南部の熱き血潮〜『Alabama Shakes』 [〜ロックの神さん〜]
またまた気持ちいい音、発見
ネットショッピング全盛の今でも、本屋とCDショップだけは時間があれば立ち寄って、衝動買いをしてしまうのが楽しみのひとつでもある。
1行だけ立ち読みして買いたくなる文庫本。ジャケット写真の微笑むブロンド歌姫の誘惑。馴染みのアーチストなら密林ポチッで良いのだが、未知の作品との感動的な出会いはクリックだけでは、なかなか成し得ない。 もちろん、その陰には大きな見込み違いと無駄遣いもあるのだが・・・
- アーティスト:Alabama shakes
- 出版社/メーカー: Ato Records
- 発売日: 2012/04/10
- メディア: CD
味も素っ気もないジャケット...今回はブロンド姫買いではございません。
店員さんの書いた『アデルも激賛』という手作りPOPに何故か強烈に惹かれ、輸入盤の為、試聴もできないのだが即買い さて、今回の我が衝動は、果たして正解であったのだろうか
『Hold On』
1曲目からズシーンと腑に来たぁ
太く乾いたギターリフが、タイトなリズムに乗って響き渡る 私好みのサウンドの切れと重み
そ、そして、ジャニス・ジョップリンの再来か、はたまた女ジャクソン・ブラウンと思しき魂を絞り出したような胸を突くヴォーカル
Alabama Shakes(アラバマ・シェイクス)・・・ グループ名の通り、米アラバマ州出身の4人組。
驚愕の黒人女性ヴォーカリストは、Brittany Howard(ブリタニー・ハワード)
この面構えと体格...う〜ん、年齢不詳、謎のヘヴィー級メガネ姐さんじゃ
声は外見ではない...ぃ、いや外見通りの迫力というべきか。
スタイルはゴスペルを基盤とした洗練されたブルース・ロックという感が強いが、サザンロックの土臭さやファンクのノリノリのリズムも取り込んだ楽曲もアルバムには含まれており、このバンドの感性の豊かさを物語っている。
そして、ひとえにブリタニーの存在感あるヴォーカルが、このバンドに“スピリチュアル”なパワーをもたらしているのだ。
彼女のかき鳴らすサイドギターも乙に入ったもので、Heath Foggのリードギターとの絡みも聴き所の一つでもある。
まさに、ソウルフルなブルースの申し子
アルバム4曲目『Rise To The Sun』
う〜ん....体重はなんぼやろ? ヒップは小生のデブっ腹より太いと見た
私の焦がれる歌姫のタイプとは真逆なのであるが、 この魂の歌は本物だ。
各バンドメンバーは決して高い演奏技術をひけらかすタイプではないが、愚直にビートを刻み、メロディを反復しながら、その一体感から生み出される「熱」のなんとも心地良いこと
アメリカ南部の赤い土埃を感じさせる風は、ブリトニー姐さんの暑苦しさと共に熱波に変わる。
敢えてうだるような暑さの部屋で、汗をかきつつ、かき氷を掻き込みながら聴きたいHOTなバンドの登場である。
これからの「大阪の夏」にピッタリ
アルバム2曲目『I Found You』のアコースティック・ヴァージョン
「Eden's Edge」無名の珠玉のカントリー [〜ロックの神さん〜]
とびきりのバンド発見
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Big Machine Records
- 発売日: 2012/06/12
- メディア: CD
例によってのジャケット衝動買い。今回は左のブロンド美女と『アリソン・クラウス好きな方にはピッタリ』というCDショップの手書きのPOPに惹かれての購入なのだが、最高の1枚との出会いとなった〜感激
「Amen」
Eden's Edge・・・メジャーデビュー間もないアメリカの3人組。当然、日本では無名です。
聴いての通りのカントリー基調のPOPな音作りながら、演奏が素晴しい上に、この比類なき逞しさと美しさを兼ね備えたヴォーカルに
Hannah Blaylock(リードヴォーカル)レディオガガを小柄にしたような容姿の赤毛美女。どこまでも自然に伸びるハイトーン、柔らかくされど力強い中低音は、聴く者の胸にスゥ〜と入り込み、次第に熱を帯びて来る。
Cherrill Green(バックヴォーカル、ギター、マンドリン、バンジョー)ジャケ惚れしたモデルとおぼしき長身のブロンド美女。外見に似合わず種々の弦楽器を巧みに操る。そしてHannahから一歩引いてのヴォーカルの掛け合わせが、また見事なんです。
