東京オペラシティにて『新世界』を聴く [素人の扉〜Jazz&Classic〜]
「東京オペラシティ」へ久々に妻とクラシック観賞と洒落込みました。
お目当ては、ドヴォルザークの『新世界』。
小学生の頃、何のTVコマーシャルか記憶に定かでないのだが、白黒TVから流れる第4楽章の馴染み易い旋律は、ベートーベンの『運命』以上に耳にこびりつき、遥か昔の思い出と共に私の脳裏に焼き付いている。
演奏者は、アレキサンダー・マルコヴィッチ指揮・ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団である。
スラブ人であるドヴォルザークの曲は、やはりご当地チェコの楽団でなければならないだろうという勝手な思い込みにより、本日の公演を三ヶ月前から予約していた。他の演奏曲もスメタナ「わが祖国」、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。(3曲とも作曲家はスラブ出身)こちらも有名であり、マーラーやブルックナーの難解・長尺な交響曲と比べれば、肩の力を抜いて聴けるクラシック初心者の我が夫婦にとっては格好の演目である。
座席は2FのB席で、楽団のすぐ右上方。音響的には、1Fの中央席が望ましいのであるが、このバルコニーっぽい席からは、通常ならお尻しか見れない指揮者の表情がはっきり解る。そして、演奏者の指の動きも楽譜まで覗き込めるような近さは、音響効果よりも生演奏の息遣いがダイレクトに伝わってきた。
千秋真一指揮「チャイコフスキー・ヴァイオリン協奏曲」
カラヤン指揮『新世界・第4楽章』
旧東欧圏の楽団の弦の音色の美しさは有名であるが、今回のブルノ楽団も期待以上の出来映えだ。特にピアニッシモ時の囁くような弦楽器のハーモニーには、一発でとろけてしまった。更に木管楽器(フルート・オーボエ・クラリネット)の柔らかいトーンにも溜め息。(実は美貌のフルートの女性に釘付け)
そして、マルコヴィッチ氏の躍動するタクトが、たっぷりの哀愁を漂わせながら、時に熱く激しく〜まさにスラブの心情そのものを、この名曲達に乗せて、遥か極東の島国の我々に語りかけてくるのである。
スラブの風を胸一杯に吸い込み、身も心もリフレッシュされた夫婦は、オペラシティの最上階54Fの日本料理店で遅めのランチ(早めのディナー)を摂り、家路に急ぐのであった。
本日演奏された3曲(私の所有するCD)
- アーティスト: ムローヴァ(ヴィクトリア),メンデルスゾーン,チャイコフスキー,小澤征爾,マリナー(サー・ネヴィル),アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ,ボストン交響楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/06/22
- メディア: CD
チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲がカップリング(小沢征爾指揮)
スメタナとドヴォルザークのCDは、カレル・アンチェル指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団によるもの。
約50年前の録音ですが、クラシック素人の私が身震いした代物です。
カレル・アンチェル(1908年〜1973年)・・・南ボヘミア出身。世界大戦中、ユダヤ強制収容所へ家族と共に送られる。アウシュビッツで家族全員は惨殺、彼だけが奇跡的に生還する。戦後、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者として活躍、低迷していた同楽団を立て直し、チェコ・フィル伝統の名声を取り戻す。
1968年、外国演奏中に「プラハの春」が勃発、帰国が叶わず、カナダに亡命。小沢征爾の後任としてトロント管弦楽団の常任指揮者になるも4年後に死去。
超一流の指揮者としては位置づけられていないが、彼の緊張感を保ちながらも情感豊かな演奏は、特にスラブ系の楽曲(ドヴォルザーク、スメタナ等)時にとてつもないパワーを発揮し、聴く者を圧倒する。
クラシック素人の私の琴線に触れた数少ない指揮者の一人である。