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『ガタカ Gattaca』〜マイケル・ナイマンの音楽と共に〜 [超個人的溺愛の逸品]

SFを超越した至高のヒューマン・ドラマである。

公開当時、この作品の存在すら知らず、劇場で観る事はできなかったが、とあるNET批評から興味を持ち、一昨年DVD観賞。私にとって「バニラスカイ」と並ぶ21世紀の最高傑作となった。
もう何度見返したか数えきれない作品である。

ガタカ [DVD]

ガタカ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD
1997年作
監督:アンドリュー・ニコル
キャスト:イーサン・ホーク ジュード・ロウ ユマ・サーマン アラン・アーキン

音楽:マイケル・ナイマン



GATTACA〜ガタカ 現代で云う所のNASAであろうか、世界中の英才が集結する宇宙開発機関である。

近未来の話しである。遺伝子操作による産み分けが常識の時代となり、世界の差別の基準は、生まれながらにしての遺伝子の優劣によって決定された。

両親の“自然な愛の結晶”として産まれたビンセントは、「心臓疾患による早死の可能性大」とする遺伝子分析により、出産と同時に『不適正者』の烙印を押された。
遺伝子操作で産まれた弟・アントンに勝るものは何ひとつなく、大きな劣等感を抱えながら成長する。そんな彼には、「宇宙飛行士になりたい」という実現不可能な大きな夢があった。
或る日、幼少期から兄弟の度胸比べとして何度も遊んでいた遠泳に初めて勝ったビンセントは、家を出る決意をする。自分の力で「ガタカ」に入る希望を持って・・・
絶え間ない努力により、知力・体力共に、超人並みに鍛え上げたビンセント。しかし、一流会社には最後の血液検査(遺伝子検査)ですべて落とされ、ビルの清掃員として働く事しか、彼が生きる道はなかった。ガタカへの道は夢のまた夢。

ユニークな設定をごく自然に表現するオープニング。ビンセントの抱える大きな問題と果てない夢がクローズアップされていく。その彼の努力だけでは成し得ない儚い夢への想いを、優しい旋律がなぞっていく。このメロディーのなんと切なく美しきこと!

彼は一大決心する。遺伝子の闇取り引きによって、ガタカの採用試験に挑戦する事を。
そして、オリムピックの元銀メダリスト・ジェローム(ユージーン)の協力を得て、彼は無事、ガタカに入社する。
社内で頭角を現した彼は、木星の衛生・タイタン探査船の飛行士に抜擢されるが、打ち上げ1週間前にガタカ内部で殺人事件が起きる。
容疑者は部外者の「不適正者」と断定され、警察の捜査はビンセントの周囲に及んで来るのであった。


ジュード・ロウの登場シーンが素敵。墜ちたエリートの感じが伝わってくる。ここでも優しい旋律ながら、不安を忍ばせたような挿入音楽が見事。
ユマ・サーマン〜私は治癒不可能のブロンド病なのだが、金髪なら誰でも良いという訳ではない。スタイルがいくら良くても大柄はダメ。彫りの深い、特に鼻が大き過ぎるタイプもダメ。そういう観点から、この女優は私のタイプではない。(パルプ・フィクションのジャンキー女のイメージが強過ぎた影響かも)まして、せっかくの金髪をアップにするなどもったない!

イーサン・ホークとユマ・サーマンのデート場面。
やはり女の方が背が高いが、チークダンス時のみ逆転する苦しい演出^^;
12指本用のピアノ曲も凄いが、SAX奏者が、実は大御所スタン・ゲッツというのが隠し味。


うん。やはりブロンドは髪を降ろした方がよろしい[わーい(嬉しい顔)]

偽ジェロームに嫌疑をかけた捜査官が、ビンセント宅に乗り込む場面。私の好きなシーン。


このじわじわと緊迫感を煽る音楽! 俳優陣の静かな演技の火花が散る。
必死で“本物”を演じるユージーン(ジュード・ロウ)
そして戸惑い、狼狽えるアイリーン(ユマ・サーマン) 
「You're a God Child?」
「It is possible」
彼女の揺れる女心とビンセントの素直な気持ちを旋律が美しく表現する。
(「神の子」とは、遺伝子操作をしないで生まれた天才の事を呼ぶ。)

