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『鈴木先生』 [上映中飲食禁止じゃ!]


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監督:河合勇人
脚本:古沢良太 
原作:武富健治
音楽:大友良英
 
出演:長谷川博巳 臼田あさ美 土屋太鳳 
   風間俊介 田畑智子 斉木しげる
   でんでん 富田靖子 
 
緋桜山中学の国語教師、鈴木先生は独自の理論“鈴木メソッド“で理想のクラスを作ろうと日々奮闘中。しかし彼は教室では小川蘇美の魅力にとり憑かれ、家庭では妊娠中の妻を気遣うあまり精神がギリギリの状態に。そんな中、波乱の二学期が始まろうとしていた・・・(ぴあ映画生活より) 
  
あのTV東京系にしては珍しく昨年ヒットしたテレビドラマの映画化。
 
昨年末に、BSで全10話がまとめて放映されているのを偶然視聴し、思いの外、感動してしまったので・・・
珍しく此の手の映画を劇場で観る事となりました[あせあせ(飛び散る汗)]
 
私もこのドラマの生徒達の設定のように、中学2年の時に「凄い」先生と出会った。
2年5組。1年生時に問題児とされたような子供達をかき集めたようなクラスに、他校から新しい先生が担任としてやってきた。
この理科専任のK先生。授業が面白い上に、生徒一人一人に気さくに声をかける。今思えば、子供の個性とレベルに合わせて、勉強にやる気が起きるように綿密にコミュニケーションをとっていたようだ。学年一の不良君でさえ、シンナー臭い息を吐きながら、「Kが云うなら仕方ねぇな」と言いながら、宿題を提出した時の衝撃。その不良君と友達であった小生は、自慢ではないがテスト成績は抜群だが、内申最悪という授業態度Cランクで何故か学級委員という変な生徒。「なぁ、◯ ◯。一回位、本気でやってみろ。学年1番取ってみろ。2位じゃダメなんだ、1位だぞ!」手抜き妥協派の子供心を見透かしたような言葉。少年つむじ風は、燃えました!(1番になれなかったけど・・・)
 
当時は、おおっぴらなイジメが主流。休み時間に、目立たない小柄な生徒を取り囲んで、袋叩きにする。(とはいっても戯れ合う程度なのだが)或る日、悪ノリした友人がひ弱な子羊にコンパスを投げつけ怪我をさせた。それを聞き駆けつけたK先生の恐ろしさは半端でなかった。男子生徒全員を並ばせ、「加わった奴も、見ていた奴も、連帯責任だぁ〜」と、竹刀で力一杯、我々の尻を順番に打ち据えていく。尻を手でかばった一人のクラスメイトは、この為に小指を骨折。今ならPTAで大問題なのだろうが、この「命がけの体罰」に、少年達は納得せざる得ないのだった。
 
1学期終業式、夏休み前日。K先生に理科実験室に呼び出される。
「ここに座れ。◯ ◯、気合いを入れような!」「えっ?」
抵抗する暇も与えられず、椅子に座った私の頭に、Kはバリカンをあてていく...
あっという間に「丸坊主」の出来上がり[がく~(落胆した顔)]
その後、2年5組の問題児と目される生徒が次々と餌食となっていく。
こんなめちゃくちゃな振る舞いにも、僕らは「やられちまったぁ」と、最後は笑って受け入れてしまうのだった。
今の教育現場には有り得ない光景だった。 
 
子供は子供らしく、しかし、人の道は決して外れてはいけない事。目標を持って地道に努力する事。
真剣にならねば相手に気持ちが伝わらない事。鈴木先生のように「言葉」は巧くなかったが、K先生の「情熱」に学ぶ事は多かった。後にも先にも、私にとって一番の『師』であった。そして、当時の坊主仲間達が、生涯の友人となっていったのである。
 
・・・と昔話が長くなったが、そんな事を思い出しながら、この映画を観た。
 
当作品はTVドラマシリーズを見ていなければ、面白みは半減する。
私が、TVドラマで感銘したのは、世相の変遷による現代の子供達の感覚と鈴木先生の教育手法にである。
第一話から今の中学生の「性の実態」が露になる。小学生と肉体関係を持った男子生徒が、「本当に愛し合っているのにいけない事なの?」と、鈴木先生に訴える。中一まで「子供が出来る仕組み」を知らなかった小生は、まず、恐ろしい時代の流れに衝撃を受ける[がく~(落胆した顔)] そして教師は、ありきたりの大人の常識を押しつけず、生徒と真っ正面に向き合い、ひとつひとつ、考え方を検証し、積み上げ、生徒の納得する答えを探し求めていく。
1話ごとに、光を当てる生徒が代わり、事件が起きる。その解決に向けて、鈴木先生の独特の生徒達との対峙法により、彼らが徐々に人間的成長を遂げる姿を描いていく設定でなのある。(何しろ最終話は「ナマでする」是非をクラス全員と教師が議論しあう展開...[たらーっ(汗)]
 
