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『太平洋の奇跡ーフォックスと呼ばれた男』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督:平山秀幸
US監督:チェリン・グラック
脚本:西岡琢也
US撮影監督:ゲイリー・ウォーラー
キャスト:竹野内豊 唐沢寿明 井上真央 山田孝之
ショーン・マクゴーウァン 中島朋子 岡田義徳
阿部サダオ 酒井敏也 ベンガル 板尾創路
音楽:加古隆


太平洋戦争下のサイパン戦を描いた実話であり、原作は当時のアメリカ軍兵士によって書かれた。

戦争末期の玉砕戦を描いた作品では、クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」が記憶に新しい。

アメリカ側からの視点で描いた点では、「父親たち〜」に近いのであるが、製作スタッフは日本人が大半の為、日本人が観ても違和感を覚えない、ある意味日米双方からして非常に好意的な仕上がりとなっている。



竹野内豊・・・好きな男優である。
悪役がなかなか似合わない精悍かつ優しい顔立ち。「おとこ臭さ」を全面に押し出さず、かといって軽薄でもない『燐』とした佇まいを感じさせる俳優だ。
10年ほど前のNHK大河ドラマ「利家とまつ」での前田利家の弟・佐脇良之役が初見だったのだが、「いい男だ、弟にしたいタイプだ」と好印象。(誤解の無いよう・・決して私はあっち系の趣味はない。)
まさしく、愛国心とヒューマニティを胸の底に湛えた冷静沈着な指揮官・大場大尉役にベストマッチであった。
      
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その大河ドラマの主人公・前田利家役が唐沢寿明だった。(不思議なご縁ですね)
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こちらは男臭さ出しまくりで、今回の役どころは刺青を背負った一等兵。スキンヘッドで芸風の広さをアピールすると共に、彼の存在によって作品にぐっと厚みが出た。

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井上真央・・・彼女のドラマは何一つ観ておらず、某銀行CMキャラクターとしてのイメージしかない。
家族を失いアメリカ兵への復讐に燃える看護婦役。全く笑わない役を田舎娘メイクで熱演です!

そしてアメリカ軍のルイス大尉(ショーン・マクゴーウァン)の視点を中心に、サイパンの最期の闘いが描かれていくのである。

1944年7月7日。米軍の圧倒的火力と兵力でサイパン島北部に追いつめられた日本軍は、全軍による総攻撃〜いわゆる「バンザイ突撃」を敢行し玉砕する。「この日をもってアメリカがサイパン島占領を宣言した」と、一般的な歴史書ではそう記されている。しかし、この作品の起点はここからなのである。

生き残った兵士と民間人合わせて180名は大場大尉指揮の下、タッポーチョ山に潜伏し、米軍の掃討作戦を巧みにかわしつつゲリラ戦を展開するのであった。いつしかアメリカ兵達から大場はタッポーチョに潜む「フォックス」と畏怖とある種の尊敬の念を込めて呼ばれていった。

知日派のルイス大尉は、誇り高き日本人を慮り、知恵を絞り投降を呼びかけるが一向に効果が上がらない。
1945年8月15日。敗戦の噂は大場隊にも届くが彼らの抵抗は終わらない。既に弾薬・兵糧は底をつき飢餓が蔓延した部隊の中で、大場が最期に選んだ決断とは[exclamation&question]

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この言葉によって、当時の日本人の尊い命が数多失われた。


大場は「勝つために戦う」と誓う。「死ぬるための戦い」は否定する。
「潔い死」という選択肢は、彼には無い。

ゆえに生き延びながら、敵の戦力を一人でも削るよう思いを巡らせる。(収容所に入れば惨殺される)という噂に心を痛め、民間人を必死で守り抜き、生きて祖国の土を踏ませる事を考える。

『愛国』とは生きて国に帰り、国の為に尽くす事。彼の理念は明快であるが、孤立無援のジャングルで情報が皆無な中での決断は困難を極める。
彼は決して泣き叫んだりしない、決断は常に独りで行う。全員の命を預かる孤独な指揮官の苦悩を竹野内が好演。

戦闘シーンも邦画にしては迫力満点と思いきや、やはりアメリカの撮影監督。チャンバラの殺陣は日本に勝るものはないが、飛び道具(古い^^;)は西部劇で培ったハリウッド・スタイルに一日の長がある。

昔のNHK特集で「硫黄島玉砕戦〜生還者の証言」という番組を観た。飢餓と病魔に蝕まわれた兵士達が人間の尊厳を失っていく極限状況は、筆舌に尽くしがたいものがあった。サイパン島での生き残りも現実には、たぶんそれに近い状態であったと想像できるし、収容所内も決して牧歌的な生活を送れた訳ではないはずだ。

今作は、リアリティ感という点では敢えて控えめな演出にし、日米双方の登場人物を人間味溢れる脚色で仕上げている。姿を観た事が無い「フォックス」に対し、尊敬の念を抱くルイス大尉の描き方は、その典型的なパターンである。敵味方も国境も超えて、人間の尊厳を尊び、相手を公正に評価する姿は時代を超えて感動を呼ぶ。

なによりも、ほとんどの日本人が知らなかった「大場栄」という人物を、アメリカ軍兵士が敬意を持って歴史の闇から光を当てたという事実に驚きと共に胸を熱くさせる。人間を人間として尊重し合う心と、戦後の高度成長を成した日本人の精神性の原点をこの作品に再発見した。そしてまた、現在の日本人が失くしてしまったものを・・・


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ぷーちゃん

この映画、評判良いですね♪
by ぷーちゃん (2011-03-02 11:22) 

non_0101

こんにちは。
見応えのある作品でした~
最後までずっしりといろいろなものを感じながら観ていました。
大場大尉を演じた竹野内豊さん、いい演技でしたね☆
by non_0101 (2011-03-02 12:47) 

つむじかぜ

>ぷーちゃん様 non_0101様
幅広い年代の方に観てもらいたい非常に良心的な作品ですね^^

by つむじかぜ (2011-03-03 01:18) 

mahoroba

確かに!唐沢さんがでていたおかげで、作品に重みがでましたね。

山田孝之くんも、よい感じだったかな、、と。
by mahoroba (2011-03-07 23:40) 

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