この優秀な捜査官が実はビンセントの弟・アントンだった。
何年かぶりに再会した兄弟は、「兄の奇蹟」を証明もしくは否定すべく再度“度胸比べ”をするのであった。


メイン・テーマがまた流れる。ジーンとくる場面だ。
「戻る事は考えず全力で泳いだ」

オープンカーでのうたた寝から目覚めるアイリーン。
えっ?こんなに可愛いかったっけ・・・私の今までのユマ像を一発で破壊したシーン。
氷のようにクールな女が融けた瞬間〜この美しさは尋常でない[ハートたち(複数ハート)] 前言撤回[パンチ]

そして宇宙船打ち上げの日。
ビンセント、ユージーンそれぞれの旅立ちは、涙なしでは語れない[もうやだ~(悲しい顔)]歴史に残るラストシーン
何度観ても胸が焦がれてしまう。

CGも特撮も無く低予算のB級SF映画が、制作者達の叡智が吹き込まれ、煌めく命の輝きをもった奇蹟的な作品となった。
細かく見直せば、本当にちんけなセットばかりだ。それを効果音と巧みなカメラ・アングルで、近未来のモノに変えてしまう魔法。
当時の売り出し中の俳優陣のピュアな演技。
そして、なによりもマイケル・ナイマンの音楽の素晴しさ。
フィルム・ミュージック~ベスト・オブ・マイケル・ナイマン

フィルム・ミュージック~ベスト・オブ・マイケル・ナイマン

  • アーティスト: マイケル・ナイマン
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2002/03/20
  • メディア: CD
1944年生まれ。ブライアン・イーノロバート・フリップとも交流のあった前衛音楽家らしいのだが、この20年は映画音楽作曲家として活躍。かつては欧州映画が多く、今作がハリウッド映画では初めての音楽監修らしい。私は恥ずかしながら今までは名前すら知らなかった。彼の音楽監修した映画は他には「髪結いの亭主」しか観ていないのだが、この作品も確かに映像に溶け込んだ美しい旋律であった。

本作のテーマ「It Is Possible」
当てつけがましい「成せば成る、成せねば成らぬ、何事も」的なスポ根モノではなく、サラリと「人間の可能性」を示唆する辺りが憎い。
親なら誰しも、自分の子供には幸せな人生を歩む事を望む。極力、負の要素は排除したい。よく云われる「親の悪い所ばかり似るのよねぇ〜」では困るのである。それが、科学の発展により人工的に操作できるとしたら・・・
しかし、そんな事は親の身勝手なのである。人生の幸福は、成功がすべてではない。
将来の遺伝子工学への警鐘も含めながら、「生を与えられた者のあるべき姿」を描いている。
素質がモノをいうのは事実だが、宝の持ち腐れの人間が多いのもまた事実。そして、素質に恵まれた者が仮に努力したとしても、すべてが幸福になれると決められている訳でもない。
常に夢に向かって努力する人間の姿は美しいし、可能性は無限なのである。しかし、それに神様が微笑むかどうかは、それこそ神のみぞ知るである。運命までは遺伝子では決められないのだ。
だから、世の中は面白い。

5分前のキスで僅かに残した男の唾液で、女は彼の資質を暴露できるという、男にとって末恐ろしい時代だ。

アイリーンの最後の言葉。
あなたの遺伝子に惚れた訳じゃないのよ〜The wind caught it 〜洒落ているなぁ〜[わーい(嬉しい顔)]

至高の名作である〜私にとって・・・

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haku

全く知りませんでした ^^;
つむじかぜさんの感動がひしひしと伝わってきました!!
by haku (2011-02-26 12:02) 

つむじかぜ

>haku様
映画好きの方には是非観ていただきたいです。
隠れた名作だと思います。
by つむじかぜ (2011-02-28 00:53) 

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