『裏切りのサーカス』：向島のつむじ風：SSブログ

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『裏切りのサーカス』　[上映中飲食禁止じゃ！] [編集]

監督：トーマス・アルフレッドソン

脚本：ブリジット・オコナー　ピーター・ストローハン

原作：ジャン・ル・カレ

撮影：ホイテ・ヴァン・ホイテマ

美術：マリア・ジャコヴィック

音楽：アルベルト・イグレシアス

キャスト：ゲイリー・オールドマン　コリン・ファース

トム・ハーディ　ジョン・ハート　トビー・ジョーンズ

マーク・ストロング　ベネディクト・カンバーバッチ

キャシー・バーク　デヴィット・デンシック

スティーヴン・グレアム　キーラン・ハインズ

英国諜報部サーカスの中に潜んでいるソ連のスパイを見つける作戦の失敗が基で、サーカスを去ったスマイリー。空ろな日々を過ごしていた彼は、突然レイコン次官に呼び出され、「サーカスの幹部の中に潜む二重スパイを突き止めろ」という指令を受ける。

一筋縄ではいかないが、静かに重々しく心打たれる作品である

英国調の淡くくすんだ映像とトランペットの調べによるオープニングから、東西冷戦時代の世界に一気に引き戻される。

英国諜報部と言えば『００７』の華やかな世界を連想せざる得ないが、今作は実在のMI6（通称「サーカス」）とソ連・KGBとの熾烈な諜報戦をリアルに描く。このサーカス内部に潜む二重スパイ探しを命じられた引退諜報部員が、かつての同士の中から裏切り者を炙り出していく、まさにシビアな設定なのだ。

洋物の推理小説に日本人が戸惑う要因に、カタカナ人名の多さと人間関係の複雑さが挙げられる。この作品が、一筋縄でいかないというのは、まさしくその意味であり、一時もスクリーンから目を離す事が許されない。

ただでさえ外人さん一杯状態の上に、主要人物にはあだ名（コードネーム）まで各々付けられ、ストーリーは過去と現在を目まぐるしく行き交うのだ。観る側にもシビアさを要求する厳しい映画だ。

とはいうものの、諜報部員達を演じる俳優陣の個性豊かな演技に引き込まれる内に、自然と人間関係を理解出来るのは、演出の巧みさと見事な配役に拠る処大であろう。

ゲイリー・オールドマン〜冷静沈着に真実に一歩一歩近づく元諜報部員・スマイリー役の凄みある演技力は、オスカーノミネートも納得の迫力。「英国王」から「スパイ」に成り下がったコリン・ファースが、男気を内に秘めつつ、やり手の諜報部幹部を熱演。奇相トビー・ジョーンズ、「キックアス」の宿敵マーク・ストロング、ダンブルドアの弟キーラン・ハインズら悪役の似合う強面な連中が、抑えた演技で作品に深みを加えていく。ベネディクト・カンバーバッチの精悍さ、長老ジョン・ハートの貫禄。英国の誇る芸達者達の演技が光る。