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『ツレがうつになりまして。』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:佐々部清
脚本:青島武 
原作:細川貂々
キャスト:宮崎あおい 堺雅人 吹越満 津田寛治 犬塚弘 梅沢富美男 大杉蓮 余貴美子
 
高崎晴子(宮崎あおい)の家族は、夫・幹男(堺雅人)、そしてイグアナのイグ。幹男は仕事をバリバリこなし、毎朝お弁当まで作るスーパーサラリーマンであった。そんな幹男がある朝、真顔で「死にたい」と呟く。病院での診断結果は、うつ病(心因性うつ病)。仕事の激務とストレスが原因らしい。結婚5年目。幹男の変化に気付かなかった晴子は、幹男に謝りながら、「会社を辞めないなら離婚する」と告げる。そして会社を辞めた幹男が主夫になり、家事嫌いの晴子は内心嬉しく思っていた。だが、幹男のバカ真面目で完璧主義な一面もクローズアップ、時々イラッとすることもあるが、晴子は以前より明るい性格になり、グチグチ文句を言わなくなった。ところが収入源がなくなり、高崎家は貧困街道まっしぐら。そこで晴子は編集部へ行き、「ツレがうつになりまして、仕事をください」と大胆発言。晴子は新しい仕事をもらい、幹男の体調も徐々に回復していく。もう二度とあの元気な幹男に会えないのか、と不安になったこともあるが、考え方次第で人生はハッピーになると知った晴子。そして、小さなつまづきのその先には、ある奇跡のような出来事が待っていた……。(goo映画)
 
妻と観てきました。 
題名が、我が夫婦にとって非常に因縁深いために、 封切り前から楽しみにしていた映画である。
 
実は私は「鬱病」発症経験者である。
関西転勤中、私が男の本厄にあたる年にその兆候は現れた。
この作品の堺雅人並みのスーパーサラリーマンではなかったが、その秋に10日間に7回の接待ゴルフと宴会をこなしたアホ営業マンこと小生は、11日目の朝、自分の顔の左側が全く動かない事に気付くのだった。
・・・「顔面麻痺」だった。時代が今なら向井理もたじろぐ自称セクシー営業マンだった私は、 「これで俺の華麗な会社人生もジ・エンド」かと落ち込むのも束の間、それから出勤前に耳鼻咽喉科(顔面麻痺とは、耳の奥の神経ににウィルス侵入が原因と云われていた)に通い、牛乳パック2本分のステロイド点滴を毎日打ち続け、平行して謎の中国鍼灸院で3日に一度、顔中をハリネズミ状態にされながら、なんと医者もびっくりの一ヶ月で完治させるのであった。(全くの後遺症なしです)
仕事・人間関係まして夫婦関係など全くストレスなしの超楽天主義の私を襲った事件だったのだが、体力だけは自信があった自分の初めての挫折に心の隙ができたのか、もしくは短期間の荒っぽい治療法・ステロイド剤の反動からか、今もって原因は定かでないが、顔面麻痺治癒後から突然、気分がすぐれない日々が続いた
 
みぞおちの辺りが重苦しく、ムカムカ感が喉元まで突き上げる。されど吐き気はしない。仕事への意欲が激減し、音楽も写真も映画にも好奇心が薄れて来る。とにかく、家に戻るとすぐに横になりたくなる。
私自身、非常に不安になり、2カ所の内科に通い胃カメラやら血液検査をしたが、「少々胃が荒れている」との診断で胃薬も持って帰るのみである。以前から妻には「俺の食欲が無くなった時は終わりと思え!」と豪語していたのだが、その通りに食欲も急激に衰え、うどん5、6本を啜るのが関の山。通勤電車内で突然息苦しくなり、途中下車も何度か繰りかえした・・今思えば「過呼吸」というやつだ。
ただただ、体を横にしていたくなる。仕事に行くのもつらくなり、電車待ちのホームで「このまま飛び込んでも気持ちいいかな〜」なんて思いまで一瞬心をよぎり、「お〜危ない、危ない」と踏みとどまる事も何回か...
 
笑顔が全く消えた夫に、さすがに妻も心配し、いろいろと調べていたらしい。
「アンタ、試しに駅前の心療内科に行ってらっしゃいよ」 
昔なら「精神科」と呼ばれた病院に抵抗はあったが、 藁にもすがる思いで恐る恐るも行く事にした。
 
「初期の鬱病ですね」温和そうな中年の女医さんの診断だった。
「定期的に薬を飲んでいれば必ず直りますから安心して下さい。」 2種類の薬を持たせれ帰宅し、妻に説明する。
「う〜ん、やっぱり私の思った通りだ!今度の通院には、私も付いていってお医者さんから説明を聞くからね。この病気は家族のサポートが大事らしいから」
 
まず、薬の効果は絶大だった。最初に処方された薬が幸運にも体質と合っていたのであろう。あれほど落ち込んでいた気分が、暗雲が一気に取り除かれて青空が広がったように爽快になった。それでも不定期に極度の息苦しさと倦怠感〜パニック障害(心臓が止まりそうな恐怖感)が襲って来たが、業務中は頓服薬、プライベート時は「俺は、こんなもんで死ぬ訳がない」思い込ませ作戦で乗り切っていった。
 