Dean Berner(バック・ヴォーカル、ギター、ドブロ)サウンドの中核。技術をひけらかす事はないが、メリハリの効いたカッティング、僅かな間奏のスライド・ギターのソロに引き込まれる。何よりも、こんな美女二人に囲まれて羨ましい限り
私のお気に入り〜アルバム9曲目「Cherry Pie」
スタジオ録音ではバック・ミュージシャンが加わり、ひときわスケールの大きい曲に変わるが、
このトリオでのライブ演奏は、ヴォーカルが全面に出て味があります。
薄化粧の方が断然にHannahは美しい
冒頭のデビューアルバムは、Hannahの歌声と2本の生ギターを最大限にフューチャーしながら、名うてのスタジオ・ミュージシャン達が見事なリズムとアンサンブルを構築。この辺りはアメリカ音楽界の音作りの巧さが際立つ。
そしてHannahの命漲る歌声に、CherrillとDeanのハーモーニーが絡み付いた時、また全く別の音世界が生まれ来るのだ。思わず体をシェイクしてしまう曲から涙腺が緩んでしまう歌まで、まさに捨て歌無しのデビューにしてこの完成度は驚愕
アルバムではラストを飾る曲「Christ Alone」
このアカペラが彼らの真骨頂だ
しばらくは、このアルバムに溺れっぱなしになりそうです
「The Kooks」IN 赤坂ブリッツ [〜ロックの神さん〜]
地下鉄赤坂駅のトイレでTシャツに着替え、コインロッカーにコートと鞄をぶち込んだアラ50夫婦は、開演19:00ギリギリに赤坂ブリッツに飛び込んだ
昨晩は、待ちに待った「このバンドだけは素敵」というロック苦手の女房が唯一支持する『THE KOOKS』の来日ライブへの夫婦参戦であった。
会場内はどうみても平均年齢20歳代。女性客が若干多めなのと早くも酔っぱらっている外人グループが目立つ。
当然、スタンディング(立ち見)なので、取りあえず中年夫婦は控えめに最後方に陣取る。
19:00キッカリ。
New Albumからノリノリのナンバー「Is It Me」でライブ・スタート
初めて観る生ルークは、いきなりからテンション高めでステージを駆け巡り、持ち前の鼻にかかったハイトーンで絶唱。ピンクジャケットのヒューがCDより遥かに分厚い音で、ギターをかき鳴らす。
隣の女房もいきなりから、両手をふり挙げ腰を振りながらモード全開
2曲目「Always Where I Need To Be」が始まる頃には、「この辺りは少々ノリが悪〜い」という事で、最後方から人をかき分け、ステージ前方まで乗り込む中年夫婦。
当日の雰囲気に近いライブ(あえて映像は荒れてますが...)私のお気に入りの曲「See The Sun」
前方に移動した為、ルーク&ヒューのギタープレイが間近で見られる。「なんで、こんなに巧いんだ、なんで歌いながらこんなカッティングできるんだぁ」このリズム感は邦人には不可能な領域だ。
この辺りの聴衆は、流石にノリがよろしい、よろしすぎる
外人さんがビールを上空にぶちまけるわ、シャツをステージに投げつけるわ、の無法状態の中で中年奥様も負けじと踊り続ける
当日のセットリストはこんな感じ(いち早くライブレポートされた方から拝借しました)
1/12(木) 赤坂ブリッツ@SETLIST
IS IT MEALWAYS WHERE I NEED TO BESOFA SONGDOWN TO THE MARKETROSIESHE MOVES IN HER OWN WAYSWAYRUNAWAYESKIMO KISSIF ONLYSEASIDETICK OF TIMESEE THE SUNHOW'D YOU LIKE THATMR. NICE GUYOOH LASHINE ONDO YOU WANNA-encore-SABOTEURJUNK OF THE HEART (HAPPY)NAIVE
New Albumからの選曲を中心に過去のヒット曲を織り交ぜたKooks Fan垂涎のナンバー達だ
デビュー・セカンドアルバムからのストレートなロック・ナンバー、アコギを絡めた静と動。そしてkeyboadを多用したバラエティに富んだ曲調に変貌した最新作からのTune。アンコール1曲目だけは、新曲のようだったが、進化する彼らを如実に物語る素晴しいナンバーだった。
不肖私も、妻に負けじと跳ね続け、コーラス部分はカタカナ英語で絶唱
そして、アンコール最終曲「Naive」でのギター・カッティングを生で聴き、涙するのであった
あっという間の1時間半。
まだまだ日本ではコアなファンが少ないのか、既定のアンコールが終了するや帰り支度する聴衆が多かったのは少々残念
みんなでもっと盛り上げれば、ここから本当のアンコールが始まるはずなのに...
