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『わたしを離さないで』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:マーク・ロマネク
製作:アンドリュー・マクドナルド アロン・ライヒ
脚本:アレックス・ガーランド
原作:カズオ・イシグロ
撮影:アダム・キンメル
音楽:レイチェル・ポートマン
キャスト:キャリー・マリガン アンドリュー・ガーフィールド キーラ・ナイトレイ シャーロット・ランプリング

外部との接触を一切禁じられた寄宿学校に学ぶ少年少女達。キャシー(キャリー・マリガン)・ ルース(キーラ・ナイトレイ)・ トミー(アンドリュー・ガーフィールド)の3人は、幼い頃からこの不可思議な学校で思春期までを過ごす。実は、彼らには生まれた瞬間から、定められた使命があったのだ。そして、18歳になった3人は、生まれて初めて外の世界に出て共同生活を始める。別の地域の寄宿学校の卒業生との交流から、自分達の決められた宿命を悟りつつ、己の生命の意義に悩むのであった。恋仲となったルース・トミーに次第に疎外感を感じ始めたキャシーは、3人の友情に終止符を打ち、離れ離れの生活を選ぶ。何年かが経過し、キャシーが再会した二人には、すでに逃れられない使命が“実行”されていたのだった・・・

荒唐無稽なSFなのだが、演出が極めて自然な為に美しいラブストーリーと錯覚してしまう。
そして、この淡々とした展開が、やるせない違和感として後半に怒濤のように押し寄せてくる。

幼少期の3人が魅力的。
特に私は、ルース(少女期)役のこの娘に注目。
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こんな清楚な表情をしながら、自然と惹かれ合っていたキャシーとトミーの間に割り込み、トミーをたらし込みます。思春期の女性特有の嫉妬心と独占欲を無邪気に演じた彼女に喝采を送りつつ、いとも簡単に落とされたトミー少年の心情に同性として同感。こんな可愛い子に言い寄られたら、他に意中の娘がいたとしても、なびいてしまうのが優柔不断な男の性。そんな二人を見つめながら、3人の友情を壊さぬよう、必死に振る舞うキャシーが健気。

そのキャシーが大人になると柔らかみを帯びた素敵な女性(キャリー・マリガン)になり、一方のルースは、少々嫌みで下品な女性にしっかり成長していく。(キーラ・ナイトレイにしては珍しい汚れ役だ)
ルースとトミーの恋仲が続く中での微妙な三角関係を観ながら、「やはり男は誘惑に負けず、最初の想いを貫くべきだった!」などと身勝手な事を考えていた中盤までは、少々陰のあるラブストーリーの進行パターンである。

成人後の後半から一気呵成に物語の核心に迫っていく。
寄宿学校の子供達は、遺伝子操作で作られた「コピー人間」であり、彼らは「オリジナル」が不治の病に罹った時に臓器移植する為に生かされている所謂「モルモット」だったのだ。
逃れられない運命を受け入れる最期の時期に、キャシーはルースとの壊れた友情を取り戻し、そして漸くトミーと真実の愛に目覚め、結ばれる。
2度目の移植で命を落とすルースを看取るキャシーの優しい眼差し。移植猶予を拒否され絶叫するトミー。
このとんでもない設定があまりにも自然に描写されていて、やるせなさが一層募る。
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そして3度目の移植を行ったトミーも帰らぬ人となり、独り残されたキャシーの元にもやがて移植通知の連絡が届くのだった・・・

大人になり、自分の献体も死も当たり前のように受け入れる彼らの姿勢に違和感を覚えざる得なかった。社会と隔離された学校で、幼児期からドナーになる教育のみを受けた為によるのだが、その子供時代の深層心理の描写が少々中途半端の感が否めない。宿命に抗っての逃避行があっても不思議でないのだが、あっさりと手術台に上がる彼らの心理が掴みきれない不満が残ってしまう。
「食肉にされる為に大事に育てられた養豚が、撲殺の直前に味わう最期の幸せな晩餐」を描いているようだ。

そんな夢も希望もない作品なのに、心に何故か残るのは、3人の俳優陣の名演に負う処が大きい。
キャリー・マリガンが、逃れられない運命に対し、常に冷静かつ穏やかな姿勢で受け入れる様は、悟りを開いた菩薩のようである。対照的に、激しい愛欲を包み隠さない「オンナ」を演じたキーラ・ナイトレイ。自分の感情を表現しきれないもどかしい青年役のアンドリューも素晴しかった。
そして何よりも英国のくすんだ風景を見事にフィルムに焼き付けたカメラ・アイの秀逸さが、穢れなき命達を際立たせている。寄宿学校の静謐かつ隠微な翳り、コテージ周辺での深淵たる田園風景、ノーフォークの海岸の儚いまでの荒涼さ。

異様な静けさを湛え、寂寥感のみが募る美しき迷作であった。納得しかねるのだが涙腺が・・・[もうやだ~(悲しい顔)]

しかし何と言っても本日の掘り出し美女[右斜め下]可愛い〜[ハートたち(複数ハート)]
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Ella Purnell(エラ・パーネル)若きキャシーを演じた弱冠15歳。この作品が映画デビューのようです。
[ぴかぴか(新しい)]今後の彼女の成長が楽しみでしょーがない[ぴかぴか(新しい)]



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haku

映画と関係なくてスミマセン
Never Let Goって曲が、CAMELにあるんですよ!!
大好きな曲です♪
ふと思い出したもので...^^;

by haku (2011-05-14 20:20) 

non_0101

こんばんは。
美しくて切ない作品でした(T_T)
後半の展開はショックです~
切なすぎました…
by non_0101 (2011-05-14 21:51) 

Labyrinth

(^_^)ノこんばんは。
鑑賞予定なので、今宵はポチッとだけで失礼しま~すっ ㏄= ㏄=┌( ・_・)┘
by Labyrinth (2011-05-15 00:16) 

つむじかぜ

>haku様
キャメルは「スノーグース」しか持っていないので知らない曲でした。
早速探して聴いてみましたけど、ライトなギターとヴォーカルが美しい素敵な曲ですね^^
by つむじかぜ (2011-05-15 02:40) 

つむじかぜ

>non_0101様
後半のやるせなさは、ちとつらい。
個人的には、ジーンと来るけど、なんとも不可思議な映画でした。
by つむじかぜ (2011-05-15 02:44) 

つむじかぜ

>Labyrinth様
「八日目の蝉」とは別種類の涙が溢れます。是非、ご鑑賞を!!
by つむじかぜ (2011-05-15 03:07) 

Labyrinth

(^_^)ノ こんにちは。 やっと拝読致しました。
同じような題材の「アイランド」では感じられなかった“人肌”の温み?を感じ、
気持ちが入り込んでしまいました。(苦笑)
でも泣くまでにはぁ・・・ (^_^ゞ ぽりぽりです。

つむじかぜさま お気に入りの美少女ですが  
ん?工藤夕貴? と一瞬思ってしまいましたわ(笑)
お好みでなければすみません! (^人^)
TB 何回もトライしたのでダブったかもです。宜しくお願い申し上げます。
by Labyrinth (2011-06-21 15:57) 

つむじかぜ

>Labyrinth様
いつもありがとうございます。若い頃の工藤夕貴.......
ばれましたね、確かに好きでした(^_^;)
相米監督『台風クラブ』は名作でした!
by つむじかぜ (2011-06-23 02:25) 

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