それから半年後。休職もせず、ついに、薬の服用無しで通常の生活が送れるレベルに回復。
軽度の初期状態の鬱病であり、早期の治療が功を奏したようだ。
抗うつ剤の効果は確かに目覚ましかったが、それ以上に妻の精神的な「介護」に拠る所が大であった。
宮崎あおいのように「会社辞めなければ離婚する」という脅しはなかったが、家庭内で常に明るく振る舞い、取り立てて私を病人扱いせず、されど食事は気を使い、朝は気持ち良く会社に送り出してくれた。休日に少々ふさぎ込んでいると、「カメラ持って出掛けようよ!」と私の気分転換を促してくれた。当時、小学生だった二人の子供は、私の病気に全く気付かなかったようである。
鬱病が、心身共に健康な人間でも罹る心の風邪というのをまさしく体験した。発作的な飛び込み自殺者の心理もなんとなく理解した。実は3、4年前に自分の部下が、立て続けに「心の病」に倒れたが、自身の経験の為、早めのサポートが可能となり両名とも現在は職場復帰している。
 
現在、会社では先輩風を吹かせる元バリバリ営業マンの小生が、家庭内では今だに女房に頭が上がらんのは、浮気がバレた訳ではなく、こんな夫婦の涙ぐましい過去の闘病記のおかげなのである。
 
と、肝心の映画の方であるが、鬱病体験の我ら夫婦が、健康になった今だからこそ笑えるシーンの連続な上に、最後にはホロリとさせられてしまう心温まるラブ・コメディの秀作であった。
宮崎あおい堺雅人のコンビが抜群に素晴しい。 
ふたりは4年前のNHK大河ドラマ「篤姫」での競演が記憶に新しい。(篤姫と徳川家定〜夫婦役ですな)
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この時点でも、二人の演技力の高さに感心しきりであったのだが、今作での夫婦役はさらにそれを凌ぐ出来映え。
大河ドラマでは、虚弱体質の少々イカれた将軍役を好演した堺雅人であるが、やはり彼は常人ではない役柄が似合う。徐々に鬱病に侵されていく様をリアルに演じた。経験者の私としては「う〜ん、わかるよ、その感覚」というシーンの連続である。布団にくるまってシクシク泣く亀の図は秀逸だ。
本来ならツライ・暗い・重いはずのストーリーに、暖かい息吹と朗らかな笑いを送り込んだのが、宮崎あおいのウイットに富んだ演技と随所に挿入される原作のイラストである。
勤勉・ポジティブだった夫が突然、生活力が無くなり、ネガティブなぐうたら主婦が一家を支える立場となる。
今までは趣味の延長で、編集者に迎合してダラダラ書いていた漫画で生計を立てねばならなくなったハルは、俄然闘争心剥き出しとなり、自分の書きたい作品に挑戦していく。
夫婦の立場が逆転し、夫が暗くなればなるほど明るく元気に振る舞う妻・ハルの姿を、宮崎は持ち前のピュアな演技で魅せつけ、観客に共感をもたらすのであった。
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 「ツレがうつになりまして...仕事を下さい[exclamation×2]
絶体絶命の状態で、ハルには生きる力が漲っていた。
 
1年後、結婚同期会の席上での二人の告白に、私達夫婦は涙を止める事ができなかった。
 
 『健やかなる時も、病める時も、
              君と一緒に居たい』
 
 
 
観賞後、映画館の隣にある書店で妻にねだられて買うハメになりました[左斜め下]
 
ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)

ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)

その後のツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)

その後のツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 細川 貂々
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 文庫
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コメント 8

DEBDYLAN

特に理由はないけど、
僕も女房に頭が上がりません^^;

by DEBDYLAN (2011-10-16 15:36) 

(。・_・。)2k

僕は オイタが過ぎるので
頭が上がりません(^^;

by (。・_・。)2k (2011-10-16 22:08) 

つむじかぜ

>DEBDYLAN様 (。・_・。)2k様
みなさまも、お幸せそうでなによりです(^▽^;)

by つむじかぜ (2011-10-17 01:53) 

ひときわ

これ、原作の漫画を読みましたよ。
面白い調子で描かれているのに生々しい鬱病の様子が描かれていたので心に残った本です。
つむじかぜさんの奥様は素敵ですね。
素晴らしい財産です。
by ひときわ (2011-10-17 16:43) 

non_0101

こんばんは。
まさしく“心の風邪”なのですね。
こういう時には周りのサポートが大切ですよね。
素敵な奥さまで良かったですね(^^)
by non_0101 (2011-10-18 00:15) 

つむじかぜ

>ひときわ様 non_0101様
ありがとうございます☆
「素敵」を通り越して「天敵」にもなりますが...(・・;)
by つむじかぜ (2011-10-19 00:06) 

Labyrinth

(^_^)ノ こんばんは。
なるほど! ハニーに頭が上がらないわけですね(ニッ)
まさしく妻の鑑! 大切になさらないと!゚゚゚゚゚-y(^。^)。o0○ プハァー

by Labyrinth (2011-10-19 02:05) 

つむじかぜ

>Labyrinth様
そして、小遣いまで搾り取られております(* ̄□ ̄*;
by つむじかぜ (2011-10-19 23:43) 

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