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『わが母の記』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督・脚本:原田真人
原作:井上靖
撮影:芹沢明子
美術:山崎秀満
音楽:富貴晴美
編集:原田遊人
 
キャスト:役所広司 樹木希林 宮崎あおい
南果歩 キムラ緑子 ミムラ 菊地亜希子 三浦貴大
赤間麻里子 三国連太郎 真野恵里菜
 
幼い頃、両親と離れて育てられていた小説家の伊上洪作は、母・八重と距離を置いて暮らしていた。しかし、父の訃報を機に八重の面倒を見ることになった妹・桑子が、八重を連れて伊上家を訪ねてくる。物忘れが酷くなった八重の言動に、伊上は苛立つのだが……。(ぴあ映画生活より)
 
昨年の「八日目の蝉」に続き、邦画史上に残る名作がまた生まれた。
 
純文学をそのままスクリーンに焼き付けたようなベタな映画は、本来は得意ではないのだが、そんな好き嫌いなどは軽く吹き飛ばす圧倒的な『力』が、この作品からは感じられるのである。
 
井上靖の自伝的小説(未読ですが)の映画化であり、昔の小説を現代風にアレンジする事無く、当作品の時代も1960年代のままである。
 
あざとい演出などは排除し、日本の原風景と現代の俳優陣の高い演技力をストレートにフィルムに収める事により、人間・井上靖の想いを、観る者の心に深く訴えかける事に成功している。
 
時代考証や方言指導に強い拘りが感じられ、昭和建築の住宅、当時のファッション、伊豆地方の独特の言葉などから違和感なく60年代を体感できる。以前、静岡県での営業経験もあるので、語尾に「〜だら」が付く言葉遣いを久しぶりに聞き、懐かしさに思わず顔が綻びる。そして伊豆の美しきわさび田の光景が、童心を呼び起こし、自然と幼き自分が見つめる親の姿が瞼に浮かぶ。見事な背景描写に、撮影・編集技術の高さが伺える。
 
そして各俳優陣が演技を通して放つ「想い」の絡みが、作品に命を吹き込んで行く。私のお好み女優が目白押し[ハートたち(複数ハート)]
今や大女優の風格させ漂わせる宮崎あおいは別格として、ベテランから売出し中までの個性派が勢揃い。

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一瞬、朝の連続テレビ小説と錯覚[目]
伊上(役所広司)の妹役の南果歩。私の心酔する小説家ながらイケ好かない男NO.1である辻仁成に棄てられながらも、清潔感滲む色気は健在。(俺なら中山美穂を選ばない[パンチ]
長女役のミムラ。 同じくバツイチ女優だが、洋服でも着物でも変わらぬ美しさは群を抜く。ボチボチ、ブレイクの予感[exclamation]
そして私の一押し、次女役・菊地亜希子。「森崎書店の日々(2010年)」での柔らかい演技に一目惚れ。当時の私の予想に反し、未だに無名に等しいが、これは彼女のマイペースな性格によるものか?今作でも、キャラは立っていないが役柄に合った出過ぎない演技に好感度[exclamation×2]
しかし何と云っても宮崎あおい[決定] またまたバツイチだが、いい女優はこうやって男を肥にするのか、釣り合う男がいないのか、とにかくオンナの光は更に輝きを増して行くのである。童顔の成せる技だが、三つ編みのセーラー服から色気溢れる女盛りの御夫人まで、違和感無く演じられる数少ない女優だと思う。
最近の彼女の変幻自在の美しさは驚嘆でさえある。
 
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劇中で、彼女が当時の「オリンパスPEN」を持って写真を撮るシーンが続出して、再建中のオリンパスの回し者かと錯覚させるのもご愛嬌。
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されど、今作品での最強の女優が樹木希林であるのは、誰も否定できないであろう。彼女自身からすれば自然な演技なのだろうが、アルツハイマーで徐々に壊れいくお婆ちゃんをここまで表現する力量は天賦の才と云わざるを得ない。人間は老いるごとに赤ちゃんに戻る〜恐ろしさと可愛さが交互に現れる姿を「神懸かり」的に演じた。
もちろん役所広司の名演はいつもの通り、キムラ緑子・赤間麻里子も「昭和の主婦」を見事に演じた。
 
挿入音楽も、バッハのコンチェルトなど各シーンと実に良く溶け合っていた。イメージソングの松田聖子の歌が劇中に使われなくて本当に良かった[ダッシュ(走り出すさま)] 
 
永きに亘り、親に棄てられたという傷を深く心に残す堅物小説家・伊上(役所広司)が、記憶を失くした母親に翻弄されながら、最期に「母の真実の愛」に気付かされる。人の子なら誰しも突き当たる親子の情を、昭和の家族の姿を通して、平成最強の俳優陣が描いた傑作である[ぴかぴか(新しい)]
 
まさに『母の日』に相応しい映画であった。東京の我が息子は、母親に感謝の気持ちを表しているのだろうか?
 
 
 


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末尾ルコ(アルベール)

これはもう…素晴らしかったです!

                            RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2012-05-15 16:15) 

non_0101

こんばんは。
いい映画でしたね~
景色も演技もみんな良かったです。
描かれている家族の姿に心が温かくなって、
樹木希林さんの演技に泣かされました。
日本映画がますます好きになるような作品でした☆
by non_0101 (2012-05-15 21:49) 

つむじかぜ

>末尾ルコ(アルベール)様
まさに21世紀邦画の傑作と語り継がれるかも。

>non_0101様
こんな大家族が半世紀前の日本の家庭の典型的な姿なんですよね。
お涙頂戴の安っぽい恋愛映画とは違い、素の人間を自然と描いているのが
素晴しいです。それを見事に演じた俳優陣も!

by つむじかぜ (2012-05-18 00:48) 

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