再演!ダニエル・ハーディング『マーラー交響曲第五番』 [素人の扉〜Jazz&Classic〜]
指揮・ダニエル・ハーディング、管弦楽・新日本フィルハーモニー交響楽団。
3月11日夜、錦糸町トリフォニーホールでのコンサートは、数十人の僅かな観客の前で「マーラー交響曲第五番」は演奏された。
当日のチケットは財布にしまい込まれたまま、会社に張り付いて震災対応に追われた私にとって、3.11の日付とマーラーの5番は、「一生の忘れ得ぬ想い」として刻まれた。
親日派で知られるダニエルは、その5日後に断腸の思いで日本を離れたという。
その彼が再び来日し、チャリティー・コンサート「3.11東日本大震災 明日への希望をこめて」を主催。
演目は、当日と全く同じ「マーラー交響曲第五番」である。
6月20日〜もちろん、聴いて参りました
冒頭に下記の短い曲が演奏される。
震災犠牲者への鎮魂として捧げられた1曲。
拍手辞退とされており、演奏終了後、会場全体は物音一つなく静まり返り、黙祷の意味も込め、暫く静寂に包まれる。
そして、トランペットのファンファーレと共にマーラー交響曲の第一楽章が始まった・・・
このゾクッとするオープニングから一気にマーラーの世界の幕が開く。
私は音符も読めないクラシック音楽素人であるので(ギターはタブ譜専門)、演奏の巧拙を語れる訳でないのだが、所謂名盤で聴かれる名演奏と比べると、「金管楽器のソロの煌めきが少々弱いかな」などど偉そうに序盤は思いつつも、ダニエルの華麗なタクトから造り出されるアンサンブルの素晴しさに徐々に酔いしれていく....
ウィンナワルツ風の不思議な曲調の第3楽章から有名な第4楽章のアダージェットに入る頃には、完全に自分の体が会場中に響き渡る音楽の調べと溶け合っていくような感覚を覚えた。
そして白眉の最終楽章。暖かいホルンの調べからゆったりと描いた主題が繰り返され、次第にそれがヒートアップ。各楽器の調べが何重にも重なり合い、前章の主題も取り込みながら、嬉々として明るく明るく激しく激しく最高潮に向かっていく!そして、ヴァイオリンが擦り切れる悲鳴寸前の声を上げ、金木管楽器群の調べが天井に突き刺さり、打楽器が火を噴く、圧倒的なフィナーレとなった。(特にコンサートマスター崔氏のエビぞり弾きは必見)「愛、悲劇、生命と死」を描いた壮大な物語と呼ばれる「マーラーの5番」の神髄を見事に表現した演奏に、とてつもない精神の力を感じずにはいられなかった。
演奏終了後、アンコールは自粛は当然解っているが、鳴り止む気配の無い拍手の嵐。何度となく指揮者は登壇し、謝意を表す。
細かい技術云々よりも、指揮者・全楽団員がまさしく心も体もひとつになって作り上げた最上の音楽に、私も胸の高まりを抑える事ができなかった。震災直後、家族の強い要望により母国に急遽、帰らざる得なかったダニエル・ハーディング。彼が再来日し、新日本フィルのメンバーと再びまみえた時点では、両者の間には深い心の溝があった云う。ダニエルの日本を想う心を理解しつつも、楽団員の多くは「一時は我々を見限ったくせに、安全になった今頃に、のこのこ帰ってきやがって!」と感じるのはある意味当然であろう。しかし、このチャリティコンサートに向けての度重なるリハーサルを通じて、両者の信頼関係は完全に復活したようだ。たぶんそれは、ダニエルの指揮者以前のひとりの人間としての本質を、楽団員が改めて理解したからではないでしょうか。
終演後、会場出口で楽団員の先頭に立って募金を呼びかけるダニエルの姿が印象的だった。
生涯忘れ得ぬクラシックコンサートとなった。
冒頭に演奏された短い曲をもう一度捧げます。
エルガー作曲 変奏曲「エニグマ(謎)」より第9変奏「ニムロッド」
こんにちは。
素晴らしいですね~!
クラシックに疎い私ですけど、こんなコンサートを体験してみたいです☆
by non_0101 (2011-06-24 08:57)
>non_0101様
私もクラシックは得意ではないのですが、
素晴しい演奏にジャンルの壁はないという気がしてきました^^
by つむじかぜ (2011-06-25 01:08)
こんばんは。
3.11に開催されたコンサートの様子が先日、NHKで特番になっていましたね。
演奏されるみなさんや、ぜひとも聴きたいと頑張ってホールへ向かった人たちの気持ちが語られていて、
この曲への想いと相まって思わずテレビに釘付けになっていました。
こういう時にこそ、音楽は必要なものなのですね☆
by non_0101 (2012-03-12 23:59)
>non_0101様
私も偶然、大阪のホテルで観る事ができました。
音楽の持つ力の素晴しさを再認識できた番組でしたね。
by つむじかぜ (2012-03-13 00:55)