。CDC(疾病予防管理センター)から派遣されたエレンは、正体不明の伝染病のパンデミックを防ぐべく、罹患者を隔離する作業を命じられ、感染域の真っただ中に身を投じる。そして自分の感染を自覚し狼狽しながら、それでも愚直なまでに医師としての使命を全うしようする彼女の姿に心打たれる。その演技は、人間の意思の強さなど事もなげに打ち砕く自然の脅威を浮き彫りにさせた。登場時間は短くても、強烈な印象を残した。
 
ローレンス・フィッシュバーン演じるエリス・チーバー博士。エリンの上司であるCDC幹部の医師は、冷静沈着に事態の収拾に向け指示を出し、一刻も早いワクチン生成に執念を燃やす。が、愛する者達に危険が迫るや、医師としてのモラルをかなぐり捨てて、彼女達の生命の救出を優先するのであった。この部下と上司、エリン医師とエリス博士の行動の対比が際立った演出となって我々に問いかけて来るものがある。
 
第一発症者・ベス役のグウイネス・パルトロウ。『セブン』のヒロイン役と同じく非業の最期を遂げ、それがこの作品の序章となるのだが、香港出張で羽を伸ばし、昔の恋人との密会を楽しむ「できる女」に魔が差す瞬間を、そして「誰にでも突然襲ってくる死」を抑揚をつけた演技で魅せた。卒倒場面はお見事!
 
そのベスの夫・ミッチ・エンホフ役のマット・ディモンは、不器用な男が瞬く間に妻と息子を亡くし途方にくれる様を情感豊かに演じた。そして、妻の感染ルート解明と共に彼女の不義密通まで明らかになり、喪失感と疎外感に打ちのめされながら、過剰なまでに残された長女の命を守り抜こうとする父親の姿は、哀しみを通り越して病的なほど鬼気迫るものがあった。
 
主要人物では一番美味しい役どころであろうマリオン・コティヤール。「NINE」「インセプション」での色香は封印しているが、やはり美しい〜[ハートたち(複数ハート)]ウィルスの起源を探索するWHOから派遣されたオランテス医師を演じる。使命に燃える知的な若き女医は、貴重なワクチンとの引き換えの為、地元の医療チームに誘拐され中国の片田舎に監禁される。そこで彼女が見たものは、そして感じたものは・・・先進国のエゴと命の軽重を痛烈に表現。
 
主要登場人物の中で異彩を放ち、かつ作品のモチーフとも言えるフリージャーナリスト・アラン役にジュード・ロウ。いち早く新伝染病に警鐘を鳴らし、CDC、WHOの不実を訴え、真実の解明に孤軍奮闘するのであるが、その彼の行為がデマを拡散させ、世界中の人々をパニックに陥れる。各地で略奪・暴動が続く中、アランは著名なブロガーとして巨万の富を得てほくそ笑むのである。この不可思議な欲深き男を、まさに大胆不敵に演じた。
 
こうして各俳優陣の一人一人の人間の内面が浮き彫りにされるような、自然かつ等身大の演技が繰り広げられる。ストーリーは日めくりカレンダーの如く淡々と進行し、日ごとにウィルスが増殖する様子と共に次第に恐怖が積み上がっていく構成になっている。しかし、その恐怖感は致死率の高い未知の伝染病からもたらされるものだけではない。人間の根深い本質をえぐっていくような人物描写に背筋が寒くなるのである[がく~(落胆した顔)]
 
人間だれしも併せ持つ。悲劇が我が身に及ばない限り、多くの人間は他人に対して善人のままでいられる。仮に辛苦の極限下に「」に転がった人間がいても、誰が咎められる事ができるのであろうか。いつでもその「」は自分に感染し発症しないとも限らないのだ。その悪の発露は、時として現在のグローバル社会においては、ウィルスの感染よりも広範囲に拡散されるのである。「」の伝播よりも遥かに速いスピードで。
(半年前には「放射能には昆布を食え」のデマが広まった我が国は、どんな劣悪な環境でも暴動が起きず、瞬く間に多額の募金が集まる国民性が喧伝されながら、一方では福島産の材木が五山の送り火に使われようとすれば一転集団ヒステリー状態に陥る民族なのである。) 
  
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最後に、惜しくも6大俳優の線に洩れたジェニファー・イールの演技は胸に熱く残った。
ワクチン開発に携わる女医・アーリー役。 
試行錯誤の上、動物実験で唯一効果のあったワクチンが完成。
しかし、人間への副作用は計り知れず、実用化には更に多くの検証の為、時間が必要となる。
その間に犠牲者が爆発的に増える事は明白だった。
彼女は、誰にも知られずに、自らの体にそのワクチンを打込むのだった。自分の命と引き換えに、この薬の効果を1日も早く世に知らしめるために。
 
表向きパニック映画の体裁をとりながら、人間の信念の強さと業の深さを名優達の抑えた演技で表現した味わい深くかつ慄然とする作品である。スティーヴン・ソダーバーグの非凡さを改めて感じ入った[ぴかぴか(新しい)]
 
 
 
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(。・_・。)2k

こういう話しって 怖いですよね~
最近 新種のインフルエンザとかって聞くと
どうなっちゃうのか心配になります(^^;

by (。・_・。)2k (2011-12-02 04:18) 

ひときわ

これもよさそうな映画ですね。
そういえば、今週はお勧めの素敵な金縛りを見てきましたよ。
かなり宣伝されていた作品なので、あらすじがわかっちゃってて楽しめるかな?と心配だったのですが劇場で大笑いしちゃいました。

最近見たDVDで一番のお勧めはシャッターアイランドです。
見終わった後にもう一度見ちゃいました。
by ひときわ (2011-12-02 10:09) 

つむじかぜ

>(。・_・。)2k 様
今作では、コウモリと豚の遺伝子が掛け合わさり、突然変異した新ウィルスで、
その豚肉を美味し〜く召し上がった女性から感染が始まりました。
おぉ〜恐っです!!!

>ひときわ様
「シャッターアイランド」は面白かったですね!
途中に多くの伏線があって、最期は「げえっ〜やっぱりそうなんかい?!」でドキドキでした^^

by つむじかぜ (2011-12-03 01:24) 

non_0101

こんばんは。
キャストが豪華でしたね~
そして、色々なことを考えさせられる作品でした。
ジェニファー・イール良い演技でしたよね。
TVドラマの「プライドと偏見」の時から大ファンの女優さんです☆
by non_0101 (2011-12-10 19:15) 

つむじかぜ

>non_0101様
俳優陣の隅々まで、レベルの高さが際立った作品でしたね。
ジェニファー・イールの強い思いが感じられる演技は、非常に印象深買ったです^^


by つむじかぜ (2011-12-12 02:10) 

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