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『コクリコ坂から』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:宮崎吾郎
企画:宮崎駿
製作:鈴木敏夫
脚本:宮崎駿 丹羽圭子
原作:高橋千鶴 佐山哲郎
キャラクターデザイン:近藤勝也
撮影:奥井敦
音楽:武部聡志
主題歌:手嶌葵

声:長澤まさみ 岡田准一 
竹下景子 石田ゆり子 風吹ジュン 
内藤剛志 風間俊介 大森南朋 
香川照之 柊瑠美


1963年の横浜、港の見える丘にあるコクリコ荘に暮らす16歳の少女・海は毎朝、船乗りの父に教わった信号旗を海に向かって揚げていた。ある日、海は高校の文化部部室の建物、通称「カルチェラタン」の取り壊しに反対する学生たちの運動に巻き込まれ、そこで1学年上の新聞部の少年・俊と出会う。2人は徐々にひかれあっていくが……。(映画.comより)





久しぶりのジブリ作品を妻と観賞した[目][目]
長女も誘ったが「面白くないらしいから、行かな〜い」と、つれない返答。
どうも、ジブリとしてはあまり評判はよろしくない作品らしい。

ゲド戦記 [DVD]以来5年ぶりの宮崎吾郎(宮崎駿の長男)による監督作第2弾である。
監督デビュー作は、偉大な父親の呪縛から必死に逃れようとしながらも、父の幻影を払いきれず、「親の七光り作品」と揶揄される中途半端なファンタジー映画に終わってしまった。
その彼が満を持しての今作は、ファンタジーではなく、ノスタルジー漂う「学園恋愛ドラマ[ハートたち(複数ハート)]」なのだ。

静かな感動が、横浜港を染める夕日のようにじわりと押し寄せて来る[ぴかぴか(新しい)]傑作[ぴかぴか(新しい)]である。
世間の評価は別にして、普段はまるっきり噛み合ない夫婦の感想が、珍しく一致したのであった。
同時に、過去の巨匠・宮崎駿のファンタジー・ワールドを期待した若い観客(アンダー40)が、肩すかしに会ったのも納得できる作風である。

企画・脚本は、父・駿氏。(演出には一切関わっていない)
この映画観賞直後に、NHKで「コクリコ坂・父と子の300日戦争」という特集番組を観る機会に恵まれた。
建築コーディネーターから父の反対を押し切り、いきなり監督デビューした吾郎氏。
その「ゲド戦記」の挫折から、父子の葛藤を通して、今作に到る軌跡が描かれたドキュメンタリーであった。

「俺は長島や野村監督みたいになりたくないんだよ」と、息子が同じ業界に足を踏み入れた事を嘆き、吾郎の仕事ぶりを常にこけ落としながらも、彼の成長を見守る父・駿氏。
父のアドバイスを頑に拒否し、自分だけの力で道を切り開こうともがく吾郎氏。
親子の断絶をも感じさせながら、次第と二人の進む方角が重なり合っていく様相は、微笑ましかった。

昨年のインタビューで宮崎駿は、こう話す。
「みんなが浮かれている時には、ファンタジーは描けるんですよ、「ナウシカ」みたいに。でも今は、ファンタジーは非情に難しい。みんなが、もう駄目だと思っている今に何を作るかですよ!
この話の後に大震災が起きたのだが、その為この言葉は更に重みを増してくる。

そのひとつの答えが「コクリコ坂」なのかもしれない。

劇中、風間俊自身が話す通り「まるで安っぽいメロドラマ」のアニメ化である。
ジブリ十八番の魔法も幽霊も奇跡も無い。スピリチュアルの欠片も見せない。
CGが進化した今なら、昭和30年代の実写化も可能で、それこそ低予算で「オールウェイズ3丁目の夕日」並のノスタルジー溢れる作品作りも可能な題材だ。
そこを敢えて、アニメという形式に落とし込み、観る者が感情移入しやすい、どにでもいるようなあっさりとした人物像に描き替えていく。(計算づくなら吾郎は天才[exclamation&question]
今作の主要登場人物はすべて個性が良い意味で”立っていない”
描線も爽やかさが全面に出ており、これは宮崎駿作品と決定的に違うような気がした。
これが宮崎吾郎の感性なのかもしれない。
少々物足りない位の描写が、かえって人物の内面の強さを引き立て、かつ、二人の主人公に観客はかつての若かりし自分達の姿を、自然と重ね合わせてしまう。