テレビシリーズのおかげで、今映画に登場する中学生達の個々のエピソードや性格を掴んでいる為、一層興味深く鑑賞できた。今作自体が「第11話」と謳われたように、テレビドラマの延長線上の設定であった。
やはり、俳優陣でひときわ輝くのが、小川蘇美役の土屋太鳳(つちやたお)17歳。
 
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清楚にてミステリアスなムードを漂わせた優等生役。彼女が屋上からダイブするシーンはグッと来ました[ハートたち(複数ハート)]
最近、CMでもよく見かけるが、この魅力を失わずに伸びて行って欲しい女優さんだ。 
 
さて、今回のストーリーは、生徒会選挙中に今や引き蘢りとなった卒業生が校内に乱入し、人質事件を起こすというもの。犯人役が、毎朝NHKでお会いする愛(いとし)君こと風間俊介なので、どうしても違和感がつきまとう。更に、こちらの事件に比重が掛かる分、選挙を取り巻く生徒達の心の葛藤の掘り下げ方が浅くなっている。制作側の意図は理解できない事もないが、センセーショナルな事件を取り上げ、話題性を優先させた時点で、興行的に成功したとしても、作品としては失敗である。テレビドラマが評価された理由は、今の中学校で日常的に起きているであろう問題に光を当て、鈴木先生が生徒達の精神的成長を促していく教育法に、大人達が目から鱗となったからに他ならない。もちろん、ユニークなキャラクター陣や洒落たコメディタッチも人気の秘訣なのだが、決してシリーズの根本的な主題ではないのだ。そういう意味では、主眼がぶれた残念な人気テレビドラマの映画化であった。あえて収穫はといえば、足子先生が名誉挽回した事かな。とにかく富田靖子の演技はいつも素晴らしい[かわいい] 
 
映画ではなくテレビドラマのオープニングです[あせあせ(飛び散る汗)] 
これだけでも、このドラマの卓越したセンスを感じる 

 
 ドラマ放映中は、テレビ東京ゆえに視聴率も低く、シリーズ終了後の再放送から火が点いた珍しい番組だ。
 
 
体罰を含めてパワハラ、セクハラの多くは、被害を受ける側の感覚によって告発されて、「ハラスメント」と定義付けされる。普段から好意を寄せている先輩に食事を誘われたOLは、密やかな幸せを感じるが、嫌な脂ぎった上司に「髪型変わったね」と云われただけで、それは「セクハラ」になるのだ。
要は、二者間の人間同士の信頼関係の有無によって、「愛のムチ」が「体罰」になり「激励」が「嫌がらせ」になる。人間関係を築かぬまま、立場が上位な者の弱者への独りよがりの言動が、いかに多い事か。
昨今、学校・スポーツ界での「体罰」「ハラスメント」が多く取り上げられている。なんと教育者達に未熟な大人が多い事か? 私も人の事は言えたものではないが、自分の部下の心の痛み位は理解できるつもりなのだが...
 
鈴木先生 完全版 DVD-BOX

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Labyrinth

ドラマは存じませんでしたが、つむじかぜ さんの熱のこもった文章から その良さが伝わって参りました。
ご自身の回想記!? も興味深く拝見!(^_^;
しかし映画自体はちょっと残念な仕上がりとなっていたのでしょうか?
この手の作品には縁がないので(爆)また一つ知識が増えましたっ(汗)
ありがとうございます♪

by Labyrinth (2013-02-07 02:56) 

non_0101

こんにちは。
自分に真剣に向き合ってくれているのか、それとも先生の都合で行動しているのか
子供たちにはちゃんと分かってしまうことなのですよね。
それにしても、2年5組の先生、すごいですね~
本当に熱心に向き合ってくれたのですね☆
by non_0101 (2013-02-07 08:53) 

haku

パワハラ・セクハラ、まさにつむじかぜさんの感覚に激しく同感です!
結局、相手がどう感じてるか、さっぱり分かってない、
さらには分かるつもりがないんでしょうね
まさに独りよがりな輩だってことですね (><)
by haku (2013-02-07 22:14) 

つむじかぜ

>Labyrinth様
TVドラマシリーズは、是非とも見てもらいたいです。
初めて「金八先生」を見た時以上の感動でしたよ^^
by つむじかぜ (2013-02-09 01:00) 

つむじかぜ

>non_0101様
大人が思っている以上に、子供は敏感ですよね!
by つむじかぜ (2013-02-09 01:02) 

つむじかぜ

>haku様
人間同士で向き合う姿勢がなければ、言葉はなんの意味も成さないです!
by つむじかぜ (2013-02-09 01:10) 

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