SSブログ

『蠢動』 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
 [目]久しぶりの時代劇の鑑賞でござる[目]
 
 
 
享保の大飢饉(ききん)から3年の月日が流れ、山陰の因幡藩は一見平静さを取り戻しているように見えた。だが、城代家老の荒木源義(若林豪)の耳に、幕府から派遣された剣術指南役の松宮十三(目黒祐樹)が不審な動きをしているという知らせが届く。荒木は用人の舟瀬太悟(中原丈雄)に申し付け、松宮の挙動に目を光らせるよう手配するが……。(シネマトゥデイより)
 
監督・脚本・製作・原案:三上康雄
殺陣:久世浩
 
出演
平岳大 若林豪 目黒祐樹 中原丈雄
栗塚旭 脇崎智史 さとう珠緒 
  
熱い[exclamation×2] 寒々とした山陰地方の冬景色を背景に、製作陣の想いが熱く燃え滾る骨太の時代劇である。
 
ほとんど話題に上らない作品のようだ。
監督の三上康雄氏は、70年代の学生時に関西自主映画の旗手として名を馳せた人物。
月刊ぴあ」創刊(1972年)の頃に、映画・音楽に目覚めて青春時代を過ごした小生と同じ年代である。
数多の芸術活動に巡り会い、触発され、その後の人生の糧になる財産も貰ったりする貴重な学生時代だが、多くの若者は、その芸術を職業にはしないし、出来ない。
三上氏は、近畿大卒業後、家業のアルミ製造会社に入社するのだが、映画への情熱醒めやらず、サラリーマン監督として映画製作を継続、1982年に初の16㍉作品として『蠢動』を発表、好評を博す。
一昨年、代表取締役となった家業の会社をあっさりM&Aで売却し、個人の映画製作事務所を設立してしまう。
 
そして、本格的映画製作の第一弾が、今作『蠢動』。30年前に発表した『蠢動』の焼き直しというよりも、氏が30年間、推敲に推敲を重ねて造り上げたプロフェッショナル達の手による珠玉の作品なのである。
 
こんな「映画バカ」の映画だから面白くない訳が無い。 
とは云っても、弱小個人事務所ゆえ、無尽蔵の資金は残念ながら投下できない。
豪華なセットや当然CGなど存在しないし、今売れ線の俳優さん勢ぞろいともいかない。
しかし、常に脇役に廻り脚光を浴びる事が少ないこの渋い俳優陣が、実にいいのだ[exclamation×2]
  
35112_01_l.jpg 
 
araki.jpg 
 
 hqdefault.jpg
 
平岳大、若林豪、中原丈雄らの抑えながらも心情が迸る演技は、通常のTVドラマのカメラでは捉えきれない...というより、ここまで彼らに高度な演技も要求していないようなのだが...とにかく凄い[exclamation×2]
そして若手の無名俳優・脇崎智史が、追い込まれ野獣と化す青年武士を熱演する。
 
hqdefault (1).jpg 
 
最小限の照明と和太鼓のみのBGMが、研ぎすまされた俳優の演技を際立たせる。
そして圧巻の殺陣。今風の時代劇のように血しぶきが舞い上がる事は無い。敢えて過度な脚色は避ける事により、「殺陣」自体の美しさを凝縮したような斬り合いが、非常に味わい深い。本当の武士の殺し合いとは、決してかっこいいものではない、壮絶な命のやり取りである事を教えてくれる。
 
 o0640045312709630793.jpg
 
そして冬の因幡(鳥取)の雪景を存分に取り込んだ静謐な映像が、その立場立場によって置かれた哀しくも激しい武士達の思いを丸ごと飲み込んで行く。
 
wTSuhBgdpdZhVChRUVn8tjMJ8yuQ9Wq8.jpg 
 
 
こんな直球ど真ん中の映画があってもいい。熟練の映画製作のプロでは出せない「力」を感じた作品であった。
 
 
こちらは1982年製作の「蠢動」
 
  

nice!(31)  コメント(10)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 31

コメント 10

怪しい探麺隊

1回だけ予告編を観ました。
少し食指が動いたけれど、上映館が少なくて....
やっぱり静かで熱い本物の迫力みたいですね....
by 怪しい探麺隊 (2013-10-24 07:07) 

般若坊

"常に脇役に廻り脚光を浴びる事が少ないこの渋い俳優陣が、実にいいのだ"
同感です。これが時代劇の真骨頂・・・ ^^


by 般若坊 (2013-10-24 09:40) 

斗夢

時代劇が好きです。
映画館に行くのが億劫ですから、TV放映を待ちます。
by 斗夢 (2013-10-24 15:00) 

JUNKO

映画大好きです。タイトルがいいですね。
by JUNKO (2013-10-25 13:48) 

つむじかぜ

> 怪しい探麺隊 様
この上なく地味ですが、とてつもなく熱い作品です!
by つむじかぜ (2013-10-25 23:54) 

つむじかぜ

> 般若坊 様
TV時代劇に定番の悪役・脇役が、凄い俳優さんである事を再認識しました^^
by つむじかぜ (2013-10-25 23:59) 

つむじかぜ

> 斗夢 様
たまには映画館の迫力もいいもんですよ。
地味な作品はTV放送しませんしね。
by つむじかぜ (2013-10-26 00:01) 

つむじかぜ

> JUNKO 様
潔いタイトルですね。『蠢』は読めても書けんけど...(・・;)
by つむじかぜ (2013-10-26 00:04) 

non_0101

こんにちは。
ちょっと気になっている作品です。観に行けるかな…
やっぱりこういう作品は、スクリーンで楽しみたいですよね☆
by non_0101 (2013-10-27 16:10) 

つむじかぜ

> non_0101 様
迫力の和太鼓を聴くだけでも、映画館がオススメですね。是非!
by つむじかぜ (2013-10-29 00:10) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。