『最強のふたり』 [上映中飲食禁止じゃ!]
監督・脚本:
エリック・トレダノ オリヴィエ・ナカシュ
撮影:マチュー・ヴァドビエ
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
キャスト:
フランソワ・クリュゼ オマール・シー
アンヌ・ル・ニ オドレイ・フルーレ
クロティルド・ルネ グレゴア・オスターマン
事故で全身麻痺となった大富豪フィリップの介護者選びの面接に、スラム街出身の黒人青年ドリスが現れる。しかも、彼は失業保険をもらいたいがために不採用を望んでいた。しかしフィリップは、他の者と違って自分に同情しないドリスを雇うことを決め…(ぴあ映画生活より)
なんて素敵な目をした黒人青年なのだろう。
話題の作品は、評判通りの爽やかな感動に浸れる良作である。
オープニングの車の暴走から「あれっ?アクションドラマじゃないよなぁ」と、観るものを錯覚させるやいなや、時間軸を戻していく憎い演出
音楽が滲みます、刺さります 美しい旋律のソロピアノを中心に古式ゆかしい室内管弦楽からギンギンのソウル・ミュージックまで。フランス映画でEW&Fを聴けるなんて
会話が、お洒落とお下品の応酬で、これまた楽しい。爆笑を呼び込むというより「苦笑」を誘う「ニタリズム」満載の脚本も秀逸だ。
欧州映画らしい繊細な映画作りの巧さを随所に感じるのだが、それ以上に実話に基づいたストーリーのテーマが崇高な上に、主人公を演じる二人の俳優の名演が、この作品を一段と高いレベルに引き上げる。
一瞬、ダスティン・ホフマンかと錯覚したフランソワ・クリュゼとタレント兼K1戦士に激似のオマール・シー。
(唯一の性感帯の耳を揉まれて悦ぶの図)
大金持ちの車椅子生活者とスラム育ちの素人介護士。生まれ育った環境から今の社会的地位に至るまで、何一つ共有するものが有り得ない二人が繰り広げる可笑しくも切ないドタバタ劇。
首から下の感覚を失った障害者フィリップは、金の力で生き長らえ、小さな生きる希望を探し求めている。このプライド高き偏屈障害者を、フランソワが見事に演じる。その彼が多くの候補者の中から自分の介護役に選んだ黒人青年・ドリス。ドリスは、初めて出会った富裕層の人間に、スラムの仲間と同様の接し方しか出来ない。スラムの汚濁で育った彼は、全く悪びれる事無く自分を曝け出す。黒人特有の破天荒な明るさと凶暴さを纏いながら、澄み渡る目の輝きを持つ青年役をオマールは等身大で演じる。少々乱暴でも人への思いやりは天下一品という役どころは、この美しい眼を持つ俳優にピッタリであった。
原題「intouchables」は、「健常者と障碍者」「白人と黒人」「富裕層と貧困層」などの差別階層により「交わらない、理解しあえない」という意味のようだ。
ストーリーの本質の端緒と思われるのは、フィリップが何故、自分の介護人にドリスを選択したかである。芸術に対し秀でた審美眼を持つ彼は、人間の本質をも見抜く能力があったのか。世間では異端者と見られる障害者とスラムの黒人というマイノリティ同士として共鳴し合うものを感じたかのか。いや、二人は最初のコンタクトで、惹かれ合い、好意と興味を持ったのである。同性同士であっても、友情の契機に、人間の恋情に理由はない。
前半は、ドリスの個性が強烈に発揮され、彼なりの献身の方法でフィリップを支える場面が多いのであるが、徐々にフィリップも自分の世界にドリスを引き込んで行く。
ドリスが、マリファナを教え、いかがわしいマッサージ店に連れていけば、フィリップは、現代美術やオペラに触れさせ、パラグライダーで共に宙を舞う。
フィリップの誕生パーティーでのクラシック・コンサートが、一転してファンク・ミュージックのディスコ・タイムに早変わりシーンは、なんとも爽快。
お互いが知らない世界の扉を開放しあいながら、人として生きる道を探し合う。フィリップは男として生きる自信を回復し、ドリスは一家の家長として自覚を初めて持つ。
ラストの柔らかな余韻に、近年稀に見る気高さを感じた。
クルマ、音楽、美術、スポーツ、風俗...etc. (俺みたい...)
一般女性が呆れる「男どものショーも無いお遊びへの思い入れ」を通して、男の友情を爽やかかつコミカルに描いた、まさに最強にブラボーな作品だった。
んん〜趣味にすぐハマる私に向けた東京の女房の醒めた視線を思い出すのでございました
おはようございます!
これ、見てみたいです^^
by niki (2012-09-20 07:59)
>niki様
優しい気持ちになれる作品です。
是非、ご鑑賞を^^
by つむじかぜ (2012-09-22 23:01)
こんにちは。
ドリスの瞳は本当に澄んでいましたね~
そして、こんな友情に出会えたら人生が変わるだろうなあと思いました。
ちょっと羨ましいです(^^ゞ
そのためには自分自身も魅力的な人にならなくてはですね☆
by non_0101 (2012-09-23 11:44)
>non_0101様
幼馴染みや学生時代の一生の友達はいるけれど、社会人になってからの親友は、正直なかなか出会えないです。
大人になるとお互いに、自分を曝け出せないからでしょうか?
by つむじかぜ (2012-09-24 01:12)
一言で言うなら、凄くセンスの良い作品だと思いましたね。
演出、音楽、セリフ・・・ どれをとってもセンスの良さを感じました。日本だとお涙頂戴のシーンが織り込まれるハズですが、それが無くても十分ハートに届くのですから大したものだと思います。
ハートフルな作品でした。
by KEI (2012-09-24 02:55)
<(_ _)> 遅くなりまして申し訳ございませぬ。
これは是非拝見せねばっ
・・・と思いつつ、なかなか実現できない今日この頃 _| ̄|○
予告編だけでも惹かれる感じでしたものね~♪ 観たい 観たい p(>_<)q
by Labyrinth (2012-09-25 02:05)
>KEI様
仰る通り、ありきたりのお涙頂戴ではないセンスの良さと製作者の良心を感じる作品でしたね!
> Labyrinth様
Labyさん好みのウイット溢れる爽やかな感動作ですよぉ〜^^
by つむじかぜ (2012-09-26 00:12)