妻は「もっと聴きたいよぉ〜明日の横浜で演るライブも行きた〜い」と騒ぐが、残念ながら二人とも仕事が入っているので諦めざるを得ない。
妻「じゃぁ、今度ロンドンに行って聴きに行こぉ〜」
「はいはい、頑張ってくださいね、奥さん」 妻の興奮をなだめる夫。
そして、サラリーマン達でごった返したBARにて、紅白のグラスワインでお互いの健闘を讃え合う中年夫婦の姿あり。
本当に素晴しいライブバンドのパフォーマンスであった
うっ、こ、腰が...今になってつらい
「The Kooks」3年ぶりNew Album [〜ロックの神さん〜]
(演奏は50秒後から)
遅ればせながら、The Kooksの新譜を購入。
前作から約3年ぶりとなる3rdアルバムは、この間の彼らの人間的・音楽的成長ぶりを窺わせる風格溢れる作品となっている。
一聴すると、ストレートかつシンプルなロック・スタイルなのだが、キラリと光るセンスと卓越したギター・テクを随所に織り込んだデビューアルバム。POP感と重厚感が増し、UKチャート第1位を獲得したセカンド・アルバム。鼻にかかった独特のヴォーカルを披露するルーク・プリチャードの音楽的感性の奥深さは、ビートルズ在籍時のポール・マッカートニーの多才さを彷彿させる、と云っても大袈裟ではない・・・と思っているのは私くらいかもしれないのだが、彼のバラエティに富んだソングライティングとルーク&ヒューの紡ぎ出すツインギターの心地良さに、小生ゾッコンなのである。どこか70年代UKロックの香りをかぐわせつつも、ロンドンの空のような鬱屈感が皆無という「太陽と青空に向かってどこまでも真っしぐら」なロック。優等生ロックには本来、食指が動かない私なのだが、ここまでストレートな「良心」を見せつけられ、あえなく降参。
そして、ロック苦手の我が奥様も何故かこんな彼らの演奏だけは絶賛なのである。
「ギターの感じが普通のバンドとは、ちょっと違うのよねぇ〜」などと、ギターは弾けないくせに判ったような事を偉そうに話す妻は、幼児期にピアノによって培われた絶対音感の持ち主であり、音譜も読めない旦那様は頷くしかないのだが、音楽・芸術的感性が全く相容れない二人が、珍しく趣向が一致した奇跡的なバンドの登場に、中年夫婦は素直に喜んでいるのである。
今作は、1st・2ndアルバムのパワフルな疾走感と比較すると、大分落ち着いた印象を受ける。過去作がシンプルなギター・サウンドが中核だったのに対し、シンセサイザーやストリングスを効果的に取り入れ、楽曲の多彩さは前例を凌ぐ幅の広さ。エレクトロ・ロック、映画音楽を想わせる弦楽四重奏、ヒップホップ調まで、しかし根幹には各楽器の絶妙なアンサンブルと極上のメロディ・ラインがあり、「心温まる正直者のロック魂」を見事に表現している。そして何と云っても「ギターがしっかり鳴っている」のだ。
そして無謀にも買ってしまったのだった
ちょっと恥ずかしいおまけ
クークスの名曲「naive」をyoutube内で徘徊していたら...私好みの美女ふたりが・・・
二人とも良い声しています、何気にハモリも美しい。
こんな感じで音楽を楽しむ仲良し二人組って、素直に素敵って思うんだな
やっと解けた竜舌蘭の謎〜GO!GO!7188 [〜ロックの神さん〜]
6,7年前にCDショップで試聴したら余りにも気持ちのいい音なので、予備知識無しで衝動買いしたアルバムである。
一聴した感じで「デビューしたてのインディーズ系バンド」か、はたまた「椎名林檎が東京事変とは別のユニット結成か?」と勝手に決めつける小生だったが、自宅でジャケットを開き、このバンドが女性2名・男性1名のトリオ編成である事が判明した。
どうやら、どちらかの女性が「この気持ちいいギター」を弾いているようである。
適度に歪ませたギターサウンドはまさに私好み。そしてイタコの口寄せのような不思議な味の女性ヴォーカルが、甘っちょろいラブソングなど糞喰らえの叙情詩を歌う。往時のグループサウンドの香りを仄かにかぐわせながら、シンプルなスリーピース・バンド王道のストレートなビートが炸裂する。
