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『外事警察 その男に騙されるな』&『愛と誠』 [上映中飲食禁止じゃ!]

今回は趣向を変えて、魅力溢れるカップル主演の邦画を2本。
 
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監督:堀切園健太郎
脚本:古沢良太
製作:訓覇圭 岩倉達哉
撮影:相馬和典
音楽:梅林茂
 
出演:渡部篤郎 真木ようこ
キム・ガンウ 尾野真千子  田中泯 イム・ヒョンジュン
北見敏之 滝藤健一 渋川清彦 山本孝司 遠藤憲一
余貴美子 石橋凌
 
住本ら外事四課は、朝鮮半島から濃縮ウランが流出したとの情報を入手。さらに軍事機密データも消えたことから日本での核テロを未然に防ぐべく、工作員らしき男の妻・果織を協力者として取り込むことを決定する。住本は果織を感情的にコントロールしていき…(ぴあ映画生活より)
 
 
警察か医療モノさえ作っていれば、とりあえず売れるという現在の日本ドラマ界の安っぽい潮流が気に食わなくて、滅多に観ないジャンルなのだが、主役二人に惹かれて劇場に足を運んだわけです。
 
 
渡部篤郎〜好きな男優です。とにかく、過去の刑事ドラマと一線を画した20世紀最後のTVドラマの名作『ケイゾク』での真山刑事は、はまり役だった。(この頃の堤幸彦の感性も素晴らしかった。昨今は当時の輝きが無いのが非常に残念[どんっ(衝撃)]) ニヒルで暴力的なくせに繊細かつ臆病。ドラマ全体に流れる鬱屈とした雰囲気は、彼の演技に負う処大であった。その後のNHK大河ドラマでの北条時宗の異母兄・時輔役でのひときわ暗い演技は、時宗役の和泉元彌と対極を成しつつ、主役の個性を凌いでいた。彼ほど「明るい太陽・青い空」が似合わない俳優はいない。
もっと評価されてもいい俳優だと個人的には思いつつ、地味な役回りばかり続ける彼との久しぶりの対面である。 
 
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真木ようこ〜激しくお気に入りの女優です[揺れるハート] 『パッチギ!』でのスケバン看護婦、『ゆれる』で魅せた「オンナ」の危うさと美しさ。半端なオトコは寄せ付けない強い目力を持ちながら、時折見せる慈愛溢れる優しい表情。私が秘かに支持する数少ない国内・黒髪女優であったが、一昨年の大河ドラマ「龍馬伝」で大ブレイク[ひらめき]あっという間に売れ線女優の仲間入りとなった。
 
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お龍役での演技は、彼女のほんの一面でしか過ぎないのだが、私だけの「ようこ」は、日本中のおじ様方の「みんなのようこちゃん」になってしまった。トーク番組等への出演も増えたが、自然体かつアンニュイなムードの佇まいは、時に司会者をも戸惑わせ、周りの喧噪をよそに他人に安易に同調しない姿を見せつける。往年の秋吉久美子を彷彿させるような独自の世界を持つちょっと変わったオンナが・・・私は好きなのです[ハートたち(複数ハート)]
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 [キスマーク]そして、この肉体美[キスマーク]
(但し、私は巨乳フェチではない[あせあせ(飛び散る汗)]) 
 
仲代達矢と新入りの身でありながら大喧嘩をし、無名塾を即、退塾となった逸話を持つ彼女も、渡部篤郎同様に太陽が似合わず、月の明かりの下で抱きしめたいタイプの女性であり、二人とも一見理解しがたく誰からも好意を寄せられる俳優ではない共通点を持っているような気がする。
 
