「きっと、うまくいく」 [上映中飲食禁止じゃ!]
ボリウッド(インド)映画の大傑作
キャスト
アーミル・カーン カリーナー・カプール R・マーダヴィン
シャルマン・ジョーシー ポーマン・イーラーニー オーミ・ヴァイディヤ
行方不明だったランチョー(アーミル・カーン)が街に戻ってくると聞き、ファルハーン(マドハヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョシ)は母校に向かう。10年前、三人は名門大学の学生だった。真っすぐなランチョーは異議があれば学長にすら物申し、好きなことに打ち込んでいた。しかし、ランチョーと学長の娘・ピア(カリーナー・カプール)が接近したことから、3人は卒業目前で退学を言い渡されてしまう。(シネマ・トゥデイより)
映画の本来の楽しさを、このインドのハチャメチャ・コメディが「これでもか!これでもか!」と叩き付けてくれるのだ
コメディ作品では異様とも思われる長尺171分間の上映時間だが、長さを全く感じさせない観客をスクリーンに釘付けにするパワーは、昨今の凝りに凝った日米欧の作品では持ち得ないものだ。まさにBRICSの一角である経済成長著しい国家の勢いそのままを映し出したようだ。
2010年に原題「3Idiots」を直訳の「3バカに乾杯!」という邦題で国内限定上映されたが、再上映の今回は「きっと、うまくいく」に改題、個人的にはこちらのほうが「しっくり」くる。
確かに「3人のおバカ」によるハチャメチャ劇なのだが、彼らがピンチに直面する度に口ずさむ『アール・イズ・ウエル』=『ALL IS WELL』が、この作品の心髄だからだ。
とにかく、この3バカが素晴しい 主役級のアーミル・カーンなどは、黙っていればジョン・キューザック似の色男だが、真面目顔で奇天烈千万。
そして、彼らの自由奔放な学生生活を常に蹂躙せんとする大学長がまたイカしている。
3バカのライバル、間抜けな優等生が笑いを加速させる
ヒロイン役〜不思議な雰囲気を醸し出すインド美人だ
見かけは喜劇であるが、現代インド社会の闇〜高度な受験戦争による若者の自殺〜にも光を当てている。
IT先端技術を国家隆盛の旗印に、インドでは一流理工系大学を卒業したエリートだけが将来を約束された人生の勝者。以前のカースト制度以上に学歴偏重による貧富の差が拡大し、現在の教育制度の欠陥が指摘されているらしい。
落ちこぼれは即、敗者であり、若者の自殺者数はうなぎ上り、点数至上主義は彼らの独創性を奪い没個性の学生が急増。そんな社会の実態に怒りの拳を挙げながらも、遊び心を持って極上のエンターテイメント作に仕上げたポリウッドの製作陣に拍手を送りたい。
英国映画「スラムドッグ$ミリオネア」が、ボリウッド界から多くの協力を得た事は知られた所であるが、このオスカー受賞作を彷彿させる歌と踊りが、今作にも随所に織り込まれ、笑いと共に華やかな彩りを添える。
青春ラブ・コメディを骨格に社会風刺を内包した本作は、インド映画人の叡智と情熱によって紡がれた色とりどりの更紗(さらさ)のような秀作だ。観る者によって、この映画のテーマの捉え方も違うであろう。私は、「友と師」との関わり方に力点を置いてしまう。独り難局に陥った時、「きっと、うまくいく」と声をかけてくれる人間が傍らにいる事が、結果「うまくいかなく」ても、それが人生の機微に触れる喜びのひとつであるのを改めて感じ入るのであった。
構成・演出・俳優・音楽・撮影すべてが高水準、しかし、それ以上に銀幕から溢れ出る「映画の力」に酔いしれる事が出来る近年稀に見るボリウッドの傑作だ
つむじかぜ様こんばんは。
朝日新聞に作家の沢木耕太郎が「銀の街から」というタイトルで映画の紹介をしているのですが、先月、この「きっと、うまくいく」を推薦していました。
私は映画を観るときは妻と仕事帰りにシネプレックスで待ち合わせてレイトショーを鑑賞するのですが、いつもは十人くらいしか観客がいないのに、この映画の時は50人ほど、それも若い女性客が多く、この映画の人気に驚きました。妻も私もポリウッド映画は初体験でしたが、感動しました。
by yuzman1953 (2013-07-03 00:33)
>yuzman1953 様
ご夫婦でレイトショーなんて素晴らしいですね。私も憧れます^^
何か懐かしい薫りを感じる作品でした。高度成長期の邦画みたいなパワーをこのボリウッド映画は持っていますね。
by つむじかぜ (2013-07-03 02:21)
これは本当に良い映画でしたね。
それから、私も、
笑いの中にも、現代インドが抱える問題が
織り込まれているように感じました。
国が発展すればしたで、
また新しい問題が出てくるものなのですね。
by 青山実花 (2013-07-07 00:10)
こんにちは。
長時間を全く感じさせない楽しいエンターテイメントでした。
色々な社会問題を取り上げつつも、笑いを忘れないところがいいですね。
同級生を陥れた原稿の言葉の置き換えにはかなりブラックを感じましたけど^_^;
複雑なインドの社会の中で生きる人々が、こういうhappyな映画を求めたくなるのは分かるかもと
ちょっと思いながら観ていました☆
by non_0101 (2013-07-07 19:46)
>青山実花 様
30年後には中国を超える経済大国になっているであろうインドの、力漲るエンターテイメント作品でしたね。
そして、そのインドの未来に対する問題点も、しっかり織り込んでいるのが憎い位に素晴らしい!
by つむじかぜ (2013-07-08 03:46)
>non_0101 様
厳しい社会問題も「笑い」に落とし込む処が国民性なんでしょうか?
まさに「きっと、うまくいく」は、自国の将来を語っているようでしたね^^
by つむじかぜ (2013-07-08 03:49)