ひとりよがりのオッサンは、「竜舌蘭」というバンドのデビューアルバムだと完全に信じ込むのであった。
さぁ、なんと読もうか〜「リューゼツラン」は私のお気に入りインディーズバンドのひとつとなった。
なんか、しっくりこなかったのは事実なのだが・・・
それから何年間も、たまにCD棚から引っ張り出しては、この小気味良いアルバムを聴いていたものだったのだが、先日たまたま老眼鏡をかけてジャケットを眺めていたら・・・『produced by go!go!7188』の文字を発見。
「げっ、まさかこれがバンド名」よ〜く表紙ジャケットも凝視すると、確かに崩し字で「GO!GO!7188」。
紛らわしいジャケット作るな〜
試しにググッてみると・・・出るわ、出るわ、本当は、こんな有名なバンドだったんか
しかし「GO!GO!7188」も、どう読むんじゃ〜紛らわしい名前付けんなぁ〜
されど、映像で見る彼らの演奏に釘付け〜アルバム「竜舌蘭」オープニング曲
このCD発売時には武道館ライブするほどメジャーだったのだ
ギターとリードヴォーカルの正体は彼女だった。やるじゃねぇか、このネェちゃん
中島優美〜1979年生まれ。このサウンドと演奏スタイルは、それこそ浅井健一「女ベンジー」ではないか
「竜舌蘭」のジャケット内の写真は、可愛いとは言えない写りなのだが、ひとたびステージに立つと別人の如く「いいオンナ」に変貌する。
これは名曲ですな〜『浮舟』
このコブシの効いたヴォーカルが堪らない
金髪の巫女かはたまたネコ娘のように無表情で歌う
ユウ(中島優美)が、ネズミ男かはたまたリングの貞子の如きアッコ(野間亜紀子)と、ドラムの児泣きじじい・ターキー(細川央行)を引き連れて織り成すゲゲゲ親衛隊が紡ぐ古典和製ロックじゃ
柔なガールズ・ロックとは一線を画した骨太サウンドと美しき日本語の融合は、中島優美のコケティッシュな一面と共に、多くの若者に支持されているようである。
シンガーソングライターとして希有な才能を発揮する中島優美は現在では、GO!GO!での活動の他にも別ユニット「チリヌルヲワカ」やTHE BOOMとのコラボなどで幅広いジャンルへの挑戦を続けている。
THE BOOMとユウの共演はGO!GO!のイメージからは想像できなかったのだが、宮沢と中島の共通点は、ROCKに日本語の詩を歌として見事に成立させる事だ。二人は、非常に肯定的な意味で「演歌ロック」を唄える数少ないロッカーだと思う。
70年代ロック親爺を悦ばせる「懐かしきロック魂」を持ったLady guitarist ユウに拍手を送りつつ、今後更に進化を続ける彼女の活動に目が離せない
おまけ
奥村チヨより巧いかも〜なかにし礼もビックリ
オジサン泣いて喜ぶ「恋の奴隷」(1969年)グラムロック編
「ア・ナ・タ好みのオンナになりた〜い」
「ソ・ン・ナ嘘デモ云われてみたぁ〜い」
『サディスティック・ミカ・バンド』&「刑事犬カール」の不思議な関係 [〜ロックの神さん〜]
伝説のバンドの歴史を遡ります...
第3代ヴォーカリスト「木村カエラ」
「タイムマシンにおねがい」(2007年)ちょいと音切れ
日本ロック史上不朽の名曲を歌うカエラ嬢。
さすがに巧い! 歴代ヴォーカルの中では抜けた歌唱力ですな〜
再々結成時、新ヴォーカリストの名前を知った当初は違和感を覚えたが、聴いてみれば、今風の分厚いサウンドに彼女の軽い声質はベストマッチし、往年のSMBサウンドが一夜のみ復活した。
そして、時は平成元年(私は新婚)
第2代ヴォーカリスト「桐島かれん」
「塀までひとっとび」〜「Boys & Girls」(1989年)
14年ぶりの再結成時に指名されたヴォーカリストは、モデル出身の「桐島かれん」(余談ですが、4年後、私の尊敬する写真家・上田義彦氏と結婚します。)
当然のことながら歴代ヴォーカルの中ではズ抜けて美形のナイス・スタイルでございます。(私的には、歌唱力は「歌姫」レベルには認定できないが...)
