SSブログ

『ゴーストライター』 [上映中飲食禁止じゃ!]

f683b85f.jpg
監督・脚本・製作:ロマン・ポランスキー
原作・脚本:ロバート・ハリス
製作:ロベール・ベンムッサ アラン・サルド
撮影:パデル・エデルマン
音楽:アレキサンドル・デスプラ
 
キャスト:ユアン・マクレガー 
ピアース・ブロスナン キム・キャトラル 
オリヴィア・ウィリアムズ
 
元英国首相ラングの自伝執筆のために出版社より選ばれたゴーストライターの“僕”は、ラングが滞在するアメリカ東海岸の孤島に向かう。その矢先、ラングがイスラム過激派の逮捕や拷問に加担した疑いがあるというニュースが流れる。このスキャンダルは国際刑事裁判という大騒動になっていく。一方、“僕”は溺死した前任者の部屋から、ある資料を見つける。それはインタビューで聞いたラングの経歴を覆すものだった…。(goo映画)

ロマン・ポランスキー御大の久々の新作である。
 
気がつけば氏も78歳。「テス」のナスターシャ・キンスキーに心奪われたのが32年前。巨匠復活と絶賛された「戦場のピアニスト」から9年。
果たして高齢の彼に、あの類い稀なる映像表現力がどれだけ残されているのだろうか?一抹の不安を持ちながらの観賞となっが、それは杞憂に終わった。
 
冒頭のフェリー乗場のシーンから、欧州映画らしいダークな色彩感に引き込まれる。
舞台がアメリカの孤島であっても、映像は英国調のくすんだ空気感に染まっているのが、なんとも嬉しい。

サスペンス映画には二種類あって、絶対に起こりえない仕掛けを施したあっと驚く作品と、実話とも思わせるリアルティ溢れる作品に分かれると思うのだが、この作品は後者である。

ストーリーは、「先に謎ありき」ではなく、緩やかに静かに進行する。
元英国首相・ラングの自叙伝作成の為に雇われたゴーストライターが、前任者の残した原稿を校正していくうちに、徐々に事実との相違に謎を感じ始め、その前任者の死に対しても疑惑を持ち始める。
そのゴーストライター役にユアン・マクレガー。作家をめざしながらもなりきれず、売れないゴーストライターに甘んじている”普通の男”を、まさしく”普通に”演じた。ちなみに作中、彼に名は無い。
この彼の日常感溢れる好演が、悠然と進む話の展開に現実味を増させ、それが自然とした緊張感に繋がって行く。
ラング役のピアース・ブロスナン。元007の彼が今回は、善人なのか悪人なのか全く判別できない難しい役どころを見事に演じた。
この二人を取り巻く女優陣。学生時代の政治活動からラングを支えてきた妻役・オリヴィア・ウィリアムズ。亭主の寵愛を一身に集める秘書に嫉妬を募らせる元ファーストレディの心の機微が伝わってくる。
その秘書役にキム・キャトラル。今や完全にラングの女房気取りの彼女は、知性と色香を振りまきながら、彼への強い忠誠と愛を感じさせる。
他にもティモシー・ハットン、トム・ウィルキンソン、イーライ・ウォラックなどが渋い役どころで顔を出し、作品全体に花を添える。

彼の執筆途中に、ラングが首相時代のテロ容疑者への不当な拷問への関与が報道され、状況は混沌としてくる。

イラク戦争時、当時のブレア英国首相はアメリカへの追従路線を打ち出し「ブッシュのプードル」とマスコミから揶揄されたのは記憶に新しいところである。
本作は、英米関係の闇に光を当て、「テロ撲滅」の大義に隠された軍事産業の暗躍を、フィクションのサスペンス映画という姿を借りた社会派ドラマといっても過言ではない。
そんな硬派な原作も、ロマン・ポランスキー監督の手にかかると、叙情的な映像と登場人物の緻密な感情表現により高度な芸術作品に昇華する。

主人公が真実に近づく毎に、姿の見えない敵に徐々に追いつめられていく緊迫感は、まさに彼の真骨頂というべきか。
そして、最期の出版記念パーティーのシーン。『恐いよぉ〜[がく~(落胆した顔)]
ラストで公道に巻き散らされる原稿が、社会の巨悪に粉砕される庶民の姿に見えた。

誰を信じていいのか?国家を信用していいのか?マス・メディアの報道は真実なのか?女房を信じていいの???

血がほとんど流れないからこそ痺れる極上のサスペンス社会ドラマであった。

ラングさん、アンタの浮気も許そう。秘書を選んだあなたは正しかった[exclamation&question]
 
 
 
おまけ
 The_Ghost_Writer-10-Kim_Cattrall-Olivia_Williams.jpg
今回のブロンド姫は残念ながら妙齢のKim Cattrall(右の方)のみなのだが、若い頃はきっと美しかったに違いないと、確信して探しましたよ〜

 「マネキン」(1987年)
 
曲はジェファーソン・エアプレーンの「Nothing Gonna Stop Us Now」
綺麗な体をしているなぁ〜私の目に狂いはない[わーい(嬉しい顔)]
そして、みんなこのように歳をとるのね〜
[ぴかぴか(新しい)]いいなぁ〜80年代[ぴかぴか(新しい)] 
 
人気ブログランキングへ
nice!(12)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 12

コメント 6

non_0101

こんにちは。
> ”普通の男”を、まさしく”普通に”演じた
やっぱりこのユアン・マクレガーの演技があったからこその真実味でした。
ラスト怖かったですね~☆
by non_0101 (2011-09-11 10:38) 

つむじかぜ

>non_0101様
深々と降り積もる雪みたいに静かに恐怖が積み重なって、
最期に「えっ!やっぱり、ガーン!?」という見事な演出でした☆
by つむじかぜ (2011-09-13 02:08) 

Labyrinth

こんばんは。(^_^)ノ
かなりの見応えのご様子。これは要チェックですね!d(^_^;

そして、お月見の記事におのろけコメントをどうもありがとうございました。(笑)
失礼しましたっ _(._.)_ ハニーとロマンティックな宵をお過ごし下さいませ♪
by Labyrinth (2011-09-14 01:23) 

つむじかぜ

>Labyrinth様
「十五夜よ あまり照らすな 妻の皺」 
失礼いたしましたぁ〜(///∇//)

by つむじかぜ (2011-09-14 02:29) 

ぷーちゃん

ロマン・ポランスキー監督と言えば、
ハリソンフォード主演の”フランティック”、
大好きな作品です。
by ぷーちゃん (2011-09-14 10:12) 

つむじかぜ

>ぷーちゃん様
その作品も、ハリソン・フォードを始め素晴しいキャスティングでのサスペンスの良作ですね!!!
by つむじかぜ (2011-09-15 01:31) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。