長澤まさみの吹替えが、自然さと清潔感が抜きん出て素晴しい。(実写の演技より好きになった)
「海ちゃんみたいな嫁が我家に来たら、死ぬまでHAPPYじゃ[わーい(嬉しい顔)]」と素直に思うオッサンは私。
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ジブリ伝統の挿入音楽の秀逸さは、今作も変わらず。ピアノ中心のインストルメンタル曲から、吾郎氏お気に入りの手嶌葵の主題歌、そして当時の流行歌「上を向いて歩こう」が、違和感なく画面と溶け込んでいく。

昭和38年の横浜が舞台。1960年代の風景・世相がギリギリ子供心に染み付いているアラ50の我が夫婦(さらに妻は横浜生まれ)には、哀愁を感じずにはいられない作風なのである。
若者も大人も日本人すべてが、貧しくても明るい未来を信じ、熱く生きた時代。
まるで震災も予感したかのような父・宮崎駿のメッセージを、バブル期に青春時代を過ごした子・宮崎吾郎の感性で綴った新時代ジブリの記念すべき第一歩の作品ではないかと思う。そして、そのメッセージへの答えはまだ語られておらず、二人の戦いは今後も続くはずである。

NHK番組での最後のシーン。
この作品の試写会を見終わった御年70歳の宮崎駿が呟く、満面の笑みを浮かべて。
『少しは脅(おびや)かせって、こっちを!』
父の言葉を伝え聞いた43歳宮崎吾郎が吐き捨てるように言う。
『クソッ!死ぬなよ』
その表情は優しく爽やかで、父を想う子の顔になっていた。

これからのスタジオ・ジブリにますます期待が膨らんでいく。

 
 
おまけ お気に入り挿入歌 海が朝飯を作るシーンに何故か涙が流れるのでした[もうやだ~(悲しい顔)]
こんなニッポンの朝の食卓が懐かしい
朝ごはんの歌(オリジナルは消されていたので...)


夏期休暇です[わーい(嬉しい顔)]
猛暑の日本を逃れ、さらに酷暑のタイ・ベトナムに、愛妻と明日から行って参りま〜す(なんちゅう企画じゃ[あせあせ(飛び散る汗)]
報告は後日に、まとめてさせていただきまする[手(チョキ)]

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コメント 4

Labyrinth

(^_^)ノ こんばんは。
その番組私も偶然ですが、見ちゃいましたよ。
NHKも時々良い番組をやるんだなぁ なんて思いますが・・・。(笑)
これ ますます見たくなってます。^q^
ゲド戦記ケナシ組の私ですが(爆)きらいじゃないなぁと思ってましたので。

ハニーと仲良く♪ お気を付けて! (^_^)/~
by Labyrinth (2011-08-12 01:11) 

つむじかぜ

>Labyrinth様
LabyさんもNHKを観ましたかぁ!
「ゲド戦記」は酷かったですが、同一監督とは思えない今作の出来ですよ☆

では、愚妻と行って参りま〜す( ̄▽ ̄)

by つむじかぜ (2011-08-12 01:31) 

non_0101

こんにちは。
映画、良かったですよね~☆
あの真っ直ぐな心と爽やかさは、今の時代に必要だなと感じました。
私もNHKを観ました!
やっぱり苦労は並大抵ではありませんでしたね(^^ゞ
by non_0101 (2011-08-12 08:50) 

つむじかぜ

>non_0101様
多くの若い世代の方にも観て欲しい作品ですね☆
by つむじかぜ (2011-08-17 16:07) 

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