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「怒り」 [上映中飲食禁止じゃ!]

評判らしいこの作品も平日夜の錦糸町なら
ガラガラなのです( ̄▽ ̄) 
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これだけのキャスト&スタッフを集めたのだがら、きっと凄い作品か!
いや、4番バッターばかり集めても試合には勝てないのだ[むかっ(怒り)] 
 
八王子の閑静な住宅地で陰惨な殺人事件が発生する。室内には夫婦の遺体と、被害者の血で書かれたと思われる赤黒い“怒“の一文字が残されていた。担当刑事の南條と北見は捜査を進めた。しかし、逃亡した犯人に関する有力な情報は得られないまま1年が経ち……
(ぴあ映画生活より) 
 
高評価もうなずける完成度の高い作品である。
 
3つのストーリーは、決して交わる事なく、別個の完結する愛憎劇として展開していく。 どの物語を中心に置くかは、観客の感性に任される。そして傍観者たる我々は、三つの物語に潜む殺人犯を胸を痛めつつも、推理する権利を与えられるわけだ。
 
いずれの物語も愛深きゆえの底無しの疑惑から導き出される答えが待ち受ける。それは、絶望的な裏切りか真実の愛か深い悲哀と悔恨か。
 
原作の持つ深い闇と呪縛を振り払うかのようにもがく俳優陣の激しい演技が続出!
 
一人で社会生活を送るには若干の知能障害を抱える娘・愛子の幸せを心から望む父・洋平。東京生活で身も心も壊れかけ、実家に連れ戻されたのも束の間、娘は父と同じ漁協に勤める男と同棲を始めてしまう。仕事に実直な青年に好感を持つ洋平は、二人の交際を喜びながらも、前歴不詳の彼に一抹の疑惑を持つ...千葉編での渡辺謙宮﨑あおいによる父娘の描写は、想像通りの真に迫った非常に体温の高い演技の応酬であった。俳優としての存在感を消した謎の男役の松山ケンイチもある意味、名演技か。
 
「男に尽くすのが習性と化した女」をはかなく演じた宮﨑あおい
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東京編は異色の組み合わせ。
藤田優馬は、病弱の母親を抱えてはいるが、生活面では何不自由ないありふれたエリートサラリーマンだ。唯一、彼がゲイである事を除けば...夜な夜なパーティーに顔を出し、「お相手」を探す彼が、見初めた男が大西直人。同棲を始めた二人は徐々に信頼と愛情を深くしていく。明るく元気、母想いの好青年が、夜になると猛禽の如く目を光らせて、「男を漁る」姿を、妻夫木聡が熱演。一方の綾野剛は、いわゆる「ネコ(受け)役」として女性的な柔らかい演技を披露する。二人とも芸域の広い俳優ではあるが、「ここまでやるか」レベルの演技には拍手喝采である。
 
二人のラブシーンも、意外や、全く不快感無し[パンチ]
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沖縄編は、フレッシュな新人と性格俳優の組み合わせ。
沖縄の無人島に住み着く自由人風の男・田中信吾に森山未來。この奔放な男に憧れを感じる現地の高校生カップルに、1200名のオーディションから選ばれた佐久本宝と、今や売り出し中の広瀬すず。千葉・東京編と違い、青い空と海をバックに、明るく爽やかな展開が続くが、後半から暗転。森山の人間の2面性を極端に表現した演技は圧巻である。
 
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「愛する人を信じることができますか」という有り体の宣伝文句が全面に押し出されている。だが、この作品は、誰しもがが心の奥底に抱えている「悪」とそれに抗えない「心の弱さ」を主題とし、人間の根源的な本能をえぐり出していると思われる。
 
原作から映画化に至るまで、大変練りこまれて作られているのは理解できるのだが、残念ながら個人的には全く胸を打たれなかった作品となった。日本を代表する俳優陣の演技の応酬が激しすぎて、長時間の鑑賞に疲労感が伴う。主人公が設定されていない作品だが、出演者はほぼ全員がピンで主役を張れる役者達。例え、抑えた演技でも、どうしても強い個性が滲み出る。全員主役では、ストーリー自体を「喰って」しまう。原作の吉田修一氏が、豪華キャストを要望した結果らしいが、たとえ一流小説家でも映画は所詮素人なのだ。スポーツ界では、フロントが選手起用に口を出すチームは、まず勝てない。
 
また、原作・演出の嗜好が、小生の感性と合わなかったのが、最大の理由かもしれない。 
多くのとめどもない「怒り」が様々な場面で迸る。名優たちの心の叫びが激しく木霊し、見る側の神経まですり減らす。三つの独立したストーリーを、あえて犯人探しと結びつけ、サスペンス風に仕上げた本作を、素直に受け取れない。
「怒り」が主題であるならば、愛する人を疑った自分に怒りを覚える甘いセンチメンタリズムに焦点をあてずに、今作の「怒り」の源泉である「今の社会」に対する問題点を正面から捉えるべきではなかろうか。
 
犯人が凶行に及んだ動機に潜む今の格差社会を...
米軍兵士の沖縄での暴行事件が後を絶たない訳を...
 
おのずと、現在の病んだニッポンの姿が浮かび上がるのだが、今作は、その点をサラリとかわした。 まぁ、そこに踏み込んだ作品なら、間違いなく一般受けしないだろうが...
最近の邦画のヒット作が、やたらと観客を感傷的にさせる事に腐心しているのが非常に気になるつむじかぜでした。
 
今作の収穫は、多くの主役級が跋扈する中、ちょい役で軽い光る演技の「池脇千鶴」と朝ドラとは別人の美しさを魅せた「高畑充希」かな[わーい(嬉しい顔)]
そして何と言ってもあえて売れている今、清純派女優から脱皮宣言した「広瀬すず」の勇気[ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)][ぴかぴか(新しい)]
 
CMでしか見たことがなかったが、 
この娘は、将来が楽しみです[exclamation] 
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デビュー時の宮沢りえを彷彿させるが、この「役者の目」は本物かもしれない[かわいい]
 

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Labyrinth

(^_^)ノ つむじかぜ さんの名文に、自分も観た気になっちゃいました (・・*)ゞ あ~疲れたw
それにしても、凄い面子ですねぇ ^^;
by Labyrinth (2016-10-08 01:00) 

JUNKO

私も詳しい解説に見た気分になりました。いい目をした少女ですね。
by JUNKO (2016-10-08 10:34) 

つむじかぜ

> Labyrinth 様
レビュー書きながらも疲れてしまいましたぁ( ̄▽ ̄)
by つむじかぜ (2016-10-10 23:31) 

つむじかぜ

> JUNKO 様
広瀬すずの今後に期待です!
by つむじかぜ (2016-10-10 23:35) 

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