YMO色がテクノ・ビートの中、ひとり気を吐く高中のギターが、いやはやなんとも...
時代はまさに「バブルに向かってGO!」であり、「華美でなければ価値なし」の世相を映した1回こっきりの復活劇であった。
更に時は遡り・・・
青春まっさかりの高校生時分に、このLPを聴いて驚愕
圧巻の演奏のインストルメンタル曲に挟まれ、怒濤のように日本語ロックがファンキー・ビートに乗って押し寄せて来る。聞き覚えのあるビートは、それこそ「タイムマシン〜」位なもので、大半は未体験サウンドの無国籍ごちゃまぜロックなのである。まさに自分にとっても「黒船」襲来
初代ヴォーカリスト「加藤ミカ」
「塀までひとっとび」(1975年)
やっぱりミカ・バンドは巧かろうが下手だろうが、ミカが歌わねば・・・
加藤和彦(Guitar&Vocal)
ミカ(Voval)
小原礼(Bass)
高橋幸宏(Drums)
今井裕(Keyboad)
高中正義(Guitar)
加藤和彦&ミカは当時、夫婦。
(二人の離婚が後の解散に繋がった訳であるが)
ドラムは、前任の「つのだひろ」に代わり、今作から高橋幸宏。
アニメキャラにそのままなりそうな風体が若き高中正義先生。
ピンクフロイドも手がけた敏腕プロデューサー「クリス・トーマス」の手によって完成されたこの「黒船」は、極東の6人組を世界に知らしめる事となった。
ロキシーミュージックの前座として欧米ツアーを廻った彼らは、時に主役を食う程の喝采を浴びたと云う。
このライブ・アルバムがまた格別である。
最良の録音とは言い難いが、当時のSMBのパフォーマンスの高さを余す所無く伝えている。
正直、スタジオ盤の「黒船」より、私は、このライブ盤を聴く方が多かった。
なにげにBassが凄いです。
実は「黒船」発表後、オリジナルメンバーの小原礼(手配写真の犯人みたいな方)が脱退。
この欧米ツアーから「後藤次利」という若きベーシストが新メンバーに迎えられていた。
色男です
巧いです
小原氏も素晴しかったが、後藤のリズム感性が、SMBに新たな躍動感を生み出したといっても過言ではない。
欧米ツアー成功には、彼のビジュアル・サウンド双方の魅力が寄与したことに疑いはない。
そんな訳で、ギター小僧の小生にしては珍しく、このベーシストのファンになってしまった。
ところが・・・こいつが私の憎き恋敵になろうとは.......
『FOCUS』〜Jan Akkermanの煌めき [〜ロックの神さん〜]
中学時代、結構プログレに嵌っていた小生ではあるが、やはり歌詞(ヴォーカル)の無い演奏には興味が持てなかった。ヴォーカルが存在しないロックなんて....ク◎ープを入れない珈琲みたいなもんで(ふ、古い・・・)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら(抜粋)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら(3分間のアドリブ部分)
そんな思い込みを一発で粉砕したLPを、また例の悪友が持ち込んで来たのだった。
とにかく1曲目でぶっ飛んだ
悪魔の呪文(Hocus Pocus)
当時は、当然ながらこんな映像は知る由もなかったが、スピーカーから流れる超人的なギターソロと狂人的なヨーデルの調べに卒倒したのだった
Focus(フォーカス)・・・70年代に活躍したオランダを代表するプログレッシブ・バンド。
リーダーはThijs Van Leer(タイス・ヴァン・レール)〜奇声を発する奇相のキーボード奏者。フルートも吹きます。バンドの音楽的中核となるザンバラ髪の生首男と呼んであげて下さい
そしてこのバンドの花形ギタリストが、ヤッターマンではなくヤン・アッカーマン(Jan Akkerman)
