AJICO〜不変ベンジー&変幻UAの奇蹟の邂逅 [超個人的溺愛の逸品]
平成の幕開き〜新婚早々の札幌転勤時代の毎週土曜深夜のお愉しみと云えば「ムフフ」ではなくて「これ」だった。
「三宅裕司のいかすバンド天国」(通称「イカ天」)
毎週現れる多数のアマチュアバンドのフレッシュな演奏は、元ロック小僧の眠っていた青春時代の思い出とギター魂を呼び覚ました。キワモノ系からプロ顔負けの本格ロッカー、道楽と割り切った学芸会バンドからメジャーデビューを目指す純粋なセミプロ達。
新妻が隣室で爆睡しようが、この時間帯はTVにかじり付いていた。「たま」VS「マルコシアス・バンプ」の伝説的な対決をピークに、社会現象とまで云われた異常なバンドブームを同番組はもたらした。しかし、放送も2年目に入るとその熱波も急激に収まりつつあった・・・そんな頃、このバンドが現れた・・・
ブランキー・ジェット・シティ〜「グゥワシャキ」というギター音一発に、元ギター小僧の鼓動がシンクロした。
「なんて気持ちいい音を出す奴だ〜」やたらと目が綺麗なギター兼ヴォーカルの青年の名は「浅井健一」といった。
出演バンドのレベル低下が囁かれ始めたこの時期、BJCは圧倒的な存在感でグランド・イカ天キング(5週勝ち抜き)となるや、その後メジャー・デビューを果たす。
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1991/04/12
- メディア: CD
当然の如く購入したデビューアルバム。しかし、個人的には「イカ天」での荒削りな演奏が強烈に焼き付き過ぎており、スタジオ録音の整い過ぎた音像に違和感を感じざる得なかった。
ここからの彼らの伝説的な活躍は今では周知の通りだが、逆に私はこのデビューアルバムを最期に、BJCから遠ざかる事になる。浅井健一のギターに後ろ髪を引かれながら・・・
一方、日本ポピュラー界に異色の女性シンガーが現れる。
実は、彼女を初めて見たのは、TVドラマ「私立探偵 濱マイク」(2002年)の第2話での役者としての姿だった。
風変わりな歌姫役を演じたのは「UA」という、実際も風変わりで既に一部で熱狂的ファンを集めていた女性歌手だった。(私は歌手名の読み方も知らなかった〜「ユーア」と呼んでいた)
そして、劇中で絶唱する彼女の独特の歌声を聴き、私は意味も無く感動してしまったのである。
90年代の名曲『甘い運命』
イカ天から約10年。時代はミレニアム〜私は大坂に転勤中。
BJC解散を風の噂で知り、時の移ろいを感じながら「あの浅井青年はどうしてるんか?」と彼の消息を調べた所、な・な・なんと、あのUAとのコラボが進行中との事。
バンド名は『AJICO アジコ』
ロック魂一直線の浅井と異系のニューウェーブ歌手UAとの合体は余りにも予想外の組み合わせで、私の狭量な音楽感性では、二人の作り出す音楽は想像もできなかった・・・
まさに衝撃の作品
久しぶりに聴く浅井のギターは、10年前と変わらぬ熱き想いを秘めながら研き抜かれ、凶暴なコード・ストロークからもの哀しげなシングル・ノートまで静と動を表現する。
この圧倒的存在感のギターに対し、UAの歌声は「ヴォーカル」という範疇を超越し、魂の声を発する一つの楽器のごとく、浅井の造り出す音の波と、溶け合いまた反発しあいながら、いまだ誰も聴いた事が無い音宇宙を創成するのだった。リズム隊(bass、drums)も秀逸。BJCとは一線を画して、多彩な楽曲群を冷静・着実にサポートしているのだが、決して主役の二人の引き立て役だけに終わっていない。4人のプロの静かな火花が散っているのが目に浮かぶのである。(若干、bassのTOKIEはビジュアル優先か?)
