『人生はビギナーズ』 [上映中飲食禁止じゃ!]
監督・脚本:マイク・ミルズ
製作:レスリー・アーダング
撮影:キャスパー・タクセン
音楽:ロジャー・ネイル
アニマル・トレーナー:
マティルディ・ドゥ・キャグニー
キャスト:ユアン・マクレガー メラニー・ロラン
クリストファー・プラナー メアリー・ペイジ・ケラー
ゴラン・ヴィシュニック カイ・レノックス
38歳独身で奥手なオリバーは、母に先立たれ5年がたったある日、ガンの宣告を受けた父からゲイであることをカミングアウトされる。衝撃を受けたオリバーは事実をなかなか受け止められず臆病になってしまい、運命的な出会いを果たした女性アナとの関係も自ら終わらせてしまう。しかし、真実を告白した父は残された人生を謳歌し、その姿を見たオリバーは自分の気持ちに正直に生きることを学んでいく。(映画.com)
静かな川のほとりで詠んだ詩のように穏やかな作品だ。
「人生って気持ちの持ちようで、楽しくもなり簡単につまらなくもできる」
という思春期の青年に送るような安易なエールを、38歳の大人に対して突きつけた所がミソである。
自分を曝け出すことこそ恐ろしいものはない。それは、必要以上に自分を傷つけるから・・・
そして、自分を曝け出すことにより勝ち取る自由もまた、計り知れないものである。
ガン宣告された70歳にして自分がゲイであるのをカミングアウトした父親。その父が人生の最後を謳歌する姿を見つめ、当惑しながらも応援し、いつしかその姿に自分自身も影響を受けて行くという息子オリヴァー役をユアン・マクレガーが、一皮むけないちょっと冴えない大人を自然に魅せている。
私の職場にもいるなぁ〜。悪い器量ではないのに40歳過ぎて、ホモでもあるまいし、女性と付き合っても決断できないような男が...そんなイメージ通りの演技だ。
ユアン以上に渋い演技が光るクリストファー・プラナー〜永年、仮面夫婦を演じてきたゲイの父親役なのだが、この存在感は希有
夫がゲイと知りながら結婚した夫婦生活は、当初は努力し合い子宝にも恵まれたが、結局夫の性癖を矯正するには至らなかった。オリヴァーの幼児期から夫婦の溝は徐々に広がり、父と母がお互いの葛藤を抱えながら生活を続けていたのである。そんな環境で成長した彼も、いつしか他人との距離を置き、自らの心を露にできない大人になる。
そして母親の死後、いかにも堅物そうな強面のこんな年老いた父親に「実は俺はゲイなのだ」などと告白されたら、いい歳になった実の息子であっても平常心を保つことは不可能だ。 生まれ変わったようにゲイ仲間と余命を楽しく過ごす父親を応援し、見つめ続けたオリヴァーは、その父親が静かに幸せそうな顔でこの世を去った直後に、運命の女性アナ(メラニー・ロラン)に出会うのであった。果たして彼は、この恋愛を成就できるであろうか...
マイク・ミルズ監督自身の父親をモデルにした自伝的脚本というから驚きである。
そして彼の洒落たセンスが光りまくっている、観ていて楽しくなる演出の数々が目白押し
まず1920,30年代のアメリカ音楽が随所に流れる。Lelly roll morton,Josephine Baker,Hoagy Carmichael〜古き良きアメリカ黄金時代を彷彿させる素敵なブルースの数々。それらを現代風にアレンジしたBrian Reitzell, Dave Palmer & Roger Neillの演奏。
ファッションもお洒落。特に老将クリストファーのカミングアウト後の垢抜けた服のセンスは、私も自身の老後の参考にさせていただきたい位だ。
職業イラストレーターのオリヴァーが描く自分の心情を投影したようなイラストがポップでキュート 素朴な花火の美しさ
父親の死後からスタートした物語は、オリヴァーとアナの恋愛劇を軸に進むが、要所で父親の華やかな余命期とオリヴァーの少年時代を振り返り、オリヴァーの永年に亘り培われた性格を観客に理解させ、更に変わりゆく彼の心情まで映し出して行く、憎いまでの手法が取られている。
そして最大の演出効果は、愛犬・アーサーの絶技 彼の人間さながらの感情表現の演技は、時折挿入される彼の気持ちを綴ったユーモア溢れる字幕と共に、観客に微笑みと作品に潤いを与えている。
私は、アーサー君にアカデミー助演男優賞を受賞させてもおかしくないと真剣に思うのである。
主題は結構シリアスなのだが、映画的小技が凝縮されていて自然と心が温かくなる、マイク・ミルズ監督の良心を感じる愛情溢れる佳作である。
◎おまけ
...とはいっても、私はやっぱりメラニー・ロランに釘付け
パリ出身28歳のフレンチ・ブロンド は「イングロリアス・バスターズ」「オーケストラ!」などの出演で、最近売出し中。今作は英語であるが、金髪とフランス語の組み合わせには何故かそそられるモノがあります
歌手も演っておりまする
メラニー・ロラン、良かったです。
by 怪しい探麺隊 (2012-02-12 11:43)
>怪しい探麺隊 様
絶世の美女というより、女性らしい柔らかさとコケティッシュな感じが素敵でしたね^^
by つむじかぜ (2012-02-12 23:23)
こんばんは。
ようやく観てきました。いい作品でしたね。
そしてメラニー・ロランは相変わらず美しくて、何かを背負っている役でした。
でも、彼女を愛することが出来るなら頑張りたくなるものですよね(^^ゞ
by non_0101 (2012-02-26 00:13)