彼のギタープレイは、当時の自分にとって衝撃的だった。
今までに聴き親しんだロック・ギタリストとは、全く異質。
不協和音を滲ませたコードと聴いた事無いスケールから生み出される速弾きソロ。
「グワシャ」というコード一発と「キュロリ」というグリスの音色が、なんとも快感
アルバム収録曲のうちほとんどがインストルメンタルだが、一気に聴き惚れてしまった。
バリバリのハードロック調は冒頭の1曲のみであるが、クラシックを彷彿させるアコギ主体の哀愁を帯びた曲から何でもありの長尺組曲まで〜ギター小僧は、アッカーマンのつま弾くギターの音色に酔いしれるのであった。
当然、他のアルバムも聴きたくなる。
だが当時は、2枚目のこのオリジナルアルバム以外は、ライブ盤しか国内で発売されていなかった。(記憶では)
探しましたよ〜3枚目のアルバム。ようやくお茶の水のDisk Unionで輸入盤を見つけ即購入。(しかもB級品〜ジャケットの右上に穴が開けてあります〜今で云う傷ものアウトレットですな〜盤が少々しなってました)
なんと2枚組でした
今では
近年CD再発されていますが、ジャケットが全然違います。(リマスター盤にて抜群に音質が向上)
個人的にはフォーカス最高傑作
クラシック、ジャズ、ロック、ファンクを織り交ぜた無国籍サウンドが、ヨーロッパの薫りをしっかり滲ませた上、卓越した演奏技術を持った猛者達のインタープレイが火を吹く。無秩序に思える楽曲群が解け合い、静から動への変幻自在の「フォーカス・サウンド」として確立された。
そして最大の魅力はやはりアッカーマンのギタープレイである。
なにはともあれ名曲『Sylvia』
聞き惚れるレスポールの音色〜美しきメロディー
ベーシストの交代により、リズムがより強力・複雑に進化し、各演奏者のインプロビゼーションも多くなる。
1、4曲目の目まぐるしく変わる展開と変拍子は、耳に心地良いとともに、バンドの完成度を表す。
そして、前作以上にアッカーマン氏が弾きまくる。キャッチーなメロディーの「Sylvia」から大作「アノニマスⅡ」の鬼気迫るソロ個人的には、Jazzyなムードから一転美しいメロディーを奏でる「フォーカスⅢ」と「アンサーズ?クエッションズ!〜」の彼独特のスケールからの美しくないアドリブが、お気に入りである。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
所謂、英国プログレッシブ・ロックとは一線を画す。
Genesisを筆頭にking crimson、Yes、EL&P、Pink Floydは今でも私の大好きなバンドではあるのだが、このFocusだけは、他のバンドとは全く別次元で敢然と輝くプログレ一等星として存在する。
私が後年、高校・大学と進むにつれフュージョン、JAZZへと傾倒していく契機となった「ロック」が何を隠そうこの「Focus」であり、「Jan Akkerman」なのである。
次作
フォーカス黄金時代の集大成。
この頃からタイスとアッカーマンの音楽的確執が囁かれた訳であるが、両者の緊迫した関係が作品自体にも偲ばれる。平たく云えばコマーシャリズムのタイスとアートなアッカーマンの激突が、絶妙なバランスで成立した傑作と云える。
20分の組曲である表題作などの途方も無い大風呂敷ぶりは、衝撃的だ アッカーマンの「リーダーのイメージ通りには弾かないもんねぇ〜」みたいが感じがプレイの随所に表れている気がするのは私だけか?
1975年マザー・フォーカス(K2HD/紙ジャケット仕様)を最後にヤン・アッカーマン脱退。
(このアルバムはタイスの力が勝ったか、POP感が増しており、アッカーマンも当時はやりのトーキングモジュレータで遊んでいるだけにしか私には聞こえないのだが...)
