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『推理作家ポー 最期の5日間』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:ジェイムズ・マクティーグ
脚本:ベン・リビングストン ハンナ・シェイクスピア
撮影:ダニー・ルールマン
音楽:ルーカス・ヴィダール
 
キャスト:ジョン・キューザック ルーク・エヴァンズ
アリス・イブ ブレンダン・グリーソン 
ケヴィン・マクナリー ジミー・ユイル
オリバー・ジャクソン=コーエン 
パム・フェリス ブレンダン・コイル 
サム・ヘイゼルダイン
 
エドガー・アラン・ポーの小説『モルグ街の殺人』に出てくる状況に酷似したふたりの女性の死体が発見される。生活に困窮し酒におぼれるポーは容疑者として扱われるが、さらに彼の小説をマネた事件が次々と発生。彼は自身の作品を汚す犯人を追うことを決め……。(ぴあ映画生活より) 
 
 
ジョン・キューザックの個性が際立ったサスペンス。
 
セイ・エニシング (1989)」での新鮮な演技が印象に残る。男臭さをぎらつかせるタイプではなく、どちらかというと「優男」である。感情を表面に出さず、女性から見れば煮え切らない男なのだが、突如、直情型の行動で周りを驚かせる。奇作「マルコヴィッチの穴 (1999)」では、当時、売出し中のキャメロン・ディアスと共にカウフマンの奇想天外な脚本を、面白おかしく生真面目に表現した。
そして、私が隠れたラブロマンスの名作と信じるセレンディピティ~恋人たちのニューヨーク~(2001)」での淡い想いを秘めたソフトな演技は、私の恋愛観を強く刺激したのであった。
そんな彼が、スティーヴン・キング原作のホラー映画「1408号室 (2007)」では、ホテルの一室で精神を蝕まれるルポライター役を、一人芝居に近い困難な設定の中、見事に演じ切った。
 
結構、私好みの作品に多く出演している彼ではあるが、 前作「シャンハイ(2011)」は、作品自体の稚拙さにより、コン・リーの色気にお株を奪われる羽目になった。
 
しかし今作は彼の魅力が満載[exclamation]
内面描写に優れたジョンは、「傍から何を考えているか解らない男」が似合う。
エドガー・アラン・ポーという特異な世界観を持った天才であり変人文士は、まさにはまり役。
 
今でも謎とされているポーの死に焦点を当て、その謎解きを現実には有り得ない想像力を持って作られた脚本により、ポー自身の作品と見紛うばかりのサスペンスとなっている。
 
この猟奇的連続殺人事件を追うエメット刑事にルーク・エヴァンズ。冷静沈着かつ論理的思考を持つ彼は、難事件解決に向け、ポーの協力を仰ぐ。
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この二人が実にいい味を出している(かっこいいし、眼の輝きがいいね[ひらめき])ルーク刑事もまた、当時の警察官としては異色のタイプのようで、学者はだしの明晰な頭脳を持つ伊達男。犯人逮捕に向け協力し合う両名には、次第に連帯感と信頼感が芽生えて行く。この過程が、二人の俳優の抑えた演技で、残忍な殺人事件とは好対称に、美しい空気感で描かれている。
そしてポーの作品に酷似した連続殺人に続き、彼の恋人が誘拐され、突如ストーリーは一刻を争う急展開となる。
そのポーの恋人・エミリー役のアリス・イブ
 
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矯正の後を感じる少々出っ歯ではあるが、ブロンド美人。変人ポーを愛する深窓の令嬢を好演。
今作の衣装からは想像もできないグラマラスなボディ[キスマーク][目][キスマーク] 
 
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殺人犯が送るメッセージを紐解きながら、常に今一歩で見えない敵を取り逃がすポーとエメット。
エミリーの命の灯火がまさに消えかけんとした時、ポーは最期の決断を、犯人へ届くよう、新聞紙上の小説の中に織り込ませる。
遂に真犯人と対峙したポーは、果たしてエミリーを救い出せるのか[exclamation&question]
 
私自身は、エドガー・アラン・ポーの小説は、今作の題材にもなった「モルグ街の殺人」も内容がうる覚えの、どちらかというと江戸川乱歩の「怪人20面相シリーズ」の方に熱中していた小学生だった。
推理小説作家の先駆者であり、闇の精神世界に踏み込んだ天才文士として世界的にも著名な作者なのだが、彼の作品に触れる機会が成人期においても皆無であった。
その為、個人的には、ポーの作品への思い入れが少ない分、劇中の連続殺人にもハマり度合いがイマイチではあった。
 
SF好きのポー作品の愛読家ならば、もっと痺れる作品ではなかったろうかと、 薄っぺらな予備知識を少々恨みながらも、緻密な構成とジョン・キューザック・ルーク・エヴァンズ演じる男の友情には、胸が高鳴った。
 
エドガー・アラン・ポーは40歳の若さで、とある酒場で泥酔状態で発見され、病院に搬送されるも、そのまま息を引き取ったという。 
ポーが死の前夜にうわ言のように口走ったといわれる「言葉」が、彼の死の真相として、この映画でのラストで締めくくられている。少々強引過ぎる設定かとも思いながらも、旺盛な想像力による脚本には拍手を送りたい。
 
 
 

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Labyrinth

近々見る予定ですので、サラッと拝見 ポリポリ (・・*)ゞ
また後ほど・・・お邪魔致します~
by Labyrinth (2012-10-20 01:52) 

つむじかぜ

>Labyrinth様
ナイスガイの演技をご堪能下さい^^
by つむじかぜ (2012-10-22 01:23) 

Labyrinth

面白かったです~ p(>_<)q これはまさに私ごのみ♪
毎度のことですが、つむじかぜ さんの造詣の深さには足下に平伏です<(_ _)>
私なぞ、こんなに深く味わえたわけではございませぬが・・・
久々に心底ゾクゾクしましたわ (´m`)
by Labyrinth (2012-10-22 23:42) 

non_0101

こんばんは。
時代を感じさせる独特の雰囲気が面白かったです。
ただ、事件が怖すぎて時々目をそらせてしまいました^_^;
ポーの最後がこんなだったら…と思ったら余計にドキドキでした☆
by non_0101 (2012-10-28 22:17) 

つむじかぜ

> Labyrinth様
Labyさんとは、どうも趣向が似ているようで...(・・;)
美しいダークな映像は、私もお気に入りなんです!

>non_0101様
科学捜査ができない時代ですから、迷宮入り事件も多かったでしょうね。


by つむじかぜ (2012-10-29 02:11) 

末尾ルコ(アルベール)

当作品は未見ですが、ポウは昔から座右の書としております。
アメリカでよりもフランスのボードレールやマラルメによって真価を見出されたという点も今考えると現代の映画状況とつながる気も。
もちろん乱歩も大好きですが 笑。

                                 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2012-10-30 02:09) 

つむじかぜ

> 末尾ルコ(アルベール)様
昔から日本文学志向が強い小生ですので、ポーの作品を親しむ機会がありませんでした。
ルコ様ご推奨とあらば、今更ながら挑戦してみようかな^^
by つむじかぜ (2012-10-31 00:46) 

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