即興演奏のJAZZ的要素も組み込みながら、バラードからプログレ風、王道R&Bと多彩な楽曲群。二人の過去の名曲のリテイクも全く別の命を吹き込まれたように蘇る。
当然、浅井のリードヴォーカルの曲は少ない。しかし、ギタープレイに専念した〜歌わないベンジー〜の存在感は、かえってBJC時代より凄みを増している。
このCDは、当時の私のNo.1ヘヴィー・ローテーション・アルバムとなり、AJICOは現存する国内最強のロック・バンドであると確信していた。
早く次のアルバムが聴きたいものだ・・・しかし、このアルバムに病み付きになっている頃には、既にAJICOは解散していたのであった。(この情報の遅さがオッサンの哀しさ)浅井とUAの期間限定の実験的ユニットと云えばそれまでだが、それにしても潔過ぎるし、この孤高の音絵巻が1枚のアルバムのみしか聴けないのが惜しい。(BJCは10年も演ったのに・・・)
私は呆然とするのであった。
それから半年ほど経過し、AJICOの最初で最後のライブ・ツアーの様子を収めたCDとDVDが発売された。
当然、両方とも即購入である。
DVDの方は、現在入手困難。このライブを生で観れなかった事を一生後悔した。(神戸でも演っているではないか!)
CDはDVDの音源と全く同一であるが、楽曲すべてを完全収録。DVDではカットされている「深緑」のインプロゼーションなどは特に圧巻
改めて強烈に感じたのは、ベンジー・UAともライブになるとパフォーマンスが更に無限大になるという事だ。
浅井はイカ天やBJCの活躍で先刻承知、突っ走るギターにしっかり付いていくTOKIE、椎名のリズム隊が見事。
そしてなによりもUAのスタジオ録音以上に伸びる歌声と、妙に耳につく奇声(合いの手)は、国内ヴォーカリストの中でも希有の音域コントロール力と表現力を有している事を証明している。
BJCの名曲「ペピン」
かっちょえ〜
AJICOが音楽性のみならず、ビジュアル面でも意識的に構成されたユニットであるのが一目瞭然。
(それにしても、イカ天での紅顔の美少年の変貌ぶりはなかなかである。ギターを持たなければ、ただの薄汚いオッチャンやがな〜儂と同じじゃ)
『波動』(長い曲ですが、AJICOの魅力に溢れています)
UAの魂の叫び、ギタリスト浅井健一の孤高のプレイ〜邦楽界の金字塔
「また、どっかで会おうぜ」と言い残してAJICOは永久に消滅した。
その後、また別の道を歩み始めた二人の活躍は知られる処である。
常に熱いハートをギターと歌詞に叩き付けるベンジー。20年間不変のロッカーだ。
一方、共演者を代えるごとに、常に新しいジャンルへの音楽に挑戦し続けるUA。
AJICOとは、トコトン一途なギター野郎と移り気な天才歌姫が出会った一瞬の奇蹟の恋、ほんの僅かな究極的な幸福の時間なのである。
そしてさらに10年月日が流れて・・・
美しいこと(UAの関西弁も好きやで)
(AJICOの鬼気迫る演奏とは対極の同窓会風の微笑ましい再会プレイ)
活動期間わずか半年。遺したオリジナル・アルバムは1枚。あとは、彼らの少ない足跡を辿るライブCD・DVDが存在するだけ。私はその3枚の遺産を聴く(観る)たびに、AJICOがいまだ21世紀最強の国内ロックバンドであると信じて疑わないのである
おまけ
再び「ペピン」(土屋昌巳師匠だぁ〜)
まさに、おとなのPepin。
土屋昌巳はBJCのプロューサーを永く務めたベンジーの後援者と云っても過言ではない伝説ギタリスト。
(以前彼を取り上げた記事はこちら→http://tsumujikaze2.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21)
ちなみに、ドラムスはAJICO同級の椎野恭一。
ブランキー・ジェット・シティ 好きでしたよ!!
AJICOも聴いてましたが、自分はどちらかと言うと浅井健一の声が好きだったんで、
AJICOはそれ程ヘヴィーには聴いてませんでした ^^;
by haku (2011-04-27 17:52)
>haku様
UAの声質は好き嫌いが別れるところですよね。
フリー・ジャズにも一時嵌った私は、AJICOサウンドにぞっこんだったんです^^
by つむじかぜ (2011-04-28 01:11)
イカ天でのブランキーは衝撃的でしたね!!
by DEBDYLAN (2011-04-28 01:37)
おおっ、AJICO。
ウッドベースのお姉さまも素敵なのよね♪
by ぷーちゃん (2011-04-28 08:20)
>DEBDYLAN様
「たま」の初見も、別の意味でも衝撃的でしたね^^;
by つむじかぜ (2011-04-29 23:13)
>ぷーちゃん様
TOKIEのアップライトベースでの立ち姿がイカしてましたね!!
by つむじかぜ (2011-04-29 23:16)