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『フェア・ゲーム』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:ダグ・リーマン

脚本:ジェズ・バターワース                ジョン=ヘンリー・バターワース        原作:ジョセフ・ウィルソン ヴァレリー・プレイム  撮影:ダグ・リーマン                音楽:ジョン・パウエル

出演:ナオミ・ワッツ ショーン・ペン 
ノア・エメリッチ タイ・バレル ジェシカ・ヘクト 
トーマス・マッカーシー ノーバート・レオ・ブッツ
レベッカ・リグ
 
CIAエージェントのヴァレリーは、潜入捜査でイラクに核開発計画がないことを突き止めるが、ブッシュ政権は彼女の報告を無視し、宣戦布告する。イラク戦争を止めるため、愛する家族と正義を守るため、ヴァレリーは命懸けで国家権力に立ち向かうが……。(ぴあ映画生活)
 
 
「私は折れることを知らない」 
 
少々お堅い映画であろう覚悟を決めての観賞であったが、予想通りのお堅さ以上に、練り込まれた作りに思わず唸り声を上げてしまった佳作であった。
 
実話である。
日本国内では当時大きく取り上げられなかったが、2003年のイラク大量破壊兵器疑惑に関する「プレイム事件」が題材だ。当時のブッシュ政権下での強行なイラク侵攻は、世界中の世論を二分したのだが、その根底にあったのが「大量破壊兵器は存在する!」という開戦に踏み切ったアメリカの金科玉条の理由が、非常に曖昧だった事に他ならない。
当時、テロ撲滅と国威発揚に執念を燃やすブッシュ政権下のホワウトハウスがCIAに命じた指令は「イラクの大量破壊兵器存在の確たる証拠」の発見であった。
今作の主人公・CIA工作員のプレイム(ナオミ・ワッツ)は、その指令のもと、元外交官の夫ウィルソン(ショーン・ペン)の協力も得て、世界中を駆け巡り、その答えが「NO EXIST」である結論に至り上層部に報告する。 
しかし、その報告は無視され、アメリカはイラクとの開戦に踏み切るのだった。
政府の不当を訴えたウィルソンだったが、妻プレイムの素性がマスコミに暴露され、「イラク憎し」に情報操作された世論から逆に冷たい制裁を受ける羽目に陥っていくのである・・・ 
 
ダグ・リーマンと云えば「ボーン・アイデンティティー」「Mr.&Mrs.スミス」などのアクション映画を撮らせたら天下一品の監督である。
今作は、派手な銃撃戦もカーチェイスも全く無いのに、「こんな実話があるはずがない」と思わせる位の緊迫感に満ち満ちた演出は、お見事の一言に尽きる。彼の新境地だ。
 
そのダグ・リーマン自らカメラも持って映し出した美しき被写体がナオミ・ワッツ 
彼女との最初の出会いはデヴィット・リンチ監督「マルホランド・ドライブ」(2001年)
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リンチ特有の訳解らんストーリーに頭を抱えたのだったが、無邪気な清楚さの中に妖艶な色香を漂わさせたブロンド美女[黒ハート]
 
あれから10年。さすがに10年。
43歳の彼女もそれなりの皺と共に、大女優という貫禄を身につけた。
 
 
世間には共働きの幸せな主婦と見せかけながら、実はCIAの特殊工作員という、あり得ないが事実だったという難しい役どころを見事に演じた。
そして、濡れ場やセクシーな場面は皆無なのだが、ふと魅せる40女のむせ返るような色気に小生はまたまた[揺れるハート]
 
ストーリーは、CIAのエリート工作員だった彼女が、一夜にして世間から売国奴扱いされる立場に追い込まれる。
生まれて初めて「折れることを知らない女」が挫折し、家族は生命の危険に曝され、独り政府と戦う夫が妻には徐々に疎ましく感じられ、夫婦の絆も希薄となっていくのだった。
 
この辺りの夫婦の微妙な感情のすれ違いから、決定的な関係に陥るまでの描写が緻密で、更にオスカー俳優二人の熱演によって、政治色の強いノンフィクションに人間の温もりを与えている。
一度は離婚を決意し家を出たプレイムが、再度、夫の元に戻り卑劣な政府と戦う決意をするのだが、夫婦が言葉少なく固く抱き合うシーンには胸を打たれる[もうやだ~(悲しい顔)] 
 
事実に即した政治ドラマにサスペンス色を取り込み、張り詰めた緊張感を保ちつつも、夫婦の愛の形を平行して描き、崇高な人間ドラマに仕立てた他に類を見ない逸品である。
 
原作が事件当事者のプレイム女史によるものであり、当然ストーリーは彼女の視点に沿って展開している。
フセイン亡き今となっては、「死人に口無し」「真実は闇の中」であるが、 戦後調査によっても大量破壊兵器も核開発施設も発見されていない状況からすれば、プレイム側の主張通りイラク戦争が「アメリカのでっち上げのいいがかり」が契機であったと見るのが衆目の一致するところ。
当時から揶揄されていた「能無しブッシュ」の影で暗躍した政府高官の書いた絵の通り、シナリオは進み、その障害となるものはすべてが、闇に葬り去られようとされた事実は、やはり衝撃的だ。
 
まさに事実は小説より奇なり〜ノンフィクションはどんな映画より映画的だという典型だ。民主主義の名を借りた卑劣な蛮行がまかり通るのがアメリカであり、またこのような国家の不正を白日の下に晒した作品が抹殺されずに公開されるのもアメリカ合衆国の民主主義なのだろうか[パンチ]
 
最期にプレイム本人ナオミ・ワッツの瓜二つにトドメの衝撃[がく~(落胆した顔)]
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 こんな女スパイなら私は何度でも騙されたい(^▽^;)
 
 
 
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コメント 5

haku

事実に基づいたものであれば、とても深みと緊迫感のある映画なんでしょうね!
しかしブレイムさんって、本当にブロンド美女なんですね♪
by haku (2011-11-19 15:11) 

non_0101

こんばんは。
こんなことが起きてしまった事実と、それを映画にしたという事実に
アメリカの凄さを感じる作品でした。
主演二人の演技も良かったですよね~
エンドロールにも登場したヴァレリーさんの写真を見ると、
本当にナオミ・ワッツは彼女にぴったりですね☆
by non_0101 (2011-11-20 00:16) 

末尾ルコ(アルベール)

お、未見です。
ナオミ・ワッツは必ず観るというライフ・スタイル(笑)ですので近々。
ショーン・ペンとの共演作としては、「リチャード・ニクソン~」も大好きです。

                                     RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2011-11-20 01:42) 

つむじかぜ

>haku様
プレイムが美人でなかったら、事件もここまでの大スキャンダルにはならなかったでしょうね。
これもアメリカの現実です☆

>non_0101様
まさにアメリカの虚飾と正義を見せつけられました!

>末尾ルコ(アルベール) 様
ナオミさん、いい歳の取られ方をしています。素敵でした^^

by つむじかぜ (2011-11-20 02:51) 

DEBDYLAN

僕も騙されたい^^;

by DEBDYLAN (2011-11-25 00:30) 

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