そんな二人の競演であるので、私はストーリー展開の如何を問わず、スクリーンに釘付けなのである。 
 
製作がNHKエンタープライズなので、民放ドラマの焼き写しのような手抜きも感じられず、好感度だ。オリジナルドラマは未見の為、「公安が生んだ魔物」と呼ばれる住本(渡部篤郎)の存在感を、容易に受け入れられなかった為、作品自体の重厚感までは感じる事が出来なかったが、邦画のスパイモノとしては、出色の出来であると思う。
但し、「裏切りのサーカス」のような静かなる緊迫感と比較すると、まだまだ日本映画界は、このジャンルは世界標準には程遠いなぁ[ふらふら]と痛感もするのでした。
 
とにかく、この二人の個性派俳優の魅力ありきの作品ではありました。
 
 
 
さて、もう一本はと云うと・・・
 
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監督:三池崇史
原作:梶原一騎 ながやす巧
脚本:宅間孝行
撮影:北信康
美術:林田裕至 
音楽:小林武史
振付け:パパイヤ鈴木 
 
出演:妻夫木聡 武井咲
斎藤工 大野いと 安藤サクラ 前田健 加藤清史郎
一青窈 余貴美子 井原剛志 市村正親
 
幼い頃の事故がきっかけで、額に一の字の傷を負った誠と、彼に命を救われた愛。成長したふたりは再会を果たすが、誠は不良少年になっていて、誰も信じず拳を武器にひとり戦っていた。彼を純粋に愛する愛は、なんとか更正させようと献身的に愛情を注ぐが……。(ぴあ映画生活より) 
 
中学生時代の原作への思い入れが強過ぎるので、この作品の鑑賞は控えるつもりであったが、non様からの「三池作品ですので、オリジナルは忘れて観た方がいい」という言葉に押されて劇場に行って参りました。
 
 
原作の劇画は1973~76年の「少年マガジン」に連載。
「巨人の星」「あしたのジョー」などスポ根モノ漫画の草分けである梶原一騎が、満を持しての異色の学園純愛ドラマを創作。 当時、中学生の小生もハマりました[わーい(嬉しい顔)]
 
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これが若者の間で空前の大ヒット、1974年には、たちまち映画化となりました。(さすがにこちらは未見)
しかし、こんな「愛と誠」という純な言葉は、今の平成生まれの少年少女達に通用するのであろうか[exclamation&question] 
 
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主演は西城秀樹と早乙女愛(故人)
 
その伝説の作品が天才B級映画の魔術師三池崇史監督の手によりリメイクというか...パロディ化というか...なんというか...
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主演は妻夫木聡と武井咲
 
考えてみれば三池監督と小生は同年代なのである。きっと彼も、この伝説の劇画にハマっていたに違いない。
今作は、原作のエッセンスを畏敬の念を持って保持しつつも、表現方法は三池流やりたい放題の脚色・演出により、オリジナルとは異次元のパロディ・ミュージカルの怪作として生まれ変わった。
 
冒頭、二人の因縁となった幼少期のスキー事故を可愛らしいアニメで描いたかと思いきや、場面は不良高校生と化した太賀誠(妻夫木聡)による西城秀樹「激しい恋(1974年)」の絶唱&ダンス。
度肝を抜かれながら「あっ〜、これは三池作品だった」と自分を納得させつつ、あっという間に心は懐かしの70年代にタイムスリップ[むかっ(怒り)] 
加藤和彦の名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」を、早乙女愛(武井咲)がぎこちなくも可愛らしいフリで歌う姿に、呆れ果てる限度を超越し、感動を覚えるのであった。
極めつけは、岩清水弘(斎藤工)。「岩清水宏は君の為なら死ねる[exclamation×2]」の名言と共に、真面目な顔でのギャグの連発に抱腹絶倒[わーい(嬉しい顔)][わーい(嬉しい顔)][わーい(嬉しい顔)]
 
ストーリーの骨格は、感心するほど原作に忠実であり、オリジナルでの数々の感動シーンが、これまた見事にデフォルメされた映像に変換されていく様は爽快であった。脇役陣も個性豊かに描いており、ガム子(安藤サクラ)・高原由紀(大野いと)・蔵王権太(井原剛志)共に、笑いとシリアスの演技の切り替えが見事。
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当時の僕ちゃんは、クール・ビューティーな知的なナイフ使いの裏バン〜高原由紀[揺れるハート]

