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「富樫雅彦」宇宙を奏でた太鼓の神様 [素人の扉〜Jazz&Classic〜]

たまにはマニアックなJAZZネタで......

日経新聞の今月の「私の履歴書」は、JAZZピアニストの山下洋輔氏の半生が掲載されている。

ちょうど今週の紙面では、学生時代の山下青年が銀座「銀巴里」で、当時(1960年前半)天才ドラマーともてはやされていた富樫雅彦とのセッションを通じて、「前衛ジャズ」に傾倒していく経緯が書かれていた。

中学時代、ジェネシス・ツェッペリンとの衝撃の出会いによりロックに目覚めた小生であるが、高校も高学年の頃には、クロスオーバーもしくはフュージョン(今ではどちらも死語ですな)と呼ばれるJazz系の音楽に強く惹かれるようになっていった。
そして、今度はジョン・コルトレーン「至上の愛」を聴いてぶっ飛んで以来、大学時代は一気にモダンジャズ、フリージャズの世界に嵌り込む生活を送る事となった。
中学時代からの親友(彼もロックからJazzマニアに変貌していた)と、しょっちゅう新宿ピットインへ生演奏を聴きに行ったものだった。
そんな中で知った異形のドラマーが「富樫雅彦」である....というお話。


ジャズマニアからすれば驚きのレア映像。加山雄三主演「さらばモスクワ愚連隊」。富樫雅彦唯一の映画出演作である。真似事と云われた当時の日本Jazz界の低評価に対し、自らの存在も卑下しつつも、「俺らの音楽が解る奴いねぇのか[パンチ]」と沸々と闘志を燃やす彼の一面を垣間見るワンシーンだ。

彼の演奏を初めて知ったLPがこれだ。(前衛Jazz不朽の名作と云われるが....現在廃盤)
PALLADIUM(紙ジャケット仕様)

PALLADIUM(紙ジャケット仕様)(1969年)

  • アーティスト:佐藤允彦(P)荒川康男(B)富樫雅彦(D)
  • 出版社/メーカー: インディペンデントレーベル
  • 発売日: 2006/02/23
  • メディア: CD

このLPを地元の図書館で借りてきた貧乏学生は、カセットテープにダビングし、とことん聴き込んだ。

慣れ親しんだロックやフュージョンのドラムとは全く別次元のドラミング[exclamation×2]
右チャンネルから叩き出される彼の絶技に酔いしれる[ぴかぴか(新しい)]

ビートルズの「ミッシェル」前半部〜静かなリズムを刻む
中盤〜3人の楽器が火を噴く!
圧巻のソロ〜ドラムが歌っている〜[るんるん][るんるん]

独特の間の取り方、恐ろしい程正確なストロークと超速ローリング、切れのあるシンバルのセンス・・・数え上げたらきりがない。
ドラム叩きの条件に「スピード&パワー」が必ずしも必須でない事を、初めて私に教えてくれたミュージシャン

しかし、このアルバム発表翌年、日本JAZZ界のホープと目された天才ドラマーに不慮の事故が襲う

 脊髄損傷〜下半身不随 

彼のドラマーとしての生命は途絶えたかにみえた。両足が使えなければバスドラムもハイハットも踏めないのだ。

ところが彼は、不屈の精神でリハビリに努め、更なる鍛錬を重ね、車いすに乗ったままドラムセットの前に復帰するのであった[どんっ(衝撃)]
2本の両腕だけで演奏するパーカッショニストとして。

ドラマー時代は、極めてシンプルなドラムセットを使用していたが、復帰後の彼は、手の届く範囲に数えきれない種類の打楽器を揃え、それを縦横無尽に操り、奏でるようになる。
まさに、打楽器を叩くのではなく奏でるように、音世界を創造していくのであった。

その新・富樫ワールド初期の傑作アルバム
スピリチュアル・ネイチャー

スピリチュアル・ネイチャー(1975年)

  • アーティスト: 富樫雅彦,渡辺貞夫,鈴木重雄,中川昌三,佐藤充彦,中山正治,豊住芳三郎,田中昇
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2009/05/27
  • メディア: CD

「フリー・前衛JAZZ」などという枠組みを超越した音楽の源泉ともいうべき、大自然との対話を、当時の一流Jazzマン達が富樫傘下の元で、紡ぎ上げた奇蹟の作品だ。

今聴いても心が洗われると共に胸が熱くなる演奏である。
まさに自然の胎動!
このドラミングの神々しさ[もうやだ~(悲しい顔)]

その後も特定のバンドに属する事なく、国内外のミュージシャンとの競演による作品を旺盛に発表。

私がナマの富樫に出会った頃は、すでに国際的なパーカッショニストとしての地位を確立していた。
当時、恒例であった大晦日のオールナイトJAZZフェスティバルに出演していた富樫を初めて観た時、私は人間離れして彼の演奏を聴いて、「神」だと思ったものだった。

当時の私のお気に入り

陽光(紙ジャケット仕様)
兆
ポエジー










ビコーズ 後藤芳子〜珍しく、女性ヴォーカルのバックで叩いてますが、これも名盤っす[exclamation×2]

彼のドラミングは、宇宙の大海原を感じさせる。

90年代に入り、J.J.スピリットを結成。往年のビ・バップを、バスドラ無しでも迫力十分にスイングできる事を証明させた。

2007年逝去。享年67歳。
肉体的ハンデをものともせず、自己の音楽を最期まで追究し続けた男は、世界に二人といない打楽器奏者として今もJAZZ界に君臨している。

J.J.スピリットでのバラード演奏(数少ない生演奏動画)


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コメント 2

haku

もちろん名前は知ってます
しかし、ちゃんと聴いたことはありませんでした ^^;
そんなハンディを抱えていたんですね...
NO MUSIC NO LIFE なんでしょうね♪
自分はまだまだ「スピード&パワー」なので、
もうしばらく、この世界に辿り着くには時間がかかると思います ^^;
by haku (2011-06-13 20:24) 

つむじかぜ

>haku様
音楽の表現法って無数、無限ですよね。人間の生き様そのものみたいに☆
だから、素晴しい〜〜〜^^
by つむじかぜ (2011-06-14 02:22) 

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