SSブログ

『ヒアアフター』 [上映中飲食禁止じゃ!]

実は、この作品は震災の3日前に観賞していた・・・
hereafter01.jpg

監督/製作/音楽:クリント・イーストウッド[ぴかぴか(新しい)]
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ
脚本:ピーター・モーガン
キャスト:マット・ディモン セシル・ドゥ・フランス ジェイ・モーア プライス・ダラス・ハワード
ジョージ&フランキー・マクラレン ティエリー・ヌーヴィック マルト・ケラー

パリで活躍するジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、恋人と一緒に休暇で訪れていた東南アジアで、津波に遭遇。波に飲まれて生死の境を彷徨ったものの、何とか一命を取り留める。だが、帰国した後も、呼吸が停止した時に見た不思議なビジョンを忘れることができず、仕事が手につかなくなってしまう。しばらく休暇を取ることになったマリーは、自分が見たビジョンが何だったのかを突き止めようと、調査を開始する……。一方、サンフランシスコでは、かつて霊能者として活躍したものの、死者との対話に疲れきったジョージ(マット・デイモン)が、過去を隠して工場で働いていた。彼は、人生を変えようと通い始めた料理教室で知り合ったメラニー(ブライス・ダラス・ハワード)に好意を寄せるが、自分の能力が原因で、彼女は彼の前から去ってゆく……。そして、ロンドン。母親と双子の兄と一緒に暮らすマーカス(ジョージ・マクラレン/フランキー・マクラレン)は、突然の交通事故で兄を亡くす。母と別れ、里親に預けられたマーカスは、もう一度兄と話したいと霊能者を訪ね歩くものの、本物の霊能力者には出会えない。だがある日、彼は、ジョージの古いウェブサイトに行き当たる……。調査の成果を本に書き上げ、ブックフェアに参加するマリー。すべてから逃げ出して大好きなディケンズの博物館を訪ねるジョージ。二人の行き先はマーカスが暮らすロンドン。3人の人生が交錯し、何かが起きようとしていた……。

オープニング。
イーストウッド作品では珍しく、CGを駆使したスマトラ島沖地震による大津波に飲み込まれるリゾート地の映像に圧倒される。(このシーンのみで、上映中止の憂き目に遭ってしまうのだが)

臨死体験を機に、今までの人生観に変化をきたしたマリーは、今までのキャリアを棒に振りながら、その謎を追う。
ジョージは死者と交信する能力を持つが故に、普通の生活が送れず、孤独感に苛み、自分の能力を恨む。
双子の兄を不慮の事故で亡くしたマーカス少年は、兄との会話を夢見て、霊能力者を探し求める。

この別々の地域に住む3人三様のストーリーが、交互に展開していく。
三人の物語がすべて、イーストウッドらしい丁寧な描き方になっていて、ぐいぐい引き込まれる。
少し肉付けすれば、独立した短編として各々成立する位の出来映えである。

三人の主役の内面描写を、俯瞰したカメラ・アングル、光線の扱い、挿入音楽により際立たせ、多くを語らぬ俳優陣はその表情で強烈に訴えてくる。

「死」を、それぞれの体験で目の当たりにした3人が、引かれ合う磁石のようにロンドンに集結する。
別々の想いを背負い込んだ3つの楽章が、自然のハーモニーを織り成しながら最終章に向かうように、ラストシーンでは、観衆は内面を大きく揺さぶられながら、最後の余韻で至福の時を感じるのである。

奇蹟も起きなければ、幽霊が出現する訳でもない。
日常で起こりうる「非日常」を、極めて自然な形で描く。

思いもよらぬ事故や災害でもたらされる不慮の死が、決して運命の悪戯ではなく、常に我々の隣にある事。
生きていても死んでしまっても人間の強き想いとは、永遠にそこに“在る”と云う事。
魂は永遠で、死は特別なものでもないし哀しいものでもない。だからこそ「今、生きている事」の素晴しさを実感し、幸福を求めていこうという逆説的な啓示として、私は受け取った。

哀しい想いがずっと引きずる展開が続きながら、最期にこれほど晴やかな清々しい気持ちになれた映画は希有だ。
死の偶然性と魂の永遠性の狭間で、生在る者〜人生の素晴しさを謳った名作である。

イーストウッド流の描写法に足して、スピルバーグの特撮CGを得て新境地を開いた彼は、さらに高い精神世界の極みに挑戦し続ける。御歳80才、凄い[exclamation×2]


この映画が国内で再映される事は当分ないだろう。日本では「幻の名画」となる可能性が大だ。
冒頭の僅かなシーンのみで消え去ってしまうのが残念で仕方ない作品である。
しかし、東日本震災の現状を考えれば、配給会社が躊躇するのも理解はできる。
望むのは、被災地復興と我々の自信回復がなされ、DVD化されたこの作品が多くの人に自然な形で受け入れられる日が一日も早く来る事を。

ヒア アフター [DVD]

ヒア アフター [DVD]

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: DVD

おまけ             挿入音楽の中でも極めつけ
[もうやだ~(悲しい顔)]Sia『Lullaby』[もうやだ~(悲しい顔)]

人気ブログランキングへ

nice!(10)  コメント(4)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

nice! 10

コメント 4

ぷーちゃん

この映画良さそだね。
Siaのアルバム”Some People Have Real Problems”の
ラストチューンですね。
また聴いてみよ。
by ぷーちゃん (2011-05-21 08:33) 

non_0101

こんばんは。
イーストウッド監督にしては珍しく、最後には癒される気持ちになれる作品でした。
いつかこの映画を観ても大丈夫なくらい立ち直っている日本になれることを
願ってしまいます。
by non_0101 (2011-05-21 22:49) 

つむじかぜ

>ぷーちゃん様
Sia、あまり聴かない歌手でしたが、なかなかいけますね^^
by つむじかぜ (2011-05-22 00:34) 

つむじかぜ

>non_0101様
やるせないエンディングが定番の監督でしたが、最近は「チェンジリング」「グラントリノ」のように仄かな希望を滲ませるラストも増えてきましたね。
by つむじかぜ (2011-05-22 00:44) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。