ソロ活動に専念した彼は、まさに自己のアート探求の旅に出たように精力的に作品を発表し続ける。
最近はアコーステック・ギターの演奏が多いが、ライブではフォーカス時代の名曲をバリバリのレスポール・サウンドで、今でも聴衆を楽しませている。
「悪魔の呪文」アコギ・バージョン
御歳64歳・圧巻である
Jan Akkerman〜私の最愛のギタリスト・Steve Hackett(元ジェネシス)と同系統のプログレ出身ながら、演奏はまさに対極。
されど、自己顕示欲の強い超個性的なプレイは、今でも私の心を躍らせる
「The Spill Canvas」 [〜ロックの神さん〜]
気持ちいい音、見ぃ〜つけた
『All Over You』
曲良し、声良し、ギター良し
The Spill Canvas〜サウスダコダ出身の4人組。すでに4枚のフルアルバムをリリースし、アメリカで地道に活動する中堅バンドです。米国内でも大ブレイクしているわけではなく、もちろん日本では全くの無名。
リーダーのNick Thomas(Vocal&guitar)〜熊のぬいぐるみと思しきとっちゃん坊やの風体ですが、「男性ロックヴォーカル」の王道たる野太い、味のある声を聴かせてくれる。
彼が弾くバッキング・ギターに絡むリードギターが、これまた気持ち良い音色。
Bass&Drumsのリズムセクションも、切れのあるビートを叩き出してくれる。
こういうストーレートかつ小気味良いロックは、昨今なかなかお目にかかれない。
初期の頃は、アコギ多用のオルタナ系ロックの香りが若干強いが、最近はハードロック度に研きがかかってきているようである。
ライブも予想通りの迫力!
『Hush Hush』
(ドラムの兄ちゃんも良い味出してます)
『Staplegunned』妄想膨らむ愉しいPV
ロックテイスト溢れる4枚目のアルバム
アメリカの片田舎からどうしてこんな無骨で粋で良心的なロックが生まれて来るんだ
サウスダコダと云えばインディアン居留地を抱える全米一の貧しい州だ。
なぜかしらSpill Canvasにインディアンの末裔の精神性を感じてしまうのだが、気のせいか・・・
しばらく彼らを追いかけてみよう
『四人囃子』超絶レトロギタリスト・森園勝敏 [〜ロックの神さん〜]
昔々、ハマった日本のロックをちょっと振り返ってみる
『一色触発』四人囃子(1974年)
日本のプログレッシブ・ロックの記念碑的な名盤です。
当時の愛読音楽雑誌「ミュージック・ライフ」の人気投票国内バンド部門で第一位にランキングされていた為(記憶が曖昧だが・・海外部門はぶっちぎりでQueenだった)、「四人囃子」というバンド名は知っていたが、彼らの演奏傾向は全く知らなかった。
しかし、まだまだロック初心者だった少年は、フラリと立ち寄った石丸電機で、この摩訶不思議なジャケットに吸い寄せられるように手に取り、さも当たり前のようにレジに並ぶのだった。
初めて購入した邦楽ロックアルバムだった・・・
アルバム1枚で5曲収録。(実質4曲)
A面を聴いた時点で、いままでの洋楽ロックには感じた事の無い「違和感」が押し寄せてきた。
ロック・リズムに乗りにくい「日本語」歌詞と素人っぽいヴォーカルの組み合わせにまず戸惑いつつ、長いインストルメンタル演奏に爽快感を覚える。
そして、ギターの変幻自在の音色がやたらと耳についた。「おまつり」のハチャメチャぶりは一体なに?
いまだかつて聴いた事の無い音楽ジャンルだ。
そしてB面・・・
「一色触発」オープニング。
慣れ親しんだ激しいビートに切裂くリードギター!
「おっ〜これなら解る、待ってましたぁ」と、思いきや突然転調して、なんとPINK FLOYDに変身
その後もめまぐるしく変わり過ぎるリズムに翻弄され呆然としていると、オープニングのテーマに戻りギターの咆哮に酔いしれて12分の大作は終わる。ラストの「ピンポン玉の嘆き」・・・そのまんまじゃねぇか
おまつり 詩 末松康生 曲 森園勝敏
〜
みんな輪になっておどる
おれもおどろうとしたけど
誰かの足をふんづけて
しようがなしにみんなの匂いを
かいでまわってたのさ・・・
例えばこんな詩をロックに乗せてしまうのだ。
恐るべき体験だった・・・
違和感と高揚感〜この不思議な調和に、レコードに針を落とすごとに私は病み付きになっていった。
PINK FLOYDとEL&Pのエキスを搾り取って、日本のフォーク風味をちょっと振りかけながら、ベースは卓越した演奏技術を持ったハード・ロック
特に森園勝敏のギター・プレイの凄さ。枯れたナチュラル・トーンのソロから切れまくるカッティング、そしてヘヴィメタ軍団も顔負けの凶暴なリフ&ソロ。D・ギルモアも目じゃない
