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Cocco『エメラルド』 新生こっこの集大成! [〜私の歌姫〜]

 「クムイウタ」との衝撃の出会いが12年前。

 時に優しく・時に激しく胸に迫るヴォーカル、多彩な楽曲と詩情性、70年代ブリティシュ・ロックを彷彿させるサウンド。私の音楽的感性に直撃!「崖っぷちの危うさと美しさ」は、キング・クリムゾンの「レッド」と重なった。「凄ぇバンドが現れた!」と絶賛だったが、Coccoとはバンド名ではなく、沖縄出身の女性歌手の名前であったのだ。
実はこのアルバムは、パチンコの景品として「JALのCMソング収録」と特異なジャッケットに惹かれて何となく交換したもので、予備知識ゼロ。まさしく「出会い」とは、こんなものだ。

 ロック親爺は年甲斐もなく嵌りましたよ。伝説のサイト「赤い雨露」を隅々まで熟読。2001年の大阪城ホールでのコンサートでは、圧倒的女性客の中、会社帰りのスーツ姿で一人感動しておりました。その直後、音楽活動休止。

 復帰後の彼女は変わった。精神病質的素材としてのマスコミからの扱いも音楽業界の利益主義も飲み込んで、1人のアーティスト(表現者)として覚悟を決めて帰って来たようだ。ただ、孤高の表現者が、必要以上に周囲(世間)に溶け込もうと明るく振る舞う様は、正直寂しかった。復帰直後のサウンドにも現れている。「危うさ」が失くなると共に「妙に浮ついている」のだ。気持ちがあっても、なかなか体が言う事を聞いてくれないもどかしさのような。 徐々に私のCocoo熱は醒めていく・・・

 復帰後約5年。3枚目のアルバム「エメラルド」
エメラルド(初回限定盤)(DVD付)

エメラルド(初回限定盤)(DVD付)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2010/08/11
  • メディア: CD





 感動、鳥肌!!!あの音が、ひとまわりもふたまわりも大きくなって帰ってきた。

 まず、サウンド面。復帰以降、Coccoサウンドの中核を担っていたプロデューサー兼リード・ギターの長田進の名が消えた。(1曲目のアコギのみ)彼のエッジの効いたE・ギターは、巧いのだが、Coocoの声質に合わないし、とにかく主張し過ぎ。(超個人的趣向による見解)特に復帰直後の無理に明るくはしゃぐ彼女の声と、切れすぎるギター音の組み合わせは、私を萎えさせた。(テクのあるギタリストがプロデュースするとろくな事はない。彼らは目立ちたがりだから)デビューCoccoの成功は、溢れ出る彼女の「うた」を、音符の書けない彼女に代わって、コテコテ70年代R&B原点の根岸孝旨が、ROCKに昇華させた事にある。それも、少々レトロなハード・ロック指向で。(とはいえ、長田と根岸はユニットを組んでいるのだが)歪んだ重量音をバックにCoccoが澄んだ歌声で、激しく哀しい詩を紡ぐ。初期の名盤は、彼女の素の歌を根岸の感性というフィルターを通して完成された、まさに二人の邂逅による奇跡的な作品である。
 今アルバムは、その骨太ギター音に戻り、初期の破綻スレスレのアンサンブルに回帰。この爆音の中で、Cocco隊に定着したドラムスの椎野恭一(AJICOが懐かしい〜)が、これまたセンス溢れるビートを刻む。堀江博久のkeyboadsが色を添える。そして、一番の目玉はプログラミングの多用である。初期はストリングスを上手く活用していたが、「打ち込み系」とCoccoという対極(デジタルとアナログ)同士の調和は、新鮮な驚きである。歌唱自体も初期の荒削りから進化。昔の絶叫が、ハイトーンをコントロールした「歌」にする技を会得したようだ。とにかく、強き力を取り戻した、伸びやかな歌声に聞こえるのは私だけだろうか?

 楽曲面では、Cocco初のセルフ・プロデュースだけあって、彼女のアイデンティティーを多種な手法で表現している。復帰後の幅広いミュージシャンとの交流と音楽遍歴が、彼女の音楽センスを創作面でも開花させた。沖縄民謡は言うに及ばず、各国の民族音楽から昔の歌謡曲風、HIP・HOP系まで、欲深いまでの吸収力!音楽の垣根に下手な拘りも持っていないだけに、以前より遥かに多彩な楽曲群になっている。類い稀な才能を持つ「うたうたい」が、見事プロの「音楽家」に脱皮した感。

 作詞は、初期の悲痛感は影を潜め、日本語と英語のちゃんぽんの詞は作らないという拘りは無くしながらも、「ことば」の持つ力を大事にしているのは昔のまま。アイロニックな詞も健在。毒はあるけど昔の血なまぐささが無い。ウチナーグチの多用と純文学的指向が更に強くなっている。すべての詞が、どこかの”絵本”のキャプションに、そのまま使われても良い位の完成度。

 初期の危うい美しさは消え失せたが、「この汚れた水の中でも生きる」という覚悟と自信。「凛とした美しさと逞しさ」を湛えた作品である。5年間の迷いは、これだけ彼女を「音楽人」として成長させた。

 
 私のCocooの最高傑作となった。


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コメント 2

aneurysm

>この汚れた水の中でも生きるという覚悟と自信。

まさしく何でもありの”全部喰ってやる”という感じです。
by aneurysm (2010-08-22 06:42) 

つむじかぜ

aneurysmさん、ご訪問、nice!ありがとうございます。

何処まで喰い尽くすか、本当に楽しみです。
by つむじかぜ (2010-08-22 13:55) 

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