そして、三池組の真骨頂『殺陣』というかシュールな乱闘シーン。必ず紙吹雪が舞うか炎燃え上がるサイケな背景で、手抜き無しの大立ち回り。太賀誠が、スケバングループとはいえ、女子高生達を容赦なくなぎ倒す場面は、「そこまでやるか?」位の臨場感[パンチ] 
哀しいラストも一応原作通りなのだが、コミックス全16巻を2時間映画にするのは所詮無理な話なので、オリジナル後半の砂土谷峻との戦いや早乙女愛の父親の疑獄事件(当時のロッキード事件とかぶる)は割愛され、学園闘争編からいきなりエンディングを迎える形式をとっている。その為、当時の愛読者には唐突な印象がつきまとう最期ではあるが、「三池」だから許すのである[わーい(嬉しい顔)]
 
日本が光輝いていた70年代。あの頃は、スカートの裾が長いのは不良で、膝上が優等生という判りやすい基準があったなぁ〜最近は外見じゃ見分けがつかんわ・・・などと下らん事を考えつつも、あの貧しいけれど夢があったなどという当時を美化した台詞は、私は吐きたくない。だって今の方が確実に裕福だし、自由だし、若者は基本的には変わっていないし。今と昔の高校生を比較しても、男女交際はオープンだし、喧嘩は減ったし、イジメは今も昔も存在したし、シンナー吸う奴が今は脱法ドラックやっているだけの話しだし・・・そして日本サッカーはとにかく弱かった[もうやだ~(悲しい顔)]
昨今の60~70年代へのノスタルジックな風潮は、バブル期に社会の一線で活躍した団塊の世代が、今の自分に自信を失っている事を隠す為に作り上げた幻想である。
 
「今がベストでなくてどうする[exclamation×2]」見よ、今の素晴しき若者たちを[ぴかぴか(新しい)]聳え立つ日本技術の結集のスカイツリーを[かわいい]
 
現代なら「ストーカー」という言葉で済まされてしまうような『純愛』を極限までデフォルメ化し、真剣な愛だからこそ滑稽であり、真剣な奴はいつでもカッコいいんだと、オッサン達には喝を入れ、若者たちには判りやすく諭し、「こんな楽しい映画が観られる時代じゃないですか」と、三池氏が叫んでいるようだ。
 
どんな仕事にも手を抜かず『真剣』に悪ふざけをする三池監督に『力』を戴いた傑作純愛パロディでございました[どんっ(衝撃)]
 
 
出演者中では、ぶっちぎりで一青窈は歌が巧い...当たり前か[あせあせ(飛び散る汗)] 
 

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コメント 4

non_0101

こんばんは。
また極端な組み合わせですね。でも、どちらも面白かったです!
この役の渡部篤郎さんは本当に悪そうな人に見えました。
演技の上手い人は凄いですね(^^ゞ
「愛と誠」の歌のシーンは可笑しかったです~
どちらもスクリーンで観て良かった作品です☆
by non_0101 (2012-07-02 22:04) 

つむじかぜ

>non_0101様
硬軟取り合わせての鑑賞でした^^;
特に「愛と誠」は、オリジナルを全く別のエンターテイメントに変貌させた
三池マジックに、拍手喝采!!!
by つむじかぜ (2012-07-03 02:40) 

ぷーちゃん

外事警察、尾野真千子も
いい演技してるって聞きます。
by ぷーちゃん (2012-07-03 22:26) 

つむじかぜ

>ぷーちゃん様
朝ドラ「カーネーション」とは違った個性を見せてくれました。
感情の起伏を表情ひとつで表現出来る力を持った女優さんですね!
by つむじかぜ (2012-07-06 02:51) 

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