「一色触発」のギタープレイを必死になって耳コピしたものだった。
プログレを「日本語の詩」で演るという当時では異様な形式を、真正面から取り組んだ若き4人のミュージシャン。ピンク・フロイドのモノマネと云われようが、70年代においての可能な限りの録音・演奏技術を駆使して自分達の感性をひとつの形にした傑作である
しかし、この愛聴盤も時代と共に廃盤となり、いつしか幻のLPと呼ばれる事になる。
購入して10年後、「どうしても欲しい」という会社のロック・フリークの後輩に使い古しのエレキ・ギターとセットで先輩風を吹かせて譲ってしまった事を、後から後悔しても悔やみきれなかった。まさに(あとのおまつり)
私の手元には「クローム・カセットテープ」に大事に録音された音源だけが残った。そしてカセットデッキなるものが我家のオーディオセットから消滅して以降、「一色触発」は私の脳裏だけに残る名盤となった・・・
しか〜し、
有難い時代である。
格段に音質が向上したリマスター盤が登場。おまけにボーナス・トラック2曲付き。
今、蘇る日本の前衛ロックの幕開け〜天才・森園の“昭和”の名プレイ〜私の青春時代も帰ってきた
「一色触発」(オープニングはカットされてますが)
今時、こんな詩的なロックは絶対、はやらない・・・
おまけ
超レアなライブ音源、昭和の名演
「空と雲」featuring Mieko Hirota
なんとヴォーカルは「弘田三枝子」
(そして、森園のギターとback chorusの渋いこと)
The Libertines〜落ちこぼれどもの輝き [〜ロックの神さん〜]
以前、英国のギター・ロック・バンドの最近のお気に入りとして『The Kooks』を採り上げた。
案の定、ピートは以前からクスリ漬けの状況にあり、セカンドアルバム制作中辺りから日常生活は破綻をきたしていた。
バンドの中心であるルークとヒューは、イギリス政府公認の音楽学校の優等生としてプロ転向後も、ロック王道を真っすぐ歩いているのであるが、彼らと同世代の対極的な英国バンドがあった。(いや、ある)
そう幻の『The Libertines』である。
「Up The Bracket」
このバンドもギター&ヴォーカルを担うカール・バラー(野暮なブライアン・フェリー)とピート・ドハーティー(眉の太くなった火野正平)中心の4人組。
二人は優等生軍団とは対照的に大学を中退し、極貧のどん底から音楽活動を開始する。まともな音楽理論も演奏技術も人から教えられる事もなく、見よう見まねで自分らの感性を音に紡いでいった。
歌、お世辞にも上手いと言えません。ギター、高等技術不要です。
されど、2本のギターの微妙にずれつつ絡み合うバッキングと、今にも崩れ落ちそうなシングル・ノートの響き。
かつてのパンクロックのような単純明快なストレートなビートとは一線を画した、激しく儚い危険な香りを持った音の渦が聴く者の心を包み込む。
勢いのみで突っ走るのではなく、酩酊しながらの綱渡りを観るような「おい、危ない、落ちるぞ!」的緊張感を、私はこのバンドに感じてしまう。
二人の素顔も少々ヤバい感が漂っている。熱狂の生ライブは見せかけのパフォーマンスではないことが見て取れる。
「Time For Heroes」
ピートの奇行が目立ち始め、カールはピートの代役のギタリストを立ててのコンサートを頻繁に行わざる得ない状況になる。
「Boys In The Band」独り気を吐くカール
切れの良い演奏だが、何かが足りない・・・というより器用にまとまり過ぎなのか
リバティーンズの魔力とは、カールとピートのマイナス同士のオーラが掛け合わさって、無限大のパワーになる数式である。ピート抜きではマイナスはマイナスのままなのだ。
復帰を目指しリハビリに励むピートだが常に結果は挫折。
二人の間の亀裂は決定的なものとなり、2004年末に無期限の活動停止を宣言、たった2枚のアルバムを残し、事実上の解散となる。
楽曲群の豊富さに、彼らのメロディーメーカーとしての非凡さも改めて感じる
シンプルに聴こえる曲のなんと奥深いことか
2本のギターの響きのなんと神々しいことか
珠玉のオリジナルアルバムは、永遠にロンドンっ子の胸に焼き付くのであった。
しかし、2010年、ついに再結成ライブ。
ちょっぴり大人になった奴らの『穢れ無き掃き溜めの叫び』は健在であった
「Don't Look Back Into Yhe Sun」
(このライブは生で観たかったなぁ〜)
現在も各々のソロ活動がメインのようであるが、まだまだ若い彼らにオッサンは今後も注目なのである