『上村松園展』 [ざれごと写真日記]
国立近代美術館「上村松園展」に行ってきました。
日本画への造詣は、さほど深い訳ではない、というよりほとんど知識がない。(上村松園が女性画を得意とする日本画家である事は承知していたが、まさか女性であるとは思ってもいなかったのである。)たまたま観たTVでの特集番組に触発されて、勢い閉館1時間前に滑り込んだ次第。
繊細な筆遣いによる美しい描写は、TV・雑誌等で知られる処であるが、実物を目の当たりした感激は、また別格であった。
本日のお気に入り。
「人生の花」1899年
まず、題名からして「粋」である。
嫁に行く娘を先導する母。
とにかく「黒」の使い方が凄い!
母娘の着物・髪の黒色を、微妙な濃淡で見事に描き分けている。
2人の心情が零れ落ちてきそうだ。
「舞い支度」1914年
この四人の着物の色合いの素晴しさ!
洋画にはあり得ない色彩です。
(ちなみに右端の女性が私のタイプです。)
彼女は常にモデルを使用せず、自分のイメージのみで描いていたと云う。
信じられません!
構図が興味深かった2点。
「花」1910年(左)
「待月」1926年(右)
左の顔の重なりと傘の配置、右の柱の配置など、写真の王道では御法度の反則技。
この不調和感が逆に新鮮味と自然さを醸し出す。
現代写真顔負けのセンス!
心奪われた2枚。
「風」1939年(左)
「天保歌伎」1935年(右)
左の艶かしい色香、右の凛とした色気。
味わい深い空色と鮮烈な青色の着物。
どちらも赤色の使い方が憎い!
最後に、私でも知っている(記念切手になった)
「序の舞」1936年
この作品は、彼女がモデルを使用したと云われる渾身の一作。
女性の持つ逞しさと優しさを凝縮したような「一輪の菊」に私は見えた。
それにしても、この作品の前だけは人山のくろだかり。
宣伝による名作への先入観とは恐ろしいものだ。
私にとっての名作は、最晩年に描いた「風」かな。
とにもかくにも、この女流画家の色彩美に酔いしれた、清々しい気分の一日でした。
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